分隊現る

作者:鬼騎

 ここは大阪城の近く、緩衝地帯となっている場所。
 そこに、こそこそと動く8体の影。
 それらは竹の体に緑の戦闘服を着込んだ竹の攻性植物であった。
 ハンドサインのみで意思疎通を行い、かつて繁華街だった廃墟を駆け抜けていった。

「ケルベロス達よ、まずは集まってくれて感謝する」
 ヘリポートにてケルベロス達を迎えたのはエインヘリアルのヘリオライダー、ザイフリートだ。
「今回予知したのは大阪城の竹型攻性植物に関する動きだ」
 久しく予知されていなかった彼らの動きだが、大阪城周辺での警戒活動を未だ行っていた模様である。
 彼らは周辺に近づくケルベロスを警戒すると共に、ケルベロスの隙をついて大阪市街地への進行を目論んでいる。
 大阪市街地への侵攻を防ぐためには緩衝地帯で迎撃する事が必要がある。
「敵は8体で構成された分隊だ」
 内訳としては分隊長1名、爆破員1名、剣士3名、銃士3名の構成。
 分隊という言葉を使うのには理由がある。
 この攻性植物らは軍のように統率のとれたチームであり、連携を得意とする。
「敵1体ずつの戦力はケルベロス1人とほぼ変わらない。そのためこちらも隠密行動を行い索敵することをすすめる」
 戦力は互角。索敵しあい先に敵を発見、奇襲を仕掛けられたほうが有利ということだ。
 緩衝地帯は、無人の市街地。
 その状況が有利にも不利にも働くことだろう。
「この攻性植物たちを駆逐できれば大阪城への再潜入も可能かもしれない。とはいえ、まずは目先のことだ。大阪をこれ以上戦場にしないためにもよろしく頼む」
 そう伝えるとザイフリートはヘリオンの準備へと取り掛かるのであった。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)
火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)
ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)
除・神月(猛拳・e16846)
肥後守・鬼灯(むきゅむきゅ・e66615)
エレインフィーラ・シュラントッド(翠花白空のサプレション・e79280)
嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)

■リプレイ


 大阪城付近の緩衝地帯に出没したデウスエクスを撃破すべくヘリオンで現地へと向かったケルベロスたち。
 緩衝地帯からは離れた位置で降下したケルベロスたちは、斥候ならびに囮を担当する5名の囮班と、その後から追随し敵の背後へと回り込む3名の奇襲班へと別れ行動を開始する。
 廃墟となった繁華街。音を立てぬよう足元に散らばる瓦礫などに気をつけ、物陰から物陰へ滑り込むように移動をする。
 ケルベロスたちは用意出来た者たちは隠密気流も使い敵から隠れる工夫も欠かさない。
 囮班の中で先行するのはヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)とエレインフィーラ・シュラントッド(翠花白空のサプレション・e79280)の2人だ。
 ヒメは緩衝地帯に入ったタイミングでアリアドネの糸を発動。ケルベロスにしか見えないその糸は奇襲班が囮班を追跡するのに役に立ち、さらにこれの解除はデウスエクス発見の合図ともなる。
 エレインフィーラのほうは元軍人としての経験を活かし、見通しの悪い場所のクリアリングなどを担当。それと同時に何者かの痕跡が残されていないかを随時確認していく。
 そのすぐ後をライドキャリバーの槐に騎乗しながら行くのは嵯峨野・槐(目隠し鬼・e84290)だ。槐はあらかじめ衛生地図や過去の戦闘レポートなどをもとに地形利用して割り出しており、それを元に進むべき方向を後方から示していく。
 事前に決めていたハンドサインを駆使しながら囮班の中衛を担うのは火倶利・ひなみく(スウィート・e10573)、そして囮班の殿を務めるのは肥後守・鬼灯(むきゅむきゅ・e66615)だ。ミミックのタカラバコやボクスドラゴンの翔之助はひなみくと鬼灯の間に挟む形で進んでいく。
 後方から付いてくる奇襲班に近い二人は的確な意思疎通が出来るよう接触テレパスを用意したり、囮班が奇襲を受けないよう周囲の確認は怠らない。

