『赤ずきん』再誕計画~襲来、かぼちゃの魔女!

作者:洗井落雲

●出陣する魔女たち
「『赤ずきん』や、ようやく準備ができたよ。このハロウィンが、『赤ずきん』を蘇らす事ができる最後のチャンスだ」
 空間に、『ポンペリポッサ』の声がこだました。
 あたりには、数百体に及ぶ、パンプキンを乗せたパフェのような形状をしたデウスエクスたちが佇んでいた。
 デウスエクスの名は、『南瓜うにうに』。その身体を震わせ、ポンペリポッサの命令を待つように。
 そして、その中に、魔女のような姿をとった、三体のデウスエクスも存在していた。
 ここはデスバレスの海底。
「あたしがハロウィンの魔力を死神に渡せば、ジュエルジグラットは今度こそ終わりになるだろうさ。だけど構いやしない」
 ポンペリポッサは意を決したように、そう告げた。
「あんたを見捨てたジュエルジグラットなど、何度でも捨ててやるのだから」
 その言葉を合図にしたように、次々と、南瓜うにうにが消えていく。これより出陣するのだ。三体の魔女も、命令に応じるように、姿を消した。
 そして最後にポンペリポッサがその姿を消して、デスバレスの海底には静寂が戻った。

●ハロウィンに魔女は来て
「集まってもらって感謝する……まずは、『暗夜の宝石』攻略作戦、本当にお疲れ様だ! 私も鼻が高いよ」
 アーサー・カトール(ウェアライダーのヘリオライダー・en0240)は、些か興奮した面持ちでそう告げた。ケルベロス達の活躍は、アーサーにとっても喜ばしい事だ。
「っと……すまない。今回の作戦の説明だったな」
 頭を掻きながら、アーサーは苦笑する。
「戦争も終わったばかりだが、すぐにハロウィンが始まる……実は、このハロウィンを狙って、死神に合流したポンペリポッサが、攻撃を仕掛けてくる……という予知がされたのだ」
 ふむん、と唸りつつ、アーサーは言った。
 曰く、ポンペリポッサと3体の魔女死神が、数百体の南瓜うにうにの群れを引き連れて、ハロウィンの襲撃を目論んでいるのだという。
 その目的は、季節の魔力の一つ、『ハロウィンの魔力』の強奪。
 そしてそのハロウィンの魔力を使い、赤ずきんを蘇らせる……これが、ポンペリポッサの目論見の様だ。
「奴らの目論見を達成させるわけにはいかない。ポンペリポッサと魔女死神たちを撃破して欲しい」
 ポンペリポッサ達は、最も盛り上がったハロウィンパーティーの会場に現れ、ハロウィンの魔力を強奪しようとしているらしい。
 よって、ケルベロスハロウィンを大きく盛り上げることができれば、ポンペリポッサ達はケルベロスハロウィンの会場に現れる、という事になる。
「敵をケルベロスハロウィンの会場に敵をおびき寄せることができれば、市民たちへの被害を抑えつつ、有利に戦うことができるだろう……となれば、まずはケルベロスハロウィンの会場で、ハロウィンを盛り上げて、敵をおびき寄せる必要があるな」
 このチームのケルベロス達に参加してほしい会場は、『ストリートステージ』だ。ここに現れる敵の魔女死神は、『祭り乱しの『パンプキラー』』と呼ばれる相手である。
「敵魔女死神は、ストリートステージの中でも最も盛り上がった場所に現れるらしい。もし皆が最もハロウィンを盛り上げることができれば、君たちの前にパンプキラーは現れるだろう」
 もしそうなれば、すぐにパンプキラーと戦闘を行ってもらいたい。
 パンプキラーが現れなかった場所には、12体の南瓜うにうにと言うデウスエクスの群れが出現すると予知されている。
 もし南瓜うにうにと戦う事になった場合は、この敵の群れを素早く撃破し、幹部と戦うチームの援護に向ってほしい。
「というのも、仮にパンプキラーと戦っていたケルベロスが全滅した場合、ハロウィンの魔力を奪ってすぐに撤退してしまうようなのだ。敵は強力……可能な限り、そのような事態は避けたい」
 よって、他のチームのケルベロスも、できるだけ速やかに、パンプキラーと戦っているチームへの援護に向かう必要があるのだ。
 なお、南瓜うにうにはハロウィンの魔力が大好物であるため、パーティが大きく盛り上がった場合、ハロウィンの魔力を集めることに夢中になる。
 こうなった場合は、自分がダメージを受けるまで、戦闘を行わないようである。
「これを利用すれば、一度に12体の敵と戦うことなく、敵を各個撃破できるだろうな。最悪、戦闘に加わらない敵は無視して、パンプキラーと戦う事を優先できる。どうするかは、実際に戦う君たちに任せるよ……それから」
 と、アーサーは言って、続けた。
「死神の魔女……今回君たちが戦う相手はパンプキラーだが、この魔女たちは、ドリームイーターが持つ季節の魔力を操る力に目覚めつつあるようだ。もしこの作戦で生き延びれば、今後死神による季節の魔力の強奪、といった事件が発生する可能性が考えられる。可能な限り、此処での撃破を目指してくれ」
 そう言って、アーサーはひげを撫でた。
「ハロウィンパーティを利用して赤ずきんを蘇らせようとは、無粋な連中だな。どうか連中の蛮行を止めてほしい。それでは、皆の無事と、作戦の成功を、祈っているよ」
 そう言って、アーサーはケルベロス達を送り出した。


