城ヶ島制圧戦~イルミネーション・ドラゴン

作者:藤宮忍

●城ヶ島制圧作戦
 城ヶ島の強攻調査によって、城ヶ島に『固定化された魔空回廊』があることが判明した。
「この固定化された魔空回廊に侵入し、内部を突破する事ができれば、ドラゴン達が使用する『ゲート』の位置を特定することが可能になります」
 ヘリオライダーのセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、今回の作戦について説明する。
 曰く、ゲートの位置さえ特定できれば、その地域の調査を行った上で、ケルベロス・ウォーによってゲートの破壊を試みることができるのだということ。
「『ゲート』を破壊することができれば、ドラゴン勢力は、新たな地球侵略を行うことができなくなります。つまり、城ヶ島を制圧して、固定された魔空回廊を確保する事ができたなら、ドラゴン勢力の急所を押さえることができるのです」
 強行調査の結果、ドラゴン達は、固定された魔空回廊の破壊は最後の手段であると考えているようなので、電撃戦で城ヶ島を制圧し、魔空回廊を奪取することは、決して不可能ではないのだ。
「ドラゴン勢力の、これ以上の侵略を阻止する為、皆さんの協力をよろしくお願いします」
 
 セリカはケルベロス達に、今回の作戦におけるこのチームの任務について説明する。
「今回の作戦は、仲間達が築いてくれた橋頭堡から、ドラゴンの巣窟である城ヶ島公園に向けて進軍することになります」
 進軍の経路などは全て、ヘリオライダーの予知によって割り出しているので、その通りに移動をお願いしたいのだと、セリカは言う。
「固定化された魔空回廊を奪取する為には、ドラゴンの戦力を大きく削ぐ必要があります」
 強敵ではある。
 だが、戦力をそぐことは必要不可欠。
 なればこそ、必ず勝つ気概で挑んで欲しいのだと、セリカは告げる。

 それから、ヘリオライダーはドラゴンの特徴について説明を加える。
「皆さんが戦うことになるドラゴンは、イルミネーションを喰らった電飾の竜です」
 究極の戦闘種族である、ドラゴン。
 翼を持つ巨大な爬虫類である容姿をしているが、その特徴は固体毎に様々である。
 あらゆる存在を喰らい自らを進化させるデウスエクス種族である彼らは、過去に喰らった存在やそれに伴う進化により、姿や使用するグラビティの面で特徴が現れている。
「この季節は特に、街で良く見かける青い光のイルミネーション。それから、様々な色のクリスマスツリー。それらを喰らった、電飾のドラゴンが皆さんの今回の敵となります」
 硬い体躯のほぼ全てに色とりどりの光を纏い、動くたびに光の残滓が尾のように付いていく。見応えある容姿をしている。だが、4メートル近い身体を翼で浮かせ、様々な攻撃を繰り出してくる獰猛で惨忍なドラゴンなのだ。
「吐き出すブレスは電撃を纏い、受けたものを痺れさせるでしょう。光煌めく爪も、鮮やかな色が点滅する尾も、強靭です」
 充分に気をつけて挑んで欲しいと、セリカはケルベロス達を見渡した。
 強行調査で得た情報を無駄にしない為にも、この作戦は是非成功させたい。
「万が一、ドラゴンとの戦闘に敗北するようなことがあれば、魔空回廊を奪取する作戦を断念する可能性もありえますので……作戦の成功は、このドラゴンの討伐にかかっています」
 よろしくお願いしますと、セリカは話を締めくくる。
「それでは、ヘリオンでご案内いたしましょう」


参加者
花骨牌・晴(春告鳥・e00068)
佐々川・美幸(忍べてない・e00495)
蛇荷・カイリ(笑う二十八歳児・e00608)
ムゲット・グレイス(日陰のクロシェット・e01278)
アウィス・ノクテ(月ノ夜ニ謳ウ鳥・e03311)
ルチア・イルミナ(神獣ノ背ヲ往クモノ・e03713)
杉崎・真奈美(オークスレイ屋ー・e04560)

