綺麗事を言っても本音は外見！

■リプレイ

●廃墟と化したビル
「またアホ鳥が寝言を言っていやがるのか！　……たくっ！　んな建前、本気にしてんじゃねぇよ、アホ鳥が！」
　柄倉・清春（大菩薩峠・e85251）は不機嫌な表情を浮かべながら、仲間達と共にビルシャナが拠点にしている廃墟と化したビルにやってきた。
　ビルシャナは信者達を前にして、どんなに綺麗事を言っても、本音は外見であると訴え、そう言った考えを持った者達を許してはならないと叫び、信者達を煽っているようである。
「……まったく、こいつらは何も分かっていない」
　フレデリ・アルフォンス（ウィッチ甲冑ドクター騎士・e69627）が、呆れた様子で溜息を漏らした。
　おそらく、ビルシャナ達も見た目ばかり気にして、中身を見ていなかったのだろう。
　そういった意味で自業自得ではあるものの、ビルシャナ達はその事を認めず、すべての責任を相手に押し付けようとしているような印象を受けた。
「確かに、外見も多少は大事だとは思うけれど……」
　そんな中、オリガ・ローズウッド（愛をうたうオラトリオ・e21987）が、複雑な気持ちになった。
　ビルシャナの言葉にも一理あるのだが、あまりにも極端すぎるせいで、賛同できないというのが本音であった。
「まぁ、つららちゃんは可愛くってキュートではありますが、そんな見た目なんて些末な問題っ！　清く正しく美しい心こそが大事ですっ！」
　細咲・つらら（煌剣の氷柱・e24964）が躊躇う事なく、キッパリと断言をした。
　ビルシャナ達も見た目より中身が大事という考えのようだが、どうせ付き合うなら美男美女と言う考えを持っているようだ。
「……と言うか、こんな考えを持った時点で、中身もダメダメになっている事に気づけないんですかね？」
　若生・めぐみ（めぐみんカワイイ・e04506）が、ゲンナリとした表情を浮かべた。
　だが、逆に考えれば、その事を指摘する事によって、信者達が考えを改めるかも知れないため、まだ希望があった。
「だからと言って、人様の好みをどうこう言うつもりはございませんし、恋人を容姿で選ぶ事自体を悪いとは思いませんが、ビルシャナの信者を増やされては困りますので阻止させて頂きます」
　そう言ってエスター・スノーフレイク（オラトリオの執事・e46971）が、仲間達と共に廃墟と化したビルに足を踏み入れた。