参加者
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
霧島・絶奈(暗き獣・e04612)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)
城間星・橙乃(歳寒幽香・e16302)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)
茅宮・火奈(赤眼護剣・e56465)

■リプレイ

●ハロウィンの夜
「さあさあ、お立合い。今宵お見せしますのは、数多のケルベロスが紡ぐ一夜の宴に御座います」
 霧島・絶奈(暗き獣・e04612)がゆっくりと一礼をする――足元のテレビウムもまた、ぺこり、と礼。
「ハロウィンもレッツ、ロックンロール!」
 それを合図に、ぎゅいん、とギターをかき鳴らし、破裂するように響くご機嫌なロックサウンドが、ストリートライブの会場へと鳴り響いた。南瓜魔女のギタリスト=シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)のギターと歌があたりに届いて、辺りの人々がまた新しい催し物が始まったのだと足を止める。
 ここはケルベロスハロウィンの会場、ストリートステージ。多くの人々でにぎわう会場で、ケルベロス達による一夜の舞台が、今始まったのである。
「ハロウィンの夜は特別なステージデス!」
 シィカがぎゅぅん、とギターを鳴らした。続いて舞台袖から現れたイリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)が、恭しく一礼。続いてゆっくりと、二振りの刃を取り出す。
 ふっ、と息を吐いて、その刃を振るった。舞うように振るわれる刃――踊るのは、剣舞だ。南瓜の照明に照らされて、刃が輝く。シィカのロックリズムに合わせるように切り払われ、美しく舞うソード・ダンス。刃が振るわれるたびに、観客たちから喝采が巻き起こる。
 剣舞の相方は、マロン・ビネガー(六花流転・e17169)だ。ハロウィンの南瓜=南瓜の馬車、という連想からシンデレラの格好に扮したマロンは、翼の生えたシンデレラとして、美しく踊りながら空を舞う。
 観客席の上空を舞いながら、優雅に、しかしロックサウンドに合わせて激しく踊る。
「皆さんも、一緒に踊ってほしいのですよ」
 マロンの言葉に、観客たちも歓声を上げて、思い思いにその身体を揺らし始めた。その熱気を受けて、マロンはまた空中で軽やかに踊る。
「さあ、今宵だけの一夜の夢、楽しんでほしいであります!」
 南瓜の騎士、クリームヒルト・フィムブルヴェト(輝盾の空中要塞騎士・e24545)が声をあげた。南瓜の騎士もまた楽し気に、友たるテレビウム、『フリズスキャールヴ』とともにその身を踊りの渦中へと投じ、城間星・橙乃(歳寒幽香・e16302)も観客たちを盛り上げようとする様子が見える。
「よろしければ、どうぞ」
 茅宮・火奈(赤眼護剣・e56465)は、そんな客席の入り口で、客寄せとお菓子配りを行っていた。ふぅ、と汗をぬぐってみれば、会場は大盛況の様だ。もちろん、此処だけではなく、色々な場所で楽しげな声が上がっている。
