『赤ずきん』再誕計画~恋する南瓜とハロウィン

作者:白鳥美鳥

●『赤ずきん』再誕計画~恋する南瓜とハロウィン
 そこは海の底。ケーキのようなパフェの様な不思議な姿の『南瓜うにうに』があたり一面に広がっている。その数、数百体はいるだろうか。
 その南瓜うにうにを揃えているのは、ポンペリポッサ。
 彼女は切なそうに呟く。
「……『赤ずきん』や、ようやく準備が出来たよ」
 ポンペリポッサは沢山の南瓜うにうにを見つつ、続ける。
「このハロウィンが、『赤ずきん』を蘇らす事ができる最後のチャンスだ」
 そして、その視線は3体の死神の魔女に移った。
「あたしがハロウィンの魔力を死神に渡せば、ジュエルジグラットは今度こそ終わりになるだろうさ。だけど構いやしない。あんたを見捨てたジュエルジグラットなど、何度でも捨ててやるのだから」
 3体の死神魔女達は微笑むと辺り一面に居た数百体の南瓜うにうに達と共に消える。それを追う様にポンペリポッサの姿も消えた。
 ……そして、賑わっていた海底は、いつも通りの静けさに戻ったのだった。

●ヘリオライダーより
「みんな、月面での戦争の勝利、おめでとう! それから、お疲れ様! みんなが頑張ってくれたおかげだね!」
 デュアル・サーペント(陽だまり猫のヘリオライダー・en0190)は、笑顔でケルベロス達に賛辞を贈る。
「戦争も無事に勝利で終わり。そして、もうすぐハロウィン。……今年のハロウィンはハロウィンで大変な事になりそうなんだ。ポンペリポッサが死神と合流してハロウィンに合わせて攻撃を仕掛けてくるって予知したんだよ」
 デュアルは困った表情で続けた。
「ハロウィンの襲撃は、季節の魔力の一つである『ハロウィンの魔力』を狙っての事。魔力を強奪するために、ポンペリポッサは死神の魔女と沢山の死神の群れを引き連れて襲ってくる。奪った『ハロウィンの魔力』を使って、ポンペリポッサは『赤ずきん』を蘇らせたいみたいだよ。ポンペリポッサと死神の魔女達を撃破して、赤ずきんの復活を阻止して貰いたいんだ」
 デュアルは状況の説明をする。
「ポンペリポッサ達は、最も盛り上がったハロウィンパーティーの場所に現れて、ハロウィンの魔力を強奪しようとしているから、みんなでケルベロスハロウィンを大きく盛り上げれば、ポンペリポッサ達はケルベロスハロウィンに現れる。ケロべロスハロウィンにおびき寄せる事が出来れば、一般の人々への被害を抑えつつ、有利に戦える。良い事だらけだよね?」
 さて、俺の方なんだけれど、とデュアルは前置きをして続ける。
「俺が皆に盛り上げて貰いたい場所は『恋話かぼちゃランタン』。そして倒して欲しいのは、死神の魔女の一人である『昏迷のペポハロウィン』だよ。最も盛り上がった場所にはペポハロウィンが現れて直ぐに戦闘になるだろうね。他の場所には『南瓜うにうに』っていうポンペリッサと死神の魔女達に生み出された死神の群れが12体出現する。当然、ペポハロウィンは強敵だ。目前のケルベロスのみんなを撃破したら、高められた大量のハロウィンの魔力を奪って撤退してしまう。だから、死神の群れが現れたチームには南瓜うにうに達を倒して、ペポハロウィンと戦っているチームが全滅する前に援軍に向かって欲しいんだ。南瓜うにうにはハロウィンの魔力が大好物だから、パーティーが盛り上がっていれば魔力を集めるのに夢中になっているだろうし、自分がダメージを受けなければ戦闘に加わらない。この特性を生かさない手はないよね。それを考慮にいれつつ、作戦を立てて欲しい」
「ポンペリポッサが脅威である事は間違いないし、赤ずきんを蘇らせてはいけない。でも、魔女の力を得た死神が生き延びれば……更に大変な事になるかもしれない。みんなには大変な事続けだけれど、今年のハロウィンが哀しい事にならない様に頑張って欲しいんだ。みんなの活躍、期待しているよ!」


