『赤ずきん』再誕計画~最高のパーティーを

作者:なちゅい


 そこはデスバレスの海底。
 一目で目に付くほどに巨大なドリームイーターの老婆、ポンペリポッサが何やら作業を進めていて。
「『赤ずきん』や、ようやく準備ができたよ」
 何かに向けて呼びかける彼女の辺り一面には、多数のドリームイーターの姿。
 パフェともケーキとも取れる見た目の上に南瓜が乗った『南瓜うにうに』。それらが何百体も存在していたのだ。
「このハロウィンが、『赤ずきん』を蘇らす事ができる最後のチャンスだ」
「「「……………………」」」
 さらに、3体の死神の魔女達が無言でそれを注視する。
「あたしがハロウィンの魔力を死神に渡せば、ジュエルジグラットは今度こそ終わりになるだろうさ」
 ポンペリポッサの呼びかけはさらに続く。
「だけど構いやしない。あんたを見捨てたジュエルジグラットなど、何度でも捨ててやるのだから」
 その言葉と共に、死神の魔女達と全ての南瓜うにうに達が姿を消していく。
 最後に、ポンペリポッサ自身も消えてしまい、その場は元の静かな海底に戻ったのだった。


 時と所変わって、ヘリポート。
 銀髪シャドウエルフのリーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)がケルベロス達の来訪を喜んで。
「先日の『暗夜の宝石』攻略戦、無事に勝利できてよかった。皆、お疲れ様」
 作戦を影ながら見守っていた彼女は、戦いに参加したケルベロス達を労う。
 勝ち誇る姿のメンバーもいれば、なかなか戦功をあげられなかったと悔しがる者、少しでも役に立てたと笑みを浮かべるケルベロスなど、反応は様々。
 そんな彼らへと、リーゼリットはそういえばとこんな話を切り出す。
「もうすぐ、ハロウィンだね」
 ハロウィンは楽しいイベントではあるのだが、毎年ドリームイーターが何か動き出すタイミングとしても知られている。
 今年、仕掛けてくるのは、昨年に引き続いて……。
「ハロウィンを狙って、死神に合流したポンペリポッサが仕掛けてくるようだね」
 ポンペリポッサと3体の魔女死神が数百体の死神の群れを引き連れて、ハロウィンを襲撃、季節の魔力の一つ『ハロウィンの魔力』を強奪しようとしているのだ。
 ポンペリポッサの目的は『赤ずきん』を蘇らせる』事に間違いなさそうだ。
「ポンペリポッサと『死神の魔女』を撃破し、敵の目論見を撃ち破って欲しいんだ」

 ポンペリポッサ達は最も盛り上がったハロウィンパーティーの場所に現れ、ハロウィンの魔力を強奪しようとしている。
 つまり、ケルベロスハロウィンを大きく盛り上げれば、ポンペリポッサ達はケルベロスハロウィンの会場に現れる事になる。
「ケルベロスハロウィンの会場に敵をおびき寄せられれば、一般の人々への被害を抑えつつ、有利に戦う事が出来るはずだよ」
 まずは、ケルベロスハロウィンの会場を盛り上げてハロウィンの魔力を高め、敵をおびき寄せる必要がある。
 皆に、盛り上げて欲しい会場は『パレードロード』で、敵幹部は『ポンペリポッサ』だ。
 パレードロードは皆が仮装して歩く場所。
 楽しそうに語らいながら仮装行列をしていれば、敵の目につくかもしれない。
「最も盛り上がった場所に敵幹部が直接現れて、すぐに戦闘になるはずだよ」
 それ以外の場所には、ポンペリポッサと死神の魔女達によって生み出された『南瓜うにうに』という死神の群れが12体出現する。
 幹部と直接戦う事になったチーム以外はこの死神の群れを素早く撃破して、幹部と戦うチームの援護に向かって欲しい。
「敵幹部は目の前のケルベロスを全て撃破すると、高められた大量のハロウィンの魔力を奪って撤退してしまうよ」
 この為、敵幹部が出現した会場以外のチームも、戦っているチームが全滅する前に援軍に向かう必要がある。

 『南瓜うにうに』はハロウィンの魔力が大好物である為、パーティーが大きく盛り上がった場合はハロウィンの魔力を集めるのに夢中になり、自分がダメージを受けるまでは戦闘に加わらないようだ。
「この特性を利用すれば、敵の各個撃破を行う事が出来るはずだよ」
 戦闘に加わらない『南瓜うにうに』は最悪、無視する事もできる。
 援軍に向かう事を優先するならば、無理に撃破しなくても良いかもしれない。