●ビル内
「いいか、お前ら！　見た目で判断する奴等を許すな！　俺達みたいに見た目はアレでせも、心がピュアな人間達が住みやすい世の中をつくるため、頑張っていこうじゃないか！」
　ビルの中ではビルシャナが信者達を集め、自らの教義を語っている最中だった。
　一方、信者達は洗脳状態に陥っているため、みんな目をグルグルさせながら、ビルシャナの言葉に耳を傾けていた。
「そう言いつつ、心の中では綺麗な心でいれば美男美女の恋人をゲット出来ると思っていませんよね？」
　そんな中、つららがビルシャナ達に対して、疑いの眼差しを送った。
「ま、まあ……考えていないと言ったら嘘になるが……」
　ビルシャナが気まずい様子で、小さくコホンと咳込んだ。
　まわりにいた信者達も『まぁ、そのくらいは……』と言わんばかりに、不審者モード。
「つまり、カッコいい彼氏さんや、美しい彼女さんが欲しいから、キレイな心でいようとしてるんですかっ！？　何なんですか、何なんですかっ、そんなの本末転倒ですよっ！　……てゆーか、そんな魂胆のある人を心が美しいなんて言いませーんっ！　結局、アナタ達がいっちばん！　見た目重視なんじゃないですかーっ！」
　つららが嫌悪感をあらわにしながら、ビルシャナ達を非難した。
「そ、そんな訳ないだろ！　お、俺達はそう言う奴等を憎む……側だ。つまり、外見なんて気にしない！」
　ビルシャナが慌てた様子で、自分の考えを改めた。
　その言葉を聞いた信者達が、『えっ？　そうなの！？』と言わんばかりに、ビルシャナを二度見した。
「確かに……『外見なんて気にしない』と心の底から思ってる連中がいるのは真実だ。証拠は、このオレ自身！　仮に『人間は外見が一番大切』が本音なら、オレはとっくの昔に結婚して子沢山の筈だぞ？　女の子達は美形とかイケメンとか、オレの容姿は褒めちぎってくれるが、いざオレが告ると『ごめんなさい』だの『中身が残念』だの言われて、彼女いない歴＝年齢だ！　国元にいた頃は、好きになった娘は片っ端から兄貴や弟に取られて来たが、国を出ても尚モテないんだぜ。きっとオレにはフェロモン皆無で、負け犬オーラが漂ってんだろうな……。むしろ外見だけで選ぶ奴が増えればオレも非モテを卒業できるんだ、このヤロー！」
　その途端、フレデリが血の涙を流しながら、ビルシャナ達に対して訴えた。
「いや、お前はモテる！　絶対にモテる！　どうせ、アレだろ！　普段は『全然、モテないんですよー』とか言いつつ、裏でヤリまくっているタイプだろ！　俺には分かるぞ、絶対にそうだ！」
　ビルシャナがムッとした表情を浮かべ、一方的に決めつけた。
　まわりにいた信者達も洗脳状態に陥っているためか、ビルシャナの言葉を鵜呑みにして、『イケメン死すべし』と言わんばかりに殺気立っていた。
「そんな訳がないだろ！　それでモテたら、苦労はしない！　……と言うか、誰もオレの言葉を信じていないだろ！？　……畜生！　オレだって、オレだってなぁ……」
　フレデリが落ち込んだ様子で、どんよりとした空気を包まれた。
「いや、容姿が良ければ絶対にモテる！　見た目さえ良ければ、何をやっても許されるんだ！」
　ビルシャナが無駄に自信満々な様子で、逆ギレ気味に叫び声を響かせた。
「本当に容姿がよければ、何をやっても許されるの？」
　オリガが信じられない様子で、ビルシャナ達に問いかけた。
「ああ、間違いない！　お前だって、そうだろうが！」
　ビルシャナがムッとした様子で、オリガをジロリと睨みつけた。
「確かに見た目で相手を選んだわ。でも、こんなにも愛しているのに、彼は私だけを見てくれない！　何度も他の女と別れてほしいと言ったのに……！」
　オリガが溢れんばかりの涙を浮かべ、エスターにすがりつき、ベタな台詞を投げつけた。
「容姿に優れていると沢山の女の子達が放っておいてくれなくて、一人に決める事が出来ませんが仕方ないですよね。オリガも、わたしを容姿で選んだうちの一人ですしね？」
　エスターが腹黒ドＳチックな笑みを浮かべ、浮気性の男性を演じつつ、オリガの手を振り払った。
「容姿だけで恋人を選ぶんじゃなかったわ！」
　その途端、オリガが激しく後悔した様子で、大袈裟に泣き崩れた。
　そのため、ナノナノのいちこが心配した様子で、辺りをフワフワ。
　どうやって慰めていいのか分からず、不安げな様子でオロオロとしていた。
「……な！」
　それを目の当たりにしたビルシャナが『やっぱり、見た目で選んじゃ駄目だろ？』と言わんばかりに、ドヤ顔を浮かべた。
「……ところで『外見は気にしない』という事は、中身……つまり性格が大事という事ですよね？　皆さんは性格がいいと言い張れるんですか？」
　そんな中、めぐみがビルシャナ達に対して、疑いの眼差しを送った。
「ああ、もちろん！　その証拠が俺だ！」
　その問いにビルシャナが何の躊躇いもなく、自信満々に胸を張った。
　まわりにいた信者達も、その流れに乗る勢いで、『そうだ、そうだ』と連呼した。
「つまり、この鳥が理想だと……。こんなところで他人を妬んでいるような鳥が、皆さんの目標という訳ですね。まあ、以前にも似たような鳥がいましたけど……。その鳥は『私は自分がだけ大好き』という、エゴ丸出しの最悪な性格をしていましたが……よく見れば似ていますね」
　めぐみがエゴシャナの写真を取り出し、ビルシャナと見比べた。
「そいつが誰だか知らんが俺は違う。何故なら、俺はイイ奴だ！　そして、こいつらが大好きだ！」
　ビルシャナが綺麗ごとを大三元の如く並べつつ、まわりにいた信者達を抱き寄せた。
　それがビルシャナの手口だと知らず、信者達が感動のあまり涙を流した。
「つーか、外見なんて関係ねぇよ。モテるためにはな、悪い男になるこった！　もち、見かけだけでいいからラクだぜ」
　その言葉を否定するようにして、清春が隣人力を使いながら、傍にいた男性信者達をDQNファッションで固めた。
「こ、これでいいのか？」
　全身ジャラジャラのDQNファッションに身を包んだ男性信者が、気まずい様子で汗を流した。
　何やらウェーイな感じがするものの、どう対応していいのか分からず、かなり焦っているようだった。
「六本木のクラブなんてナンパ箱だからよ、暗い箱のなかでスモークありゃ顔なんてわかんねぇわけよ！ 流行りだけ押さえて雰囲気つくりゃ女も寄ってくんぜ。なんなら、オレがレクチャーしてやろうか？」
　そんな不安を蹴り飛ばすようにして、清春が自信満々な様子で男性信者の顔色を窺った。
　そのため、男性信者もノリノリ。
　まわりにいた男性信者達も、同じようにノリノリであった。
「あ、あの……私達はどうすれば……」
　それとは対照的に、女性信者達が不安げな様子で、ケルベロス達に駆け寄った。
「お、おい、お前ら！　正気か！」
　これにはビルシャナも動揺した様子で、女性信者達を引き留めようとした。
「まあ、振られて自信喪失になってるところに、そこの口だけ鶏に煽られた人も居そうですから、そんな人に救いの手を差し出します。そこの鶏を見捨てるのなら、あなたの魅力を探すお手伝いをしますよ？」
　そんな空気を察しためぐみが、ビルシャナの行く手を遮り、信者達に取引を持ち掛けた。
「ほ、本当ですか？　それなら……」
　その誘いに乗った女性信者達が、怯えた様子でめぐみの後ろに隠れるのであった。

