聖夜のグランドロン救出戦~妖精を救い出せ!

作者:洗井落雲


「集まってもらって感謝する。では、今回の作戦について、説明しよう」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、集まったケルベロス達へと、そう告げた。
 先の作戦にて、ケルベロス達はグランドロンの一部を説得することに成功し、そのコギトエルゴスムを回収するに至った。
 これに慌てたのは、大阪城のユグドラシル勢力達だ。グランドロンに裏切りの懸念あり――そう判断したデウスエクスたちは、グランドロンの形態を変化させることとなった。
「現在、グランドロンは大阪城を囲う城壁のような形状を取らされている。これには『エインヘリアル王族の威光』による支配の結果行われた形態で、この状態ではグランドロンの自由意思は完全に封じられてしまっているようなのだ」
 つまり、この状態では、ケルベロス達の呼びかけに応じることは無い――という事の様だ。デウスエクスたちにしてみれば、敵からの説得を受けて裏切りかねない存在である。このように行動を強制させることは、当然の戦略であったかもしれない。
 こうなってしまえば、グランドロンの奪取は難しいものとなるだろう――いや、実はこの作戦には、一つ穴がある。
「グランドロンはエインヘリアル王族……第四王女レリによって支配されている。ならば、レリさえ排除することができれば、グランドロンをすべて解放することができるという事でもあるんだ」
 とはいえ、言うは易く行うは難し、ではある。
 大阪城を取り囲む形状となったグランドロンには、第四王女レリの白百合騎士団と三連斬のヘルヴォール率いる『連斬部隊』、更にはユグドラシル戦力が防衛にあたっている。突破は難しいだろう。
 だが、此処にも一つの光明があった。
「以前の戦いで説得に応じてくれた、グランドロンのコギトエルゴスム……この力を、借りることができるんだ」
 グランドロンのコギトエルゴスムの力を借りれば、城塞化したグランドロンに、人が通れる程度の抜け穴を作ることができる、と予知されたのだ。
 と、なれば、この抜け穴を利用し、予知によって居場所が判明している敵指揮官を、直接狙っての攻撃が可能となる。
 そして、現在グランドロンを無理矢理従わせている第四王女レリを撃破することができれば、グランドロンたちはケルベロスの説得を、受け入れてくれることだろう。
「つまり、今回の作戦は、『グランドロンのコギトエルゴスムを持って隠密行動で大阪城に近づき、グランドロンの城塞に抜け道を作って内部に潜入。有力敵を奇襲で攻撃・撃破すると共にグランドロンを制御している第四王女レリを撃破して、グランドロンのコギトエルゴスムを救出する』……といった工程をとる形になる」
 そして、今回標的となる有力敵は、以下の10名だ。
 まず、『第四王女レリ』。
 そしてレリの親衛隊隊長である『絶影のラリグラス』。
 配下の白百合騎士団員である、『閃断のカメリア』と『墜星のリンネア』。
 レリ配下の螺旋忍軍『紫の四片』。
 連斬部隊を率いるエインヘリアルにして、実質的なグランドロン城壁の城主である『三連斬のヘルヴォール』と、その連斬部隊隊員である『連斬部隊員ヘルガ』『連斬部隊員フレード』『連斬部隊員オッドル』『連斬部隊員ヒルドル』だ。
 今回、作戦に参加するケルベロス達は、総勢15チームになる。この15チームで、10名の有力敵に対応することとなる。
「救出したグランドロンのコギトエルゴスムの影響なのだろうかな、グランドロンの城塞内部の敵の様子を、詳細に予知することができたんだ。加えて、最適な抜け道を用意できるから、道中的に遭遇することなく、目標となる敵を攻撃することが可能となっている」
 とはいえ、敵の戦力は膨大である。有力敵の撃破に失敗し、敵が態勢を整えてしまえば、作戦の遂行は困難となるだろうし、そうなってしまえば、撤退を行う必要が出てくる。
 決めることは多い。隠密で大阪城に近づく方法と、潜入時の行動。自分たちはどの敵を狙うべきか、そしてどう戦うべきか。援軍が発生した場合はどう対処すべきか、作戦に失敗した場合の撤退はどうするか――どのように行動するかは、すべてケルベロスたちに委ねられている。
「今回の作戦に成功すれば、グランドロンを仲間に向えることができるはずだ。時期的に、大きなクリスマスプレゼントになるだろうな。さて、大変な任務だが、頑張ってほしい。作戦の成功と、君たちの無事を、祈っているよ」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。