 一通り状況を説明し、リーゼリットはさらに続ける。
「ポンペリポッサの出現は脅威だし、楽しいハロウィンパーティーを水に指すのは許せないね」
 しかも、この機を利用し、『赤ずきん』を蘇らせようとしている。
 そんな邪悪な計画は阻止すべきだろう。
「できるだけ、敵が撃破できるように、ボクは願っているよ」
 最後に、彼女はそう参加するメンバー達を激励したのだった。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
シェスティン・オーストレーム(無窮のアスクレピオス・e02527)
霧崎・天音(星の導きを・e18738)
篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)
クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)
那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)
犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383)

■リプレイ


 今日は楽しいケルベロスハロウィン。
 皆楽しくお菓子を食べ歩き、楽しい一時を過ごす。

 多数の参加者が『パレードロード』で仮装をして行列する。
 その中で、とある女性多めのチームが催していたのは、グリム童話の神長姫ラプンツェルの演劇だ。
 彼女らは、フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)が用意した塔を模した山車を引きつつ、移動を行う。
 スキルによる移動の重さ制限も考慮し、フラッタリーはできるだけ幅を取らず高さを稼ぐ形で山車を作成していた。
「ヒヒーンー、ですのよー」
 そのフラッタリーは顔の出るファンシーな白馬の着ぐるみ仮装を纏い、楽しそうに『怪力無双』で台車を引く。
 台車の周囲には、演者として仮装するメンバー達がいる。
 シェスティン・オーストレーム(無窮のアスクレピオス・e02527)が流す音楽が劇の始まりを告げて。
 舞台の上、死者の日のカトリーナの姿をとるノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)は骸骨の仮面をつけ、ヴァイオリンを奏で始める。
 シェスティンの流す音楽の曲調が変わり、仮面を外したノーフィアはお嬢様の嗜みとばかりに、綺麗な音色をパレード会場へと響かせていく。
 ヴァイオリンの音色が激しくなると、新たに那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383)がアルティメットモードで黒い衣装の魔女に扮して現れる。
「ラプンツェルはどこだい~!」
 観衆に聞こえるような声量で告げる摩琴は長い手足と長身を活かし、楽しく踊りながらも観客の注目を集めて。
「おやラプンツェル、そこにいたのかい?」
 そこで、摩琴は視線を塔の上へと誘導すると、そこではドラゴニアンのお姫様仕様の霧崎・天音(星の導きを・e18738)がラプンツェルを演じていた。
「みんな楽しそうでいいな……」
 観衆を見下ろす天音は僅かにほっこりしながらも、ステップを踏み始める。
 親友と一緒に学んだ踊りは、なかなかの仕上がりだ。
「楽しくバトル……とは行かなくても、できれば被害を出さないように盛り上げたいね……」
 上手くいけば、このパレードロードの何処かに巨大なドリームイーターが現れるはず。
 邪魔しなければいいけど……と考えながらも、天音は儚くも可愛らしく舞い踊る。
 そして、ラプンツェルの長い髪をイメージした仮装をするクロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937)が天音の後方で大きく揺れ動きながら、同じく怪力無双で山車の移動に協力していた。
 山車には車輪がついており、2人がかりなら多少重くとも問題なく前進する。
 何よりクロウは山車にも好きなタイヤがあることもあってか、苦には感じていないようだ。
 そして、遅れて登場するチーム唯一の男性、篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558)はスタイリッシュモードで王子に変装し、天音と共に大きく動いて演技する。
 姫や魔女の演技に合わせるよう意識しつつ、佐久弥は朗々と言の葉を高らかに歌い上げていた。
 注目を浴びる彼は自らの名声の高さを実感して。
(「うわ、堂々としとこっす」)
 それでも、さほど緊張も見せずに踊っていたようである。
 音楽を流すシェスティンはそんな佐久弥を微笑ましげに見つめる反面、姫と踊るその姿に思うことがあってか、ちょっとだけテンションは下がり気味の様子だった。
 塔の少し高い場所をオラトリオの翼で飛ぶ犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383)は明るい空色のドレスに雨傘を差した姿に扮し、自身の翼猫ソラマルや、箱竜のペレやワカクサと共に飴の雨を降らせる。
「さあ、雨よ。降り注ぎなさい!」
 雨傘を掲げた志保に合わせ、降ってくる飴の雨。
 近寄ってくる子供達が嬉しそうにそれらを拾っていた。
 一行の歌や踊りに合わせ、演劇は一層盛り上がる。
 曲が止まると同時にノーフィアもまた演奏を終え、仲間と共にお辞儀した。
 拍手が巻き起こる中、彼女はマリーゴールドの花束を投げ飛ばす……が。
「……勢い強すぎて、花束が空中分解した……だと……!?」
 それが観客の笑いを誘う中、シェスティンは近くの地面が突然光り、描かれた大きな魔法陣から何かが現れることに気づく。
「何かきます」
 緑色の肌に赤い瞳。そして、非常に長く太い鼻を持つ背が曲がった巨大な人影。
 それはドリームイーター、魔女の長『ポンペリポッサ』だった。


