宇宙のグランドロン決戦~宇宙を走る3体の危険な宝石

作者:青葉桂都

●再び宇宙へ……
 先日行われた月面の『暗夜の宝石』攻略戦において、生き延びたマスター・ビースト勢力の残党に動きがあるという。
「神造レプリゼンタ3体を中心とした残党たちは、遺棄されていたソフィステギアのグランドロンを改修し、マスター・ビーストの遺産と共に地球に向かっているようです」
 石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)は静かに語る。
 彼らは地球に降下して、希少動物を絶滅させて神造レプリゼンタを産み出す計画を立てているらしい。
 地球に到達する前に撃破しなくてはならない。
「ただし、問題は彼らだけではありません。大阪、ユグドラシルの勢力も動きを見せています」
 残党たちを傘下におさめるため、レプリゼンタ・ロキとジュモー・エレクトリシアンがグランドロンで宇宙を目指しているというのだ。
「マスター・ビーストを失った残党軍の士気は下がっており、戦力差が大きければ戦わずして降伏してしまう可能性が高いと考えられます」
 芹架は言葉を切り、ケルベロスたちを見回した。
「しかしながら、へリオンの宇宙装備は『暗夜の宝石』攻略戦の後で調整のためにNASAに戻されておりすぐに動かせる数は多くありませんし、磨羯宮ブレイザブリクも今回は利用できません」
 そのため、今回は少数精鋭での作戦を行うことになる。
「さて、今回まず叩くのは、ユグドラシル勢力のグランドロンになります」
 マスター・ビーストの残党が降伏してしまえば、戦力的に阻止は難しい。
 まずはユグドラシル勢力に強襲をしかけ、迎撃に出てきたダモクレスを撃破することで、両軍の戦力差を縮めるのだ。
「有力なダモクレスを撃破することで、マスター・ビースト勢力残党が戦わずに降伏する事態を防ぐのが目的になります」
 ケルベロス、マスター・ビースト勢力残党、ユグドラシル勢力が三つ巴になる状況を作り出すための布石となる戦いだ。
 この場にいる者たちには、その戦いに加わってもらうことになると芹架は言った。
「ユグドラシルのグランドロンからは指揮官級ダモクレスに率いられた敵が4グループ出撃してきます」
 このチームが戦うことになる敵は、多くの配下を伴う他のグループと違って3体のみで構成されている。
 黒い指揮官、カーボナード・コマンダーが率いるのは、ピンク色のモルガナイト・アサルトと緑色のクリソベリル・パンツァー。三位一体の連携で挑んでくる強敵だ。
「彼らはクロム・レック・ファクトリアの戦いなどでも出現したディザスター・キング軍の残党です」
 ファクトリア決戦時に撃破したこともある敵だが、この状況において出てくる以上は同型の中でも高い戦力を持っていると考えるべきだろう。配下の2体もただのザコでないのは明らかだ。
「敵は中衛のコマンダーを軸に、アサルトが前衛、パンツァーが後衛として連携して攻撃してくるようです」
 コマンダーは戦況を分析し、最適な戦術を指示することで不利な効果を解除し回復する能力を持つ。
 また、脚部のミサイルポッドによる範囲攻撃で敵を足止めしたり、手にした砲からグラビティを中和し弱体化するビームを放つことができる。
 アサルトが装備した剣による突撃は複数の対象をまとめて攻撃すると共に強化効果を解除する。装甲を砕く斬撃を放つこともある。
 盾は小型に見えるがエネルギーの盾を展開して自分や仲間を守ることができるようだ。
 そして最後に、パンツァーは命中させやすい速射型ライフルと、威力が高くなりやすい肩のキャノン砲を使い分けてくる。
 背部のブースターで加速することで、自らの打撃力を上げることもできるようだ。
「おそらく、パンツァーが狙撃でダメージを与える役で、コマンダーとアサルトは支援と防御を主体として行動すると見られます」
 しっかりと連携して戦う敵をうまく崩してほしいと芹架は言った。
「首尾よくコマンダーたち3体を倒せばグランドロンは第2波を送ってくるでしょう。こちらの作戦も次の段階に進みますので、皆さんはすぐに撤退してください」
