ミッション破壊作戦~略奪、奪還、年初め

作者:柊透胡

「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 ヘリポートに集まったケルベロス達を、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は静かに見回す。
「妖精8種族と言えば、グランドロンの救出と復活儀式が直近の話題ですが……こちらも、妖精8種族関連となるでしょうか。『シャイターン』の『ミッション破壊作戦』です」
 通算19回目のアナウンスを、ドラゴニアンのヘリオライダーは今回も粛々と口にする。
「私も数ヶ月ぶりですので、少し復習を……ミッション破壊作戦の要は、こちらの『グラディウス』です」
 『グラディウス』とは、長さ70cm程の『光る小剣型の兵器』。強襲型魔空回廊――ミッション地域の中枢の破壊が可能な特殊な兵器だ。
「グラディウスを1度使用すると、グラビティ・チェインを吸収して再び使用可能となるまで、かなりの時間を要します。ですから、攻撃するミッションの選択については、現状を踏まえ、皆さんで相談して決定して下さい」
 今回の作戦に於いて、ターゲットとなる『シャイターン』のミッション地域は、現状で最多の9箇所。となる。創が担当するのも、約2年ぶりとなろうか。
「強襲型魔空回廊はミッション地域の中枢にあります。正攻法で辿り着くのは困難であり、敵に貴重なグラディウスを奪われる危険さえあります」
 故に、ミッション破壊作戦は、『ヘリオンによる高空降下作戦』が定石だ。
「強襲型魔空回廊は、半径30m程のドーム型バリアで覆われています。このバリアにグラディウスを接触させる事で『攻撃』します」
「理想的な展開として、8名のケルベロスが、グラビティを極限まで高めた状態でグラディウスを使用し、強襲型魔空回廊に攻撃を集中させれば……その1度で、破壊する事も可能です」
 尤も、ダメージは蓄積するので、最大でも10回程度の降下作戦を繰り返せば、強襲型魔空回廊は確実に破壊出来るようだ。
「強襲型魔空回廊の周囲には、強力な護衛が常駐しています。しかし、流石に高高度からの降下攻撃は防げません。又、グラディウスで攻撃すると雷光と爆炎が発生し、グラディウス所持者以外は無差別に害を被ります」
 強襲型魔空回廊の防衛を担う精鋭部隊とて防げぬスモークに乗じて、ケルベロス達は撤退する事になる。
「貴重なグラディウスを持ち帰る事も、本作戦の重要な要素です。けして、無理はしないように」
 強敵程、混乱状態からの回復も早い。撤退時、シャイターンとの交戦は避けられないだろう。
「ですが、幸い、混乱する敵同士に連携はありません。強敵と言えど、短期決戦の上で速やかな撤退してください」
 万が一にも時間が掛かり過ぎれば、脱出前に敵が包囲網を整えてしまう。そうなれば……降伏するか、暴走して撤退するか。
「ミッション地域毎に、現れるシャイターンの特色も異なります。ターゲットの選択の参考とするのも良いでしょう」
 デウスエクスの前線基地であるミッション地域の数は、既に頭打ちしている。だからこそ、その解放はまだまだ重要な作戦と言えよう。
「何処を標的とするにせよ、1番重要なのは皆さんの心意気です。シャイターンの略奪を食い止める為にも……皆さんの健闘を祈ります」


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)
安海・藤子(終端の夢・e36211)
田津原・マリア(ドクターよ真摯を抱け・e40514)
帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)
フレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)

■リプレイ

●ミッション22-2「新潟県新潟市」
 年明け早々。ヘリオンの目的地は、新潟県新潟市――謂わば「こめどころ」の県庁所在地は古くから港が開かれ、現在でも水陸の交通の要衝である。
 ミッション22-2――新潟市内で火災が勃発するようになって久しい。既に何度か、ミッション破壊作戦も敢行されたが、奪還は未だ成らず。
