『赤ずきん』再誕計画~魔女が望んだ最後のチャンス

作者:青葉桂都

●デスパレスにて
 海底のデスパレスにて、巨大な魔女がたたずんでいた。
 一面に広がっているのは、顔のついたカボチャが乗っているケーキのようなもの。蜘蛛の巣で飾られた黒いグラスに、モザイクのかかったお菓子と共に盛りつけられている。
「『赤ずきん』や、ようやく準備ができたよ」
 無数の『南瓜うにうに』の中央で、ポンペリポッサはそこにいない赤ずきんへと語りかける。
「このハロウィンが、『赤ずきん』を蘇らす事ができる最後のチャンスだ」
 それは、かつて滅びた同胞への言葉だった。
「あたしがハロウィンの魔力を死神に渡せば、ジュエルジグラットは今度こそ終わりになるだろうさ。だけど構いやしない」
 慈愛と恨みが入り交じった言葉を、3体の魔女死神と南瓜うにうにたちは聞いていた。
「あんたを見捨てたジュエルジグラットなど、何度でも捨ててやるのだから」
 ポンペリポッサが言葉を終えると魔女死神や南瓜うにうにたちが消えていく。
 静かになったデスパレスから、最後にポンペリポッサ自身も消えた。
 魔力に満ちたハロウィンパーティの会場を騒がせに、彼女たちは出撃したのだった。

●ハロウィンの魔力を守れ
「先日の『暗夜の宝石』攻略戦に参加された方もいると思いますが、月面での戦いお疲れさまでした」
 集まったケルベロスたちに、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はまずねぎらいの言葉をかけた。
「不馴れな環境でも果敢に戦う皆さんの姿はヘリオンから拝見させていただきました」
 そう前置きをしてから、芹架は本題に入った。
「さて、そんな戦いから戻ったばかりのところ恐縮ですが、もうすぐハロウィンです。例年通りドリームイーターが動き出しました」
 ドリームイーターの指揮官、寓話六塔の1体でありながら死神と合流した魔女ポンペリポッサが、ハロウィンの魔力を狙って仕掛けてくるというのだ。
「ポンペリポッサは3体の魔女死神と共に、数百体の死神を率いて襲撃してきます」
 その目的は、かつて東京上空のゲートを巡る戦いで倒れた寓話六塔の『赤ずきん』をサルベージすること。
「どうか皆さんの力でポンペリポッサと魔女死神を倒し、ハロウィンを守ってください」
 そう言って、芹架は頭を下げた。


 ポンペリポッサたちは、もっとも盛り上がっているハロウィンパーティの会場を狙うという。
「ですから、今回の作戦では、ケルベロスハロウィンを大いに盛り上げて敵を引き付けることを目指します」
 ケルベロスハロウィンの会場ならば、一般人の被害をおさえることもでき、有利に戦えるだろう。
「具体的な作戦ですが、まずはハロウィンを可能な限り大きく盛り上げてください」
 できるだけハロウィンの魔力を高めることがなによりも重要だ。
「皆さんの担当はパレードロードです。ここには敵の指揮官であるポンペリポッサが現れることがわかっています」
 パレードロードには今回の作戦でもっとも多数のチームが配置されているが、その中で一番ハロウィンを盛り上げたチームのところにポンペリポッサが出現する。
 当然ながら、現れた場合は全力で戦わなければならないが、1チームで勝つのは難しいだろう。
「ポンペリポッサが現れなかった場所には、『南瓜うにうに』という死神が出現します」
 数は1ヶ所につき12体だ。
 できる限り早くこの敵を倒して、ポンペリポッサと戦うチームに援軍へ向かわなければならない。
 目の前にいるケルベロスをすべて倒してしまえば、ポンペリポッサはハロウィンの魔力を奪って撤退してしまうからだ。
「逃走を阻止して撃破するためには、ポンペリポッサと遭遇したチームが全滅する前に合流する必要があります」
 南瓜うにうにと対決するチームはできるだけ急いで戦う必要がある。
「なお、南瓜うにうにはハロウィンの魔力を好物としています。パーティの盛り上がりによっては、ハロウィンの魔力を集めるのに夢中になってしまう個体が出る可能性があります」
 夢中になっている場合、自身がダメージを受けるまでは戦闘に加わらなくなる。
 各個撃破を狙うことができるし、援軍に向かうことを優先するなら最悪無視してしまうことも可能だろう。
 もっとも、無視すればハロウィンの魔力を持っていってしまうので、できれば倒しておいたほうがいいかもしれない。
「もしも『赤ずきん』のサルベージに成功されたなら、死神が勢力を増して、今後厄介な事件を引き起こしてくるでしょう。それを阻止するためにも、ハロウィンパーティを大いに盛り上げてください」
 そう言って、芹架は頭を下げた。


