●城壁グランドロンに潜入せよ!
「先日宇宙で行われた作戦の結果、妖精8種族グランドロンのコギトエルゴスム入手に成功しました」
集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はそう告げた。
いまだコギトエルゴスムのままだが、グランドロンたちはケルベロスの説得を受け入れてくれたという。
「しかし、ジュモー・エレクトリシアンとレプリゼンタ・ロキから状況を知った大阪城の勢力は、グランドロンが裏切ることを警戒して彼らの形態を変化させてしまいました」
すでにヴァルキュリア、アイスエルフ、タイタニア、セントールによる裏切りが行われている以上、警戒するのは当然のことだろう。
「今まではある程度自律的に行動が可能だったグランドロンを変形させ、エインヘリアル王族の威光によって支配下に置いて、ただ強力な城塞として運用するつもりのようです」
敵陣営に残っている4隻のグランドロンは大阪城を囲む長城に変えられている。
そして第四王女レリが完全に支配下に置いて意志を封じ、説得も届かない状態にされているのだ。
「しかし、グランドロンを説得してケルベロス側に引き入れることが不可能になったわけではありません」
支配している第四王女を倒せばいいのだと芹架は言った。
グランドロンは第四王女レリ率いる白百合騎士団と三連斬のヘルヴォール率いるシャイターンの連斬部隊を中心に、その他ユグドラシル勢力も加わって守りを固めている。
「ただ、先日入手したグランドロンのコギトエルゴスムがこちらを手助けしてくれます」
コギトエルゴスムの助けがあれば、堅固な城塞に人が通れる程度の抜け穴を作ることも可能なのだという。
抜け穴を利用して潜入し、第四王女レリや予知によって居場所が判明している有力なデウスエクスを攻撃することが可能なのだ。
「第四王女レリを撃破することに成功すれば、グランドロンはケルベロスの説得を受け入れて大阪城勢力から離反してくれるものと期待されます」
芹架は一度言葉を切ってケルベロスたちを見回した。
次いで、作戦目標となる有力な敵が第四王女を含めて10体いると芹架は告げた。
「最重要目標である第四王女レリは長城の城主となっています。機能不全に陥っているとはいえ魔導神殿群ヴァルハラの城主となったことを騎士の誉れと感じているようです」
よほど心が折れるようなことが起きない限りレリは撤退しないだろう。
「レリの部下である白百合騎士団には、親衛隊を率いる絶影のラリグラスに加えてさらに2体のエインヘリアルが幹部となっているようです」
城内の警備部隊を率いる閃断のカメリアと、外敵への警戒を行う墜星のリンネアだ。
リンネアは大部隊での襲撃を警戒していたため今回の作戦を察知できていない。
ラリグラスを倒せなければレリに救援が送られてしまうし、残る2人も撃破できなければ内部の警戒が強くなって作戦行動が阻害されるだろう。
「他にレリの配下には紫の四片という螺旋忍軍が加わっています。第二王女ハールから送られた監視役でもあるようです」
撃破できなければハールへ連絡され、援軍が送られてしまう可能性が高い。
「それからレリに次ぐ重要な作戦目標として、副城主である三連斬のヘルヴォールがいます。実務上の城主としての仕事を行っているエインヘリアルです」
撃破できなければ城内の混乱はすぐ治められてしまい、作戦は継続不能になるだろう。
ヘルヴォールの配下であるシャイターンの連斬部隊にはヘルガ、フレード、オッドルという3体の有力な隊員がいる。
いずれも撃破できなければ配下を引き連れてヘルヴォールの救援を行うだろう。
「他に連斬部隊にはヒルドルというシャイターンがいます。有力な隊員ではありませんが、たまたま襲撃のタイミングで大阪城に移動しようとしているようです」
もしも放置しておけば、グランドロン襲撃が大阪城に伝わってしまう。いずれ大阪城からの援軍が来るが、それが早まってしまう可能性が高い。
「コギトエルゴスムのグランドロンの影響か、今回は長城内の敵についてかなり詳細な予知を行うことができています」
最適な抜け道を用意できるため、他の敵に遭遇せずに目標を急襲できる。