参加者
神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)
テレサ・コール(黒白の双輪・e04242)
月原・煌介(白砂月閃・e09504)
レイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)
クレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)
折平・茜(モノクロームと葡萄の境界・e25654)
ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)
ガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)

■リプレイ


 ここは『恋話かぼちゃランタン』。自分の恋の話をしながら返事をする様にメッセージカードが出てくるという、不思議なかぼちゃランタンがある。
 ハロウィンらしく、皆、仮装姿だ。黒ナース姿に10個ほど南瓜ケーキを持ちこんだ神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)と自作でアームドフォートを両輪にし、花火とブースターガン積んで飛び上がれるパンジャンドラムというロケット推進式地雷という中々物騒な姿のテレサ・コール(黒白の双輪・e04242)。月の魔法使い姿の月原・煌介(白砂月閃・e09504)に氷で作った蓑を被る雪ん子姿のレイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)。黒猫耳と尻尾、道化師のような派手な衣装に身を包んだクレーエ・スクラーヴェ(明ける星月染まる万色の・e11631)とエイティーンドレスに身を包み三角帽に箒という魔女姿の折平・茜(モノクロームと葡萄の境界・e25654)に魔女のような帽子に、もこもこのコートをローブの様に着たガートルード・コロネーション(コロネじゃないもん・e45615)。そして頭にハットをかぶった吸血鬼姿のヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)は手品で薔薇を出して、柧魅に手渡し会釈した。
「見る目があるな。オレは魅力的で完璧だから」
 薔薇を受け取りつつ柧魅は胸を張った。
 かぼちゃランタンに最初に話しかけるのは茜。その傍ではテレサが興味深そうに話に耳を傾けている。彼女は聞く専門だが、恋話には興味津々でパンジャンドラムも揺れ気味だ。
「出会いは偶然出会ったようなものなのですが、話せた日には一日いいことあるかなって思ってしまったり……でも迷惑になるかなとか……どうするべきでしょう南瓜さんっ……!」
 真っ赤になっている茜に出てきたカードは『勢いで行ってしまえ! いけるいける!!』。
「それが出来たら……でも……こう! ああ、もう次、お願いします、次!」
 更に真っ赤になった茜は次を促し、いきなり振られたガートルードは慌てる。
「そ、そんなお相手も居ませんし……でも、いつか……大事にしてくれる人が現れてくれたらいいな」
 現れるカードは『正直になるのって大事やで』。
「はぅぅ……次、どうぞ」
「えっと……お姉ちゃんと二人で花見した時気が付いたら手が触れた時とか、何故か知らないけど胸がきゅってしまって……熱く……」
 少し考えつつ兎耳をピコピコさせながら話すレイシアの引いたカードには『その話もっと詳しく』。
「え、えっと……か、考えるから……次の人……」
「次は俺か。今、俺にはSchatzt(宝物)と呼ぶ人がいる。彼女の支えになるにはまだほど遠いのだが、ただ一言『Ich mag dich(あなたが好き)』とだけは伝えたい。それが、俺の拙い想いであり、恋だ」
 現れたカードは『100万回応援するわ』。それにヴィクトルは、うむ、と頷く。
「……俺? 今年バレンタインにプロポーズして……受けて貰った。種族も身長も年齢も性格も差ばかりだけど、だからこそ二人で歩ける事が、奇跡でとても、嬉しい」
 煌介が受け取ったカードは『幸せそうで何より』。それに煌介は優しい笑みを浮かべた。
「……うん、ありがとう。次は……」
 恋話を披露した人達に恋話を披露した人にペアねこマスコット進呈していたクレーエに振られる。ペアねこマスコットを煌介に渡しつつ、クレーエはかぼちゃランタンに話し始めた。
「僕の奥様は凄く美人で可愛くて強くて頼もしくて、これでもかっていう位素敵で……! 人様には言えないような過去を持つ僕を受け入れてくれて……」
 完全に惚気て、既に恋話とは言えない状態のクレーエ。
「ほら、見て! これが僕の奥様で、家族のにゃんこ達と小鳥さんと……」
 かぼちゃランタンだけでなく、仲間達にも写真を見せて回り始める。
「ク、クレーエ、カードを引かないと……」
 もうカードは見なくても分かる様なものだが、煌介は促そうとしたその時……違う方向からイベント予定にはない大きな音と共に大きな花火が花を咲かせた。と、同時に光る魔法陣から12体の南瓜うにうにが出現する。
「うにうにの方か」
「でも、ご覧くださいませ」
 残念そうな柧魅に対して、テレサは南瓜うにうにの方を見るように促す。かなりの数の南瓜うにうにが魔力集めに夢中になっていた。
「現れなかったものの、中々、盛り上がったという事だな」
「戦う気の無い奴はスルーして援護に行きますよ!」
 うにうにの様子に頷くヴィクトルに、頬を手の甲で拭って顔をポーカーフェイスに戻した茜が皆を促した。その先には彼女の友人がいる。急がなければ。