参加者
シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)
ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)

■リプレイ

●ハロウィンパレード
 仮装した人々でにぎわう中、パレード会場の何ヵ所かではケルベロスによる催しが開かれている。
 ある場所では2人のオラトリオが翼を広げて飛んでいた。
「ミニサーカスをこれから行う予定だ。皆、見に来てほしい!」
 シヴィル・カジャス(太陽の騎士・e00374)が声を張り上げげチラシをまく。
 手にはミニサーカス開催を告知する横断幕の一端を握っていた。
「皆さん、おいでください!」
 逆側の端を手にしているのはロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995)だ。
 シヴィルの声を追って声を出し、紙ふぶきをばらまいている。
 そして、興味を持った人々の前に黒い犬科の動物が現れた。ついてこいと身振りをする。
 空中ではシヴィルとロベリアが宙返りや急旋回を行い、観覧者たちに喜びの声をあげさせていた。
 ついていった者たちは、空を飛びながらやたら大きな旗を振っているオラトリオに気づいた。
 ピンクの髪をしたくノ一……いや、くノ一の面をつけた男。
 彼の合図で黒犬はまた客を集めにいく。
 幾度か行き来を繰り返し、観客が集まったところで、くノ一は黒犬のそばに降りてきた。
 黒犬が観客たちのほうを向き、くノ一が印を結ぶ。
 瞬間、そこにはゆったりとしたベージュ色の和装をまとい、先端が赤い角らしきものを生やす仮装をした青年が立っていた。
「……ようこそ、ハロウィンのミニサーカスへ。動物たちの曲芸をお見せしましょう」
 ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)は、作り笑顔とはとても思えぬ笑顔を見せて告げる。
 動物の曲芸を見せるサーカスだと、彼はさらに説明を続けた。
 そしてサーカスの幕が上がる。
「今日は折角のハロウィン! ハロウィンパレードを盛り上げて楽しく彼等を退治しましょうか!」
 出番を待っていたミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)は、ネクロマンサーの仮装で気合を入れる。
「そうね。赤ずきんの復活させるなんて、許すわけにはいかないもの」
 サポート役のファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)が頷いた。
 用意した簡易的なミニサーカスの舞台で、ミリムはこの場所に眠る惨劇の記憶を探った。
「トリック……」
 魔力を抽出し、癒しの力に変えながらおどろおどろしい身振りでお化けを演出する――かと思うと、一回転して狼へと彼女は姿を変えた。
 ファルゼンが地獄の炎で作り上げた火の輪を華麗な二段ジャンプでくぐると見物人たちから歓声があがる。
 さらに、オルトロスと黒猫が、その曲芸に加わった。
 誰も巻き込まないよう地面に放つ炎のグラビティを舞台に、走り、飛び、回転する。
 楽しげな顔をしてファルゼンは動物たちの演出を手伝っていた。
(「大丈夫。ポンペリポッサの目論見を潰せると考えれば、私の心は弾むのだから」)
 少しばかり、暗い楽しみではあったけれど。
 黒猫が炎を飛び越えるのを失敗した上を、オルトロスが悠々と飛び越える。
「んにゃー!!」
 怒りの猫パンチを浴びせる黒猫を見て、笑いが起こった。
 サーカスが十分な盛り上がりを見せたころ、曲芸をしていた動物たちとくノ一は人々の前に整列した。
 動物たちの前には白い魔女の仮装をした女性と大きな箱……ミミックがいる。
「ハロウィンのサーカスは楽しんでもらえた? それでは皆さんに、ケルベロスから贈り物をさせてもらうわ」
 リュセフィー・オルソン(オラトリオのウィッチドクター・e08996)の言葉と共にミミックの口が開き、中からお菓子が飛び出してくる。
 人々が驚きの声を上げた……次の瞬間、動物に変身していたケルベロスたちが元の姿に戻って、さらに大きな驚きの声が起こる。
「はいっ、トリートです!」
 ミリムが手元で描いた紋章から空へ危険なクラッカーを飛ばし、返す手でたくさんのお菓子をばらまき始める。
「動物ショーだなんて騙しちゃってごめんね。これもハロウィンの悪戯よ」
 黒猫から人間に戻り、巫女装束を着た狐娘の姿を見せる円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)が、アロンと共にお菓子を配って回る。
「そうそう、悪かったな! くノ一だなんて騙しちまって!」
 くノ一の面から、薄い傷痕が走る顔を見せた軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)の言葉に笑いが起きた。
 お菓子を配り始めたところでシヴィルとロベリアも曲芸飛行を続けながら現れた。
「百菓繚乱、ハロウィンフラワー!」
 シヴィルの声が高らかに響き、カボチャ型に改造したヒールドローンが大小様々な花火を打ち上げる。
 弾けた花火は、お菓子の雨を人々へと降らせている。
 ケルベロスたちの演出に、みんなが笑顔を見せていた。