 なお、敵はグランドロンに宇宙装備のへリオンで近づいたところで迎撃に出てくる。ケルベロスが出撃したあとへリオンは戦場から離脱し、戦闘後に合流する形となると芹架は説明した。
「皆さんを含めた4チームがユグドラシル勢力との戦いに勝てなければ、2つの勢力の合流を阻止することはできないでしょう」
 場合によってはその後の作戦を放棄して撤退しなければならなくなる可能性もある。
 重要な役割だと、芹架は最後にケルベロスたちに告げた。


参加者
メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)
大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)
白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)
愛柳・ミライ(宇宙救命係・e02784)
羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)
ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)
フローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)

■リプレイ

●宇宙へ飛び出すケルベロス
 月と地球が放つ光に照らされて、ヘリオンは宇宙を飛んでいた。
「ここが宇宙ですか。何か気の利けた事を言えば良いのでしょうが、これから戦闘と思うと普段との勝手の違いが少し心配ですね」
 漆黒の髪をツインテールにした白羽・佐楡葉(紅棘シャーデンフロイデ・e00912)が宇宙をながめる。
「――まぁ、やる事は変わりませんがね」
 デウスエクスのグランドロンに向けて、ヘリオンが近づいていくのがわかる。
 もうすぐダモクレスが迎撃に出てくるはずだ。
「そうですね。どこに来てもデウスエクスを討つのが私たちの役目です」
 螺旋のごとく巻いた金髪を揺らし、ピコ・ピコ(ナノマシン特化型疑似螺旋忍者・e05564)が言った。
「ここまで私たちを連れてきてくれたみんなに感謝しなくちゃね」
 メリルディ・ファーレン(陽だまりのふわふわ綿菓子・e00015)が言った。
 ビターオレンジの花をウェーブのかかった髪に生やした彼女の言葉に皆が頷く。
「じゃなければわたしたちはここで戦えなかったから。そして、いい報告を全員で持って帰ろうね」
 柔らかに微笑み、メリルディは言葉を続ける。
 ケルベロスたちの視線の先で、グランドロンからダモクレスたちが出現した。
 無数のダモクレスたちが4部隊に分かれて進む中、このチームに向かってくるのはわずかに3機のみ。
 幾人かにとっては、初めて見る相手ではなかった。
「クロム・レックで出会った子達は、最期まで勇敢だったから。きっと、彼等も」
 静かに呟くのは愛柳・ミライ(宇宙救命係・e02784)だ。深海の決戦において出現した彼らの同型機のことを彼女は思い出していた。
「そうかもしれません。でも、正義は絶対負けません」
 淡々とした、しかし強い口調で大義・秋櫻(スーパージャスティ・e00752)が言う。
 ヘリオンの乗降口へと風が吹き、スーパーヒロインの証である深紅のマントが翻る。
「秋櫻さん、ミライさん、それに皆さん……私は皆さんを信頼します」
 決戦武装に身を包んだフローネ・グラネット(紫水晶の盾・e09983)は、迫りくる3体の敵を見据えて仲間たちに声をかける。
 ダモクレス六大指揮官・ディザスター・キングの……おそらくは最後に残った配下。
 そして、ただデウスエクスであるという以上に、彼女にとって決着をつけなければならない敵。
「どちらの連携がより強固か、示してみせましょう!」
 視界の中で3体のダモクレスはだんだんと大きくなっていく。
「任せて、フローネさん! ええ、私は他でもないあなたを守りに来た!」
 羽丘・結衣菜(マジシャンズセレクト・e04954)が言う。