 ポンペリポッサと同時に、あちらこちらに暴れる南瓜うにうに。
 それらと交戦を始めるケルベロスのチームも多い。
 ただ、こちらのチームの近場に現れた南瓜うにうにがハロウィンの魔力を集めるのに夢中になっていたこともあり、メンバー達はそれらを無視してポンペリポッサへと接敵していく。
「今回で決着だよ、ポンペリポッサ!」
「ハロウィンは絶対に荒らさせない、あんた達の企みは必ず撃ち破る」
 摩琴、志保が続いて巨大な魔女へと叫びかけると、クロウも髪の仮装を脱いでくのいち風の姿へと変わって。
「ドリームイーターの大幹部……どんな強敵だろうと倒れられないっすね」
 佐久弥はちらりとシェスティンの方を振り返ってから。
「そうっす、最後まで立ち続ける、立ち上がり続けなきゃ」
 そんな佐久弥の視線を受け、シェスティンのテンションが高まるように見えた。
「強い強いハロウィンの魔力が満ちていると思えば、お前達かい。ということは、これは、罠なんだね」
 そこで、ポンペリポッサは低い声でケルベロス達へと呼び掛けて。
「だけど、罠だろうと構うものか、ここにあるハロウィンの魔力は本物さ」
 南瓜うにうにが集めようとする魔力があれば、赤ずきんは蘇るとポンペリポッサは確信を口にして。
「なら、このばばあの命など、いくらでもくれてやろうじゃないか」
 大切な人を取り戻す為、強い覚悟を持ってこの場に現れているポンペリポッサ。
 周囲の人々に慌てずゆっくり離れるよう呼びかけてから、敵の前へとやってきたノーフィアはその想いを察して。
「黒曜牙竜のノーフィアより緑の好奇心たるポンペリポッサへ。南瓜と鬼火の祝福を!」
「今回はちゃんとー、お相手願いますのー」
 着ぐるみを脱いだフラッタリーは柔らかい笑みを浮かべて一礼すると、サークレットを展開して。
「釜ヲ湯立テ煮込ミ候ヱ」
 金色瞳を開眼させた彼女は狂気に落ち、額の弾痕から地獄を迸らせてこの巨大な魔女と対するのである。


 ケルベロス達は皆、ポンペリポッサへと戦線布告し、攻撃を仕掛けていく。
 前線メンバーがグラビティをぶつけていくにもかかわらず、ポンペリポッサは無防備に周囲のハロウィンの魔力を集めようとしている。
「赤ずきんや、受け取っておくれ……」
 そして、彼女は空中へと描いた魔法陣を通じ、デスバレスへとその魔力を送ろうとしていた。

 前衛陣の攻撃にも、まるでびくともしない巨体のポンペリポッサ。
 倒す為には攻撃をと、フラッタリーの狂気による支援で力を高めた後衛メンバーも動き出す。
「お互い全力でやろう。悔いが残るような決着はダメだからね!」
 ノーフィアは魔杖鞘『龍の顎門』から砲弾を撃ち出し、箱竜ペレがブレスを吹き出して敵の足を止めようとする。
 確かに巨大な相手だが、こちらの攻撃にしっかり対処してくるものと思われる。確実に攻撃を命中させるには、あの魔女の足を止めておきたいところ。
 狙撃役となるクロウもまた、竜鎚から素早く砲弾を飛ばす。
 そして、彼女の相棒、紙属性で折り紙のような姿をした箱竜ワカクサは封印箱へと入り、敵に体当たりを繰り出してくれる。
 回復役のシェスティンは敵が攻撃してこないこともあり、癒杖「アスクレピオス」から電気ショックを飛ばし、前衛火力役の強化支援へと当たっていた。
 志保はウイングキャットのソラマルに仲間達のカバーと回復を託し、自らはウイングガントレットで宙を殴りつけるようにして、時空凍結弾を撃ち出し、ポンペリポッサへとぶつけていく。
 続き、摩琴はポンペリポッサが動かないことを見て。
「配下を出してこない今のうちだね!」
 本体を叩けるなら、それに越したことはないと考えた摩琴。
 一気に相手を倒してしまいそうな勢いで、摩琴は虚の力を纏わせた大鎌「Prototype Dissection Scythe」で巨大な魔女を傷つけていく。
 初手は後方の仲間達の支援強化に当たっていたフラッタリーは、怪しげな笑みを浮かべて石造りの灯籠「曼荼羅大灯籠」から砲弾をぶち込む。
 佐久弥は最初、仲間達の攻撃が当たるようにと自分の周りにいるメンバーにオウガ粒子を振りまいていた。
 その間、彼もまた敵が配下を呼び出さないかと警戒しながらも、動きを見せぬ魔女に鉄塊剣「餓者髑髏」の刀身を叩きつける。
 天音もまた相手の足止めに当たるが、見切りを気にかけて、両腕のパイルバンカーをジェット噴射させて錐揉み回転しながら特攻していたのだが……。
 ダメージは着実に与えはしているはず。
 それなのに、あの巨大な魔女は傷など気にも留めずに、ハロウィンの魔力を奪っていることに天音は気づいて。
「みんな、あの儀式の邪魔をしないと……」
 ポンペリポッサは自らを犠牲にしてでも、赤ずきんの復活に力を注ぐつもりなのだろうか。
 ともあれ、ケルベロス達は空に浮かぶ魔法陣から魔力を送る儀式の阻止を優先して動くのである。


