聖夜のグランドロン救出戦~大長城を抜けていけ!

作者:大丁

 集合したケルベロスたちのまえで、ポンチョ型レインコートを翻し、軽田・冬美(雨路出ヘリオライダー・en0247)は颯爽と壇上にのぼった。
「みんな、来てくれてありがとう。宇宙のグランドロン決戦の結果、妖精8種族のグランドロンのコギトエルゴスムを奪取する事が出来ました。グランドロンたちは、未だコギトエルゴスムのままだけど、ケルベロスの説得を受け入れてくれたのね」
 情勢の解説がはじまる。
 大阪城のユグドラシル勢力は、宇宙から帰還したジュモー・エレクトリシアンとレプリゼンタ・ロキから得たこれらの結果をふまえ、グランドロンの裏切りを警戒し、グランドロンの形態を変化させた。
 作戦中にケルベロスに説得される危険がある状態では、これまでのような運用は不可能と考えたのは、当然であろう。
 ある程度自律的に行動が可能であったグランドロンを城塞型に変化させ、エインヘリアル王族の威光によって完全に支配下に置き、強力な城塞としてのみ運用しようとしている。
 現在、大阪城勢力の4隻のグランドロンは、大阪城をぐるりと取り囲む長城へと造り変えられ、第四王女レリが完全に支配下に置く事で意志を封じられており、ケルベロスの説得も決して届く事はない。
「けどねえ、グランドロン救出のチャンスはあるの! エインヘリアルの王族の威光で無理やり従わせているのならば、その原因である第四王女レリを取り除いてしまえば良いのよ。今回の戦いでは、説得に応じてくれたグランドロンのコギトエルゴスムの助けで、堅固な城塞に、人が通れる程の抜け穴を作れるのよお」
 この抜け穴を利用し、予知によって居場所が判明している敵指揮官を狙って攻撃を行い、グランドロンを無理やり従わせている第四王女レリを撃破する事ができれば、グランドロンはケルベロスの説得をきっと受け入れてくれるだろう。
 この作戦に成功すれば、妖精8種族・グランドロンを新たな仲間として迎え入れる事が出来るかもしれない。
「みんなには、グランドロンのコギトエルゴスムを持って、隠密行動で大阪城に近づき、グランドロンの長城に抜け道を作って潜入、有力な敵を奇襲で攻撃・撃破すると共に、グランドロンを制御している第四王女レリを撃破して、グランドロンのコギトエルゴスムを救出してほしいの」
 話題は、具体的な標的にうつった。
「10体の有力敵は、いずれも美人、美少女といった容貌だけど、もちろん油断するようなケルベロスはいないよねぇ? 『第四王女レリ』の撃破は、作戦上必須だけど、その他の9体も撃破しそこなうと、困ったことになっちゃう」
 冬美は、有力敵を撃破できなかった場合におこる事態を説明する。
「『絶影のラリグラス』の場合、親衛隊を統率して第四王女レリの救援にくるから、レリ撃破が難しくなるよ。白百合騎士団幹部『閃断のカメリア』と『墜星のリンネア』は、城の内外の警備部隊をみんなのところに向かわせるから、作戦行動を大きく阻害されそう。『紫の四片』からは、第二王女ハールの援軍への連絡が出ちゃう。やっぱり、作戦成功は危うくなるね」
 連斬部隊も要注意だ。
「『三連斬のヘルヴォール』は、城内の混乱を素早く制圧し、侵入者を駆逐できる。ヘルヴォールを撃破できないと、作戦は失敗よお。彼女には有能な配下、連斬部隊員『ヘルガ』に『フレード』、そして『オッドル』がいるわ。それぞれが増援を出して、ヘルヴォール撃破を困難にする。最後は同じく連斬部隊員の『ヒルドル』。彼女から、グランドロン襲撃が大阪城に素早く伝わってしまうので、大阪城からの援軍が来るまでの時間が短くなってしまうのねぇ」
 これらの詳細な情報が予知できたのは、救出したグランドロンのコギトエルゴスムの影響が考えられるという。
「最適な抜け道を用意できるし、警備に遭遇することなく、目標となる有力敵を急襲することが可能となってる。ただ、敵全体の戦力は膨大よ。有力敵の撃破に失敗し、敵側が態勢を整えてしまえば作戦の遂行は困難となるので、即時撤退を行う必要がでてくる」