 夢中になっている南瓜うにうにが大半だが、やはり全てかいくぐる訳にはいかない。
 花火の方に刺激しない様にしながら向かおうとするものの、こちらに敵意を向けているのは……合せて4体。
「他は完全に夢中みたいだし、他を刺激するとまずいから少し引き離そう」
「俺達は少しずつ離れないといけないけど、向こうには来て貰わないといけないね」
「誘導はテレーゼが宜しいかと思います。私達は誘導先で待ち伏せましょう」
 クレーエや煌介の言葉に、テレサは相棒であるライドキャリバーのテレーゼを撫でる。確かにライドキャリバーなら自由に複数の相手を誘導できるだろう。
 ケルベロス達は魔力を食べる事に必死になっている南瓜うにうに達を戦いに巻き込まない様に距離をとっていく。
「テレーゼ」
 テレサの言葉にテレーゼは、こちらに対し敵意を向けている南瓜うにうに達の周りを何度か周回し、引きつけると、待ち伏せているテレサ達の方へと一気に駆け抜けた。その後を必死で追ってくる南瓜うにうに達。だが、こちらは十分に対策を打ち、待ち構えている。
「お疲れ様です」
 戻ってきたテレーゼを労いつつ、テレサは不意を突くように竜砲弾をうにうにへと放ち、それを合図として他のケルベロス達も一気にうにうに達へと雪崩込む。
「Vallop!(ぶちかませ)」
 ヴィクトルの放つ炎がうにうにを呑み込み、クレーエの蔓草が捕らえレイシアが反対に氷で包ませた所を狙って、柧魅は急所を狙って蹴りを放った。消えゆくうにうにを見て、残り三体がこちらに向かって噛み付きにかかるが、ガートルードが立ちはだかる。
「そう簡単にはいかせませんよ」
 渾身の斬撃で斬り伏せる。更にレイシアの放つ氷が包み込み、茜のチェーンソー剣によって、歪に煌めきながら斬りつけられた。
 一方、煌介は今後の戦いで問題なく戦えるよう、仲間達の状態を見つつ適時回復していく。
「よし、これで終わりだな」
 向かってきた全ての南瓜うにうに消え去った事を、柧魅は確認する。
「それじゃあ、花火が上がった方へ急ぎましょう!」
 茜は、花火が上がった方に向かって走り出し、それを皆で追う。向こうに現れているのは死神なのだから。