「何事もなければ、楽しいだけで終わるんだけどな」
 ふと、そう声が上がった。火奈が声の方へと振り向くと、そこには一体のゾンビが居て、たまらず火奈はびくり、と肩を震わせた。
「いや……うん、やっぱこれ、怖すぎるよな……」
 ハハハ、と苦笑するゾンビ=ハインツ・エクハルト(光を背負う者・e12606)。気合を入れ過ぎたメイクのせいで、ハインツ自身が怯える位の出来になってしまったようだ……とはいえ、ぼろ布を被って隠し、結果としてちょうどよい塩梅にはなっているのではあるが。
「いえ、その。よくできていると思います」
 穏やかに微笑みながら、火奈が言う。ハインツは再び苦笑した。
「サンキュ。……とはいえ、あれだな。さっきも言ったけど、これで何事もなく終わるのならいいんだけどなぁ」
 はぁ、とため息をつく。オルトロス『チビ助』は頷くように、ワン、と一声鳴いた。
 予知によれば、ハロウィンの魔力を狙った死神魔女とその配下が、ここにはやって来るのだ。
「ここまでくると、逆に風物詩といった趣ですが」
 肩をすくめながら現れたのは、絶奈である。
「しかし、その目的を看過するわけにはいきません」
 絶奈の言葉に、二人は頷く。
「その風物詩も、今年で最後にしてやろうぜ」
 ハインツが言った。と――。
 突如地面に、光によって複数の魔法陣が描かれた。何処かの出演者の演出か。いや、そうではないようだ。魔法陣から光が放たれると、その中から現れたのは、パンプキンを乗せた、巨大なパフェのような物体たちだ。
 総計、12体の巨大な南瓜のパフェが、うにうにと身体を震わせながら、魔法陣より現れたのだ!
「南瓜うにうに……!」
 火奈の言葉に、仲間達は頷いた。舞台の方へと視線をやれば、状況に気づいた仲間達から頷きが返って来る。
「ソーリィデース! 今日のショーはここまで!」
 シィカが叫び、橙乃が避難誘導を開始する。瞬く間に混乱し始めた会場を突っ切って、普段の衣装へと着替えたマロンがやって来る。
「残念……シンデレラの魔法がとけるのには、早すぎるのです」
 嘆息してみせる。
「ついに現れたでありますね! パンプキラーは別の場所に現れたようでありますが……」
 クリームヒルトが声をあげ、その武器を抜き放った。南瓜うにうには、しばしうにうにとしていたが、その半数がケルベロス達を認め、うにうにとにじり寄ってくる。
「半分……残りはどうやら、ハロウィンの魔力に夢中になっている、という事ですね」
 絶奈が言う。その通り、半数の南瓜うにうにはうにうにと、ハロウィンの魔力を奪う事に集中していて、此方へ手出しをしてくる様子はないようだ。これはハロウィンを見事に盛り上げることができたということの証拠でもある。
「ならば……邪魔する敵を倒して、パンプキラーと遭遇したチームへと援護に向かいましょう」
 火奈がそう言うのへ、仲間達は頷いた。
「了解だ。ハロウィンを守り切るとしようぜ」
 ハインツの言葉に、仲間たちは一斉に武器を抜き放った。
「参りましょう、皆さん!」
 イリスの言葉が、戦闘の合図となる。
 かくしてケルベロス達と南瓜うにうに、その戦いの幕が上がるのであった。