(「あれから、またどんだけの被害が出たんやろね……」)
 田津原・マリア(ドクターよ真摯を抱け・e40514)の横顔は厳しい。
「……今日こそ、悪行を終わらせたる」
 新潟の地に挑んでそろそろ1年。再挑戦の意気込みもひとしおだ。
「勇気は選定の道具やあらへん、人の明日の糧なんや」
「そのとーり! 今日は、本当の勇気の歌を聞かせるデスよー!」
 到着まで、愛用のバイオレンスギターの調律に余念のないシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)。自称ロックなミュージシャンは、持ち前のノリと元気の良さで『セッション』を盛り上げるのは割と得意だ。
「そのシャイターンは強敵か? だったら、愉しみだ」
 不敵な笑顔の柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)は、やはり得物の仕度に余念がない。オウガメタルの鬼金を籠手に変じ、意気軒昂に打ち鳴らす。
「各自、グラディウスの紛失に注意しろよ……敵には絶対、渡らないように」
 掌上に立体映像を投影しながら、卜部・泰孝(ジャンクチップ・e27412)はケルベロス達に注意を促す。立体映像は降下地点の周辺地形及び最短の撤退ルートで、レプリカントの種族特徴の賜物だ。ウイングキャットやらオルトロスやら、サーヴァント達が珍しそうだ。
「はいはい、ちゃーんと仕舞っておくわよ」
 オルトロスのクロスを撫でながら、軽口で応じる安海・藤子(終端の夢・e36211)。彼女の唇は笑みを刷くが、本心を窺わせぬ理由は目元を隠す所為だけではなかろう。
「ミッション攻略に来ている、他のケルベロスにも援護を要請しようか?」
 一方、手慣れた風で、ヘリオライダーに確認するフレデリ・アルフォンス(ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627)だが、返答は芳しくない。
 曰く――確かに、ミッション攻略中のケルベロスはいようが、魔空回廊の位置から距離がある。彼らの支援を受けられるのは、破壊作戦遂行後、追手を倒して撤退出来てからだ。大半の行程を、ミッション破壊作戦の参加者のみで成し遂げなければならない。
「……まあ、完全に無意味でもないだろう?」
 命の危機がケルベロスとなった切っ掛けであるフレデリは、生き延びる為に万全を期そうとしているのだろう。
「いざとなれば、戦闘不能者は私が背負って撤退しますので」
 力強く請け合ったアルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)は、半人半馬のセントールだ。その健脚は撤退に於いて心強い。
 尤も、アルケイア自身は物腰柔らかな女性だ。オルトロスやウイングキャットの愛らしい仕草に、ついつい唇を綻ばせてしまう様子が微笑ましい。
 ミッション破壊作戦が開始して3年。多数の作戦経験者も複数いる中、帰天・翔(地球人のワイルドブリンガー・e45004)は些か緊張の面持ちか。
(「ミッション破壊は、これで2回目ですが……」)
 小さく深呼吸。赤い鉢巻の隙間から、異色の左眼が覗く。
「……僕は、自分にできる事を、精一杯やるだけです」
 確固たる決意と共に、左目に揺らめく混沌もゆっくりと鎮まっていくようだった。

●似非サンタに物申す!
 ――斯くて、ケルベロス達は、次々とグラディウスを手に寒気へ身を躍らせる。
 新潟市に神出鬼没のシャイターンは「ブラッディクロース」。揃って、サンタクロースに扮する。年柄年中、季節感とか無関係に。
「折角のクリスマス気分を台無しにするその格好! まさにノーロックなのデス!」
 声高らかなシィカだが、ふと小首を傾げる。
「ノーロック……ノットロック?」
 ……まあ、細けぇ事はいいんだよ!?
「新潟市の人達が、来年こそは楽しいクリスマスを味わうタメにも! この場所は、絶対取り戻すのデス! そう、ロックに!!」
 シャイターン共の勝手な勇者論なんかより、ケルベロスの……シィカの歌の方がずーっとプレゼントに相応しい!
