『赤ずきん』再誕計画~恋のハロウィン・マジック

作者:雷紋寺音弥

●死の泉より来たる
 デスバレス。生命の死を司る冥府の海。その深淵とも呼べる海の底深くにて、集結しているのは無数の南瓜……のような物体だった。
 およそ、死の世界には似つかわしくない、ケーキのような姿をした南瓜の群れ。だが、それが却って異様さを際立て、ただ事ではないことを示している。
「『赤ずきん』や、ようやく準備ができたよ」
 南瓜の化け物に囲まれながら、その中央に座する魔女、ポンペリポッサが呟いた。その傍らには、死神の魔女が3体。その周辺を、無数の南瓜スイーツのような化け物が囲んでいる。
「このハロウィンが、『赤ずきん』を蘇らす事ができる最後のチャンスだ。あたしがハロウィンの魔力を死神に渡せば、ジュエルジグラットは今度こそ終わりになるだろうさ」
 だが、それでも構わないと、ポンペリポッサは続けた。なぜなら……。
「あんたを見捨てたジュエルジグラットなど、何度でも捨ててやるのだから」
 その言葉と共に、3体の死神の魔女、そして数百体の南瓜達も消え、最後にポンペリポッサも消えて行く。後に残されたのは、光の届かない死の海だけ。永遠の闇と静寂が、元のままに佇んでいるだけだった。

●ハロウィンで恋話!?
「まずは、『暗夜の宝石』攻略戦、お疲れ様だったな。生憎、俺は留守番だったが、お前達の活躍は既に地球の全土に知れ渡っているぞ」
 そんな戦争が終わったばかりだが、季節はもうじきハロウィンだ。そして、ハロウィンといえば毎年の如く、その魔力を狙って暗躍するデウスエクスが現れるのも、お約束。そう言って、クロート・エステス(ドワーフのヘリオライダー・en0211)は集まったケルベロス達に、新たなる事件の概要を告げた。
「今年のハロウィンは、死神に合流したポンペリポッサが、魔力を狙って仕掛けてくることが予知されている。ポンペリポッサと3体の魔女死神が、数百体の死神の群れを率いて、季節の魔力の一つである『ハロウィンの魔力』を強奪しようとしているようだな」
 ポンペリポッサの目的は『赤ずきんを蘇らせる』事で間違いない。その目論見を阻止するためにも、ここでポンペリポッサと『死神の魔女』を撃破する必要があると、クロートは改めてケルベロス達に告げた。
「ポンペリポッサ達は、最も盛り上がったハロウィンパーティーの場所に現れて、ハロウィンの魔力を強奪しようとしている。つまり、ケルベロスハロウィンを大きく盛り上げれば、連中はケルベロスハロウィンの会場に現れるはずだぜ」
 ケルベロスハロウィンの会場に敵をおびき寄せてしまえば、一般の人々への被害を抑えつつ、有利に戦う事も可能となる。そのためにも、まずはケルベロスハロウィンの会場を盛り上げてハロウィンの魔力を高め、敵をおびき寄せる必要がある。
「お前達に盛り上げて欲しい会場は、『恋話かぼちゃランタン』の会場だ。なんでも、自分の恋愛話を聞かせながら、ランタンの口に手を突っ込めば、返事のようにメッセージカードが出てくるようなんだが……」
 生憎、自分は恋愛関係に疎く、良いアイデアが浮かばない。が、それらの話を得意とする者であれば、会場を盛り上げることも用意だろうとクロートは続け。
「この会場に現れる敵は『昏迷のペポハロウィン』という魔女らしいな。最も盛り上がった会場には、こいつが直接現れ、直ぐに戦闘へ突入する。残りの場所にはポンペリポッサと死神の魔女達によって生み出された、『南瓜うにうに』という死神の群れが12体出現するようだ」
 昏迷のペポハロウィンと直接戦う事になったチーム以外は、この死神の群れを素早く撃破し、昏迷のペポハロウィンと戦うチームの援護に向かう必要がある。なぜなら、昏迷のペポハロウィンに限らず死神の魔女は、目の前のケルベロスを全て撃破すると、高められた大量のハロウィンの魔力を奪って撤退してしまうからだ。
 幸いにして、『南瓜うにうに』はハロウィンの魔力が大好物であり、パーティーが大きく盛り上がった場合は、ハロウィンの魔力を集めるのに夢中になってしまう。そのため、自分がダメージを受けるまでは戦闘に加わらないので、この特性を上手く利用して各個撃破を狙うか、あるいは無視してしまうことも可能である。
 目標は、あくまで死神の魔女を撃破すること。雑魚を倒すのに躍起になって、魔女に逃げられては元も子もない。
「ビルシャナ大菩薩の次は、ポンペリポッサが現れるとは……次から次へと、面倒なことだな。だが、『魔女の力を得た死神』が生き延びれば、それ以上に厄介な事態になるかもしれないぜ」
 年に一度のハロウィン。楽しい祭りに、涙は不要だ。
 そう言って、クロートは改めて、ケルベロス達に死神の魔女の討伐を依頼した。