とはいえ、敵の戦力は膨大だ。もしも有力な敵の撃破に失敗して、態勢を整えられてしまえば即時撤退するしかなくなるだろう。
「この場にいる皆さんを含め15のチームがグランドロンの潜入作戦に加わる予定になっています。有力な敵は10体なので何体かには複数のチームを振り分けられるでしょう」
有力な敵の誰を狙うか決めるのはもちろん、長城まで見つからずに近づく方法や、抜け道を使って潜入した際の行動、戦闘方法や援軍への対処など考えることは多い。
もちろん、作戦失敗時に撤退する方法も考えておく必要があるだろう。
想定すべき内容が多く難しい作戦ではあるが、協力して欲しいと芹架は言った。
「防衛役として厄介なグランドロンですが、離反させてこちらの味方に引き入れることができれば必ずや心強い味方となってくれるでしょう」
味方になれば妖精8種族のうち6種族までがデウスエクスを裏切って地球側についてくれることになる。
厄介な大阪城勢力を弱めるためにも、協力して欲しいと芹架は言った。
参加者 | |
---|---|
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039) |
セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184) |
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664) |
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
パトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239) |
皇・絶華(影月・e04491) |
ティユ・キューブ(虹星・e21021) |
アリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846) |
●潜入作戦
気づかれないように離れた位置へと着陸したヘリオンから、ケルベロスたちは大阪城の周囲に壁のごとく立つグランドロン長城へと接近していく。
「『シー!』ダゾ、シー!」
裂けたような大きな口を、バンテージでグルグル巻きにしたアリャリァリャ・ロートクロム(悪食・e35846)の言葉はくぐもっていた。
8人のケルベロスのうち半数は、身を隠すための気流をまとっていた。そうでない者たちも、迷彩柄のマントなど、目立たない服を身に着けている。
「敵の殲滅は勿論、グランドロンのコギト魂をなるったけ回収しよう!」
まるで女性のような見た目のパトリック・グッドフェロー(胡蝶の夢・e01239)は力を込めて……しかし目立たない程度の大きさの声で、言った。
たくさん回収すれば、グランドロンを離反させてケルベロスたちの味方に引き入れることができるはずだ。
とはいえ、彼はできればその行為について『離反』という言葉は使いたくない様子だった。
「離反云々と言うよりも、新たな仲間が増えるといいんだが……」
地球人ではない仲間が増えていくことは、なんだかんだいって嬉しいことなのだから。
長城の外壁まで見つかることなくゲルベロスたちはたどりつくことができた。
「それじゃすまないが一つ頼むよ」
ティユ・キューブ(虹星・e21021)はグランドロンのコギトエルゴスムへ告げた。
長城の壁に、人間1人が通れる程度の穴が開いた。
ケルベロスたちが長城の中へと入っていく。
声を発することもなく、こちらに反応を返す様子もない。
けれどもコギトエルゴスムは確かにケルベロスを導いてくれている。
「グランドロン達の為に、ここは負けられないよねっ!」
笑みを浮かべて言ったのは、シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)だ。
迷彩柄のフード付きマントの下で、青い瞳を仲間たちへと向ける。
「新たな仲間を迎えるためにも負けられない。ですよね!」
足を止めないままではあったが、すぐ頷いたのは幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)だった。
頭の左右に一房ずつ、編んだ髪とリボンが揺れる。
