拾った分だけ持ち帰れる

作者:星垣えん

●羽毛>栗
 秋。
 その味覚の代表候補と言えば、やはり栗である。
「はー。やっぱこの時期にもなると寒いねー」
「うぅー……もっと厚着すればよかったー……」
 農園を訪れた2人組の女性が、秋風に身震いしながら草葉の地面に目をこらす。
 関東北部に位置するこの農園は、栗拾いスポットとして人気だった。大ぶりな栗がごろごろと転がっているさまはそれだけでお客さんの心を躍らせ、さらに隣接する山の赤々とした景観も実に美しかったからである。
 もちろん、栗もほくほくと口当たりが良く、糖度も抜群。
 栗を得ながらにして、ちょっとした観光気分にも浸れる――とあれば、人が集まらないわけもなく、本日も農園は盛況だった。
「あ、栗あったー」
「今日かなり取ったんじゃなーい?」
「早く栗ご飯にして食べたい……!」
 家族連れから友達グループ、カップルまで。
 農園はその日の肌寒さとは裏腹に、大勢の人々で賑わっていた。
 しかし!
 だからこそ!
 やってくる奴がいる!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「え! なになに!?」
「山のほうから雄叫びが……!」
 色づいた山から聞こえる漢の咆哮に、客たちが一斉に振り向く。
 すると咆哮はどんどん近づいてきて。
 そのうち地面も揺れて、栗もころころしだす始末で。
「貴様ら誰の許しを得て栗さんをさらってゆくつもりだァァ!! 俺が……俺がいるうちは…………カドワカシなど許さんからなァァァァ!!!」
「きゃあああああ!!?」
「に、逃げろぉぉーー!!」
 1羽の鳥が、山の斜面を転がり落ちる勢いで農園に突っこんできた。
 鳥さんは羽毛ボディを落ち葉だらけにしつつも、立ち上がり、そのふさふさの手羽先によって人々を張り倒してゆく。ついでに抜けやすいっぽい毛がぱさぱさ落ちてゆく。
 数分もする頃には、農園中がもふもふの羽毛で彩られてしまいました。

●拾いに、行こうか
「農園の許しを得て栗拾いしている人々が、ビルシャナに襲われてしまうようです」
 ヘリポートへ出向くなり、猟犬たちは小走りでやってきたイマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)にそう告げられた。
 なるほど栗拾いの季節か。
 敵がビルシャナと告げられた一同は、秋の空に遠い目を向けました。
「ビルシャナは『栗拾いは許せない』と怒り、人々で賑わう農園に姿を現します。彼らと農園を守るため、皆さんにはすぐに現地に向かってほしいんです」
 イマジネイターが言うには、鳥はぼっち(信者いないの意)であるらしい。
 つまり現れる鳥をボコり倒すだけのシンプルな仕事というわけだ。
 であればそう時間もかからず、猟犬たちはフリーになるだろう。
 そしてそのとき、一同の視界には一面にひろがる栗が――。
「見えません」
 なんだって。
 ガタッと立ち上がる猟犬たち。
 栗拾いの! 鳥退治にかこつけて栗拾いに行く依頼じゃないんですか!
 てっきりそう思って来たのに!
 と目で訴える猟犬たちに、イマジネイターはどうどうと落ち着かせる手振り。
「いえ、大丈夫です。栗はあります。ですがビルシャナが撒き散らす羽毛のおかげで、たぶん栗は隠れてしまっていると思われます。だから栗は見つけづらいかもしれません」
 なんだ羽毛があるだけか。安堵する一同。
 栗拾いする頃にはもう死んでるだろうに、羽毛だけは残しやがるらしい。死してなお栗拾いの妨害をするとは何という執念深さだろうか。さす鳥。
「ちなみに羽毛は放っておいてもじきに消えると思いますから、あえて掃除をする必要はありません。存分に栗拾いを楽しんできてください。大きくて甘くて、とっても美味しい栗だそうですよ」
 イマジネイターから伝えられたプチ情報に、喉を鳴らす猟犬一同。
 こいつはいくしかねえようだな、と皆の目に揺るぎなき光が灯ったのを見て、イマジネイターはひとつ頷いてヘリオンへと歩き出した。
「皆さんでどれだけ栗を持って帰ってこれるのか、楽しみにしてますね。あとビルシャナを倒すのはどうか忘れないでくださいね」
 それは任せてくれ、と視線で答える一同。
 かくして、猟犬たちは羽毛散らしからの栗拾いをしに行くことになりました。