●うにうにうに
 六体の南瓜うにうには、うにうにとうごめきながら、ケルベロス達へと迫ってくる。
「レッツ、ロックンロール! ケルベロスライブ、スタートデス!」
 ぎゅいぎゅいとギターをかき鳴らし、シィカは高らかに歌を歌い上げる。『天穹へ至れ、竜たちの唱(ドラゴニック・ライブ・センセーション)』――その歌声は、仲間達へと活力を与える歌声だ。
「ハインツさん! びりびり合わせてくださいデース!」
「了解だ! 《閃(ブリッツ)》ーーッ!!」
 シィカの言葉に頷き、ハインツは手のひらから発生させた雲の塊を上空へと飛ばした。シィカの歌声に合わせるように、上空から放たれた雷が、ケルベロス達へと降り注ぐ。歌と雷、二つの力が相乗し、仲間達へと活力を与える、雷の歌となる。
「行くであります、紙兵たち!」
 クリームヒルトはそれに合わせて、紙兵たちをばらまき、仲間たちを援護させる。雷のライブ、そしてそれを盛り上げる紙兵たち――ライブの第二幕の準備は、此処に整った。
「参ります!」
 それ受け、攻撃に転じたのはイリスだ。その手を掲げれば、現れるのは、竜の幻影だ。幻影より放たれた炎が、南瓜うにうにを飲み込む! 生クリームが焦げる匂いがしてうにうにの身体がドロリと溶けた。
 続くマロンが、『裁定者の大鎌』を手に、とろけるうにうにへと接近した。
「なんだかいい匂いなのです……けれど!」
 振るわれた大鎌が、パフェグラスごとうにうにの南瓜を叩き斬った。真っ二つに裁断されたうにうにが、うにぃ、と悲鳴を上げながら消滅していく。その様子に、応援動画を流していたフリズスキャールヴは嬉しそうに飛び跳ねた。
 チビ助はうにうにの一体に接近し、咥えた刃にて斬撃を加える。きい、と音を立てて、バフェグラスの身体にひびが入った。
「今宵お見せしますのは、数多のケルベロスが紡ぐ一夜の宴――私も少し、楽しませてもらうとしましょうか」
 微笑を浮かべつつ、絶奈はドラゴニックハンマーを砲撃形態へと変形させた。撃ち放つ、竜砲弾。放たれた砲弾はひびの入ったうにうにのパフェグラスに直撃し、粉砕させる。鮮血のように生クリームが飛び散り――そこへ飛び込んだのは、テレビウムだ。生クリームを浴びながらも、凶器による攻撃を一撃。うにうにが消滅するのを確認しながら、テレビウムは頭をぶるぶると振って、頭についた生クリームを吹き飛ばした。
 とはいえ、うにうにたちも黙ってやられているわけではない。うにうにたちは一斉に、生クリームを飛ばしての攻撃を敢行する。
「わわわっ! ……文字通り、甘い攻撃でありますな!」
 クリームヒルトは正面から、それを受け止める。噴き出る生クリームを受けながらも、ケルベロス達は健在。
「あまーいクリームなんかじゃ、ボクたちのロックなハートを消すことは出来ないデスよー!」
 同様に、シィカも生クリームを受け止め、仲間達へのそれを庇いきる。もちろん、シィカの命には、その攻撃はまだまだ届かない。
「甘いわ……いえ、クリームじゃなくて、あなた達の考えが」
 静かに呟き、橙乃の撃ち放つライトニングボルトが、うにうにを強かに打ち据える。
「――ふっ」
 静かに息を吐きながら、火奈の星を射落とす飛び蹴りが、うにうにへと突き刺さる。生クリームをまき散らしながら、うにうにが消滅していく――口元に飛ばされた生クリームをぬぐいつつ、火奈は嘆息する。
「後片付け……掃除や洗濯が、大変そうですね」
「汚れる前に、やっつけるデース!」
 シィカの焔を纏った蹴りの一撃が、うにうにの身体を焦がす。うにうには悲鳴を上げつつ、焔の中へと消滅する。
「残り2体であります!」
 応援動画による援護をうけながらの、クリームヒルトの電の如き月の一撃が、うにうにの身体を貫いた。
「首は、どこなのでしょうか」
 続くマロンの大鎌が、うにうにの南瓜部分を斬り飛ばす。うにぃ、と悲鳴を上げたうにうにが消滅。
「これで、ラストです!」
 イリスの斬撃が、最後のうにうにを斬り飛ばし、消滅させる。これで、倒した数は六体。残りは、ハロウィンの魔力を吸収することに夢中になっている。
「急ごう、パンプキラーと戦ってるメンバーが心配だ!」
 ハインツの言葉に、仲間達は頷き、一斉に移動を開始したのである。