城に入るまでは慎重に進んできていたケルベロスたちだが、今は速度を重視して一気に走っていた。
それでも、敵とは一度も遭遇せずにすんでいる。
グランドロンが力を貸してくれていることを、ケルベロスたちははっきり感じていた。
「負けられないし、負けないわ」
いつも通り真っ黒な喪服を着た女性が、その服装に反した力強い表情で言う。
「家族も友人もいる、何を恐れることがあるの? 新しい仲間がいることに、ワクワクの展開じゃないかしら」
セレスティン・ウィンディア(墓場のヘカテ・e00184)の声は、静かだが自信に満ちた音色で仲間たちの間へと響いていた。
走った距離は長かったようにも短かったようにも感じられる。
いずれにせよ、ケルベロスたちが駆け抜けた先、長城の一室で机に向かっているシャイターンを見つけた。
三連斬のヘルヴォールの配下、オッドルだ。
褐色の肌は広い面積にわたって露出している。肩と、それに胸と腰だけを紺色をした装甲で覆っている。
顔の右半分は白い仮面で覆われていた。
「部屋の中にいるのはオッドルだけのようだ。ただ、周りの部屋から話し声が聞こえる。駆けつけてくる配下がいるかもしれない」
油断なく周辺の様子も確認したのは皇・絶華(影月・e04491)だ。
普段の黒い服装ではなく、迷彩柄の服を身に着けて目立たないようにしている。
ケルベロスたちは一気にシャイターンがいる部屋へと踏み込んだ。
シャイターンが椅子を倒して飛び退いた。
彼女が向かっていた机と、座っていた椅子がケルベロスたちの攻撃で砕ける。
部屋に飛び込みながらしかけた攻撃にギリギリのところで気づいたようだ。さすがは有力な幹部の1人と言ったところか。
ただ、配下の者たちが動きだす音は聞こえてこない。
「……ケルベロスか。いつの間に入り込んだ」
オッドルの声には驚愕の響きが混ざっていた。
とっさに銃剣を装着したライフルのような武器を構えている。
「済まないが我々の相手をしてもらおうか」
暗色のコートを身に着けた新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)が、オーブを手に鋭い視線をオッドルへと向けていた。
他のケルベロスたちも、油断なくそれぞれの得物を構えている。
舌打ちを1つして、オッドルが動き出す。
そして、戦いが始まった。
●強敵と増援
褐色の腰に巻いたベルトに下げていた鞘から、オッドルは素早く剣を抜く。
その剣を振り上げる前にケルベロスたちは攻撃をしようとした。
だが、一瞬のうちに銃剣と剣を構えたオッドルは前衛の間へと踏み込んでくる。
まるで踊るように2つの刃が長城内の一室に閃く。
とっさにティユが絶華をかばったが、他の者たちは皆、切り裂かれる。
「察したとは思うけど生憎ここから先はなし。倒させて貰うよ」
2人分の傷を受けながらも、ティユが告げた。
守りを固めた鳳琴が紅蓮のごときオーラを集めた手で刃を受け止めて威力を和らげる。
シルは思い切り切り裂かれたが、迷彩柄のフードをはね飛ばされながらも跳躍した。
「流星の煌めき、受けてみてっ!」
翼の意匠が施された白銀の靴で宙を駆けると、その軌跡が空中に血で描かれる。
「いざ勝負です、シャイターン!」
鳳琴も、宙を行く恋人を追って床を走る。
シルの飛び蹴りの直後に、鋭い鳳琴の回し蹴りがオッドルを狙った。
「ティユのおかげで助かった。強力な相手だが、負けるわけにはいかないんだ!」
さらに絶華が横飛びに跳んで、壁を蹴ってオッドルへ向かう。
重力を乗せて、ナイフを仕込んだ靴による3回目の蹴りがオッドルを襲った。
だが、相次いで放った攻撃のうち、当たったのは1発だけだ。シャイターンといえども幹部クラスとなれば簡単に攻撃は当たらないということか。
強敵であることはケルベロスにもわかっていたことだ。攻撃をするかたわら、支援の技で防御や攻撃を固める役目の者もいる。
恭平は次の攻撃に備えて素早く呪文を詠唱した。
「黒き氷壁よ、我らが前の不破の盾となれ!」
前衛の仲間たちの前に石壁が現れる。
極低温に保たれたれには呪句が刻まれており、仲間たちを守っていた。
そうしながらも、彼や同じく後衛のアリャリャリャはオッドルの脱出路をふさぐことも忘れない。