参加者
七星・さくら(しあわせのいろ・e04235)
コクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)
チェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)
獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)

■リプレイ

●恋話パーティ!
 巨大な南瓜ランタンを中心に、大きな盛り上がりを見せるハロウィンパーティ。でも、今年のハロウィンは、ちょっと違うぞ。なぜなら、恐い話ではなく、恋の話をランタンに聞かせて欲しいのだから。
「トリックオアトリート! 甘いお菓子の代わりに、甘い恋のお話を、かぼちゃランタンに語りませんか?」
 会場でイベントの運行を取り仕切るのは、司会役を務めるルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)だ。もっとも、いきなり恋の話を聞かせて欲しいと言われても、なかなか勇気が出ないもの。そんなわけで、彼女は自分の話を最初に語ることにした。
「わたくしの恋話は、片想いのお話です……」
 一瞬、会場が静かになった。最初の話だというのに、いきなり悲しい失恋話が始まるのだろうか。誰もが、不安そうにしていたが、しかしステージに立つルーシィドは笑顔だった。
「その人は、最初は近づき難くて嫌われているかもって思っていたけれど、それは人と親しくすることを怖がっているだけだと知って、だからずっと側にいて、今では親友と呼んでくれるようになりました」
 本当は、親友ではなく、もっと深い関係になりたい。でも、それを言うのは、今ではない。
「いつか、この気持ちを言えたらいいなって、思ってるんです。内緒ですよ?」
 そう言って、ルーシィドは南瓜ランタンの口に手を入れた。中から出て来たカードには、『頑張って! その機会が訪れることを祈っている』と書かれていた。
「恋話か……玉砕でも良いだろうか」
 片思いでもOKということで、少しばかり勇気を得たのか、続けてランタンに手を入れて語り出したのはコクマ・シヴァルス(ドヴェルグの賢者・e04813)だ。
「ワシは大昔……遥かに高嶺の花の女に恋したことがあった。今で言うならば良い所のお嬢様でな。その家の父に認められ得る為に、多くの支援や奉仕をしてきたのだ」
 そうして約定を取り決めたがいいが、残念ながら女性の方が上手であった。彼女からすれば、コクマは遊び……否、体の良い便利屋と財布代わり程度にしか思っていなかったのかもしれない。
「最後の最後に、騙されて捨てられてしまったわ。それでも……ワシにとってまさに輝かしい月の如き美しき人であった……」
 どう考えても、相手の女は完璧な悪女だ。しかし、どこか遠い目になりつつも、最後まで憎み切れないのは、一度でも愛した相手であるが故か。
「そんな悲恋もあるという事よ。だが、ワシは今も生きておる! まだ負けぬぞーーー!!」
 いったい、お前は何と戦っているんだ。そんな言葉も聞こえて来そうな気がしたが、それはそれ。
 ちなみに、ランタンの中から出て来たカードには、『負けるな! チャレンジあるのみ!』と書かれていた。
「は~い、幸せのお裾分けよ!」
「失恋した人も気にしな~い! このハート型の南京錠を展示ブースにかければ、漏れなく恋の願いが叶っちゃうかも!? 一番素敵な恋話を聞かせてくれた人には、豪華賞品も出ちゃいま~す!」
 七星・さくら(しあわせのいろ・e04235)が空を飛びながら菓子をばらまき、プラン・クラリス(愛玩の紫水晶・e28432)は縁結び神社さながらに、恋話の企画を盛り上げて行く。お菓子に惹かれてか、あるいは豪華賞品に釣られてか、いつしかランタンの周りには、たくさんの人が集まっていた。
 この調子なら、イベント成功間違いなしだ。ちなみに、一般の客に混ざって、こっそりコクマが南京錠を貰いに来たのは秘密である。