 ペポハロウィンの所に皆が辿り着いた時、そこに広がっていたのは凄惨な光景だった。
 ……苦しみ、叫び、その表情は苦痛にゆがんでいる。精神的に蝕まれているのだ。とても戦える状態ではないケルベロスが何人も散見された。
「さくらさん!」
 茜の友人であるさくらは精神攻撃を受けていないようだが、追い込まれている事だけは確かだ。何故なら、対峙しているペポハロウィンは今にも彼等を殺しにかかろうとしているのだから。
「……直ぐに回復しよう」
「ええ、早急に致しましょう」
 とにかく、彼等を癒し立て直さなければ何も始まらない。
 煌介、テレサはコクマ達へと雷とドローンを、レイシア、ガードルードはさくら達へオウガ粒子と花びらを、クレーエはルーシィドに桃色の霧を放って直ぐに回復させていく。
「そこの死神、オレ達の事も忘れるんじゃないぞ!」
「好き勝手に等、させたりはしない」
 一方、柧魅とヴィクトルはペポハロウィンに向かって蹴りと弾撃で急襲をかけた。
「あら、急に相手の数が増えたわね。でも、何人相手であろうと一緒よ?」
 薄く微笑むペポハロウィン。素敵な恋愛とは程遠い辛い悪夢が柧魅達に向かって降りかかってきた。
「助かったわ、茜ちゃん、皆さんも」
「暫くペポハロウィンは私達が引きつけますね」
「……回復に時間がかかりそうだね。俺も手伝うよ」
 さくらの言葉に茜は強く返し、煌介は援護を申し出る。
「ありがとう。お言葉に甘えるね」
 煌介が抜けた状態、7名でペポハロウィンに立ちはだかる。
「さあ、次は私達が相手です!」
「……何人来ても同じものは同じよ? あなた達もああなりたいの?」
 ペポハロウィンは薄く笑った。
「……同じかどうかは、これから分かる……」
「そうだね。そうやって『同じ』だと思っていたら泣く事になるかもしれないよ?」
 挑発的にこちらに意識を向かせつつ、レイシアはオウガ粒子をクレーエは聖なる光を放って柧魅達を包み込んでいく。
 テレサは竜砲弾をペポハロウィンに叩き込み、ガートルードはバスターソードで斬りつけ、柧魅はグラビティ・チェインを乗せて強力な一撃をお見舞いする。茜のチェーンソー剣による歪な斬撃に合わせてヴィクトルが放った龍の姿をした雷が降り注ぎ、レイシアの強烈な冷気が襲い掛かった。
「ふふっ、どうしてあげようかしら?」
 ペポハロウィンの恋の魔法。時には心の底を抉りに来る。その魔法は恋を知らない柧魅の心を抉り始めた。
「い、いや、オレは完璧だ! 女としても魅力的で完璧なんだ……魅力的……なんだ」
 自信過剰で自画自賛の柧魅。完璧主義で、女としても魅力的で完璧であると信じている。しかし、目の前に現れた己が否定し来るのだ。魅力が完璧だなんて嘘だと。魅力が無いから友人だって少ないのだと。
「柧魅さん、大丈夫だよ」
 クレーエによる快楽エネルギーが柧魅の自身の幻覚と心の痛みを綺麗に消し去っていく。
「……助かった、ありがとう。大丈夫、オレは完璧だ」
 頭を下げる事が嫌いな柧魅も、今回はきちんとクレーエに感謝を伝える。そして、噛みしめるように完璧だと反芻し、ペポハロウィンをキッと睨んだ。
「オレが魅力的で完璧だからって嫉妬したんだろう? そんな嫉妬深い女はこの銀雨が最後に見る景色……かもなっ」
 鋼糸を雨の様にして巻きつけたかと思うと、そこから自身体内水分を練り上げた物を移し、ペポハロウィンの内部から爆発させた。
「切り裂け!! デウスエクリプス!!」
 テレサは神喰の双円刀『デウスエクリプス』を放ちペポハロウィンを切り刻み、そこにテレーゼが炎を纏いながら突撃していく。更にガードルードが飛び込んでワイルド化された左手の指を、巨大な爪状に変化させると予測不能な連続攻撃を繰り出した。
「ぶっ――すり潰れろっ――!」
 茜は頭部にグラビティを集中させ硬化させると音速で踏込み、ペポハロウィンに向かって思いっきり叩きつける。
「コイツにとって俺は哀れなネズミだ。……お前さんもな」
 ヴィクトルのガジェットが猫型に変形しその爪で引き裂き、レイシアが凍結の光を撃ち込んだ。
 悪戯っぽく微笑むペポハロウィンが目に止めたのはレイシア。
「ふふっ、恋に気が付かない感じが初々しいわ」
「危ない!」
 レイシアに向かって降りかかってきた魔法をガートルードが庇い、受け止める。自らの生命力がどんどん奪われていく事が分かる。――死、その言葉が頭を過った。
「……大丈夫だよ」
 その声が聞こえたと同時にガートルードの身体が一気に回復する。そこには煌介の姿があった。向こうの立て直しが終わった様だ。
「……助けてくれて……ありがと」
「ううん、あなたが受けなくて良かった。それに煌介さんもありがとうございました」
 感謝を伝えるレイシアの言葉にガートルードは笑顔で返す。そして、直ぐに回復してくれた煌介にもお礼を伝えた。
「……無事で良かった。流石、季節の死神、か。援軍が来るまで頑張ろう」
 煌介の言葉に皆、頷く。戦力的今が五分五分だろう。だが、こちらには次の救援が待っている。それがチャンスだ。
 総力で粘っている所に、ペポハロウィンに飛び回し蹴りが入る。
「久しぶりだね。オレの手で、かつてのモザイクに苛まれる姿に戻してやろうか?」
 その声の相手をペポハロウィンは知っている様だった。


