米に肉を乗せるということ

作者:星垣えん

●丼1杯のしあわせ
 昼に飯を食うならば、ガツンと食いたいものだろう。
 日が高く、まだまだ1日の終わりは見えない午後1時。
 昼食を求める人々が行きかい、あるいは腹を満たした人々が再始動を始めようという午後の街――そこにあって一際、吸い寄せられるように人が入ってゆく店があった。
 小ぶりな黒い外観。
 店前にはランチタイム用の立て看板が置かれていて。
 そして店の扉にはでかでかと『丼』という文字が、赤丸で囲まれていた。
 ――どう見ても丼物を専門とする料理屋だった。
「あぁーー。今日も肉が美味い……」
「お米も粒だってて……」
「つやつやの白米を汁だくにして食うのって、なんてこんなに美味いんやろ……」
 店内はカウンター席も座敷席も、丼をかっこむ客の満たされ顔で溢れている。口の中にある肉と米をむぐむぐと味わっては、また次の美味を求めて箸を丼に突っこむ。
 店のメニューは丼物専門店として恥ずかしくないものだった。牛丼やカツ丼、豚丼や鶏丼、親子丼やらステーキ丼やらカルビ丼、鶏照り焼き丼やスタミナ丼等々……腹を空かせているならば食いたくなるものがどれかひとつはあるだろう。
 肉を食い、
 米を食い、
 舌と腹を満たす。
「最高だな……」
「腹一杯ですわ。っし、続き頑張るか!」
「やっぱり人間、肉を食わないとな! 肉を!」
 1日の残りを突っ走る活力を得た人々が、溌溂と席を立つ。
 しかしそのときである。
 店外のほうから、ずどどどど――とやたらうるせえ足音が!
「うおおおおおおお! この俺がいる限り、肉と米とかいう悪魔的コラボレーションなど死んでも許さな――」
 鳥だった。
 こと丼となれば牛に一歩先んじられてしまっているのが気に食わないのか、鳥が怒り狂って店に転がりこんで、ランチタイムを台無しにしたのだった。

●米に肉とか最強じゃないですか
「お財布の用意は完了です~っ」
「お前、もう明らかに食うことしか考えていないだろう」
「だってそういうお話では??」
「まあそうだが……」
 真剣に首を傾げたセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)に、ザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)はいきなり何かを諦めた。
 それを目撃した猟犬たちは思う。
 あ、これ鳥の案件やな、と。
「そう、お前たちの察したとおりビルシャナが現れることを予知したのだ。場所は丼物専門とする料理屋で、信者は1人もいないようだな」
 なるほど、とこの手の案件に通じた猟犬たちは深く頷いた。
 これ飯メインだなって。
 例によって求心力ゼロだった鳥さんを秒で葬り、本丸に突っこむ仕事だなって。
 実際もうセレネテアルは説明とか放り出してふらふらと踊りはじめていたし、間違いないかなって思う一同だった。
「まあ今さら、真面目にビルシャナを倒してこいとは言わん。どのみち労せずして倒せる相手だろうしな。だから……思う存分、肉と米を堪能してこい」
 ヒャッハー! 肉だー!
 と口には出さないが心の中でガッツポする猟犬たち。
 夢想するは、輝かしい白米の上にこれでもかと盛られた肉の山だ。
 牛肉の脂とコクが絡んだ米は美味いだろう。
 豚のさっぱりした食感を濃い目の味付けでいただくのも悪くない。
 とろっとろに卵が絡んだ親子丼は反則ではないだろうか。
 一同、思わず、じゅるりと垂涎してしまいました。
 それを覚悟完了と見た王子は、颯爽とヘリオンへ歩き出す。
「では行くぞ! 乗り遅れた者は置いてゆくからな。丼を食いたくば、急いで私のヘリオンに乗ることだ!」
「ほら急いでください~! お腹がすいちゃいました~っ」
「私より早く乗っている!?」
 もうセレネテアルがヘリオンに乗っていた。乗りこんで正座待機していた。
 ちなみに、その後すぐに猟犬たちが王子を押しのけてヘリオンに雪崩れこんだのは言うまでもないですよね?