「レッツ、ロック! ちょっと遅れたクリスマスプレゼントのお届けデース!!」
「私は定命化してすぐ、クリスマスという素敵な習慣を味わいました」
 定命化して間の無いアルケイアにとっても、クリスマスはもう『特別』だ。
「だから、サンタクロースの扮しながら、人々も町も蹂躙する輩は決して許しません!」
 セントールと同じ妖精族であるものの、シャイターンを妖精8種族の面汚しと断罪する。
「駆逐する事に、躊躇いはありません!」
 アルケイアの決意の叫びに重なるように、荒っぽい言葉が響き渡る。
「もうクリスマスは終わったんだよ! いつまでもそんな恰好しやがって!」
 ヘリオン搭乗時の礼儀正しさから一変。翔は表情も険しく乱暴に吐き捨てる。
「サンタは、子供に夢を運ぶすげー奴なんだ! 人んチ燃やして、悲しませたり怒らせたりする奴が騙っていいもんじゃねえ!」
 サンタクロースの名誉の為にも、サンタクロースという存在を穢したシャイターンはけして許さない。
「新潟の皆に、てめぇらの死をプレゼントにしてやる!」
(「ああ……あんたらが擬態するサンタの出番は、もう終わって新年だ」)
 そろそろ宜しく退散する時期だと、鬼太郎は顔を顰める。
「俺らも余りに長い間、あんたらの占拠を許しちまった。これ以上、被害を増やす訳にゃいかんのだ」
 鬼太郎は、オウガだ。戦を楽しみ、強敵を好む。
「戦う気概のある奴が、戦場に出てくるのは構わん。だが、徒に悲しむ人を増やして、強制的に人間止めさせ戦わせるやり方が気に食わねえ」
 だから、ここで終いにする――裂帛の気合と共に、鬼太郎は魔空回廊のバリアへグラディウスを突き立てる。
「確かに、次のクリスマスまで1年位あるが、オレは欲張りなんでねぇ」
 ピンッとコイントス。その結果を見るより早く、泰孝はウイングキャット共々、ヘリオンから飛び降りる。
「ちっと早いがプレゼント交換といこうじゃないか」
 勢いよく光の小剣を振り上げ、不敵に言い放つ。
「オレからはコイツをくれてやらぁ! そっちからは地域開放でトレードだ!」
(「その上で、オレは知り合いに成果報告してお小遣いを貰うんでなぁ!」)
 どの辺に気合が入っているかは、まあ、さて置こう。ちなみに、ウイングキャットが呆れた風情で泰孝を一瞥したのは、彼の「なけなしの良心」であるからか。
 ――火災に見舞われ、そこで絶望や悲嘆にくれる者など価値が無い。
「放火魔が何言おうが関係ないわ」
 ブラッディクロースの言い草を、藤子は冷ややかに切って捨てる。
「しかも姿がねぇ……あの格好で、炎のプレゼントなんて冗談でもキツイわ」
 何より、大切な人との理不尽な別れを押し付ける行状に、藤子は嫌悪を覚える。
 ――理不尽な破壊と暴力を前に、怯える事なく立ち上がり、非道への純粋なる怒りを抱ける者にこそ、『勇者』の名は相応しい!
「ふざけんな。てめぇらの勝手な都合を押し付けんな」
 脳裏を過る――藤子自身が終わらせた従者の事。最期まで味方だったのに、忘れていた大事な子の面影を。
「大事な奴がいない日常なんてもういらない。欠けた世界なんて必要ない!」
(「焼死は……数ある死に方の中でも、トップクラスに苦しいらしいな」)
 痛ましげに眉根を寄せるのも束の間。フレデリは憤懣やる方ない面持ちで、グラディウスを握り直す。
「自分で火災を引き起こして、そこから勇者を選定する? いい加減にしろよ、マッチポンプ野郎!」
 そんな連中に、サンタの衣装なんて似合わない。
「精々、貧相な体にタールぶっ掛けて、よく燃えるがいいさ!」
「勇気っちゅうもんは、人の明日の糧なんや!」
 殿のマリアは――『勇気』の真実を謳う。
「勇気を奮い起こすんは……大切なものを守る、そんな心意気が根幹にあるんや!」
 それが、勇気を基準に『選定』なんて。身勝手に利用するなんて。
「絶対アカン! 勇気は大切なもんなんや!」
 だから、必ずぶち壊す!
