覗き行為こそ至高である!

作者:ゆうきつかさ

●静岡県熱海市
「俺は常々思うんだ。覗き行為こそ至高である、と! だって昔から言うだろ。見るだけならタダだって! 今まで捕まっていた奴等は、それ以上の事をしようとしたから、お縄になっただけだ。だが、俺は違う! 絶対に手を出さない! 見るだけで満足だ!」
 ビルシャナが露天風呂の岩陰に信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 この場所は絶好の覗きポイント。
 馬鹿な真似さえしなければ、絶対に見つかる事がない死角的な場所。
 それ故に、代々選ばれた覗き魔だけが、覗く事を許された場所でもあった。

●セリカからの依頼
「瀬戸・初春(目指せあっぱら・e14429)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが隠れているのは、露天風呂の岩陰。
 そこに隠れつつ自らの欲望を満たしているらしく、今のところ誰にもバレていないようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 どうやら、信者達は覗くだけでは満足する事が出来ず、隙あらば手を出したいと思っているようだ。
 そういった意味で、忠誠心がないため、説得するのはそれほど難しくないだろう。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
シャルール・エトワール(星を受け継ぐ治癒師・e02156)
ユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)
アリシア・アディントン(語り部・e61944)
柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)
アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)
 

■リプレイ

●静岡県熱海市某所
「また定命化を後悔させてくれる変態共ですか。……信者は命さえ残ってればいいんですよね、命さえ……」
 アルケイア・ナトラ(セントールのワイルドブリンガー・e85437)は仲間達と共に、静岡県熱海市にある温泉宿にやってきた。
 ビルシャナ達は覗きこそ至高であると訴え、信者達と一緒に覗きをしまくっているようである。
 いまのところ、相手に気づかれていないようだが、だからと言って許される行為ではない。
「……と言うか、覗きはゴールじゃなくてスタートだろ。一体、何を……って、別に俺は一般的な事を言っているだけで、スケベ心があって、こんな事を言っている訳じゃねぇからな! それなのに、なんだよ! ゴミを見るような目で、俺を見やがって!」
 柄倉・清春(大菩薩峠・e85251)が涙目になって、仲間達を睨みつけた。
 何やら、まわりの視線が凍るように冷たいものの、おそらくそれは清春が嫉妬深いエロスの女神に愛されているせいだろう。
 そう思わなければ、心がポッキリ折れてしまうほど、仲間達の視線が冷たかった。
「そもそも、覗き行為は犯罪です! 犯罪ってことは経歴に汚点が残る訳ですから、それは社会的な死とも言えますね……。ここはちゃんと改心してもらわないといけません」
 シャルール・エトワール(星を受け継ぐ治癒師・e02156)が清春から視線を逸らし、深い溜息を漏らした。
 おそらく、信者達はビルシャナによって、洗脳されている影響で、覗き行為をしている……はず。
 そうでなかったとしても、このまま放っておくと、取り返しのつかない事態になってしまうため、早めに手を打っておく必要があった。
「……ええ、シャルールさんに悪い虫がつかないようにするため、ビルシャナには逝ってもらいましょうか」
 アリシア・アディントン(語り部・e61944)がガチガチに緊張した気持ちを落ち着かせるようにして、自分自身に気合を入れた。
 最悪、信者達も痛い目に遭うかも知れないが、それまでイイ思いをしてきたのだから、多少の事は仕方がないだろう。
「忌々しい鳥人間には仕置きを成し、愛すべき仔の迷いを導かねば……。捌きと裁きの言葉に耳を傾けさせるためにも……」
 そう言ってユグゴト・ツァン(パンの大神・e23397)が、ビルシャナ達が潜む温泉宿に足を踏み入れた。