 今一度、冬美は集まった顔ぶれを見渡した。
「作戦に参加するチームは15チームで、10体の有力敵に対応する事になる。隠密で大阪城に近づく方法、抜け道を使った潜入時の行動、自分のチームがどの敵を狙って行動するかの選択、敵との戦闘方法、援軍などへの対処方法、作戦に失敗した場合の撤退手段など、様々な状況を想定して行動を考える必要があるよ」
 そして、コートの裾を持ってお辞儀した。
「みんなならきっと、さいこうさせて帰ってくる。素敵なクリスマスを迎えよう。レッツゴー! ケルベロス!」


参加者
一式・要(狂咬突破・e01362)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)
神宮・翼(聖翼光震・e15906)
除・神月(猛拳・e16846)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)
ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)

■リプレイ

●抜けた先
 重なりあう機械と機械が、立体パズルを解くようにズレたり、ほどけたりするうちに、壁の穴になった。
 穴から、ロディ・マーシャル(ホットロッド・e09476)が、ひょいと顔を出し、辺りを確認すると、仲間のケルベロスたちを、穴の奥から開口部まで呼び込む。
 彼らは今まで、機械迷宮ふうの景色のなかを移動してきていた。そこから覗く眼前には、植物迷宮が広がっている。
 グランドロン長城を、大阪城がわに抜けたのだ。
 神宮・翼(聖翼光震・e15906)は、足場から落ちないよう、ロディの肩にしがみついて、身を乗り出す。
 見上げると、城壁が切り立ち、右、左と首を巡らせれば、壁はどちら方向にもウネウネと続いている。そして、あるところから、大阪城がわへと折れて、また続いているのだ。
 長城の内側からの眺望を得られたのは、自分たちの班だけであろう。
 オルトロスのアロンが、耳をピクつかせた。主人の、円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)は、指差す。
「……あれが、ヒルドルかしら?」
 なにやら、取っ手のついた箱を重そうに運ぶシャイターンの女が、植物迷宮に向かっている。ヒルドルの外見情報と一致する。大阪城へと移動しているのだ。
 ベルローズ・ボールドウィン(惨劇を視る魔女・e44755)は、ローブの裾を少しまくって、飛び降りる準備をする。
「ここからは、隠密行動とはいかないでしょう」
 その言葉を待っていたように、除・神月(猛拳・e16846)は、エクスカリバールを握り直した。
「よし、もう、仕留めにかかろーゼ」
 頷いて、穴から飛び出すケルベロスたち。地上につくわずかな間だけ、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)は、オラトリオの羽を使った。
 一式・要(狂咬突破・e01362)は、袖を通していないコートを、肩からバサリと捨てていく。テレビウムの『赤提灯』を急き立てた。
「後ろから襲うなんて気が進まないでしょうけどね。割り切りが肝心だわ」
 それは、自分への言葉であって。赤提灯は、短い脚でも素早く、駆け出すと先頭になった。
 シャイターンは気配に気がついて、こちらを振り返る。半分仮面に覆われていても、露骨に驚いたのがわかった。
 そして、植物迷宮へと、逃げ出した。
 ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)は、ライドキャリバーの名を叫ぶ。
「まかれちゃ、ヤバいな! シルバーブリット、Go!」
 1輪はエンジン音を震わせて加速する。
 走って逃げるヒルドルを、みんなで追いかけるのだ。

●走れ!