「勇気を利用し貶める、魔空回廊は今日までや!!」

●ブラッディクロース
 8度の閃光、魔空回廊のバリアが震えるのも8度。
 ――――!!
 立ち込めるスモークの中、マリアは懸命に首を巡らせる。
「……あ!」
 ほんの少し前までそびえ立っていた魔空回廊は――跡形も無い。
 正に3度目の正直。ケルベロスは、成し遂げたのだ。
「今の内に!」
「最短距離は……こっちだ!」
 とうとう魔空回廊を破壊され、周囲は混乱を極めている。立ち尽くす者もいれば、無闇に暴れて押し合いへし合い。怒号飛び交う中、ケルベロス達は一刻も早く、ミッション地域から撤退せんと。
「……まあ、そう簡単にはいかない、か」
 紫の双眸を眇めたフレデリの視線の先に、1つの影。季節外れのシルエットに、ケルベロス達は一斉に身構える。
「貴様ら……」
 果たして、全身に返り血を浴びたサンタクロースは、殺気も露に睨め付ける。ブラッディクロース――その背のタールの翼が、シャイターンの証。
「よくも、我らが回廊を!」
 一際の長躯が目立ったか、アルケイア目掛けて前衛をすり抜けた大袋の軌道を、鬼太郎が遮る。
「……っ!」
 体内に直接響く衝撃に眉根を寄せる鬼太郎。それでも、防具が良く耐えた。メタリックバーストを放つ鬼武者の背中は、微動だにせず頼もしい。故に、藤子も予定通り、前衛の足下に守護魔法陣を描く。
「あら……」
 鬼太郎も藤子もサーヴァント伴う身。強化の期待値は1人、2人に掛かれば重畳だ。流石に、列型ヒールでは完治に至らない。
「援護を!」
 アルケイアがスターサンクチュアリを展開して、漸く癒されたか。それでも、鬼太郎がアルケイアを庇った事で、強化と回復が両立したのは幸運だろう。
 だが、敵の包囲網が完成すれば、魔空回廊を破壊され怒り狂った彼らに何をされるか。短期決戦で押し通らねば。
「レッツ、ロックンロール! ケルベロスライブ、スタートデス!」
 バイオレンスギターをぎゅいんぎゅいんと奏でながら、シィカが放射したのはその実、殺神ウイルス。
「テメーを蝕む一本場。さあ、どこまで伸びるかね?」
 泰孝は魔力で生み出した麻雀の百点棒を投擲する。何れも、敵の回復を警戒してのアンチヒールの業ながら、泰孝の百点棒は猛毒を発する前に掻き消えた。
 今回はサーヴァント伴うケルベロスも3名と比較的多い。サーヴァント達も次々と清浄の翼を広げ、或いは神器の剣で攻撃する。
「幸い、キャスターやないけど……まずは確実に」
 眼力が示す命中率は、常と変わらず。それでも、マリアは一刻も早い総攻撃をと、ドラゴニックハンマーから轟竜砲をぶっ放す。
「……っ!!」
 同時、聖刀“梔子”が鞘走る。緩やかな弧を描き、フレデリの斬は確かに敵の紅衣に一閃! 思わぬ手応えの硬さにハッと瞠目する。
「こいつ、ディフェンダーだ!」
 敵は防御を固めて包囲網の完成を待つ心算か。歴戦たるクラッシャーの一撃にも悠然とした様子に、翔は苛立たしげに舌打ちする。
「ぶっ飛びやがれ!」
 荒々しく叫ぶ少年より、竜砲弾が轟音立てて撃ち出された。

●略奪、奪還、年初め
 ディフェンダー相手に短期決戦を目指す。ならば、服破りが常道だろうが、使役修正故に厄付けも後れを取ろう。寧ろ手数の優位を活かすならば。
「その頭冷やしたる」
 マリアのバスターライフルより迸る冷凍光線。すかさず、突撃したフレデリの氷杭がシャイターンを貫く。
「イェーイ!! ロックンロール!!」