 緩衝地帯を先に行く囮班から付かず離れずの距離を追随するのは奇襲班の面々だ。
 こちらも隠密気流などを駆使し気配を消すための配慮をしつつ、より敵から隠れるため囮班よりも険しい道なき道を歩いていく。
 険しい道を歩く仲間の手助けに一役買っているのは除・神月(猛拳・e16846)が持ち込んだ隠された森の小路だ。
 廃墟となっている繁華街は攻性植物たちが行き来していた関係もあってか、部分的に草木が鬱蒼と茂っているような状態の場所なども存在していたのだ。
 ふとシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)は一旦足を止め、奇襲班他2名へと合図を送る。
 囮班が敵を発見した合図が奇襲班へと送られ、真っ先にシィカがそれに気がついたのだ。
 目面・真(たてよみマジメちゃん・e01011)は奇襲班に預けられているエレインフィーラのライドキャリバー、イースへと指示を出す。
 奇襲班は神月を先頭とし、囮班と敵を挟撃できる位置へと移動を開始。
 ケルベロスたちは無言のまま素晴らしい連携を発揮するのであった。


 此度の敵である竹の攻性植物たちはいまだこちらには気づかず、周囲を警戒しつつジワジワと大阪市街へ向けて歩みを進めていた。
 攻性植物たちは街角に差し掛かり、前方確認をした後その先へと進もうとしたまさにその時。突如先頭の攻性植物たちが炎にまかれ、またたく間にその体や身にまとう衣服へと炎が燃え広がる。
 それは緩衝地帯の索敵において攻性植物よりケルベロスたちが先に敵を発見したことで可能になったケルベロスたちからの奇襲攻撃である。
 もともと奇襲班として動いていたシィカと神月は奇襲の初撃を担当。ドラゴンブレスと降魔「鳳凰光背武強明王」・鳳凰黄炎光舞翼の攻撃は簡単に敵へと命中する。
「レッツ、ロックンロール! ケルベロスライブ、スタートデス!」
「ハハッ! どうよこのサイキョーの力!」
 シィカはギターをかき鳴らし、神月と共に綺麗に決まった事を確認。高らかに戦闘開始の宣言をあげた。
 ここでようやく攻性植物たちはケルベロスたちから奇襲を受けたことを正常に把握。
 すぐさま周囲を見渡し攻撃主を探そうとするが、ケルベロスたちの追撃はすでに始まっているのである。
 敵が戦闘態勢に移行する前に敵郡へと突っ込んだのはイースと真だ。
 キャリバースピンからのキャバリアランページを受け、敵の隊列は完全に崩壊。
「残念、次の攻撃はこちらからだったんだ」
 敵を挟撃するように左右に展開していたケルベロスたちだが、奇襲班の攻撃が始まったことで囮班の面々も次々と戦闘へと行動を移し始めた。
「詰めが甘かったな。青竹の匂いが風にのり香っている」
 槐は爆破員であろう攻性植物目掛け鬼神角を仕掛けるも剣士に防がれるが、続いてガトリング掃射を行った蒐の攻撃が見事爆破員を捉える事に成功。主従の連携が光る。
「嵯峨野さん流石です。僕も続きましょう」
 鬼灯はケルベロス側が先手を打つことができた事実に安堵しつつ、チームの、そしていつも助けられてばかりだと思っている槐に対して力になろうと気合を入れて力を振るう。爆破員や剣士の前衛へ向けトラウマを植え付けたのだ。
「わたしたちだって見せつけちゃうよ!」
 ひなみくは味方前衛に対しブレイブマインをかけ、それを受けた直後タカラバコは愚者の黄金を発動。
 囮班に預けられていた翔之助もそれに続いて敵へと攻撃を仕掛けていく。
 此度の作戦はサーヴァント使いが半数を占める。そのため一撃ずつの威力よりも手数で勝負といった作戦となるだろう。
「良い出だしとなりましたね、このまま制圧とまいりましょう」
 戦闘へと突入した際、エレインフィーラの顔面左側は氷で覆われ、表情は鋭さを増す。
 エレインフィーラが放つドラゴニックスマッシュは爆破員へと向けられたが剣士により阻まれる。
 しかし今、敵の注意はエレインフィーラに向けられていた。間髪入れず繰り出された攻撃は敵に反応する時間を与えない。
「余所見は厳禁ですよ」
 ヒメが放つ藍薙ぎの斬撃が捉えたのは後方に控えるマント姿の攻性植物、分隊長であった。
 ケルベロスたちの優秀な隠密・索敵行動により戦闘はケルベロスたちの一方的な攻撃により開幕を迎えた。奇襲により隊を乱された攻性植物たちだが隊列をようやっと整え、迎撃態勢へと移行。
 ここからケルベロスと攻性植物の苛烈な応酬が始まるのであった。