●甘い雰囲気に釣られて
 恋愛というのは、いつの時代も自分の思い通りになることの方が少ないもの。場合によっては、両想いであっても他者の介入によって、恋が実らないこともある。
「あれは、高校の臨海学校の時だったわね……」
 獅子谷・銀子(眠れる銀獅子・e29902)が語るのは、遠い過去の日の切ない記憶。
 友人の協力で気になる男子へ告白の場を用意してもらい、お気に入りの水着に着替えて、後は想いを告げるだけ。
 だが、いざ告白となった瞬間、銀子は突如として現れた両親によって、無理やり実家に連れ戻された。
「こう見えても、実家が忍者の家系だったからね。修行サボってたのがバレて、連れ戻されちゃったわ」
 修行をサボった自分も悪いが、しかし子どもの学校行事を中断させてまで修行を強いるなど、親としてはどうなのか。そんなこんなで、銀子が猛烈に怒り狂ったのは言うまでもなく、両親とは1週間近く口を聞かなかった。
「まあ、そんなわけで、告白のチャンスをフイにしちゃったのよね。彼は今、どうしてるかな……なんてね」
 できることなら、会ってみたい。しかし、思い出は思い出のまま、心の奥にしまっておいた方が良いかもしれない。悩む銀子にランタンが渡したカードの中には、『自分に正直になりなさい』と書かれていた。
「私には恋人、いるのです」
 そんな中、機理原・真理(フォートレスガール・e08508)は何ら恥じらうことなく、自分に恋人がいることを宣言した。
 クールビューティな彼女のこと。いったい、どんな素敵な男性の話が聞けるのだろう。思わず、そんな期待を込めた視線が真理へと集まるが。
「可愛くて、私の事の大好きで居てくれるサキュバスの女の子なのですよ。私よりずっと女の子らしくて、柔かい感じが可愛くて、リボンとかが似合う子なのです」
 なんと、真理の恋人は、異性ではなく同性だった。
 だが、それが何だというのだ。今のご時世、同性のカップルなど珍しくもない。世間の一部は変な目で見るかもしれないが、それでも真理は相手のことを、互いに背中を預けるパートナーでもあり、最高の恋人でもあると考えており。
「……本当に、愛してるのです」
 小声で呟きながらランタンの中にあるカードを引けば、そこに書かれていたのは『素敵な人を、大切に』の文字だった。
「恋っていうのは、不思議な力を持っているものよ。大切な人に、喜んで貰いたいっていう気持ちは大事よね」
 そう言って、次にランタンへと手を伸ばしたのはさくらだ。そんな彼女の恰好は、夫のリクエストでセーラー服。年齢のことを考えると少しばかり恥ずかしかったが、それでも今日は気にしない。
 なぜなら、好きな人が喜ぶ事をしたい、幸せな顔が見たいと思うと、不思議と何でもできるから。そんな話を、もっと聞きたい。そう言って他の者に場を譲ろうとしたさくらの手には、『末永く、お幸せに!』の文字が刻まれていた。
 イベントの盛り上がりは最高潮。いよいよ、ケルベロス達の恋愛話も、とっておきを語る時だ。
「今俺の隣にいる妻のチェレスタ……最前線に赴く俺をいつも見守り支えてくれた」
「小さい頃からずっとルーディに憧れていたんです。とても強くて頼もしくて…そして優しくて……」
 リューディガー・ヴァルトラウテ(猛き銀狼・e18197)とチェレスタ・ロスヴァイセ(白花の歌姫・e06614)が語るのは、何を隠そう彼ら自身の物語。
「このお守りも、彼女が俺の身を案じて作ってくれたものだ。彼女がいるから、俺は何も恐れず戦える。心はいつも傍にある」
「辛いことがあっても、彼が傍にいてくれるから頑張れる。これからも互いに支えあって生きてゆきたいです」
 やはり、夫婦というのは良いものだ。恋愛の先にある結婚。そして、その先に待っている未来。全てを語った二人の手には、『二人の未来に幸あれ』と刻まれたカードが握られており。
「う~ん、羨ましいわね。私は、恋人が居る訳じゃないし……」
 これまでの者達に比べると、自分は大した話ができないかもしれない。それでも、たまに会いたい人はいるので、その人の無事を祈って水垢離をしていると、プランが告げた時だった。
「あら、随分と楽しそうじゃない。……気に入ったわ」
 突然、降って湧いたように現れた、一人の魔女。仮装ではない。正真正銘、本物の魔女だ。
「現れたわね……」
 身構えるさくら。その間に、リューディガーを中心とした他の者達が一般人を避難させ、会場が戦場へと変わって行く。
 全ては『赤ずきん』を、再びこの世界に出現させるため。昏迷の魔女との戦いが、ここに盛大なる幕を開けた。