■リプレイ

●城ヶ島制圧作戦
 三浦半島最南端の城ヶ島。その東側半分を占める広大な場所が、城ヶ島公園だ。
 公園内にある松林、そこを過ぎると、草原が広がっている。
 ケルベロス達が公園内を海側へと進めば、展望台からの景色が見渡せる。
 たくさんの黒い鳥、海鵜が岩礁に群がっていた。
 肌寒い潮風が吹き流れてくる。
 見通しも良く足場も問題無い草原で、ケルベロス達は足を止めた。
 目標のドラゴンをこの付近で迎撃すれば、動きやすいだろう。
「相手がドラゴンだって負けないし、負けるわけにはいかないんだよ!」
 花骨牌・晴(春告鳥・e00068)は空を見上げた。
 徐々に夕暮れの色に染まっていく穏やかな空が広がる。
 空を見上げる晴の背中を、ばしーん!と叩く者が居た。
 晴が振り返ると、今日の仲間であり、晴の友人でもある、アルストロメリア・ヴァリアントゲイズ(ゼノン・e11227)がそこに居る。
「メリーちゃん!」
 景気づけに叩かれた背中から、晴の緊張感は解れていく。
「相手がドラゴンでも、こっちだってドラゴニアンなんだぜ」
 アルストロメリアの言葉に、晴は大きく頷いた。
「皆で力を合わせてドラゴンなんて倒しちゃおう!」
 頼もしい友人と共に戦える心強さが、強大な敵へと立ち向かう勇気になる。
「ぜってー魔空回廊は頂くからな」
 アルストロメリアが宣言する。
「魔空回廊を奪取のためにも、ここが踏ん張りどころだよ」
 佐々川・美幸(忍べてない・e00495)が拳を握る。
「ここで殲滅する。これ以上、好きにはさせない」
 アウィス・ノクテ(月ノ夜ニ謳ウ鳥・e03311)の透明な声が風に乗る。
 銀糸の髪が風に煽られて靡いた。
 今回ドラゴンを撃破するのは、固定化された魔空回廊を奪取する為の重要な任務だ。
「……女性ばかり、というのは少々新鮮ね」
 ムゲット・グレイス(日陰のクロシェット・e01278)は、今日の依頼を共にする仲間たちを見渡した。
 ヘリオライダーの呼び掛けに応じて集ったケルベロス達。戦いを共にするのは、偶々偶然、女性ばかりのチームになっていた。
「イルミネーションのドラゴンとかすっげー綺麗だとは思うけど、油断も手加減もしねーからな!」
 アルストロメリアが言うと、ムゲットは頷く。
「そうね。か弱く、美しく、華の様な乙女たちに、戦場で怪我させるのは優雅じゃないわ……まあか弱いといっても、この通りだけれど」
 揃い揃った乙女たちは、美しさと強さを兼ね備えている。
「ほんと、頼りになる」
 翳り出した夕暮れの空。
 会話を交わしながら見上げると、不意に横切る大きな翼を持つ影。
 遠目に見ても明るい姿の、電飾の竜。
 空を横切る大きな姿が、ケルベロス達に接近する。
「来ました……! 今後の為にも、絶対倒す!」
 杉崎・真奈美(オークスレイ屋ー・e04560)は刀を構えた。
 ドラゴンは夕空を旋回すると、低く高度を下げてケルベロス達へ向かってきた。
「絶対に、皆を護って……無事に、帰るんだ……ッ!」
 蛇荷・カイリ(笑う二十八歳児・e00608)は思い出す。偵察作戦の時に見た別のドラゴンのことを。あの時のドラゴンには手も足も出なかったが、今日は、ここで、敵を仕留めたい。あの時のドラゴンとは違うけれど。
「我、汝、と、同じ、光、の、名、持つ、者……なのだ」
 ルチア・イルミナ(神獣ノ背ヲ往クモノ・e03713)は、訥々と呟き、自分とおなじく光の名を冠するドラゴンを見つめて、紫の瞳を細めた。