●南瓜うにうに、うごめく
「私の曲芸飛行は目を引けただろうか。何度もリハーサルを繰り返したとはいえ、やはり本番は緊張してしまうな」
「うまく飛べていたと思いますよ、シヴィルさん」
 息を吐くシヴィルにロベリアが声をかけた。
「ありがとう、ロベリア。しかし、チラシを配っていると、みんなのミニサーカスを見ることができないのが難点だな。みんな可愛かったのだろうな」
 サーカスは十分盛り上がったが、本番はこれからだということを皆わかっている。
 それでも……キアリはわずかの間、寂しげな笑みを浮かべていた。
「……我ながら女々しいわね。あなたはきっと呆れるわよね、朝顔……」
 巫女装束と狐耳は、亡くした友達の姿。
 ハロウィンは外国でお盆に似た意味合いもあると聞き、キアリはこの仮装を選んだのだ。
 けれど、そんな感傷から引き戻す声が聞こえてきた。
「来たわ……南瓜うにうによ」
 控えめな声でリュセフィーが告げた言葉が妙に大きく響く。
 サーカスの会場一面に大きな光る魔法陣が描かれ、南瓜うにうにたちが現れる。
「祭りは中断、こっからは悪夢の時間と行こうじゃねぇか! 見せる側でよっ!」
 双吉が不敵な笑みを見せる。
 ただ、サーカスで頑張ったおかげか半数以上の南瓜うにうにがハロウィンの魔力奪取に集中している。
「みなさん、トリックされないように避難してください!」
 ミリムが声を上げた。
「南瓜うにうにってなんですかこれは! お菓子みたいな見た目で油断を誘おうなんて手には乗りませんよ?!」
 そうしながら、猛々しい英雄の名を関した斧で彼女はうにうにの1体を叩き切る。
 他の者たちも逃げるよう指示しながら、まずは戦意を見せているうにうにを狙った。
「凍りつけ」
「爆ぜろ」
 ヴォルフとファルゼンが、正反対の意味の言葉を続けて発した。
 呪文によってヴォルフの召喚した氷河期の精霊が荒れ狂った後を、ファルゼンの指先から舞った小さな炎の華が弾けて焼きつくす。
 氷と炎、相反する力がうにうにたちを同時に包んでいる。
 ミリムに斬られた1体がそのまま消滅していた。
「皆、各個撃破していくぞ!」
 シヴィルが時空を凍らせるオラトリオの弾丸を放った。
「ええ、のんびりはしていられませんから!」
 続くロベリアがアームドフォートの一斉砲撃で傷ついた敵を撃破する。
「百合咲く舞台、修羅を包む華の芳珠。刃を種に血を吸い上げてほころぶ白の……Ah――――」
 キアリの歌声に合わせて、白い花弁が舞い散る空間が波紋のように広がり、仲間たちの攻撃力を増幅する。
 パレード会場の別の場所で、ポンペリポッサも出現しているのが見えた。見えるほど魔女は巨大なのだ。
「でけえなあ……やりあうのが楽しみだぜ!」
 双吉が口の端を上げて、ブラックスライムにうにうにの1体を食らわせた。
 オルトロスのアロンがそのうにうにをパイロキネシスで燃やす。
 うにうにたちもお菓子を用いた技で反撃してくるが、ケルベロスたちは回復も万全だ。
 仲間をかばったファルゼンにボクスドラゴン・フレイヤが属性をインストールし、双吉にはリュセフィーがパズルから呼び出した光の蝶が癒すとともに第六感を呼び覚ます。
「あなたも攻撃に参加してね。弱っている相手から狙うのよ」
 主の指示を受けて、リュセフィーのミミックがエクトプラズムで斧を作り出し、双吉やアロンの攻撃で弱っていた1体を両断した。
 数は多いが、並外れて強いわけではない。12体まとめて相手取ることにさえならなければ巻けるような相手ではなかった。
 ケルベロスたちは1体ずつ確実に南瓜うにうにを葬っていった。