 24名による総力戦。麻痺を絡めつつ大きな一撃を与えていく柧魅、テレサ、茜、ヴィクトル、ガートルード達。それを煌介、クレーエ、レイシアがサポートしていく。
 繰り広げられるペポハロウィンとの激戦。鋼糸の石化の雨が降り、一斉砲撃と神喰の双円刀が舞い踊り、歪む輝きの剣技と強烈な打撃、弾丸と猫型ガジェットが放たれ、ワイルド化による連撃と渾身の斬撃が叩き込まれていく。一方で次々と凍結の一撃が放たれ重く沈む一撃や蔓が舞い、その時々に合わせた回復や治療も施される。
 次々と受ける攻撃で、確実にペポハロウィンは動けなくなっていた。いくら強力な攻撃と言え、放つ事が出来なければ何にもならない。生命力を奪おうにも直ぐにカバーされ、攻撃の手数の差が段々と出てきた。
「……この私が? いえ、こんな猟犬達になんて……」
 恐ろしい笑みを常に湛えていたペポハロウィンも、確実に余裕が無くなっていっているらしい。だが、ケルベロスによる猛攻は止む事は無い。
「オマエの心にモザイクが残る限り、何も変わりやしないのだからな……砕いてやる。覚悟しろ!」
 真の飛び蹴りから始まる一斉攻撃。蹴り技を中心とした猛攻が叩き込まれて沈められ動けなくなった所に糸が絡められ霜が貼りつき、竜砲弾が次々と撃ち込まれてペポハロウィンの周囲に激しい爆炎が広がった。
 視界が晴れたペポハロウィンの目の前には煌めく輝きと優しい羽根に包まれ強化されたヴィクトル。
「任せたよ、止めを!」
「ああ」
 真の言葉を受け止めたヴィクトルの手の中のガジェットが猫の姿へと変形していく。
「最期が猫の獲物とは……ね。じゃあな、嬢さん」
 放たれたガジェットはペポハロウィンに襲い掛かる。獲物に襲い掛かる猫の様に素早く的確に、目にも止まらぬ連続攻撃により引き裂かれ、ズタズタにされたペポハロウィンは溶ける様に夜の闇の中へと消えていった。失恋の涙にも似た儚い光を最後に残して。
 音すら闇夜に消えた静寂を迎えた次の瞬間、暗闇の空に沢山の花火が花を咲かせた。今までの悪夢をかき消すかのように美しく賑やかに。
「呼び出し用の花火か……俺達も打ち上げようか」
「……うん」
「では、私も派手に参りましょう」
 信号弾花火の用意をする煌介とレイシアの横で、テレサが再びパンジャンドラム姿に戻った。
 次々と闇夜に輝く美しい花火達。その中でテレサも積んだブースターをフル稼働、上空に飛んでいき大きな白鳥の花火が美しく咲く。
 この花火が純粋にハロウィンを楽しむ人達に素敵な物に映る事を願いながら。

作者:白鳥美鳥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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