参加者
ユーフォルビア・レティクルス(フロストダイア・e04857)
ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)

■リプレイ

●クラッシャー10枚だと事故る
 まずは往来に佇む小さな丼屋さんを思い浮かべよう。
 そこに仁王立ちする円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)を加えてみよう。オルトロスのアロンも周囲を駆け回らせてみよう。
 最後に、彼女の足元で股間を押さえて悶絶している鳥さんを追加してほしい。
 今それ。
「Oh……」
「わたしたちをここに招き、程よくお腹を空かせるための運動相手になるというあなたの仕事は終わったわ。ご苦労様」
 声ならぬ呻きを発する鳥を、キアリは静かに見下ろす。
 つい数秒前に自らが金的蹴りをぶちこんだ相手を見る目ではなかった。
 鳥さんはよろよろと膝立ちになり、キアリにしがみつく。
「ど、どうか台詞の一言ぐらい……」
「引き際は知るべきよ」
「台詞とかいる? さっさと倒しちゃいましょうよ」
「血も涙もないっ!!」
 キアリの容赦ない返答と、アームドフォートの砲身をちらつかせるローレライ・ウィッシュスター(白羊の盾・e00352)に震えあがる鳥。シュテルネ(テレビウム)も凶器を携えてチラ見してくるし、人生という道にシャッターが下りる気配がある。
(「逃げなくては……!」)
 自分の処理方法について話してるキアリとローレライから、鳥さんはそーっと後ずさって離れてゆく。
 が、1mほど後退したところで、その背中は誰かの脚に当たった。
 後ろにいる相手の顔が見えるわけもない。
 しかし鳥さんはその瞬間、汗が噴き出すほどの圧を感じた。
「私の食事の邪魔はさせませんよ~」
 すぐ後ろに立っていたのは、笑顔の裏から凄まじい威圧感を覗かせるセレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)だった。
「早くお肉が食べたいですっ。だからさあ、早くっ!」
「早くどうしろと!?」
 セレネテアルから、ささーっと離れる鳥さん――が自分の前までやってきたのでルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)はとりあえず拳骨をお見舞いした。
「えいやっ」
「ぐべっぷ!?」
 炸裂するオウガの腕力。
 鳥さんはドリルのように脚からアスファルトに沈み、上半身だけ出た状態で地面に囚われた。
「くっ……は、はまっとる!?」
「いま殺す! すぐ殺す! さっさと消え失せなさい!」
「ひぃぃっ!?」
 刃物(フェアリーレイピア&ゲシュタルトグレイブ)を振り回した不審者に猛然と近づかれ、脱出を頑張るけど抜けやしない。
「裂き咲き散れ!」
「アァーーッ!?」
 さながら列車事故のように、ミリム・ウィアテスト(リベレーショントルーパー・e07815)のグラビティでぶった切られる鳥さん。
 そのまま猟犬たちに殺到されて徐々にお亡くなりになるさまを、栗山・理弥(見た目は子供気分は大人・e35298)は遠巻きに見つめていた。
「うん、その……扱いが雑なのは謝るけどさ、丼に喧嘩売るお前も悪いよ……」
「だからって1羽を大勢で殴るのは許され――」
「邪魔だーっ!」
「コウトウブッ!!?」
 ずっこーん、と鳥さんの背中にユーフォルビア・レティクルス(フロストダイア・e04857)の飛び蹴りが命中した。その勢いで後頭部を踏んで10点満点の着地をすると、シャドウエルフは(しゅわしゅわ消滅を始めた鳥を)振り返りもせずに店に突入してゆく。
「くっ、行かせません! 店内カウンター席に一番乗りで座りオーダーするのはこの私です!」
「私も食べるわよ! 肉をたくさん食べるわよ!」
「美味しい米と肉が私たちを待っています~っ」
 ユーフォルビアを追い、丼屋へ雪崩れ込んでゆくミリム、ローレライ、セレネテアル。
 そんな仲間たちの背を見届けて、シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)は悠々と店の扉をくぐった。
「野菜もいいけど、たまにはお肉も食べないとですね」
 たくさん中身を入れてきた財布を覗いて、再び閉じるシフカである。