参加者
アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)
源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)
リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)

■リプレイ

●潜入・グランドロン
 ヘリオンより降下したケルベロス達は、そびえたつ城塞と化したグランドロンへと臨む。
「あれが……グランドロンか……」
 アジサイ・フォルドレイズ(絶望請負人・e02470)が唸った。もしも、かつてグランドロンを見たことがあるものでも、今のその姿は、これまでとは異なった姿に映っているはずだ。
「あそこに……いや、あれが、自由を奪われたグランドロンたちなんだな……!」
 ラルバ・ライフェン(太陽のカケラ・e36610)が言う。あれは、レリによって自由意思を奪われたグランドロンたちの姿だ。それは、痛々しい姿に映ったかもしれない。
「……行こうかの?」
 端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)が、静かにそう言うのへ、仲間達は頷いた。
 身に纏う隠密気流。静かに、気配を殺し。
「グランドロンを、助けよう」
 源・瑠璃(月光の貴公子・e05524)の言葉と共に、一行は救出への道を歩み始めた。

 一行は、道中、敵と遭遇することもなく、やがてグランドロンの外壁へと到着する。外壁へと近づけば、突如として、内部へといざなうように、大きな穴が開いたのである。
「予知通りね……!」
 ローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)が声をあげるのへ、足元のテレビウム、『シュテルネ』も、返事をするようにぴょんぴょんと飛び跳ねた。
「グランドロンが、私たちを手伝ってくれているのですね……」
 イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)が呟く。自由意思を奪われたグランドロンたちの、これが精いっぱいの協力なのだ。
「グランドロン……約束通り、必ず助けるから」
 外壁に手をやり、想いを伝えるように、リリエッタ・スノウ(小さな復讐鬼・e63102)が言った。宇宙での約束を、今ここで果たすのだ。
「行きましょう、リリちゃん」
 ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)が、リリエッタの肩へと手をやりながら、そう言った。その言葉に、リリエッタは頷く。
 グランドロンに導かれるように、一行は内部へと侵入した。
 そこでは、ケルベロス達側の対策ももちろんあったが、まるで何かに導かれるように、敵と遭遇することなく、進むことができた。これもまた、グランドロンの手助けによるものなのかもしれない。
 一行は、別々のルートをたどっていたチームと、グランドロン中枢への入り口にて合流した。それもやはり、導かれるように。
 ケルベロス達は意を決し、中枢部へと突入する。そこには、玉座に坐したレリの姿がった。当然と言えば当然だが、レリは単独ではなく、数名の部下を伴っているようである。
「敵襲だと!?」
 此方の存在に気づいた部下の白百合騎士団員たちが、わらわらとレリを守る様に、ケルベロスたちの前に立ちはだかった。
「殿下、お退がりください」
「連斬部隊を呼ぶまでもない。我々で始末してご覧に入れましょう」
 勇猛に叫ぶ騎士団員たちを制するように、レリはゆっくりと立ち上がる。
「見くびってもらっては困るな。グランドロンの城主が椅子を温めるだけのお飾りではない事を、お前たちにも教えてやろう」
 ゆっくりと、手にした剣を構え、レリは戦意をむき出しにした!
 重苦しいほどの殺気が、ケルベロス達に叩きつけられた。
 これが、第四王女! 幾度となくケルベロス達と激突し、なおも生き残ってきたのは決して伊達ではないという事だ。
 叩きつけられた殺気に応じるように、ケルベロス達もまた、戦闘態勢を取った。
 そしてどちらともなく一斉に動き出し――戦いは始まった。