参加者
和郁・ゆりあ(揺すり花・e01455)
マロン・ビネガー(六花流転・e17169)
八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)
ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)
ステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)
ティニア・フォリウム(タイタニアのブラックウィザード・e84652)
セナ・グランディオーソ(いつかどこかの・e84733)

■リプレイ

●爆散!
 木々や土から醸し出される、秋の匂い。
 農園に着くなり、ルーシィド・マインドギア(眠り姫・e63107)は体を伸ばして深呼吸。
「とても自然が美しいですわー」
「紅葉が綺麗だねー」
 すぐそこに見える山肌の赤さに、シルバーブリット(ライドキャリバー)に跨ったステラ・フォーサイス(嵐を呼ぶ風雲ガール・e63834)が感嘆する。
「今日は楽しい1日になりそうですね!」
「ツーリングの秋も良いけど……今日は食欲の秋! 頑張って栗を集めちゃうぞぉ~」
 この先のレジャーを想像し、胸を躍らせる2人。
 そして、八点鐘・あこ(にゃージックファイター・e36004)もやはり期待に逸っている。
「栗拾いなのです!!」
 キリッ、と農園に散らばる栗を見止めるあこ。
 そのまま拾いかけたところをベル(ウイングキャット)にぺしぺしされると、ようやく少女は「はっ!」と我に返る。
「そのまえに……鳥なのです……」
「そうだな。まずは害鳥を駆除しなければ」
 短弓を携えて紅葉の山を監視していたカジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)が、あこに頷く。
 そのとき、山のほうから猛々しき小竜――ボハテルが飛んできた。
 山を探りに行かせていたボハテルが戻ってきたということは、とカジミェシュは短弓を引き絞る。
 どどどど、と鳥が猛ダッシュで下山してきたのはその数秒後だった。
「うおおおおおおおお!! 貴様ら誰の許しを――」
「ハッ!!」
「ぎゃーーす!?」
 頭に矢を受けた鳥さんが顔から転倒した。
 そうしてゴロゴロゴロ……と転げ落ちてくる姿を見て、セナ・グランディオーソ(いつかどこかの・e84733)はルーナ(ビハインド)に指をピッとやる。
「よーし! 我は栗を拾うゆえ、我が従者よ、鳥はよろしく頼……あっ、分かった我も手伝うからデコピンは止めて」
 ルーナに肩を掴まれたセナが、眼前に迫る指を見て背筋を正す。
 そう、誰だって早く栗を拾いたい。しかし猟犬である以上はまず仕事だ。
「ぐげーー!?」
 ずざーっと一同の前に滑ってくる鳥。
 そんな彼に「いたたた……」とか言う暇すらも与えず、和郁・ゆりあ(揺すり花・e01455)とマロン・ビネガー(六花流転・e17169)は両脇に立つ。
「信者すらいないぼっちっていうのは悲しいものがあるわね……でも鳥! それはあんたの考えが共感できないのが原因なのよ!」
「そうです! 栗が収穫できないとモンブランが作れずに死活問題なのです!」
「ふえっ!?」
 ゆりあとマロンにぐいっと顔を近づけられ、委縮する鳥。
 だがマロンは構わず、さらに顔を接近させる!
「もし独り占めする予定で栗拾いを邪魔するのでしたら、マナー違反ですよ!」
 ひんやり系少女には似合わぬ闘志が、マロンの瞳に燃えていた。
 3度の飯よりモンブラン。というか3度の飯がモンブラン。それほどモンブランに狂っているマロン嬢にとって鳥さんの行為は許されざるものなのだ。
 圧に屈する形で、鳥さんは頭に矢が刺さったまま正座した。
「いや独占とかでなくカドワカシは……」
「拐かし? 違います。農園さんのご好意で、実った物を食べる分だけ頂くのです」
「だ、だからいいと!? 栗の気持ちを考えたことはないのか!!」
「そうは言うですが、鳥さんは栗の気持ちを代弁できるですか? 土地や栗の苗木や肥料を買ってイチから育てたんですか? 余計な虫や泥棒が来ない様に毎日見回りをしたですか?」
「してません……」
 モンブラン狂いの正論に鳥は返す言葉もなく、しゅんと肩を落とす。
 ゆりあはその肩にそっと手を乗せた。
「一体何があなたをそうかりたてるのかはわからないけど、栗拾いってのはいいものよ。あなたも栗、嫌いではないんでしょ?」
「ええ、まあ……」
「だったらゆりあたち、分かり合えるはずだわ」
 ゆりあに背中を撫でられて、鳥さんの心が凪いでゆく。
 今ならばいがみ合うことなく話し合える――そう思ったのか、ティニア・フォリウム(タイタニアのブラックウィザード・e84652)は彼の前にしゃがんだ。
「ビルシャナ、大丈夫だからね」
「お、お嬢さん……」
「あなたが大好きな栗は私たちが大事に……しっかりおいしくいただくわ!」
「ぐぁぁぁぁ!!?」
 ティニアが満面の笑みでぶっ放したブレイジングバーストで、鳥が炎上した。
 いわく焼き栗の練習だという容赦ない初撃。銃身が回転を終えたときには鳥さんはもう黒焦げだったので、それから猟犬たちは「わーっ」てなノリで炭をボコボコにしてやった。
 つまり鳥さんは死んだ。