「あの3機がどのような存在なのかは、私にはわからない。けれど、そんな私でもあなたの力になりたい。あなたを守れるような存在でありたい。だから、ここにいる!」
 笑顔を浮かべ、彼女は力強く言った。
 ヘリオンと敵の距離はもはや十分に接近していた。
「SYSTEM COMBAT MODE」
 マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)の瞳が輝く。
 重たい音を響かせてヘリオンの乗降口を蹴り、無重力の空間へと飛びだす。
 視線の先に青い地球が見えた。
「……」
 無言で前進するマークの胸の中に、言葉で表しがたい……解き放たれたかのような想いが宿る。
 彼に搭載された戦術AI・R/D-1も同じようだった。
(「……行こう」)
 声の届かぬ宇宙を、マークは無言のままで進んでいく。
 他のケルベロスたちも次々に無限に広がる宇宙へと出撃していった。
 ピンク色と緑色の部下を従えた黒いダモクレスは、いつでも戦闘に移れるよう隊列を組んで向かってくる。
 ヘリオンが戦場から離脱していくのが見えて、そして戦闘が始まった。

●空間戦闘
 ダモクレスとケルベロスの接触はもはや目前だった。
 完全な宇宙空間での戦いは大半のケルベロスにとってはじめてのはずだ。
 それでも、高い身体能力でケルベロスは無重力状態の戦闘に適応しようとしていた。
 マークはある意味、素早く無重力に適応していたのかもしれない。
 不馴れなことに変わりはないが、機械部分が大半を占める重量級レプリカントの彼は、軽くなった体で闇の中を駆け抜ける。
 敵との距離が近づいていく。
(「最後の残党か。同じだな」)
 マークは『307部隊』の最後の生き残りである自分の姿を、黒く輝くダモクレスの姿に一瞬重ねる。
 戦闘の口火を切ったのは、漆黒のその敵だった。
 カーボナード・コマンダーの放つミサイルが複雑な軌道を描いて前衛の足を止める。
 だが、無言のままマークが視線を向けたのは、コマンダーではなかった。
 赤く輝かせた瞳を、クリソベリル・パンツァーヘ向ける。
 心を持たないダモクレスであろうと関係なく、信号は敵の攻撃衝動を高める。狙うべき相手を見定めようとしていた敵がマークへ砲を向けた。
 バーニアをふかしてパンツァーの砲口を避けようとするが、狙いをつけた攻撃はかわしようがない。
 砲撃を追加された装甲で受け止めるが、衝撃は殺しきれなかった。
 他のディフェンダーたちも、マークと同様にそれぞれが抑える予定の敵へと向かう。
 結衣菜はモルガナイト・アサルトへ、そして秋櫻はカーボナード・コマンダーへ。
「フローネさん、思いっきり戦っちゃって。私が支援するから!」
 アサルトへと向かっていく結衣菜がフローネへと声をかけた。
 真空中では声は伝わらないが、きっと笑顔にこめた意味は仲間に伝わったことだろう。
 声をかけながら結衣菜はエクトプラズムで仲間たちの肉体を補修し、守っていた。
「結衣菜さんありがとう。秋櫻さんも、抑えは頼みます!」
 誘導棒の光による合図とともにフローネは応じた。
 まるで白銀のロボットを背負っているかのようなスーツをまとった彼女は、最初の目標と対峙している結衣菜へと接近していく。
 コマンダーへ向かっている秋櫻が鉄面皮の顎を傾けて彼女に応えていた。
 前衛たちが敵への接近を試みている間に、メリルディは装飾の施されたソードブレイカー、main gaucheで宇宙に星座を描き出して中衛を守る。
 支援に合わせ、巨大な飛行ユニットを装備したピコがナノマシンを散布し始めた。
「ダミー投影開始。パターンは命中支援でランダムに。今のうちに、態勢を整えて下さい」
 宇宙にナノマシンが広がっていき、そして前衛にでているメンバーの姿が増えていく。
 映し出されたホログラムは、攻撃を支援する形で動き始めた。
 佐楡葉がホログラムの出現したのと逆側から接近していく。
「――気付きませんか? もう刻んでます」
 アサルトの首あたりを猫の爪のごとく伸ばしたオウガメタルで撫で斬る。
 敵がひるんで足が止まったところに、クラッシャーたちがしかけた。
「一緒に、踊りましょう?」