●決戦・第四王女
 レリの振るう刃から、星座のオーラが迸り、ケルベロスたちを襲う。その圧を受け止めながら、ケルベロス達はしかし戦場を駆ける足を止めない。
「護衛から切り崩します!」
 『にゃいぼう』を構え、ミリムは叫んだ。その武器に氷の力を込め、一気に振り払う。
 放たれた氷の斬撃が、白百合騎士団員達を切り裂いた! その身を氷に閉ざし、倒れていく騎士団員達。
「銀天剣、イリス・フルーリア――参ります!」
 飛翔する、イリス。『冽刀「風冴一閃」』の刃が緩やかな弧を描くように振るわれ、白百合騎士団員を斬り捨てる。
「お前たちがレリを守りたいように、俺にも守りたいものがある……だからっ!」
 瑠璃は『天鳳「藍」』のかかとを鳴らし、星形のオーラを生み出した。強く蹴りつければ、白百合騎士団員へと直撃し、その身体を吹き飛ばす。
「これで足を止めるよ! フリージング・バレット!」
 リリエッタの放つ、絶対零度の冷気を込められた弾丸が、白百合騎士団員の足元へと突き刺さった。凍り付く冷気に足をからめとられ、白百合騎士団員の動きが鈍る。
「さて、始めるか……誰一人、倒れさせはしない……!」
 言葉と共に、アジサイはヒールドローンを展開した。無数のドローンが仲間たちを守るべく、飛翔する。
「戯けどもが! 少しは己の頭で考えることをせよ!」
 括が掲げる『機運転輪の輪胴銃』より現れたカーリーの幻影が、白百合騎士団員へと纏わりついた。狂乱の斬撃に見舞われた白百合騎士団員が、たまらず頭を振る。
「くっ……! 怯むな! レリ様を守れ!」
 雄たけびを上げ、突撃してくる白百合騎士団員たち。その攻撃を受け止めたのは、ラルバ、そしてローレライだ。
「仲間を思いやれるなら、どうしてその気持ちを他の奴にも向けてやれないんだっ!」
 ラルバは敵の斬撃をいなすと、高く飛び上がり、急降下の跳び蹴りをお見舞いする。吹き飛ばされた白百合騎士団員が、意識を手放した。
「グランドロンを無理矢理従わせて……っ!」
 ローレライは影の如き斬撃を繰り出し、白百合騎士団員へと斬りつける。続くシュテルネのの凶器攻撃の一撃。二人の連続攻撃にその身体を切り裂かれた白百合騎士団員は、うめき声をあげて倒れ伏した。
 ケルベロス達の猛攻により、白百合騎士団員たちは次々と倒れていく。レリも援護を試みるも、その手は一歩、遅い。
 やがてすべての騎士団員たちが倒れ、残すはレリ一人のみとなった。
「何故いつも、皆、私より先に逝ってしまうのだ……また、私は部下を守りきれなかった……」
「追い詰めましたよ、レリ!」
 ミリムが虚無球体を放つ。レリは斬撃でそれをかき消すと、吠えた。
「いいや……戦いはこれからだ、ケルベロス!」
 鋭い斬撃が、ケルベロス達へと襲い掛かる。その刃は、追い詰められてなお剣閃鮮やかに。重い一撃が、ケルベロス達の身体を深く傷つけていく。
「貴女の弱者を救済しようとするその精神、敵ながら気高いと思っていました」
 イリスが肉薄する。その刃を携えて。振るわれる刃と刃。交錯する剣閃。
「でも、今の貴女はグランドロンを……本来守るべき彼らを無理やり支配している! これが貴女の本望だというのなら――此処で断ち斬るまでです!」
「知ったふうな事を言うか!」
 レリが刃を振るい、イリスを振りほどく。続いて攻撃してきたのは、瑠璃だ。
「霊獣グリフォン、力を貸して! あいつを、討つ!」
 放たれるプレッシャーが、レリをじりじりと圧していく。
「む……うっ!?」
 その手に、常人であれば武器を手放さんばかりの圧を受けてなお、レリはその刃を放さなかった。
「レリ……僕には族長として上に立つ那岐姉さんがいる。貴女のように一途な人だから……貴女も上に立つものとして真剣に考え、行動してきたんだと思う。ただ、貴女は真っ直ぐ過ぎたのかな。使命に」
「それの何が……いけないというか!?」
 プレッシャーを気合で振りほどき、レリは跳躍した。だが、そこに合わせるように、リリエッタがその姿を現した。
「以前、会談の場で……自分が手を汚してもいいと、レリは言ったと聞いている」
 リリエッタは、表情を変えず……しかし、その言葉にどこか悔し気な思いを乗せて、レリへと言葉ををぶつけた。
「これが……グランドロンを無理矢理押さえつけることが、そう言う事なの? だとしたら……間違ってる。こんなことを命令するハールに、レリの求める世界が作れるとは、思えない」
 振るわれる、視認困難な斬撃が、レリへと迫る。レリはギリギリで、それを受け止め、うめいた。
「お前に……我らの何がわかる!」
 一方、アジサイは、別チームのメンバーからのアイコンタクトを受け取っていた。
(「救援要請か……やはり、一筋縄ではいかん相手のようだな」)
 アジサイは頷くと、別チームの負傷者へと、魔術手術による回復を行う。仲間は、同じチームの8人のみではない。3チーム、すべてのメンバーを守り切る……それが、アジサイの矜持と言う物だ。
(「レリ、か……いや、私はお前に何か言ってやるほど、お人よしじゃぁないさ」)
 未だ激しく戦う仲間達。アジサイは少しでも負担を和らげようと、懸命に援護を重ねる。
「レリ、おぬしの騎士は死ぬ。我らが、殺す」
 括は『【氷結の槍騎兵】』を召喚し、レリへとけしかける。氷結のエネルギー体が、レリへと襲い掛かる、その手にした槍と、レリの刃が激しく切り結ぶ。
「蘆原の民を脅かす限りグランドロンの意思を蔑ろにする限り。戦う力持たぬ者に其の命捧げよと強いる限り――必ず殺す」
 括は、その目に強い決意の色を乗せて、続ける。
「弱者救済を旗印に掲げながら、グランドロンを力ずくで抑え込み矢面に晒す城主に収まることを誉だなぞと……その有様で、ぬしの理想に殉じた者らに報いることができるつもりか!」
「黙れ! 貴様らが、我が騎士たちを語るな!」
 レリは激高した。
「それに私は……私の理想は、変わることは無い! 虐げられし女性たちのために、私はここに立っているのだ!」
「弱者を護るのもレリ自身の護るべき尊厳なら、本当はグランドロンも護るべき存在なんじゃねえのか!?」
 ラルバが吠えた。その言葉に、どこか悲痛な色を乗せて。
「オレ達はグランドロンを助けたい! 今みたいにグランドロンを虐げるなら、戦うまでだ!」
 風をつかさどる御業、そして降魔の力。さらに己のグラビティチェインを練り合わせ、両の掌より突風として解き放つ。ラルバの放つ『降駆・風神掌』の一撃が、レリの身体に無数の傷を付けて行く。
「私も、弱者のために戦う貴女を尊敬もしていた……!」
 ローレライが叫んだ。
「でも、今の貴女は……理想に殉じていた貴女は、どこへ行ってしまった!?」
 打ち放つアームドフォートの砲弾が、レリへと突き刺さる。痺れるほどの衝撃を受けたレリがたまらず息を吐く。
「私の理想は、想いは、変わらない!」
 ケルベロス達の猛攻を受けて、なおレリは健在だった。