●Illuminations
 光が走る。残滓の尾がひく。
 きらきらと青白いイルミネーションが、ドラゴンの姿をより大きく見せた。
 息を呑む美しい光景ではあるが、見惚れている間もなく、ドラゴンは襲いかかってくる。
 ほう、と。
 ムゲットは思わず感嘆の息を吐いて呟く。
「おそろしくも、うつくしい」
 痩せた羽根は、ドラゴンの羽ばたきによる風圧で揺れた。
 無駄な話はやめましょう。
 あなたに敬意を表しましょう。
 ムゲットはまっすぐに見据えて、立ち向かう。
「戦闘種族とうたわれるあなた、さあ、手合せお願いできるかしら?」
 銀色の瞳に、光のドラゴンの姿を映している。
 ビュオオオ、と。ドラゴンの広げた翼は風を切った。
「鐘を鳴らしましょう。あなたが、わたしを近くに感じられるよう」
 大きな大きな鈴蘭。そのつぼみが高らかに音を奏でた。
 ごーん、ごーん……。
 光の粒を零しながら君主の鐘は奏でられる。
 絶対の存在を忘れぬようにと、音は聴いたものの脳に寄り添う。
「オオオオオオ!」
 ドラゴンは雄叫びをあげながら、音を嫌がるように翼を羽ばたかせた。
「あんな派手派手ドラゴンなんかに絶対に負けないんだもん!」
 美幸はきりりとした表情で手裏剣を構える。
 螺旋射ちを放ち、螺旋の軌跡を描く一撃で電飾竜の硬い鱗を、僅かに破壊する。
 鱗が光の筋となって草原に零れ落ちる。
「今までで一番強い敵かもだけど……絶対負けないよ! 行こう、クッキー!」
 晴は肩に乗せた黒猫に呼びかけ、大きな姿に狙いを定めた。
 掌をかざして、竜語の魔法を唱える。
 晴の掌から放たれたドラゴンの幻影が、光のドラゴンへと向かって迸った。
 翼を狙う。
 鐘の音と手裏剣の一撃でバランスを崩していたドラゴンの巨躯は、その大きな翼を隠す術も無く、幻影のドラゴンに焼かれる。
 左の翼の青白い光が、炎の色と混じって膨れ上がり、爆ぜる。
 カイリが御霊殲滅砲で縛霊手の掌から、巨大光弾を発射した。
「オオオオオオオ!」
 電飾のドラゴンは、深く息を吸い込み、草原へ向けて、ケルベロス達へと向けて、雷のブレスを吐き出した。
 雷のブレスは、前列の面子を襲う。
 カイリ、ムゲット、真奈美、アルストロメリアの周囲を、激しい雷撃が包んだ。
 カイリの足は、仲間を守る為にすぐに動く。
 真奈美の傍へ付き、雷のブレスを代わりに受けた。
 ありがとう、と真奈美が言う。
 片翼を焼かれたドラゴンは、まだ浮いている。
 陰り始めた宵色の空に、煌びやかな光が映える。
 この竜が居るだけで周囲は明るい。
「怖れず、引かず、ただ目の前の敵を倒すのみ……!」
 光源たるドラゴンに狙い定め、真奈美が死天剣戟陣を放った。
 解き放たれた無数の刀剣はドラゴンを襲うが、翼の動きは緩まない。
 アウィスは爆破スイッチを押す。
 ブレイブマインのカラフルな爆発が、仲間達の士気を鼓舞する。
 アウィスは戦場を見渡す。陣形は崩れて無い。前衛は仲間を守れる位置にいる。
「我、故郷、思い、戦う、者……なのだ」
 光と、光。
 ルチアは故郷を思って戦う。ドラゴンの故郷「ドラゴニア」は、最も早くグラビティ・チェインが枯渇し始めた世界……。
 ルチアはグラインドファイアを放った。
 右の翼を狙う。
 ローラーダッシュでの激しい蹴りは、翼まで届かぬも、ドラゴンの身体を捉えた。
 斬撃と共に、纏った炎が鱗を焦がした。
 ドラゴンは痛みに雄叫びを上げて、その音で周囲を轟かせる。