 エアシューズのローラーで、路面を切り裂くようにロディは、シャイターンの女に近づいていった。
「標的の足を止めてからだ!」
 愛用のリボルバー銃で、駆ける足元を狙う。命中した煙が地面にボンボンと上がるが、ヒルドルは構わず走る。
 直進しているので、その姿を捉えるべく、テレビウムの赤提灯が、顔面になっているモニターディスプレイをフラッシュさせた。
 照射が首元にあたった。ヒルドルは疎ましく感じたようだ。一度だけ振り返った。
 運んでいた、取っ手付きのバスケットケースのような、宝箱のような、鞄のロックを解いた。
 手をつっこんで、なにかを探し、つかみとると、それを見もしないで、後ろにバラ撒く。
 アクセサリーのようなものが、いくつも散らばる。それは、クリップ式の髪留めだった。
 髪留めは、巨大化して転がってくる。トラばさみくらいの大きさとなって、テレビウムの短い脚にかみついた。
 赤提灯はふらつき、すぐ後ろからきていたライドキャリバーのシルバーブリットと接触する。
 その一輪にも、巨大化髪留めは食らいついた。
「あんたたち、大丈夫なの?!」
 要が追いついてきて、サーヴァントたちを気遣ったが、彼の腕もオーラごと押さえられる。
 見ればヒルドルは、箱の蓋を閉めて距離を離していくではないか。
「後ろからでも、遠慮はしてられないわね」
 髪留めはまだ草地に元のまま残っており、ロディの片足のローラーが通過した瞬間にも、巨大化した。
「うおっと! 停止させてから戦おうなんて、甘かったぜ!」
 いったんランニングに切り替えて、追う。神月が、野獣のような動きで抜いていったのだが、これも動物みたいに、トラばさみに引っ掛かった。
 ロディも要も、ぎくりとしたのは、神月がそのまま転倒してしまい、着ていた服がビリビリになって散ったからだ。
 助け起こすか、後続に任せるか、一瞬迷った。裸の彼女を、どう連れていくかも。
 ふたりが、顔を見合わせてから視線を戻すと、神月の身体などは落ちておらず、転んだはずの場所は通りすぎてしまっていた。
「期待させちまったよーだナ。さっきのは分身ダ」
 神月が、脇道から無事な姿で合流する。後方では、キアリが印を結んでいた。
 螺旋忍者が回復役にいてくれるのは、頼もしい。要は、ひと声叫んでみた。
「ヒルドルの……!」
 腕を振りほどく。髪留めは、小さく戻ってはじけ飛んだ。
「箱から出た道具の狙いは正確だけど、威力はそれほどでもないみたいね!」
 水のオーラも、正常だ。さっさと回復させて、いい。
 先行するロディたちの様子が見えていた翼は、『ブラッドスター』を唄う。戦いはこれからだ。ロディの片足からも、髪留めが外れた。
 サムズアップを返した赤髪は、再びインラインスケートを駆る。
 要は、箱から何が出ようとも構わないつもりで距離をつめた。
「『鱗殺(ウロコソギ)』、これが本命……」
 ヒルドルの右の肩アーマーを掴む。
 ぶちっと、ハーネスが切れて、生肩があらわになったが、要の手をすり抜けて、女戦士は逃れた。
 走りでおいつかなくなってきていたベルローズが、ネクロオーブをとりだしていた。
 クリスタルファイアの火球が、ヒルドルの、右の肩甲骨のあたりに命中する。
 アーマーのハーネスは、ブラ紐を兼ねていたようで、引火したひもは、背中にまでまわったが、そこまでだ。ヒルドルは、左手で胸元をおさえて走っている。
「往生際が悪ぃーゼ! 度胸良くいこーナァ!」
 神月の挑発には、無反応だ。飛び掛かって、振り下ろしたエクスカリバールの先端が、わずかに背中のヒモに引っかかった。
 もともと、バックは大きく開いていたので、期待した被害にはなっていない。
 武器の勢いがあまって、神月は中団に近いところまで下げる。
 代わって翼が、トラウマボールを投げつけた。フィルムスーツごしに胸のラインが弾む。