●昏迷の魔女
 恋の魔法を操ると自負するぺポハロウィン。だが、その攻撃手段は恋愛に偏っているものの、なかなかどうしてえげつない。
 恋の魔法に罹ったが最後、まるでペポハロウィンが自分の恋人のように思え、彼女ために戦いたくなってしまう。失恋の記憶を掘り起こされれば、それは情け容赦なく心を穿ち、失恋の経験をしたことがない者であれば、親しい人の影が目の前に現れては罵倒の限りを尽くして心を抉って来る。
「あら、もう終わり? 地獄の番犬なんて名乗っている割に、大したことないのね」
 余裕の笑みを浮かべるペポハロウィンだったが、ケルベロス達は、実際に言い返すこともできなかった。
「私は……あの時、あなたに何も……」
 学生時代の少しばかり苦い思い出は、銀子の前に彼女を蔑み貶める影として歪められた形で現れた。
「くっ……これは幻覚だ! 俺の妻は、ちゃんとこの場に……」
 ふと、後ろを見てチェレスタの無事を確認するリューディガーだったが、その間にも目の前にいるチェレスタと同じ姿をした影が、彼の事を何度も詰った。それこそ、普段の彼女からは想像もできない毒妻となって、しかし同じ声と顔で罵倒して来るのだ。
「くっ……騙される方が悪いだと!? そんな男は三流以下だと!? ……お、大きなお世話だぁぁぁっ!」
 コクマに至っては、以前に騙され、こっぴどくフラれた女性の影が現れたことで、完全に自分を見失っている。高飛車な女王の如き態度から放たれる侮蔑と嘲笑は、それだけで彼の心を蝕んでは、肉体にまで影響を及ぼす傷を刻んで行く。
「これは幻です! 皆さん、目を覚ましてください!」
 恋には恋で対抗すべしと、チェレスタが愛しい想いを歌にして紡ぐも、それで全てが払いきれるはずもない。複数の仲間をまとめて回復させるという技の性質上、狙った相手だけに効果を発揮させるのは難しい。
「マズイわね……。こっちには、ピンポイントで回復を届けられる人がいないっていうのに!」
「今のところ、こちらにまで攻撃は飛んで来ませんけれど……このままでは、やられてしまいますわ」
 さくらとルーシィドが牽制に雷弾やビームを放つも、ペポハロウィンに決定打を与えるには至らなかった。それだけ、彼女の力は強大であり、見た目以上の強敵であるということだ。
「やってくれるね! だったら、あなたにも悪夢を見せてあげるよ!」
 他人の夢や記憶を歪めるのであれば、その痛みと苦しみを、そちらも体感するがいい。プランの放ったトラウマボールがペポハロウィンに迫るも、ペポハロウィンは難なくタイミングを合わせると、魔法の力を炸裂させて、見事に攻撃を相殺してしまった。
「一応、個々人で立て直せるようにはしてありますけれど……」
 気合で負傷を吹き飛ばし、真理が立ち上がる。回復の行き届かない部分は個人で対応して行くしかないが、それはあくまで最後の手段。あまり多用すれば、それだけ攻撃の手が減ってしまい、付け焼刃の延命措置になるだけだ。
「ああ、もう飽きて来たわね。面倒なことになる前に、早く片付けちゃおうかしら?」
 ペポハロウィンの口元に、微かに邪悪な笑みが浮かんだ。今までのが牽制や小手調べだとしたら、ここから先は本気で殺しに掛かって来るということか。冗談抜きで誰かが犠牲になるかもしれない状況だったが……運命を覆す救援が、間一髪で到着した。
「そこの死神、オレ達の事も忘れるんじゃないぞ!」
「好き勝手に等、させたりはしない」
 飛来する蹴りと弾丸の嵐が、ペポハロウィンの動きを抑える。だが、多少のダメージなど、ペポハロウィンは気にしない。
「あら、急に相手の数が増えたわね。でも、何人相手であろうと一緒よ?」
 ペポハロウィンの顔に、薄い笑みが浮かんだ。しかし、ケルベロス達も負けてはいない。
 勝負はこれから。まずは体勢を整えてから、第二ラウンドの始まりだ。