●期待する分、減ります
「はい! 親子丼を頼みます! この名古屋鶏を使ったやつを!」
 カウンター席に滑りこむなり、ミリムは秒で手を突き上げていた。執念で一番乗りを果たした女はその鬼気迫っていた姿で店員を引かせ、しかし満足そうなドヤ顔である。
 しかし言っておこう。
 一番を求めていたのはミリムだけだったということを!
「じゃあ、何を食べようかっ」
「うーんメニューがたくさん……何を頼もうか悩んじゃうわ!!」
「ん~……王道の牛丼やカツ丼、惹かれます~っ」
「ふむ、これではお腹のほうが足りなくなってしまう気がするな。でもひとつには決められそうにない。とても困った」
 何気なく話題を切り出したユーフォルビアの言葉に、頭を悩ますローレライとセレネテアル、そしてルイーゼ。目に見えるどれもが美味そうで、3人は究極の選択を迫られている気分を味わっていた。
 30秒ぐらいですけどね。
「私はローストビーフやカルビ、ステーキ全部乗せでいくわ! ご飯は特盛でね!」
「牛丼カツ丼にも惹かれますが、まずはステーキ丼です~!」
「うむ……こうなったらわたしはミニ丼食べ比べセットで頼もう」
「ボクはシンプルに牛丼で」
 迷いが晴れた顔で、しゃきっとオーダーを通すローレライたち。注文すればあとは待つばかり、と椅子に座ってそわそわする作業へと突入する。
 一方、理弥はメニューを見もしなかった。
「ここはカツ丼で! こないだ刑事ドラマ観てたら、取り調べでのお約束のカツ丼が美味そうだったからな、食いたいと思ってたところなんだ」
「取り調べでカツ丼……ずいぶんと古典的ですね」
「ああ、昭和のドラマだからなー」
 シフカの珍しがるような言葉に、気持ち胸を張る理弥。以前ビルシャナに対処するために昭和刑事ドラマに触れた彼は、そのまま普通にハマっているのだった。
「ご注文はどうなさいますか?」
「あ、私は牛丼をご飯普通盛りのつゆ多めで。あとサラダお願いします」
 店員さんにさらりと答えるシフカ。サラダのところをしっかり強調した彼女は、引っこんでゆく店員さんを見送ってから、近くの床に視線を落とした。
 そこには――。
『――♪』
 テーブルの周りを、黒い仔猫がアロンと一緒に円を描いて駆けまわっていた。
 何を隠そう。鶏唐タルタル丼を注文したきり、期待と興奮でいてもたってもいられず動物変身してしまったキアリさんである。
『お肉、お米♪ お肉、お米♪』
「……お腹、すいてきましたね」
 ちょこちょこ踊りまわるキアリを視線で愛でながら、シフカは鳴りそうなお腹を撫でるのだった。