 ケルベロスたちの奇襲から始まった戦闘は最初ケルベロスたちに有利な流れで進行。戦闘が始まったからには逃げも隠れもしない真っ向勝負が繰り広げられる。
 だが敵の戦力自体はケルベロスと互角。戦闘は次第に長期戦へともつれ込んでいた。
「ただの草なのに連携しっかりしてて癪な奴らだよね、ほんともう! 回復いくよ!」
「私も回復に回ります。先手を打って攻撃できている分、こちらが有利です。焦らず冷静に」
 ひなみくとエレインフィーラは傷ついた仲間の回復に手を回す。二人が多人数への回復をしている間に翔之助はより傷が深い仲間への単体回復を施していく。
「っ! そう簡単に攻撃は通さない。蒐、そいつだ」
 槐は仲間へと向けられた銃撃を防ぎ、すぐさま己の傷を回復。そして蒐へと攻撃の指示を飛ばす。炎を纏い突撃する攻撃は敵の剣士を捉え、その個体を消滅させた。
「ようやく数が減り始めたな、欲を言えば爆破員か分隊長が落とせたらイイんだ、がっ!」
 真は爆破員に向け時空凍結弾を放つが、剣士が間に割入り肝心の爆破員には攻撃が届かない。
「でも全体としては敵の体力はかなり減っているはずですよね」
 鬼灯は再びトラウマを振りまく。ここまでの間、味方がばら撒いた炎や氷はいくら防御を固めようともジワジワと敵を追い詰めている。すでに1体の剣士は落とした。いくらか爆破員にも攻撃は入っている。残りの体力を削り切るのは時間の問題だろう。
「そうデース! ボクたちのロックな攻撃の前にひれ伏させるのデス!」
 シィカが放つアイスエイジインパクトは銃士の1人を捉え、撃破。着実に敵の数を減らしていけばよりケルベロスたちの優位性は高まっていく。
「もう一体イッとくゼ! 竹のくせに良い身体してるじゃねーかヨ♪」
 神月は口づけによる降魔真拳によって銃士をもう一人ダウンさせることに成功。戦も色事も肉食系な神月らしい止めの差し方である。
「残りは5体。このまま押すためにも、分隊長に指示を出させる暇は与えない」
 ヒメは自己回復を施していた分隊長へ二刀斬霊波を放つ。分隊長を狙うのは敵の連携を極力阻止し、攻撃の被害を軽減させるのが狙いだ。
 敵の数が減少し始め、この長い戦闘に終わりが見え始めていた。


 ケルベロスたちの戦略により、敵の数はここにきてあっという間に減少。残す所爆破員と分隊長のみであった。
「イース、続いてください」
 エレインフィーラは爆破員に対しドラゴニックスマッシュを放つ。もはや遮る壁はいない。エレインフィーラとイースの連携攻撃によって爆破員はその場に崩れ落ちた。
「今がチャンス! タカラバコちゃんガブリングだよ!!」
 ひなみくからの指示に従うタカラバコは崩れ落ちる爆破員の横を駆け抜け分隊長の足へと食らいつく。
 分隊長は竹刀を振り上げタカラバコを切り捨てようとするが、その腕が振り上げられる前に竹刀は分隊長の手から離れてしまう。
「もう敵はお前1人。攻撃の暇なんて与えるわけないだろう」
 タカラバコに追随するよう分隊長との距離を詰めていた真の蹴剣が分隊長の腕へと繰り出され、竹刀を吹き飛ばしたのだ。
「あとはもう詰めるだけだ」
 槐はゴーグルの奥に光る瞳で敵を見据える。普段は瞳を閉じて行動しているが、今回は視覚情報の重要性からゴーグルを着用し瞳を開けて行動していた。
「はぁい! ボクも続きマス!!」
 敵はあと1人。槐は分隊長に向け鬼神角を繰り出し、それに続き攻撃繰り出したのはシィカだ。シィカが繰り出すグラインドファイアによって分隊長はその場に崩れ落ち沈黙。
 この戦いはケルベロスたちの勝利となった。

「……なんとか無事に倒し切ることができましたね」
 鬼灯はケルベロスがわの被害を確認する。皆無傷というわけにはいかないが、特に重傷者もなく、サーヴァントたちも皆無事にその場にとどまっていた。
「みんなお疲れさまってやつだナ。それにしても、なかなか良い味だったゼ」
 神月はぺろりと唇を舐め戦闘後の余韻に浸る。どうせなら一番おいしそうな分隊長の味も知りたかった所であった。
「大阪城下の侵攻はこれで一旦は防げましたね」
 ヒメはこの結果にひとまずの成果を感じるが、大阪への侵攻を目論む他の攻性植物がいないとも限らない。
 ケルベロスたちはひとまず傷を癒やし、周囲に展開する敵がひとまず居ないことを確認してから帰還するのであった。

作者:鬼騎 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年12月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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