●魔女の猛攻
 さほど時間をかけず南瓜うにうにを殲滅したケルベロスたちは、パレードの中でポンペリポッサが出現した場所へと急ぐ。
 ケルベロス1チームが全滅するほど時間はたっていない……はずだった。
 魔女の巨体が目に入った。
 そして、彼女が投げたなにかが爆発するのが見える。
「あれがポンペリポッサか。さて、どうすれば殺せるか……」
 ヴォルフが呟いた。
「交戦していたケルベロスたちは?」
 周囲をシヴィルが見回した。
 そして、すぐに倒れているケルベロスたちを発見する。
 ボクスドラゴン1体を残して最初のチームがもう全滅しているという事実に、何人かが顔色を変える。だが、驚いている暇はない。
「行きましょう! このままではハロウィンの魔力を持ち去られます!」
 大盾を構えたロベリアが迷うことなく前進していく。他の前衛たちもだ。
「ポンペリポッサの大切な方を取り戻したいって気持ちわからなくもないです。ですが、この時はこの場はそうはさせませんよ!」
「そうです。赤ずきんをサルベージしようとしているようですが、そう言うわけにはいきません!」
 ミリムの叫びに、リュセフィーが応じる。その言葉に異を唱える者は誰もいない。
 別のもう1チームもほとんど同時にこの場にたどり着いているようだ。
 2チーム16人のケルベロスたちが、ポンペリポッサへと一気に接近した。
「捉えました。一斉砲撃!」
 前衛でロベリアが火薬を増量した砲撃を放つ。
「まだ、あたしの邪魔をするのかい? そんなに、赤ずきんが憎いのかい? 赤ずきんがいたからこそ、ジュエルジグラットは今程度で済んでいたというのに。誰もかれも、なぜ恩を仇で返すのだよ」
 だが砲撃が当たったか認識する間もなく、ポンペリポッサの鼻が伸びる。
 足を止め、猛烈な勢いで薙ぎ払われる鼻を、前衛の誰も回避することはできなかった。
 大盾で防ごうとしたロベリアは自分の体が浮きあがったのを感じる。
「ロベリア! しっかりしろ!」
 気づいたとき、シヴィルの足もとにいた。体が動かない。ファルゼンがフレイアを呼んでいる声が、妙に遠くから聞こえた。
「シヴィルさん……後は頼みます……」
 力なく告げると、ロベリアはそのまま目を閉じる。
 フレイアにかばわれたファルゼンは無事だ。
 双吉は崩れそうな脚を気力で必死に支えている。
「これがポンペリポッサかよ……やばいほど強いのはわかったが、せっかくの大物相手だ……。存分にやらせてもらうぜ! 形質投影。シアター、顕現(スタンド)ッ!!」
 愛用のブラックスライムにオラトリオの性質を投影し、双吉はパンプキン型の疑似デウスエクスを顕現する。天使の力で生み出した悪魔が、魔女へと襲いかかった。
 ファルゼンも自分をかばって消えたフレイヤを乗り越え突撃する。
「なんで邪魔をするって? ――ハロウィンだからだよ、イタズラさ。Trick or Treat?」
 レッドスライムメタルΩに地獄の炎を宿らせる。
 赤ずきんが生き返るなど、認めるわけにはいかなかった。
(「私の大切なヴァナディース様は生き返ることができないのに!」)
 ヴァルキュリアたちのために死んだ女神が心に浮かぶ。
「甘いお菓子の代わりに、苦い思いをプレゼントだ」
 想いを乗せて、ファルゼンは炎を放った。
 足を止めている魔女に攻撃は命中したが、ポンペリポッサは揺らぎもしなかった。
「アロン、フレイヤの代わりに仲間を守って!」