●何という食レポ
 上質な出汁の効いたとろとろ半熟卵と、柔らかくもぷりっとした鶏肉。
 それを炊き立ての白米に絡めて口に入れれば――ミリムは顔のあらゆる筋肉を緩めるしかなかった。
「ん~! 甘味が効いた玉ねぎ! 黄色の中にちょんと浮かぶ三つ葉の色合い! さらにその上からかける山椒のアクセント! たまりません!」
「照焼きもよいものだが鶏の丼と言えばやはりこれこそ王道だろう。下味しっかりのもっちりモモ肉、半熟でとろとろの玉子……次の一口が止まらない」
「味が染みこんだご飯も最高です……!」
 ミニ丼で頼んでいたルイーゼともども親子丼を頬張り、満足の熱い息を吐くミリム。
 ともすれば肉を食べすぎたり、味の染みた米を食べすぎたりしてしまいそうで、バランスよく食べ進めるのは鳥を倒すよりも難しかった――とは後の談である。
 猟犬たちが注文した丼は、速やかに眼前に届けられていた。
 ほかほかと湯気を昇らせる米を、その上に乗っかるがつんと肉厚なステーキと一緒に噛みしめて、ローレライとセレネテアルは頬をほのかに染める。
「何なのよ、この美味しさ! こんなもの……食べるしかないじゃない!」
「ご飯とお肉という罪作りな組み合わせ……! 美味すぎますっ」
 牛肉の力に戦慄するローレライとセレネテアル。
 ステーキは何をかけずとも米と合うぐらい下味が効いて最高に美味いのだが、さらにかけられたソースがまた絶妙に米が進む味で、2人が持つ箸は永久運動を繰り返すしかない。
「食べ放題じゃないのが残念なぐらいよ!」
「お肉とお米を別々に食べるのも美味しいですが、肉のうまみが浸透したご飯は普段とはまた違った美味しさを感じられます~!」
「いやあー2人ともすごい食べっぷりだね」
「丼の中身がどんどん減ってますね」
 かっ喰らうという表現が似合うローレライたちを横から見ながら、むぐむぐと牛丼を頬張るのはユーフォルビアとシフカである。
 丼の王道ともいうべき牛丼――それもまた美味かった。何枚も重なった薄切りの牛肉は濃厚な汁との絡みが抜群で、粒だった白米と合わさった日には舌も腹も幸せである。
「牛丼の後味をサラダでリフレッシュさせ、また牛丼を食べる。いけませんね、私の丼もどんどん減っていきます」
「ほら見て。ダメもとで頼んでみたら、カレ牛もいけたよ」
「カレーですか」
 サラダをしゃきしゃき食べていたシフカが、差し出されたユーフォルビアの丼を見て感心する。美味い牛丼に美味いカレーがかかって不味いわけもなく、ユーフォルビアは大きく一口食べると、緩んでしまう頬をすりすり。
 そして、鶏唐タルタル丼を無心で食べていたキアリ(人に戻ってる)も、口にひろがる味に陶酔するかのように呆けていた。
「うん、美味しいわ。サクサクの衣にジューシーな鶏肉が最高ね」
 言いながら丼に箸を突っこむキアリ。コクのあるタルタルソースがまた良い塩梅で、程よい酸味が舌をスッキリさせてくるので、抵抗なく二口三口といけてしまう。
 とろっと柔らかな卵にとじられたカツを食う理弥も、ハイペースで食いつづけている。
「うん、肉が柔らかくてうまい! 卵とタレでしっとりしてるカツもまたいいよな。味のしみたご飯もうまいし、これなら犯人が落ちるのもわかるぜ……今は利益供与に当たるからダメらしいけど」
 誰にともなく言いながら、またカツ丼を一口頬張る理弥。統一された柔らかな食感は口の中で渾然一体の旨味となり、食っても食っても手は止まらない。
 と、そんな理弥を見て、キアリはふと素朴な疑問を抱く。
「……そういえば、オルトロスは玉ねぎを食べても大丈夫なのかしら……?」
 ちら、と足元を見下ろすキアリ。
 アロンは与えられた特盛カツ丼に、一心不乱にがっついていた。
 うん、大丈夫だねこれ!