前衛や中衛の皆も、包囲しながら戦おうとしているのが恭平からよく見えた。
パトリックも水瓶座の銘を持つゾディアックソードで、星座の結界を描き出して守りを重ねている。
「強敵が相手でも負けるわけにはいかない。ここまで導いてくれた者に応えるために、ここからは星の光が……導こう」
ティユの言葉と共に星が輝く。
戦場としては狭い事務室に、彼女は星図を映しだす。その輝きがまず後衛にいるものたちを導いた。
光を目の当たりにしたアリャリャリャはなにかを叫ぼうとしたが、まだバンテージにふさがれた口からはモゴモゴと声が出ただけだった。
バンテージを剥ぎ取りながら、彼女はオッドルへとバスターライフルでビームを撃ち込んでプレッシャーを与える。
「ケルベロスめ……まさか私を討つためにここに来たはずはないだろう。狙いはヘルヴォール様とレリ王女か!」
オッドルの問いに答える者はもちろんいなかった。
シルを狙ってライフルが放たれるが、ティユのボクスドラゴン・ペルルが攻撃を防ぐ。
攻撃の間にもオッドルは部屋を抜け出す隙をうかがっていたが、無論そんな隙を与えるケルベロスたちではない。
「新しい仲間を迎え入れるため、ここは通さないわ」
セレスティンが告げた。
「そして、これが私の戦い方よっ!」
蓮の葉の攻性植物から黄金の果実が生まれ出る。その輝きが、守りをさらに固める。
強敵に対して、ケルベロスたちは協力し合って対抗していった。
「感覚を研ぎ澄ませ」
恭平がオウガメタル粒子を散布して仲間たちの感覚を高めている。その力を得てケルベロスたちは攻撃を加えていく。
戦況に大きな変化が訪れたのは、戦いが始まって数分が経過してからだ。
「オッドル様、ご無事ですか!」
「助太刀いたします!」
連斬部隊のシャイターンが数体、姿を見せたのだ。
新手の放つ炎が傷ついている鳳琴を狙ってくる。
一撃は拳で弾き返したものの、他は彼女の細身の体を焼く。
だが、配下がいる可能性も考えてきていたケルベロスたちは慌てない。
「どんな攻撃が来ようと何度でも立ち上がってみせますからっ」
鳳琴が叫ぶ。
気合いを溜めて自らを回復しようとしている彼女へ、シルは一瞬だけ視線を向けた。
けれども声はかけず、彼女は小柄な体で仲間たちの間をすり抜けて、素早く配下の1体へと向かう。
「心強い人達が隣に、後ろにいる。だからわたしは信じて、前のめりに行くだけっ!」
そして、鋭い蹴りが連斬部隊の1体を切り裂いた。
「配下はオッドルほど強くない。早急に片付けよう」
絶華が摩擦熱を利用して放つ炎で、その1体が倒れる。
ただ、さして強くなくとも敵の数が増えるのは厄介に違いない。
「久しぶりなだけに、ちょっとカンが鈍っているか?」
実戦からしばし離れていたパトリックが呟く。
けれど、新たな仲間を増やすためにも、諦めるわけにはいかない。
「そんな事は言ってられない! 救出のため、頑張ろう! ティターニア!」
ボクスドラゴンのティターニアにも呼びかけながら、パトリックは全力で仲間たちへの支援を続ける。
翼から放つ光が、シャイターンたちの罪を焼いていた。
●オッドルを討て!
新手のシャイターンたちは、戦闘要員というよりは文官だったようだ。
彼らはオッドルを守ろうとしたが、数分のうちに全員が倒れていた。
その間に――主にオッドルの攻撃で、仲間をかばったペルルが倒されて、ディフェンダーの鳳琴やティユをはじめケルベロス側も相応の消耗を強いられてはいたが。
ただ、配下を倒すまでの間にも、ケルベロスたちは自分たちを強化する技やオッドルを弱体化させる技を使っている。
人が増えたおかげで壁が壊れ、隣の部屋とつながって戦場も広がっていた。
オッドルが離脱できないようケルベロスたちは布陣し直している。
「強制ナンてしなくテモこうしテついテクる連中もいるのにナ。レリは自分の力に自信がなかっタカ?」
倒れたシャイターンたちをながめてアリャリャリャが呟く。
「レリ王女を馬鹿にしているのか?」
「キサマラもキサマラのご主人も馬鹿にすルつもりはネー! 正しいかどうかはキサマラが証明すルがイイ!」
そう叫んで、アリャリャリャはオッドルへと向けて突っ込んでいく。