 支援を受けてミライが踊りながらアサルトへ蒼玉のグレイブと翠玉の剣を触れさせ、フローネが打撃面に金剛石を組み込んだハンマーを叩きつけている。
 アサルトに皆が攻撃している間に、秋櫻はコマンダーへ虹をまとった蹴りを浴びせて注意を引いていた。
 ケルベロスたちはまずモルガナイト・アサルトを狙っていた。
 敵部隊の盾を最初に打ち砕くつもりなのだ。
 もちろん敵も簡単に許すつもりはないだろう。コマンダーはアサルトを支援できる位置に移動している。
「動きから判断して、コマンダーはジャマーのようですね」
 ピコは冷静に敵の動きを見定めると、ハンドサインで仲間たちにメッセージを送る。
 かつて彼女の『母』が装備していたユニットを宇宙用に改造したものから推進剤が吹き出して、敵と中距離を保つ。
 宇宙の風になびくマフラーとマントからナノマシンがまた散らばっていく。
 ナノマシン制御を行う実験機だったピコの力が、今度は中衛で戦う彼女自身と、結衣菜のまんごうちゃんのホログラフを宇宙に出現させていた。
 秋櫻はピコからのハンドサインを見ながら、コマンダーと対峙していた。
 躯体の奥底に熱い心を隠して、秋櫻は極寒の宇宙へと深紅のマントを踊らせる。
 そんな彼女を無視して、コマンダーはフローネにライフルを向けた。
「あなたの相手はこの私です。味方には指一本触れさせません」
 決意をこめて、彼女はヒーローらしくコマンダーの前に立ちはだかる。
 放たれたビームを体で受け止めながら、秋櫻は執行者の名を持つ三連式の超大型ガトリング砲をコマンダーへ向けた。
 アサルトはまだ健在だ。しかし、確実に体力は削れているようだった。

●宇宙に砕ける宝石たち
 戦いは続き、コマンダーの支援を受けてアサルトはよく持ちこたえていた。
 しかし、終わりはやってくる。
 敵は最後までひるまず攻撃してきた。
 斬撃が仲間をかばった結衣菜をとらえ、和ロリ風味の着物を切り裂く。しかし、彼女はすぐに魔法の木の葉を宇宙に集めた。
「この恵みを以て、あなたを癒やすわ」
 真空の宇宙にすら一瞬で現れた木の葉が少女を包み込んで着物ごと傷を癒す。
 佐楡葉はその間に、アサルトの真下へと回り込んでいた。
「こういうの、ロボットアニメ好きの男の子なら垂涎のシチュなんですかね? 生憎と上下にも警戒しなきゃいけないって忙しさ、浪漫感じる暇もないんですが!」
 ぼやきながらも、彼女は逆に敵の視界から外れていた。
「逆に言えば此方も奇襲のし甲斐があるというものですが。さて、スクラップとすらいえない有様にしてあげましょうか」
 コマンダーの回復があっても、すでに敵の脚は十分に止まっている。
 死角から叩き込んだハンマーがアサルトの傷を広げる。
 そして、間髪入れずに飛んだ黄昏を思わせるフローネのビームキャノンが、そのまま敵を打ち砕いていた。
 心を持たないダモクレスは仲間を失ってもひるむ様子を見せない。
 パンツァーは容赦のない攻撃をマークへと集中していた。
 最初は他のケルベロスを狙う様子を見せることがあったが、今やマークへ完全に狙いを定めている。
 そのマークも、無言のまま耐えていた。
 極限まで集中力を高めているのだ。
 もっとも、メリルディが回復していなければとてもここまではもたなかっただろう。
「あと少し……持ちこたえてね」
 メリルディはまとっていたカナリアのオーラを集めて、マークへと飛ばした。
 できればフローネを優先して回復しようと考えていた彼女だが、結局主に結衣菜やまんごうちゃんに任せる形になってしまっている。
 継続してマークが耐えている間に、仲間たちはコマンダーへと攻撃を集めていた。
「近接高速格闘モード起動。ブースター出力最大値。腕部及び脚部のリミッター解除。対象補足……貴方は私から逃れられません」
 秋櫻は表情をまったく変えず、しかし激しい打撃と蹴りを超光速で叩き込む。
 これまでマーク同様盾に徹していた彼女だが、想いを噴出させるかのごとく連打を加えていった。
 耐久力で言えば、リーダーであるコマンダーはアサルト以上だったのだろう。ディフェンダーのアサルトと同じくらい持ちこたえたのだから。