 ヒルドルが、どんな顔をしているかは見えないものの、何か告白しはじめた。
「ヘルヴォールさま、恥の多いヒルドルを、お許しください!」
 どうやら、トラウマは効いているらしい。マロンは、掌からドラゴニックミラージュを放つ。
「では、幻覚の炎では、いかがです?」
 ドラゴンが、先頭グループのサーヴァントたちの頭を越え、ヒルドルの頭上にも差し掛かってブレスを噴いた。
 髪を焙った感じはある。
 そのヒルドルが、ためらいがちに左手を、またあの箱につっこんだ。
 出てきたのは、髪をとかす櫛だ。
 焦げたところを直すでもなく、また放ってきた。
 中団のふたりの前にころがった櫛は、巨大化しながら、櫛の一本一本が剣となって突き立つ。
「わー! マロンちゃん危なーい!」
「翼さん、避けるです!」
 赤提灯がダイビングして、翼の身代わりに串刺しになった。モニターの映像がスパークして消える。
 マロンには、シルバーブリットが、滑り込んできて、足元でクッションになり、彼女が飛び越すや、タイヤに剣を何本も刺したまま、巨大櫛とともに、路のわきへと転がっていった。
 翼は、声を荒げる。
「本気のマジメでいくからね!」
 かざしたファミリアロッドが小動物になった。マロンも、『OpL【Radiant Breath】(オーパスレプス・レディアントブレス)』を唱える。
「ふわふわのユキウサギさんです!」
 トラックぐらいの大きさで出現し、並走している。キアリのオルトロス、アロンも加わった。
 小動物に、イヌくらいのアロンと、トラックサイズの跳ねるウサギが、ヒルドルの背後へと迫った。
 パンツに破れ目を広げて、熱の視線と輝く吐息を浴びせる。
「ドコ狙ってんの!」
 箱をお尻にあてて隠しながら、ヒルドルが初めてこっちに声を発してきた。
 例の開いた蓋から手鏡が落ちる。
 鏡は滑りながら、空を映し、飛び越えられそうもない落とし穴になった。アロンの四つ足が、虚空をかく。
 ベルローズのローブは浮き上がり、足が露出する。
「面白い箱を……。幻覚、それとも空間を歪ませて?」
 天地が逆になったように感じて、ステラはもがく。その耳に、歌が聞こえた。
「百合咲く舞台、修羅を包む華の芳珠~♪」
 キアリだった。暗い淵に漂っているようで、白い花びらがゆっくりと舞う。
 植物迷宮のなかで奈落におちていくのかと言えば、否。
 『歌詠(シング・スティール・ゼム・ハーツ)』は、声を媒介にした癒しだ。
「……Ah――」
 歌が結ばれると、闇が晴れ、全員の脚が、地面を蹴ることができている。
 オルトロス・アロンは走り、ベルローズは加えて死霊魔法を練り、ステラは、ガジェットを構えた。
 今度は、聞き覚えのあるエンジン音が、後ろから近づいてくる。
「シルバーブリット! うん、アレくらいじゃやられないと思ってた」
 脱落したはずのライドキャリバーが、要のテレビウムを乗せて追いついてくる。
「あたし達の一撃を決めてやろうじゃん!」
 赤提灯を降ろすとシートが引き込み、砲撃形態へと変形を開始する。ステラは、構えていたガジェット、ブラスターをトリガーユニットとして合体させる。
「ターゲット・ロック! グラビトン・ランチャー、発射!!」
 射線を、仲間たちが譲る。重力弾丸が、植物に覆われた地面に沿っていき、 ヒルドルの足元の土がえぐれて、その身体は前のめりに、浮いた。
 翼らの攻撃で、走るには適さない姿勢になっていたので、空中でバランスが取れない。ロディのエアシューズが超加速で、それに肉薄した。
 『ブリッツバヨネット』、リボルバーに形成された銃剣攻撃が、連斬部隊員の腹部を斬りつける。
「あァー!」
 ヒルドルは、一回転して背中から落ち、仰向けになった。
 傍らに、取っ手付きの箱が、ガランゴロンと音を立てて放り出される。ベルローズの『スペクターハンド』が、発動した。