彼女も生まれは道具のようなものだった。だから、グランドロンが道具のように扱われても、どうこう言うつもりはない。
ただ……道具も主を見ているのだと、レリには言いたかった。
「ダイ、コン――おろーし!!!!」
縛霊手を摩り下ろすかの如く猛烈な連撃を加える。巻き上がった破塵に火がつき、魂すら焼く地獄の窯の蓋が開く。
焼き上げられたオッドルがライフルをアリャリャリャに向けてきたが、ティユが素早く射線をさえぎる。タールの翼がまとわりついた弾丸が炎を帯びてかばった彼女を焼いた。
(「シャイターンも忠義高き種族だな。道が違えば、或いは……我らと共にケルベロスへ至る道もあったかもしれないな」)
絶華は考えた。
もっとも、デウスエクスにとって定命化は不治の病のようなものらしいので、喜びはしないだろう。
(「だが……それは私の考えるべきところではない。今ある脅威を粉砕するのみだ」)
すでに敵を縛る技は十分にしかけてある。彼がなすべきことは、奥義を持って全力で粉砕することだ。
「我が身……唯一つの凶獣なり……四凶門……「窮奇」……開門……! ……ぐ……ガァアアアアアア!!!!」
古の魔獣の力を身に宿し、3つの臨界を超えるというカタールを振るう。
「私は貴様らに紡ぐ言葉は無い。唯撃破するのみだ」
激しい連撃を加え、絶華は告げた。
オッドルの体が揺らぐ。敵もまた、すでに傷だらけになっているのだ。
もっともそれは一瞬のこと。敵はすぐに立ち直る。
足止めの技やティユのもたらした星の導きで、ケルベロスの攻撃は大方命中するようになっていた。
だが、オッドルも諦めてはいない。
ティユへと接近したオッドルが銃剣で彼女を薙いだ。流れるような動きで銃口を突き付けて至近距離からの弾丸で追撃を加えてくる。
強烈な連撃を受けて、今度はティユの体が大きく揺れた。
鳳琴が彼女へと駆け寄る。
「私達は決して諦めないし折れません……そうでしょうッ」
龍の姿をしたグラビティを解き放つ幸家の技が、ティユの体と心を癒してくれる。
「ああ……大丈夫だよ。ペルルの分まで僕はがんばらなきゃいけないみたいだからね」
ティユ自身も、溜めたオーラを星のごとく輝かせて自らを治していた。
「刻め!」
恭平のネクロオーブから熱を持たない水晶の炎が現れて敵を刻む。
「私の愛するものたちをこれ以上傷つけなイデ……」
祈りと共に、セレスティンの体が闇に溶ける。
それは数多の骨と化して、恭平の炎で防具に刻んだ傷からオッドルの体を貫いていく。
「あと一息だぜ、ティターニア!」
パトリックがサーヴァントに呼びかけながら、マインドリングから展開した光剣に空の魔力を宿して敵を切り裂く。
ティターニアも主と連携してタックルを叩き込んだ。
炎の弾丸が鳳琴に襲いかかるが、もはや抵抗は無意味だった。
「琴ちゃん、合わせてっ! 魅せるよ、わたし達の絆の力っ!」
「任せて、シル!」
シルの呼びかけに鳳琴が応じる。
魔力を光の剣に変えたシルと、龍のオーラをまとった鳳琴が、左右からオッドルに攻撃をしかける。
息の合った体術と剣技の連携が、オッドルを打ち据え、切り裂く。
そして、完全に同時に放たれた蹴りと斬撃を受けて、オッドルが断末魔の悲鳴をあげた。
高らかに打ち鳴らされたハイタッチの音と共に、シャイターンは倒れた。
「これで、新たな仲間を迎えられれば、ですね!」
鳳琴の笑顔に、シルも笑顔で頷く。
とはいえ、レリとの戦いが終わっていないのか、まだグランドロンはコギトエルゴスムに戻ってはいない。
「慌てて持って来てしまったが、学生鞄が無駄にならないといいんだが」
心待ちにしている様子でパトリックが言う。
他の者たちもおそらくは同じだっただろう。
「まずはここから離れようか。他の配下が来るかもしれない」
ティユの言葉に頷いて、ケルベロスたちは戦場から離脱する。
「待っていろ。近いうちに仲間に会わせてやるぞ」
恭平がまだ壁の形をたもったままのグランドロンへと告げた。
グランドロンが宝石へと姿を変えたのは、それからすぐのことだった。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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