●戦いの終幕
 ケルベロス達の猛攻。レリの刃。二つの衝動はぶつかり合い、いつ果てるともわからぬ戦いは継続していた。
 だが、少しずつ――確かに。
 戦いの天秤は、ケルベロス達へと傾いていった――。
「レリ、あんたは強い。でも……私たちの絆はもっと強い!」
 それは、別チームに所属するケルベロスの言葉だった。
 そうだ。そうだとも。
 今ここに居る者たちの思いは一つ。
 なれば――強大な敵にとて、立ち向かえるだろう。
「長い事続いた大阪城の攻防も、ここで終わり――返してもらうわ」
 同様に、別チームに所属するケルベロスが、言った。
 大阪に潜む勢力。その攻略の足掛かりとするためにも。
 ここで、負けるわけにはいかない!
「私は、あなたとは直接的な面識があるわけではありません」
 ミリムは『混沌の『絶望』スライム』をその手にまとわりつかせた。主の戦意に応じるように、スライムはその姿を槍のように変化させる。
「ですが――人々に仇なす者であるなら、私は容赦しません!」
 突き出されたスライムの槍が、レリの腕を貫いた。
「ぐ……ぅ!」
 レリが、うめいた。
「今です! 集中攻撃を仕掛けます!」
 イリスの言葉に、仲間達は頷いた。
「銀天剣・弐の斬!」
 生み出されたのは、巨大な針だ。放たれた巨大な針は、レリに直撃すると鎖となって、その動きを阻害する。
「決着は、此処でつける!」
 瑠璃の、竜を模った稲妻が、動きを阻害されたレリへと突き刺さり――。
「グランドロンは、助け出す」
 リリエッタの放つ氷結の光線が、レリを貫く。
「行け! 後ろは俺が支える!」
 アジサイが吠えた。力を振り絞り、援護のグラビティを飛ばす。
「さらばじゃ、大馬鹿者」
 括の放った銃弾が、レリの腕へと突き刺さった。括の手の中には、白銀の髪飾りが輝いていた。
「これでッ!」
 ラルバの放つ急降下の跳び蹴りが、レリの身体を穿ち、
「お終いッ!」
 ローレライの斬撃が、レリの身体を切り裂いた。
 ローレライが退くと同時に、別チームのケルベロスが放った、無数のミサイルが解き放たれた。それは一直線にレリへと向かい、爆風がレリを飲み込んだ。
 やがて、爆風が晴れたのち、膝をつき――しかし、よろよろと立ち上がるレリの姿があった。
「なめるなよ、ケルベロス。絆の強さなら、私たちとて、負けてはいない。もっとも、多くの者が逝ってしまったが……ミュゲット、ヴィンデ、ギアツィンス、ラーレ……」
 まだ、立つのか。
 ケルベロス達は、身構える――だが、すぐに、緊張を解くことになった。
 もはやレリに、戦うだけの力は残されていないと、分かったからだ。
 レリが何かを言った。もはやそれを、聞き取ることは難しい。
 されど、それを聞き取った誰かが、叫んだ。
 同時に――。
 レリの身体は光に包まれ、跡形もなく消滅していた。
 ケルベロス達は――勝ったのだった。