●テンション爆上がり!
 静かになった農園。
 だが辺りを見回すステラの表情は浮かないものだった。
「うーん……石化弾、あんまり効果なかったのかなぁ」
「ふわふわの羽毛がたくさんですわー」
 地面に落ちた白い羽を拾い上げ、くるくるさせるルーシィド。
 鳥が羽毛を散らかさないようにと策を講じたステラだったが、敵の執念が勝ったのか何なのか、農園は一面、白くてふわふわな羽毛に埋め尽くされてしまっていた。おかげで地面に落ちているはずの栗もなかなか目に入ってこない。
 が、それで止まる猟犬たちでもない。
「さあ! 待ちに待った栗拾いね!」
「私、栗拾いは初めてなんだけど、何を気を付ければいいのかな!」
「奇遇ね! ゆりあもよ!」
「そうなんだ!」
 羽毛の大地に堂々と立ち、ゆりあとティニアは高まるテンションのまま互いを見もせずに会話していた。
 初めての栗拾い。
 それだけで、もう2人はウキウキで、もう2人はソワソワだった。
「でも本当に栗拾いって何をどうすれば……?」
「言われてみればわかんないわね……」
「トゲトゲしているはずなので素人判断は危険なのです……やはりここはスペシャリストの農園の人にコツを聞いてみるのです!」
「「そうね!!」」
 考えこんでいたティニアとゆりあが、ひょっこり顔を出したあこにビシッと指を向ける。
 そして近くにいる農園のスタッフっぽい人に声をかけた。
「すいませーん!」
「? 何でしょう?」
『ルーシィドさん!!』
 振り返ったスタッフの顔を見てずっこける一同。
 なんとなく農園の人っぽいと思って声をかけたのは、栗拾いに臨むために着替えてきたルーシィドだった。長ズボンに軍手にトングを装備する姿はどう見ても全力。
「これが栗拾いのフォーマルスタイルですわ!」
「本気の顔なのです……!」
「なるほどそれがフォーマル……」
「栗拾いも奥が深いわ……」
「軍手とトングは用意してますので、皆様どうぞ♪」
 あことティニアとゆりあは強力な武器を手に入れた。
 いきり立って栗拾いに向かう3人を見送るルーシィド。するとその後ろでシルバーブリットに大改造を施していたステラが「ふぅ」と息をついた。
「これだけ大きければたっくさん栗が入るね!」
「ステラ様、素敵ですわ!」
 ぱちぱちとルーシィドが拍手を送るシルバーブリットは――籠が付いていた。
 栗を収める籠が、付いていた。
「あ、ねぇねぇルーちゃん。一緒に栗拾いしない? これだけカゴが大きいとあたし1人じゃちょーっと厳しくてさ……」
「もちろんご一緒しますわ!」
 2人仲良く、栗拾いを始めるステラとルーシィド。
 だが重ねて言おう。
 地面は鳥さんの羽毛で溢れている、と!
「思った以上に羽毛が邪魔だなー!?」
 10歳らしく無邪気に栗拾いに励んでいたセナが、両手に掴んだ羽毛を全力で放り上げる。
 鳥さんのふわふわ羽毛はマジで邪魔だった。
「ええと、掃除でなくとも一旦退かしてはおきたい……ルーナー……これでちょっと拾う間……な?」
 クソでかい団扇をぐいぐいとルーナに押し付けるセナ。彼の上目遣いに根負けしたルーナは肩を竦めて団扇を受け取り、地面に積もった鳥毛を扇ぎ飛ばしてあげた。
「よーしよし、あとは拾ってアイテムポケットに入れてくだけ……」
 団扇係のルーナと連携して、セナが栗を拾いまくる。
 その横では、あこやカジミェシュもサーヴァントとの巧みなコンビネーションを見せていた。
「ベルがんばるのです!」
「ボハテル、少し頼むぞ」
 栗を求めて地面に視線を落とす2人の声を受けて、ベルは翼を羽ばたかせて栗を隠す羽毛を飛ばし、ボハテルも勢いよくブレスを吐いてやはり羽毛を吹っ飛ばす。
 その後にはころんと転がる栗の姿が残っていた。
「ふふふ……やったのです……拾いまくるのです……!」
「せっかく好きなだけ拾ってよいのだからな。ありがたく頂こう」
 身を屈めて、ひょいひょいと栗を回収するあことカジミェシュ。
 一方、互いに身ひとつで栗拾いに挑んでいたティニアとゆりあは――。
「いたーい!? トゲを踏んじゃったわ……」
「大丈夫? やっぱり侮れないわね栗……!」
 羽毛という妨害アイテムに、割と四苦八苦していた。
 栗を探しがてら道の脇にどけておいたりしているものの、ふわふわ羽毛が多すぎてさすがに除去しきれない。おかげでイガを踏んじゃうティニアだった。
 すぐ横でそのアクシデントを目撃したマロンは、栗をぽいぽいと袋に詰めながら、うんうんと頷く。
「イガはうっかり踏むと痛いですがこれも秋の風景です」
「これが秋の楽しみ方……そう考えれば、痛いばかりじゃないかもね」
「なるほど、栗拾いはやっぱり深いわ……!」
 マロンが適当に言った言葉に、感銘を受けるティニア&ゆりあ。
 それから2人が『初めての栗拾い』を、わーわー騒ぎながら堪能しまくったのは言うまでもないだろう。