 佐楡葉がドラゴニックハンマーから放つ竜砲弾が足を止め、アサルトによって消されていたナノマシンの分身をピコが再び作り出す。
 ピコの白い服やマフラーが、徐々に消えていっていた。
 戦術を組み立てて自らを癒しながらコマンダーは前衛を攻撃し続けていたが、やがて彼にも限界が来た。
 ミライはフローネと息を合わせてコマンダーへと攻撃を続けていた。
 そろって打撃役を引き受けるのははじめてだが、すでに何度も共に戦った仲だ。真空で言葉が交わせなくても、連携に支障はない。
 今回手にしている武器はフローネから借りたものだ。それだけ、彼女にとっては因縁のある敵なのだろう。
「剣の重さは、想いの強さ。その重さを、今改めて。……無重力ですのに」
 呟いて、ミライは一気に敵へと接近した。
 無重力のステップから突き出したサファイアのグレイブは敵に触れただけ。だが、『超ひも』に干渉するには十分だった。
 振動する『超ひも』を止めれば、空間がズレて敵は切断される。そさて、停止したそこは凍りつく。
「フローネさん!」
「続きます! ミライさん!」
 叫んだ声は、空気のない世界では届かない。けれど、想いは届いた。
 回復の隙を与えぬよう、すでにフローネは敵に近づいていた。
 踊るミライが描く曲線の軌跡に対し、一直線にフローネが駆け抜けて貫く。
 アメジストの剣がコマンダーのライフルを砕き、そして同時にダモクレス自身をも砕いていた。
 残る敵は1体。
 クリソベリル・パンツァーは1秒にも満たない時間、迷ったように見えた。
 砲がマークへ向けられる。
 マークもバーニアで加速しつつXMAF-17A/9を向けた。
 2つの砲が相次いで放たれ、両方が命中する。
 そこでついに、ここまでパンツァーを押さえ続けたマークは倒れた。
 だが、パンツァーも勝ちの目はない。仲間の守りを失った狙撃手にケルベロスたちが攻撃をしかける。
「あと一息だよ! メリルディさんもミライさんも、そして仲間がついてるから! 私も負ける気がしないし、きっと負けない!」
 結衣菜が黒影弾を放って攻撃をしかけた。
 佐楡葉が死角からしかけた攻撃が、ピコが飛ばす氷結の螺旋が、秋櫻の放つ炎が、ミライのエメラルドの剣やフローネのトパーズの砲撃が、敵を一気に削っていく。
 反撃と放たれた射撃を秋櫻が受け止めたかと思うと、すぐにメリルディが半透明な御業に彼女を守らせる。
 パンツァーが倒れるまで、さして時間はかからなかった。
 フローネはダイヤモンド・ハンマーを手に瀕死のパンツァーへ接近する。
「ディザスター軍。一族の、私の、かつての居場所。その最後の部隊……私の手で、決着を!」
 幾重にも展開した紫水晶色のビームシールドで、敵を拘束する。
 金剛石を取りつけたハンマーからエネルギーが猛烈に噴射し、最大加速したそれがクリソベリル・パンツァーの胴体を完全に破壊していた。
「強き方々でした。キングのもとで、仲間と……父達と共に、どうか安らかに……」
 沈黙した3体のダモクレスを前にフローネが発した呟きは、誰にも聞かれることはなかった。
 けれど、その表情だけでも、彼女がなにを語りかけたのかはさっすることができただろう。
 メリルディに支えられたマークも発光信号で3体に呼びかける。
『貴官等ハ強カッタ』
 信号を受けてコマンダーが視線を向けてきたようにも見えた。
 だが、反応はなかった。
 他のチームの戦いも、同じくらいのタイミングで決着がついたようだった。
 生き残った敵がグランドロンに引き上げていく。
 次はあの中に乗り込んでいく作戦だが、それは他のチームの役目だ。
 この後の作戦もうまくいくことを信じて、ケルベロスたちは迎えに来たヘリオンに戻っていった。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月29日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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