●露天風呂
「おい、お前ら! 誰か来るぞ! みんな息を殺せ! 気配を消せ! 岩と一体化するんだ!」
 露天風呂の岩陰ではビルシャナ達が身を隠し、覗きをするため精神を集中させていた。
 まわりにいた信者達も、股間に手を伸ばしつつ、興奮した様子で目をギンギンにさせていた。
「おい、お前ら! まさか覗くだけで満足してんじゃねぇだろうな! 覗きってのは美女に対する男の義務なんだよ。返り討ち覚悟で夜這いまででワンセットだバカ野郎!!」
 そんな中、清春がビルシャナ達の前に立ち、呆れた様子で叱りつけた。
「……って、バカ! 大声を出すな! 気づかれるだろうが!」
 その途端、ビルシャナがビクッと体を震わせ、人差し指をピンと立てた。
 まわりにいた信者達も焦った様子で、温泉と清春を二度見した。
「こちらにおわす美女美少女方を見るだけか!? 男の人生ってのぁな、安牌ばっかじゃつまらねぇ。時には役満狙って特攻してみやがれ!」
 しかし、清春はまったく気にしておらず、バスタオルを巻いた女性陣を指差し、信じられない様子でビルシャナ達に訴えた。
「だから騒ぐな! バレるだろうが!」
 ビルシャナが涙目になりつつ、人差し指を何度も立てた。
「こちらに来てい、いい、一緒にドウデスカ……」
 そんな空気を察したアリシアが露天風呂に浸かりつつ、恥ずかしさのあまりブクブクと沈みそうになりながら、ビルシャナ達を誘った。
 一応、ビキニを身に着けているものの、ビルシャナ達の視線が集中しているため、耳まで真っ赤になるほど恥ずかしい気持ちでいっぱいになっていた。
「そんなところで遠慮してないで、ね」
 シャルールがバスタオルで隠した胸元を強調するようにして、恥ずかしそうにビルシャナ達に語り掛けた。
 それだけでビルシャナ達はガッツポーズであったが、途中で冷静になったのか、ブンブンと首を横に振って、覗き以上の事をしようとしていた自分の気持ちを戒めた。
 おそらく、覗きが至高であると言っている手前、堂々とガン見する事自体、タブーなのだろう。
 既に気づかれている状況でありながら、岩陰に隠れてガン見である。
「これも、人の命を救うため……。でも、胸を晒すというのは、やっぱり……」
 シャルールがビルシャナ達の視線を全身に浴び、動揺した様子で身体を強張らせた。
 それでも、恥ずかしい気持ちは消えず、爪先まで敏感に反応してしまうほど緊張していた。
(「む、胸元にビルシャナ達の視線が……そんなに見られたら……って、あれ!? 徐々に視線がシャルールさんの方へ……」)
 そんな中、アリシアがハッとした表情を浮かべ、横目でシャルールの顔を見た。
 おそらく、ビルシャナ達がガン見しているのは、シャルールの胸。
 それに比べてアリシアの胸は……ぺた……ん……。
「ふふふ……そうですか……やっぱり、そういう……」
 それと同時にアリシアがすべてを理解し、こめかみを激しくピクつかせながら、殺意のオーラを身に纏った。
 それは鬼神……いや、鬼女神と呼ぶに相応しい姿……。
 気が付くと、信者をひとり……ふたりと倒していた。
「ちょっと待て! なんだよ、いきなり!」
 ビルシャナが身の危険を感じつつ、涙目になって岩陰に隠れた。
 まわりにいた信者達も、一緒になって岩陰から隠れようとしたものの、アリシアに背後から襲われ、次々と倒れていった。
「覗きは罪だ。捕縛されるならば『最後』まで戯れるのが欲望(人間)と解け。兎角。此処に存在する私は、貴様等の『母』だ。母親に抱かれて眠るのは心地良い、酩酊にも似た温かさ。さあ。おいで――貴様等は私に還るべき『仔』だ。望むならば。欲するならば。全力で『晒し』給えよ。信者どもよ、私が神(親)だ」
 次の瞬間、ユグゴトが信者達の前に立ち、女神の如く神々しい光を放ち、『欲望に忠実あれ!』と訴えた。
「確かに、ただ見ているだけでボコられるのは、納得がいかねぇ! 俺はヤルぞ!」
 ハゲ頭の男性信者が納得した様子で、股間を丸出しにしながら、両手をワシャワシャさせて、ケルベロス達に迫ってきた。
「……ちっさ」
 その途端、アルケイアが視線を落とし、小馬鹿にした様子で失笑した。
「いや、小さくねぇから! こ、これは……その緊張しているせいで……じ、じ、実際にはデカイから……」
 その一言でハゲ頭の男性信者が動揺してしまい、内股になりつつ、自分の股間を必死に隠した。
「覗かれる側の気持ちがよくわかりましたか?」
 その間にアルケイアが手加減攻撃を仕掛け、ハゲ頭の男性信者を気絶させた。
「うぐぐ……俺は認めん! 例え、お前らに否定されても、俺は間違っていない。絶対に間違っていないッ! だから死ねぇ! 俺が正しい事を証明するために!」
 そう言ってビルシャナが逆ギレした様子で、ビルシャナビームを放ってきた。