●クリパ!
 1時間後。
 根絶やしにする勢いで栗を拾いまくった猟犬たちは、農園に併設されたバーベキュー場に移動していた。
「ふわふわの羽毛なので、焚きつけに使えるのですー」
「いっぱい回収してますので、どうぞお使いください!」
 火おこしをするマロンの隣で、ハンディクリーナーをパカッとするルーシィド。
 栗拾いのためにクリーナーで羽毛を吸っていたので、焚きつけに使うには十分な量があった。羽毛はすぐに引火して、たちまちバーベキューコンロ内の炭が熱せられてゆく。
「さあ、みんなで焼栗パーティーですわ!」
「栗はいっぱいあるよ!」
 火の横でノリノリでトングを打ち鳴らすルーシィドの背後で、透けた翅をぱたぱたと動かして飛んでいるティニアがドデカい袋を「ずんっ!」と下ろす。
「これで栗バーベキューね!」
「ええ、たくさん焼いて食べましょう!」
 心底嬉しそうな顔で、ルーシィドは焼き栗に着手。栗の皮に切れ目を入れるとそれらをコロコロと網の上に置き、串が通せるようになるまでじっくりと焼いた。
 そうして熱いうちに皮を剥けば、ほくほく熱々の甘い焼き栗の完成である。
「んー、ほくほくで美味しいー」
「やっぱり焼き立てっていうのはいいものね!」
「自分で拾ったと思うと、なんだか美味しさもひとしおだわ!」
 軍手の上で栗を転がしながらステラが舌鼓を打てば、ゆりあやティニアもぽいっと焼き栗を口に放って栗の甘みに感じ入る。
 ほんわか顔も緩むバーベキュータイム。
 しかしその中にあって、あこだけは真剣な表情だった。
「どうしたんだ?」
「にゃん爪でいろりの栗を拾ったりするのは断じてやらないのです! 昔話でもいってたのです! 火中の栗を拾うって!」
 焼き栗を1個口に含んだカジミェシュの問いに、あこは火の上で炙られている栗たちを凝視しながら語気を強める。
 決して素手で焼き栗を取ったりはしない――そう豪語したタイガーガールの手には銀色に光るトングがあった。
「文明の利器を……つかうのです……!」
「そうか……」
 慎重にトングを操るあこを見ながら、もう1個栗を口に入れるカジミェシュ。
 軍手してればたぶん大丈夫、とは言えなかった。
 一方、猟犬の好奇心は焼き栗だけで満たせるものでもなく、中にはちらほらと手の込んだ料理を作りはじめる者たちもいた。
 特に手腕を発揮していたのが、マロンとルーナだった。
「オカズとして栗と鶏肉の煮物を作ってみたです。栗ジャムや甘煮、栗きんとんも作るのですー」
「ルーナルーナ。ケーキやプリンはどうだー?」
 栗料理を嬉々として作りつづけるマロンの横で、セナは調理台に立つルーナの袖をぐーいぐーいと引っ張ったりなぞする。
 ケーキやプリンが食べたい――そう言ってねだってきたセナのために、ルーナは団扇のとき同様、呆れたような息をつきながら栗を潰したりしてあげていた。