 力一杯に振り回されるシィカのアイスエイジインパクト。
「潰れちまいな!」
 早々に総攻撃が叶ったのを幸いに、翔も鬨の声を上げて氷鎚を穿つ。アルケイアも凛と敵を見据え、真っ向からイガルカストライクを繰り出した。
(「最近は支える方が楽しいけど」)
 今は回復専念の藤子とて、隙あらば氷結させんとオリジナルの業を用意しているのだ。
 これでもかと、ブラッディクロースに浴びせられる氷のグラビティ。更に火力が命中する度、凍気がデウスエクスを冒していく。
「おいおい、これで2本だ。意外と順調じゃねぇか?」
 一方、執拗にアンチヒールの業を繰り返す泰孝は、猛毒の百点棒が刺されば、声高に挑発する。その実、メディックでありながら回復する気配のない腐れ縁を見やり、ウイングキャットは呆れた表情。
 ……一応、敵の標的を分散させる狙いはある。やる時はヤル、それが卜部・泰孝――本音は欲望塗れであろうとも。
「オノレ! 屑鉄風情が!」
 白髭の陰でギリリと歯噛みし、大袋の中身をぶちまけるブラディクロース。泰孝に降り注いだプレゼントが次々と爆ぜる。
「纏めて……否、届かねぇか」
 鬼太郎は前衛、泰孝は後衛。些か悔し気ながらも、鬼太郎の凄まじい拳圧は炎諸共、彼の「負傷」を殴り飛ばす。
 圧倒的手数を以て、追い詰める。己が朱に染まりながら、髭越しにも判る邪悪なる哄笑。
「逆転なんて許さへん」
 敵が初めて回復に回った好機、逃しはしない!
(「勇気は振り翳すだけやない、明日を、皆さんを信じて支えるんも勇気。皆さんを信じて!」)
 軽やかに地を蹴り、体当たりするように竜爪で紅衣を貫くマリア。
「押し切るデース!!」
 同時、弦を抑えていた左手の爪が超硬化するや、シィカは敵の顔を超高速で抉る。
 ――我が言の葉に従い、この場に顕現せよ。
 初めて攻撃に転じた藤子も、満を持して蒼銀の冴・馮龍を放つ。
「そは静かなる冴の化身。全てを誘い、静謐の檻へ閉ざせ。その憂い晴れるその時まで……」
 氷龍を制するように、オルトロスは炎を操る。藤子の氷とクロスの炎、双方に苛まれ、シャイターンは絶叫する。
「オレの左腕に文句あるのか、コラ」
 傍から聞けば因縁付けているようでいて、泰孝の惨殺ナイフがジグザグに閃けば、ウイングキャットの爪も軌跡を追うように。
「俺達も一緒に行こうや、虎!」
 鬼太郎の黄金の角がシャイターンを貫けば、虎の赤黒のキャットリングが風を切って奔る。
「これを避けられる?」
 サーヴァントとの連携攻撃が微笑ましいのも束の間。アルケイアは力一杯ゾディアックソードを投擲。敵の頭上から厄を誘発させ、混乱に陥れんと。
「この世から消えやがれ!」
 肉片1つ、魂までも残らず喰らい尽くす! 翔は解放した混沌の力を放つ。執拗に追い縋る混沌の濁流に呑まれ、ブラッディクロースが身を仰け反らせた次の瞬間。
「サンティアーグの騎士たちよ、オレに続け!」
 数多召喚した騎士の魂諸共に、フレデリはブラッディクロースを刻む。
「ま、俺は犬派なんだけど。クロスちゃん、良いなぁ……」
 惚けた呟きは、断末魔の叫びに掻き消された。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2020年1月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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