 漆黒の腕が、植物の間からでも無数に湧き上がってきて、両手両足を大の字に拘束し、箱も掴まえる。
「ほら……あなたをお仲間にしたいと、御霊達が手ぐすね引いてお待ちですよ」
 ベルローズ以下、他のケルベロスたちも到着し、取り囲んだ。
「なんて、まるでこっちが悪役ですね」
 みっともなくも広げられた自身の体をみて、ヒルドルは赤面している。肩紐をうしなった胸部の布地は、めくれてはいないが。
「安心しナ、サイキョーなあたしが相手なんダ! 負けても恥にはならねーヨ!」
 神月が踊りかかって、『降魔「トロピカル・コング」・風拳(フウケン)』を撃ちおろす。
 よほど、一撃でのトドメにこだわったのだろう。纏わせた風圧に結局、自分の着ている服を千切れ飛ばせてしまった。
「ふハ、やっぱこーじゃねーと面白くねーゼ♪」
 木々のざわめきがやむと、ヒルドルは消滅していて、神月のカラダだけがそこにあった。
 大阪城にどれほど近づいてしまったかは判らなかったが、ケルベロスたちはいらぬ騒ぎをよばぬよう、長城にむけて、また走りだした。

●崩壊
 自分たちが抜けて来た穴は元のままで、いざなうように光っていた。
 その位置から、左右遠方の城壁が、上のほうから分解していくではないか。
 ステラはライドキャリバーのシートに立って、さらに飛び跳ねた。
「グランドロンの、コギトエルゴスム化が、始まってるよ!」
 静かに、キアリは笑った。
「勝ったのね。……幽たちが、レリとの決着をつけたんだわ」
 城壁の中腹でも分解がおこると、床を失ったエインヘリアルの兵たちが、バラバラと落ちてくるのが見えた。
 壁に這った兵は、その壁に傾斜になられて滑りだし、柱にしがみついた兵は、その柱にコギト化されて宙にもがく。
 そうした奈落落としに、屋台崩しが本格化し、城塞じたいが、いくつにも分断されていく。
 建材は、別れたはしから光へと変わる。大阪城の周囲にそって、光は伝播していき、分解箇所がつながって一周すると、遠く輝きが巡るのだ。
 今ごろは、大阪城本陣でも混乱していることだろう。底が抜けたような騒ぎに違いない。
 宝瓶宮グランドロンとして存在が知られるようになってから数年。姿形を変えつつも、ケルベロスと渡り合ってきた城塞が今、光となって消滅しようとしている。
 グランドロンを道具としてきた側へ、報復ともとれる仕事をしたあとのコギトエルゴスムは、ケルベロスたちのもとへ寄ってきた。
 捨てたコートをまた拾い、要は光を手にする。
「アイテムポケットよ。みんな集めて!」
 翼とロディは、バックパックやミニバッグに詰め込んで、さらには赤提灯と一緒に要を手伝った。
「すごい、もう何百個もあるよ」
「まだまだぁ、みんなで一緒に帰るんだ!」
 抜け穴にとびこんだケルベロスたちは、その通り道だけが機能していて、通過するごとに、背後の床や壁がコギトに還り、自分たちの収納具に収まっていくのを、知った。
 行く手を遮るものは現れず、道幅も広がっていった。ベルローズは、ヒルドルの箱の取っ手を掴み、ローブの裾が乱れるままにしている。
「本当によく、走る日ですこと」
「ああ、けどヨー、ゴキゲンだゼ!」
 神月は、裸の胸にひとかかえにしていた。
 皆とあわせて、数千個のコギトを回収している。
 最後の床板が宝石状にかわり、マロンの手に握られると、ヘリオンまでもうひとっ走り。
「なにより、全員そろって脱出できたのです」
 消えた長城を、後にするケルベロスたちであった。

作者:大丁 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月24日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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