 キアリの指示に従って、オルトロスがディフェンダーへ回る。自身は鎖を飛ばして結界を作り出し、少しでも攻撃を和らげようとする。
「今、治療するわ」
 リュセフィーは双吉へと心霊手術を施し、少しでも傷を癒そうとする。
 だが、次の瞬間、ポンペリポッサが自分の体からウインナーソーセージを千切ってばらまいてきた。
 千切った痕から血が流れるが、すぐ猛烈な爆発で見えなくなる。
 爆発の中で双吉が紙切れのように吹き飛び、ピクリとも動かなくなった。そればかりかファルゼンやアロンさえ一撃で吹き飛ばされる。
 もう一方のチームも前衛はもう壊滅状態のようだ。
「呆れるほどの強さだな。どうすれば殺せるか……今の段階では見当もつかない」
 ヴォルフは淡々とした声で言った。
「1つ確実なのは、守っていても勝ち目はないということだ」
 できるのは少しでも布石を打っておくこと。
 口早に呪文を唱えると、吹雪の形をした氷河期の精霊が出現し、ポンペリポッサの巨体の一部を凍らせる。
 次の瞬間、また振り回される巨大な鼻がヴォルフと、そしてもう一方のチームの中衛をまとめてなぎ倒し――ただ一撃で意識を刈り取っていた。
 どちらのチームも残るは後衛のみ。だが、他のチームが増援に来ないうちは諦めるわけにいかない。
 ミリムが後衛から一気に接近して青い炎をまとった大剣でポンペリポッサの鼻を狙い、敵の攻撃の威力を下げようとしていた。
「……ドリームイーターの起源と靄は、全ては何から始まったことなんですか?」
 刃とともに問いかけるが、魔女は一瞥しただけだった。
 もとより敵が情報を漏らすことはめったにないが、それ以上に、赤ずきんを蘇らせため魔女は必死なのだ。
「人々を守る盾である騎士として、楽しいハロウィンの日に人々に害を為そうとするデウスエクスを放っておくこと等できない。私の正義の刃を喰らうが良い!」
 シヴィルが構えたハンマーが砲撃形態に変化し、竜砲弾がポンペリポッサを打った。
「回復する間もないうちに倒されたんじゃ、攻撃するしかないわ」
 無表情のまま前進したキアリが螺旋の力を込めて掌を突き出す。
「待って……他のチームが来たわ!」
 そこで、リュセフィーの声を聞いて、3人は振り返った。
 4つのチームがこちらに近づいてきている。
「この場は任せて、一度態勢を立て直したほうがよさそうね」
「そうですね。ケガした人たちを運んで、余力がある人だけ戻ってきましょう」
 キアリとミリムが言葉を交わす。
 フレイヤに一度かばわれたファルゼンはともかく、他の3人はひどい傷だ。
 倒れた仲間たちを運び、増援のケルベロスたちから支援を受けながら撤退する。
 もう1つのチームも撤退するようだ。白い髪をした青年がポンペリポッサの情報を伝えているのが見えた。
「すまないが、後はよろしく頼む!」
 シヴィルが新手のケルベロスたちへと告げた。
 仲間たちが魔女を止めてくれることを願いながら、ケルベロスたちは退いていった。

作者:青葉桂都 重傷:ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354) ロベリア・アゲラータム(向日葵畑の騎士・e02995) 軋峰・双吉(黒液双翼・e21069) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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