●食い足りねえんだ
 美味いものは無限に食える。
 そう言わんばかりに、キアリやセレネテアル、ローレライやミリムの食いっぷりは留まるところを知らなかった。
「お肉とお米の奏でるハーモニー、至福ー♪」
「お箸が止まりませんね~」
「戦った後のご飯最高!」
「あ、ローレの食べてるやつ美味しそうですね。私も注文します!」
 無意味にハイタッチしたり追加注文したり、ヒートアップしてゆく4人。
 咲き誇る花のように盛られたロゼ色のローストビーフ丼や、甘辛いタレの照りが食欲をそそる炭火焼き豚丼をもぐもぐするキアリはいつ踊り出してもおかしくない恍惚顔だ。セレネテアルも背徳のカルビ丼との戦いはもう何戦目かわからない。
「厚い牛肉とお米、何て強力なコンビネーション! さすがローレ、やりますね……」
「親子丼も犯罪的な美味さじゃない! ミリムも抜け目ないわね……」
 ミリムとローレライに至っては、互いが頼んだ丼を新たに注文してもぐもぐ。テンションがおかしくなってさっきから称賛リレーばかりしてやがる。
「みんなどんだけ食うの……?」
 カツ丼を完食してから、ずずっと茶を飲んで食後モードだった理弥は、彼女らの食べっぷりに少し圧倒されていた。手早く腹いっぱいになれるのも丼のいいところ――と席を立とうとしたのは20分前のことである。
 ミリムは理弥の視線に気づくと、くわっと目力を発した。
「よく動き回る分、私達はよく食べるのです!」
「中学生は成長期、食べ盛りだもの」
「うむ。カロリーは成長のための必要物だからな」
 キアリとルイーゼももぐもぐしながらミリムに同調。ちなみにルイーゼちゃんはさっぱりジューシーなローストポーク丼をお食べになっています。
 理弥は、ハッとなった。
「……そうだな、女子に負けてちゃダメだよな。俺もやっぱ牛丼追加で! つゆだくで頼む! あとローストビーフ丼も!」
「その意気ですよ、栗山さん!」
「食べないと大きくなれないものね」
「ともに成長しよう、栗山せんぱい」
 何だかやる気になった理弥の背を、ぽむぽむ叩く3人だった。
 一方、ユーフォルビアは一風変わった丼を食べていた。
「んー、ご飯の代わりにサンチュを使ってるんだねー。これがヘルシー丼かー」
「聞き捨てなりませんね」
 何やらユーフォルビアが注文して食べていた丼を覗きこむシフカ。
 中身は、ユーフォルビアが言っていたとおり野菜を用いた丼だった。ご飯でなく青々としたサンチュが盛り込まれ、その上に濃いめの味の肉が被さっている。見た目にもだいぶヘルシーで、野菜料理と言われればそう見える。
 となればシフカは、店員さんを呼ぶしかなかった。
「すいません。このヘルシー丼、とりあえず10杯ください」
「10杯…………ですか?」
「10杯です」
 キリッとするシフカ。
 割と野菜のために生きている――そんな女がヘルシー丼を前にして、常識人枠でいられるはずもなかったのです。
 慌てて厨房へ駆けてゆく店員さん。
 そのパタパタ足音を聞きながら、ルイーゼはミニ牛丼をじっくり味わっていた。
「玉ねぎは硬すぎず柔らかすぎずの絶妙な加熱具合。牛肉も脂の甘さが際立っている……! そして汁にもへたらない粒立ったご飯。実にすばらしい」
 むぐむぐ、ごくん。
 和牛100%の牛丼は、まったく至上の味わいでした。

●ごちそうさま
 あれから小一時間。
「ふぅー。食べたわね」
「もう入らないかなー」
「今日はいい日でしたね」
「こんなお仕事があったらまた来たいわ」
 温かなお茶を啜りながら、ローレライにユーフォルビア、ミリムとキアリはのんびりと休憩していた。さんざっぱら肉と米を放りこんだお腹は、もうずいぶんと大人しい。
 たっぷり丼も味わったし、そろそろ切り上げどきである。
 シフカは厚くなった財布を持ち出し、クールに微笑んだ。
「お勘定といきましょうか。ちなみに私は全員分払えるぐらいは持ってきてます」
「ふっふっふ、私も軍資金は十分ですよ~」
「わたしも、お財布は厚くしてきた」
 大量のキャッシュで立派に太った財布を掲げ、にやりと笑むセレネテアルとルイーゼ。全員分をまとめてお会計したら結構な額だったけど、おかげで顔が青くなる人が出たりとかそういう問題は全然なかった。
 問題があるとしたら――。
「食いすぎて動けねぇ……」
 男のプライドや成長云々のために、理弥が盛大なキャパオーバーを起こしていたことぐらいです。
「栗山せんぱい。食事は適切な量がいちばんだぞ」
 ルイーゼがさするドワーフのお腹は、見事にぽこっと丸かったとか。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月9日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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