●究極の戦闘種族「デウスエクス・ドラゴニア」
「魔空回廊がどういうもんかはまーわかんねーけど、皆が重要だって言うならアタシもがんばんねーと」
 アルストロメリアの攻性捕食。捕食形態に変形させた攻性植物は、ドラゴンを足先から喰らって毒を注入する。ドラゴンの身体が傾く。
「地面に落としてやるぜ」
 アルストロメリアはドラゴンを挑発する。
 電飾が明滅して、低空へと滑降しながら、ドラゴンは長い尾でアルストロメリアたちを打ち払った。強靭な尾が、前列に立つ者たちを足止めする。アルストロメリアは真奈美を背後に庇った。
 風圧と共にドラゴンが羽ばたき、首を擡げた。
 ゴオオオォ、と。渦巻く風と雄叫びの音。
「まだ、まだだ……こんなんじゃ、まだ終われない……! 私が、皆を……帰りを舞ってくれている人たちのためにも、護るんだァァァァァッ!」
 カイリは、尾で打たれた身体を奮い立たせ、『まだ、戦える』と敵を見据える。心に抱くのは、諦めることの無い闘志。そして激励の言葉には癒しの霊力を乗せて、同時に、共に闘う者達に立ち向かう勇気を与える。
 天響命星の癒しは、アルストロメリア達の痛みを和らげる。
 アウィスがオラトリオヴェールのオーロラのような光で仲間達を包み、更なる治療を重ね掛けた。
「忍法、影縛りの術!!」
 美幸はグラビティで作り上げた手裏剣を打ち込み、ドラゴンの影をその場に縛り付けて動きを封じる。
「どう? わたしの忍術は? 動けないでしょう?」
 わたしだってやるときはやるんだもん。
 術の出来栄えを、美幸は得意げに見遣る。
 煌びやかな姿の下にある、大きなシルエット。打ち込まれた手裏剣によって縫いとめられたかのように、ドラゴンは低空に留まる。
「我、汝、を、撃墜、する……なのだ」
 ルチアは右の翼を狙った。
 時空凍結弾の物質の時間を凍結する弾丸が、右翼の真ん中を貫通する。
 バランスを失ったドラゴンの身体が、草原に降り立った。
 頑丈な足で草地を踏みしめると、息を吸い込み、雷のブレスを吐く。
 後列を狙ったブレスの雷撃が、周囲に迸る。
「……いくわ……」
 真奈美は刀を左手に持ち、少し下がった。刀の切先は相手を見据え、捉える。そして瞬足で距離を詰めると、ドラゴンへと向かって突いた。
 硬い鱗に覆われた身体が切っ先を受けるも、真奈美の刀はそのまま斬撃へと転じる。
 ヴオオオオオ!!
 斬撃の深手にドラゴンは仰け反った。
 青、白、青、白、とイルミネーションが光る。
 白く煌めく光の爪が、真奈美へと振り下ろされた。
 痛手を与えた真奈美へと返すドラゴンの爪の一撃は、その身を残忍に破壊する。
「Trans carmina mei, cor mei……Curat.」
 アウィスの声。治癒のアリア。澄んだ音、高く遠く、響く歌声。癒したいその人のために優しく歌う声。真奈美へと届いた歌は、傷を癒し、異変を癒した。
 青と白の光の中、毅然と戦う乙女たち。歌うアウィスの澄んだ声。
 ムゲットは思わず瞳を細めて見入る。
「わたし、野蛮なことは嫌いなの」
 けれど、ああ、ほんとうに。
 羽ばたかない翼のかわりに、ドラゴンは草原を蹴って飛び掛る。大地は僅かに振動した。
「美しいわ」
 ムゲットは竜語魔法で、掌からドラゴンの幻影を放つ。
 幻影の竜と電飾の竜がぶつかって、光を炎で焼いた。
 その炎を払うように飛び掛るドラゴンの爪を、カイリが受け止める。
「キミにシアワセな夢を、見せてあげるよ」
 晴のLunamystic*『End Sight』。
 月灯に憧れた儚い光が広がる。
 想像して創造した月の魔法陣を背にした晴が、光線を放つ。
 眼も眩む様な月明かりに、眼を開ければ永遠の闇を、閉じれば意識の闇を喚び起すーーそれはきっと、少女の悪夢。