 レリが倒れると同時に、周囲に異変が起こった。
 城主を失ったグランドロンは、再び自由を取り戻した。
「グランドロンが……!」
 アジサイが、叫んだ。
「崩壊していく……いや、これは……!」
 瑠璃が続く。
 自由を取り戻したグランドロンたちは、その姿ををコギトエルゴスムへと変化させ、ぱらぱらと、星が降る様に、その身を宙へと躍らせたのだ。
「よかった……」
 その手にコギトエルゴスムを抱きながら、リリエッタがほんの少しだけ、顔をほころばせた。
「長居は無用ですよ! コギトエルゴスムを回収しつつ、離脱しましょう!」
 ミリムが叫ぶ。こうしている間にも、グランドロンは次々と、その姿をコギトエルゴスムへと変化させていく。
「ですが……これでは、どのように脱出すれば……」
 イリスが声をあげるのへ、答えたのは括だ。
「いや……グランドロンたちは、道を残してくれているようじゃぞ」
 その言葉の通り……城塞が崩壊する中にあって、まるで導くように、一筋の道は残されていたのである。
「ありがとう、グランドロン……!」
 ラルバが叫ぶと、まるで応じるかのように、城塞が震えた。
「行きましょう! コギトエルゴスムを回収しながら、離脱です!」
 ローレライの言葉に、仲間達は頷いた。
 かくして一行は、離脱の途へと就いたのであった。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。