●ビルシャナ
「つーか、てめぇがシッカリしねぇから、こんなことになっているんだろうが! 悔しかったら、女湯にダイブぐらいしておけよ! そんな根性もねぇのに、勝てると思ったら大間違いだぞ!」
 それを迎え撃つようにして、清春がバットをギュッと握り締め、ビルシャナビームを打ち返した。
「んぎゃ!」
 その一撃がビルシャナの腹部に直撃し、間の抜けた声が辺りに響いた。
「変態にかける情けは、欠片もありませんから、覚悟してください」
 それに合わせて、アルケイアがバリカンを構え、ビルシャナの羽毛を容赦なく剃り上げた。
「こ、こら! やめろ! やめてくれ! そんなに乱暴にしたら……ひゃっ! やめ! ぎゃあああああああああああああ!」
 途端にビルシャナが弱気になり、アルケイアのバリカンを避け始めた。
 そのたび、バリカンの狙いが正確になっていき、ビルシャナの羽毛が次々と宙を舞った。
「ビルシャナ、ユルスマジ……ッ!!」
 それと同時に、アリシアの瞳から光が消え、ブォンブォンとチェーンソーを鳴らしながら、容赦なくビルシャナに斬り掛かった。
「アリシアさんがまた暴走状態に……。これは、やるしかありませんね」
 シャルールが覚悟を決めた様子で、殺神ウイルスを仕掛け、対デウスエクス用のウイルスカプセルを投射し、ビルシャナの治癒を阻害した。
「こんなトリがいるからっ、胸囲カーストなどが発生するんです――っ!!」
 次の瞬間、アリシアが何かに取り憑かれた様子で、チェーンソーを振り回し、ビルシャナの身体を何度も切りつけた。
 それに合わせて、アルケイアが背蹄脚を仕掛け、後ろ足で強烈な蹴りを繰り出し、ビルシャナの羽毛を蹴り飛ばした。
「い、いや、俺が悪いわけじゃないだろ! それに小さくだって、嫌いじゃねぇし! むしろ、その方が……って、痛い! 痛い! やめてくれ!」
 ビルシャナが自分の身を守りながら、必死になって逃げ道を探し始めた。
「これで終わりだ。貴様の物語を否定する」
 その行く手を阻むようにして、ユグゴトがEraboonehotep(コンダク)を仕掛け、ビルシャナに斬撃を放った。
「お、俺の物語は……終わっちゃいない……。夢で逢おうぜ! その時は……ぐはっ!」
 その一撃を喰らったビルシャナが捨て台詞を残し、血溜まりの中に沈んでいった。
「あ、あの……そんなに見るなら、触ります?」
 そんな中、シャルールがアリシアの視線に気づき、苦笑いを浮かべた。
「羨ましいですね……羨ましいデスネー。私も、これくらいになりますように……っ」
 そう言ってアリシアがシャルールの胸を揉みつつ、そこに願いを込めるのだった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月14日
難度:普通
参加:5人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。