 ドラゴンの瞳は見開かれたまま、光に撃たれて虚構の闇を見つめた。
 電飾の光が弱まり、それまでとは明らかに動きが鈍る。
 けれど戦意は失われず、ドラゴンは息を深く吸い込んだ。
 吐き出した雷のブレスが、ケルベロス達の前方に迸る。
 ビリビリと弾ける雷撃の残滓のなか、真奈美が踏み込んでシャドウリッパーを放つ。影の如き視認困難な斬撃は、密やかに敵の急所を掻き斬る。
 掻き斬られたドラゴンの身体の箇所から、光が失せた。
 怒りに猛るドラゴンの爪が、真奈美を捕えて引き裂いた。
 真奈美が草原に膝をつき崩れ落ちる。
「危ない……!」
 カイリがグラインドファイアを放つ。炎を纏う蹴りで、ドラゴンの爪を払う。
「コイツがアタシの、極限全力!」
 アルストロメリアはカイリの隣に並び、倒れた真奈美を守るように立つ。
 メリー流・九龍髭拳。
 流星のように繰り出される、無数の乱打。拳が連続してドラゴンへと打ち込まれる。
 そして締めくくりに、強烈なアッパーの一撃。
 ドラゴンは大きく仰け反った。
「いっくよー!」
 美幸はドラゴンへと螺旋掌を放つ。
 軽く触れただけの、螺旋を籠めた掌。しかしその衝撃は、ドラゴンの硬い身体を、内部から破壊していく。
「我、が、故郷、今、此処、に、現す……なのだ!」
 ルチアはまっすぐにドラゴンを見据えた。
 亡き故郷の為の独唱曲。
 地獄化した故郷を出現させて敵に終わりを齎す。形見の柱を地面に突き立てることで、失った故郷を復元する。出現した地獄化した故郷は、ドラゴンへと終わりを齎すもの。敵を呑み込み力を奪い、滅びを宿命付けるもの。
 ルチアによって復元された故郷が、ドラゴンを呑みこんでいく。
 ドラゴンは苦しみながら、最後の力を振り絞って爪を振り下ろした。
「だめよ、させない……!」
 カイリがゾディアックソードで受け止める。力強い衝撃が全身を襲う。
 すぐにオーロラの光が、カイリを包む。アウィスのオラトリオヴェールだ。
「絶対倒すんだもん……!」
 美幸が螺旋氷縛波を撃つ。氷結の螺旋が、白く光る爪を凍りつかせた。
 いっそう眩く発光する光に、視界が薄くなる。
「あともうすこし、なんだから……!」
 晴は草原を蹴って跳躍する。流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りを放った。スターゲイザーの光が、ドラゴンの頭部を撃つ。
 更に、ムゲットの時空凍結弾が胸部を貫いた。
 オォォォォォ……!
 混じり合って膨れた眩い光のなか、ドラゴン自身のイルミネーションは弱まっていく。
 きらきらと光零れ、舞い落ちてくる鱗を、ムゲットは掌で受け止めた。
 ルチアの故郷に呑み込まれ、あちこち幾つも撃ち抜かれ、硬い身体を裂かれたドラゴンは、光を徐々に失って草原へと倒れ込んだ。

 城ヶ島公園に静寂と、夜が訪れる。
 明るすぎるドラゴンから光が失せた今、いつもの外灯だけがともる景色が、静謐な雰囲気を湛えていた。
「任務、完了、魔空、回廊、確保、任せた……なのだ」
 ルチアの髪で飾られたヒースとスズランが、風に揺れていた。
「私たち、"人"の力で全てを護ったのよ、ね……」
 カイリは仲間達を見渡した。怪我を負った者も居るが、帰れない者は居ない。
 あとは、城ヶ島を制圧し、魔空回廊を確保する。
 ――作戦の成功を願いながら、ケルベロス達は帰路へついた。
 

作者:藤宮忍 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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