●恋の魔法は打ち上げ花火
 パーティ会場で繰り広げられる死闘。程なくして第三の班も合流した時には、ペポハロウィンは既に殆ど動けなかった。
「くっ……指が……震えて……」
 戦いを通じて受けた麻痺毒や石化の呪詛が、ここに来て猛威を振るっている。いかに強力な攻撃を持つペポハロウィンでも、攻撃を放てなければ、いずれは手数の差で押し負けてしまうのは当然だ。
「……この私が? いえ、こんな猟犬達になんて……」
 もはや、ペポハロウィンには欠片程の余裕もなさそうであり、そしてケルベロス達が、そんな好機を見逃すはずもない。
「よし、私が押さえるわよ!」
 まずは敵の目を引き付けるべく、銀子がペポハロウィンに猛突進! 猛烈な組み付きで敵の意識を自分に集中させたところで、続け様に放たれるは蹴りと拳の嵐だった。
「そろそろ、魔女にはお引き取り願うのですよ」
「どうせだったら、女王様の蹴りを試してみる? ……なんてね!」
 真理とプランを始めとした、様々な者の蹴りが左右から炸裂し。
「ワシにとって辛い話を良くもさせてくれたな! 我が怒りの炎を味わえ!!」
 コクマの拳が炸裂したところで、あまりの猛攻に敵の身体が大地へ沈んだ。
「……どこにもいっちゃ、だめよ。ずーっと、ここにいて? ね?」
 傷口から、突如として現れる赤い糸。さくらの放つ魔法の枷は、身動きの取れないペポハロウィンを縛り上げ、更に動きを封じて行く。しかし、まだ攻撃は終わらない。
「度を越した悪戯をする悪い子にはお仕置きですわ!」
 ルーシィドの杖が小動物に変じて放たれると同時に、他の者達も一斉砲撃! もはや、ペポハロウィンは満身創痍。最後の一撃をと狙う仲間へと、リューディガーとチェレスタは、それぞれに満月の如き光球と、賦活の電撃を力として授けた。
「俺達の力だ。遠慮なく持って行け」
「お願いします。この輝きが、少しでも助力にならんことを……」
 二人からの力を授かって、繰り出されるは機獣の攻撃。巨大な猫の如く狡猾で残忍に、獲物を仕留めるハンターが顕現する。
「最期が猫の獲物とは……ね。じゃあな、嬢さん」
 そう、ガジェットの持ち主が呟いたと同時に、彼のガジェットが巨大な猫へと変化した。
 繰り出される爪、爪、爪の連撃。ズタズタにされたペポハロウィンの身体は、悲鳴を上げる間もなく夜の闇へと消えて行く。
「お、終わったの?」
「ええ……どうやら、そのようですわね」
 さくらの問いに、ルーシィドが答える。見れば、空には彼らの健闘を称えるかの如く、美しい花火が上がっていた。

作者:雷紋寺音弥 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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