「残った分もジャムにすれば長く食べられるな。ほんとたくさんあるが、帰ったらがんばって作って欲し……あっ、うそうそ我も手伝う」
 微笑みながら作ったルーナの握り拳を見て、しゃんと背を正すセナ。
 それを尻目に、マロンは作り上げた甘煮や栗きんとんをカジミェシュやステラたちと一緒にもぐもぐと味わっていた。
「やっぱり栗は美味しいのですー」
「そうだな、確かに」
「あ、みんな紅茶いるー?」
 テーブル囲んで栗スイーツを食べるマロンとカジミェシュに、ボトルから淹れた紅茶を振る舞うステラ。せっせか栗を焼いているルーシィドやゆりあにも手渡すと、そのついでにステラは網に置いていた飯盒を取り上げる。
 蓋を開ければ――。
「ふふーん♪ 栗ご飯! ん~……いい香り」
「色づいたお米が綺麗ですわー」
「秋の味ね……できたらゆりあにも分けてちょうだい!」
「いいよー」
 ほんのり黄色くなった米をほぐし、まろやかな香りを放つ栗ご飯をよそうステラ。一口食べれば甘みと香りがひろがり、思わず足踏みしてしまう。
「さいっこー♪」
「本当に今日は楽しい1日でしたね。お土産の栗もたくさん取れましたし」
「帰っても美味しい、っていうのが栗拾いのいいところかしらね」
 むぐむぐ栗ご飯を頬張りながら、紅葉の山で眼を休めるルーシィドとゆりあ。ともに土産の栗で喜んでくれるだろう友人たちの顔を思い浮かべながら――栗ご飯をもう一口。
「しかしよく見れば……お山も赤くて綺麗なのです!」
「本当にねー。こんな景色の中でゆっくり栗バーベキューできるなんて……」
 あこも熱々の栗をふーふーしながら遠くの山姿に嘆息をこぼし、ティニアも秋の風に身をさらしてじっくりと心を休める。
 持ってきた鞄に栗を詰めこみながら、マロンも秋の景観に浸った。
「紅葉の景色を前に美味しいものを食べる……幸せな世界なのです。農園さんも栗の木さんも、ありがとうなのです!」
「おおー! 栗に夢中で気付かなかったが、確かに実に綺麗な赤だな!」
 栗プリンをもぐもぐして登場するセナ。
 ごくんと絶品プリンを飲みこむと、セナはしばらく赤い山に目を奪われて――。
「これは絵に残しておきたいなー……しかしあれだ、我が描くと幻想化並みに変質するゆえ……ルーナー……」
 取り出したスケッチブックを、やっぱりルーナに押し付けた。
 そしてやっぱり、一旦はかぶりを振るけれど、懇願するセナに負けてスケッチを始めてくれるルーナなのであった。

作者:星垣えん 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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