●ビルシャナ
「お、お前ら、俺を裏切る気か、この俺を！」
　その途端、ビルシャナが殺気立った様子で、信者達を睨みつけた。
「まさか、この状況で自分は間違っていなとか思っていませんよね？　そんな悪いビルシャナは、清く正しく美しい心を持つつららちゃんが、愛のお仕置きをしちゃいますよ！」
　それに気づいたつららが信者達を守るようにして陣取り、氷鬼で1本の氷剣を出現させた。
「うわっ！　なんだ、これは！　お、追いかけてくるぞ！」
　その事に危機感を覚えたビルシャナが、ぎゃあぎゃあ騒ぎながら、全力で逃げ出した。
「……少し大人しくしてもらえるか」
　それに合わせて、フレデリが時空石化剣（ジクウセキカケン）を仕掛け、ビルシャナの身体を剣で切り刻んで動きを鈍らせた。
　その間に、氷剣がビルシャナの背中に突き刺さり、完全に動きを封じ込めた。
「まあ、ここでサヨナラです」
　次の瞬間、めぐみがサーヴァントコンビネーションを仕掛け、ナノナノのらぶりんと息を合わせて、ビルシャナにトドメをさした。
　ビルシャナはハトが豆鉄砲を喰らったような表情を浮かべたまま、クチバシをパクパクとさせつつ、血溜まりの中に沈んでいった。
「……なんだかな」
　その途端、フレデリが虚しい気持ちに包まれ、崩れ落ちるようにして座り込んだ。
　ビルシャナを倒せば、少しは気が晴れるかと思っていたのだが、気持ちはどんより、薄暗かった。
「一時はどうなるかと思いましたが、無事に終わったようですわね。酷い役回りを演じさせてしまいましたが、大丈夫でしたか？」
　オリガが心配した様子で、エスターに語り掛けた。
「いえ、目立たずに黙々と与えられた仕事を完遂するのが、わたしなりの執事としての流儀。……ですから、まったく気にしていませんよ」
　エスターが先程とは異なり、紳士的な笑みを浮かべた。
「イ、イケメン……」
　それを目の当たりにした信者達が、何やら尊いモノを見るような形で、一心不乱に祈り始めた。
「何か悩み事があったら、ファンの集いに参加してください。自信つけてあげますよ」
　そんな中、めぐみが信者達に対して、ファンクラブの入会用紙を配っていった。
「それじゃ、実地訓練でもすっか。外見なんかで悩んでんのがバカらしくなんぜ。オレについてこいや！」
　そう言って清春が思いっきり悪い顔をしながら、男性信者達を引き連れ、夜の街に繰り出すのであった。

作者：ゆうきつかさ	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2019年12月26日 難度：普通 参加：6人 結果：成功！
得票：格好よかった 0／感動した 0／素敵だった 1／キャラが大事にされていた 3
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