●南瓜の魔女
 パンプキラーの出現地点へと向かっていれば、既に戦闘は始まっていたようだ。西遊記に登場するキャラの恰好をした者や、シンデレラやかぐや姫のような恰好をした者たちもいる。
「待ってましたー!」
 パンプキラーと戦っていたメンバーの一人が、笑顔を向けて此方を歓迎してくれている。
「ふん、援軍、ってわけね。でも、あたしに勝てるわけないわ!」
 此方を見つめ、勝気な笑みを浮かべるパンプキラー。
「さて。それはどうでしょうね」
 肩をすくめつつ、微笑で返すのは絶奈だ。
「ボクたちのロックな戦いを見ても、そう言えマスか!?」
 シィカはギターをかき鳴らし、そう宣言する。
「ハロウィンを、完全に俺たちの手に取り戻してやる!」
 ハインツの言葉を合図に、ケルベロス達は一気に構える。
「皆様が楽しく過ごすハロウィンの力、死神なんかに奪わせないであります!」
 クリームヒルトの言葉へ、
「もう、うっさい! まとめてやっつけてやるんだから!」
 苛立たし気に叫ぶパンプキラー。決戦の時は、今だ!
「銀天剣、イリス・フルーリア――――参ります!」
 イリスが名乗りが、戦いの再開の合図となった。
「あんた達なんか全員、返り討ちだからッ!」
 パンプキラーのランタン爆弾が放り投げられ、辺りに爆風をまき散らす。
「ケルベロスライブの第三幕、スタートデス!」
「《閃(ブリッツ)》ーーッ!」
「大盤振る舞いであります!」
 シィカ、ハインツ、クリームヒルトの歌、雷、紙兵は、その爆風をかき消すように、周囲に高らかと鳴り響いた。その援護を背後に、ケルベロス達は最後の戦いへと一気に駆けだす。
「まずは足を止めるのです!」
 放たれる、マロンの鋭い飛び蹴りの一撃が、パンプキラーを捉える。突き刺さる足の一撃が、パンプキラーの足を止めた。
「女の子の足を狙うなんて、同じ女としてサイテー!」
 べぇ、と舌を出しつつ、パンプキラーは挑発するように笑う。
「炎使いのようですね……灼き尽くせ、龍の焔!」
 イリスの放つ龍の焔が、パンプキラーの肌を焼く。
「熱っ!」
 たまらず悲鳴を上げて後ずさるパンプキラーへ、
「それも祭の熱の一部ですよ。ですが、熱いというのならば冷まして差し上げましょう」
 絶奈の放つドラゴニックハンマーの一撃が、逆にパンプキラーより熱を奪った。
「なによ、熱かったり寒かったり……いい加減にして……あ痛っ!」
 苛立たし気に叫ぶパンプキラーへ、テレビウムの凶器攻撃がヒットする。
 橙乃のライトニングボルトが、パンプキラーへと追撃をお見舞いし、
「あなたを倒せば、作戦は終了です……!」
 火奈の鋭い飛び蹴りが、パンプキラーへと突き刺さる。
「調子に乗ってんじゃないよ! 雑魚の数がたった三倍になっただけじゃん!」
 ケルベロス達の猛攻に、パンプキラーも無傷とはいかない。徐々に、しかし確実に、パンプキラーは圧されていく。苦し紛れに放ったパンプキラーの帽子が、ガジガジと歯音を立てながら飛んでいく。クリームヒルトが身体を張って、その一撃を受け止めた。
「まだまだでありますね! こっちもまた、甘い一撃でありますっ!」
「うっさい! うっさい! うっさーい!」
 鎌を振り回しつつ怒りの叫びをあげるパンプキラー。
「私の甘い一撃は如何? なのですっ!」
 放たれるのは、マロンの『Op.Sp2【Bouffee au MB】』の一撃だ。大きな栗と、生クリーム、そしてモンブランクリームを包んだ、手のひらサイズのシュークリーム。回復ではなく、攻撃の技である。それは寸分たがわずパンプキラーの顔面へと叩きつけられる。
「痛っ! けど甘い……」
 ごしごしと顔をこするパンプキラー。その隙をついて、ケルベロス達の猛攻が始まった。
「一気に決めるデース!」
 シィカの放つ、焔の跳び蹴りが、パンプキラーへと突き刺さった。巻き起こる炎がパンプキラーを包み込む。続いたのは、クリームヒルトだ。
「パンプキラー! ここまででありますっ!」
 放たれる、弱点を狙いすました一撃が、パンプキラーに突き刺さった。たまらず息を吐くパンプキラー。
「負けない……あたしは!」
「いいえ。あなたはここまでです!」
 イリスは静かに呟き、『冽刀「風冴一閃」』を抜き放った。刀に、翼に、全天より光が集まる!
「光よ、彼の敵を縛り断ち斬る刃と為せ! 銀天剣・零の斬!!」
 叫びと共に振り払われた一撃が、パンプキラーを切り裂いた。一瞬の間をおいて、動きを阻害されたパンプキラーへと、翼より生じた光によって生まれた無数の刃による斬撃が、次々と切り裂いていく!
「そんな……!」
 断末魔の悲鳴を残し、パンプキラーは光の斬撃の中へと消えていくのであった――。

作者:洗井落雲 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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