 ポンペリポッサの儀式を止めるには、可能な限りあの魔女に攻撃を加えて、注意をこちらへと向けたいとメンバー達は考える。
 敵の死角を探して摩琴は立ち回るが、今のポンペリポッサは隙だらけ。
 彼女は影のごとき斬撃で、その巨体を刻んでいく。
「環Zeン無欠ヲ謳オウtO、弧之金瞳w∀綻ビヲ露ワ仁ス。其之ホツレ、吾gAカイナデ教ヱヤフ」
 フラッタリーは金色の瞳で、巨大な魔女から漏れ出るグラビティ・チェインの切れ端を捕捉する。
 それを自らの編んだ獄炎の縄で縛り付け、敵をこの空間へと縛り付けようとしていた。
 魔女が配下を生み出す可能性があるが、ここで一気に叩けば全く問題はない。
 佐久弥はフェアリーブーツ「足洗邸」から理力のオーラを撃ち込み、天音が間髪入れずに自らの専用エアシューズで重力を宿す一撃を蹴り込んでいく。
 そこで、ポンペリポッサが周囲から集めていた魔力が霧散し、魔法陣への供給が途切れる。
 集中が解けたからか、空中に描かれていた魔法陣も消えてしまった。
「もう後がないってのに……、仕方ないね」
 こちらを振り返ったポンペリポッサの冷ややかな瞳は、この場のケルベロス全員の背筋へと寒気を走らせる。
 しかし、攻撃を止めるわけにもいかない。
「上手くいったけれど、ここからだね」
 今のうちに一層攻勢を強めるべく、ノーフィアは再び敵に轟竜砲を撃ち込む。
 まだ、攻撃は一撃も受けていないこともあり、箱竜ペレはブレスでより強く敵を抑えてくれていた。
 こちらも箱竜、目鼻も口もないワカクサだが、紙吹雪のブレスを吐き出して援護攻撃に当たってくれる。
「飛ぶよ、ワカクサ!」
 その直後、主のクロウが指示を出すと、ワカクサは変形して大型の翼となる。
 翼となった箱竜を背中に装着したクロウは、一気に敵の巨体へと飛び込んで。
「必殺、ワカクサ・ウィンガーッ!」
 彼女は高速移動する翼で直接、ポンペリポッサへと切りかかっていく。
 今のところ、皆無事だ。
 シェスティンは王子様を後ろから見つめながらも、今度は狙撃役となる仲間に癒杖から電気ショックを飛ばして仲間の賦活に当たる。
 力を得た志保が一時的に翼猫ソラマルの前に出て、力の限りヘッドバットして降魔の力を食らわせた。
 その間に、ポンペリポッサがやや体をねじらせるような体勢をとっていたことに、志保は何とも言えないプレッシャーを感じて。
(「嫌な予感がする」)
 ただ、現状はこちらが優勢だ。
 『パレードロード』で南瓜うにうにと交戦するチームが駆けつける前に倒すだけと、志保は拳に力を入れるのである。


 明らかに戦闘態勢に入ったポンペリポッサは、これまでの戦いでは見られぬ体勢で攻撃を仕掛けてくるようだ。
 だが、ケルベロス達の戦闘方針は変わらない。
 虚の力を纏わせた刃を振るう麻琴に続き、フラッタリーが砲弾を撃ち込んでポンペリポッサを怯ませようとする。
 再び、佐久弥が鉄塊剣でその巨体を殴りつけ、天音が錐揉み回転して特攻していく。
 その次の瞬間だ。
 ものすごい風圧と共に、ポンペリポッサはその頭を大きく横薙ぎに振るってみせた。
「「え……?」」
 後衛の4人は何が起こったのか理解が追い付かない。
 ただ、その一瞬の元に、盾役となっていたフラッタリーと佐久弥、ウイングキャットのソラマル。火力を担っていた摩琴と天音が地を這ってしまっていた。
「嘘、ですよね?」
 先程まで、あんなに一緒に楽しくハロウィンを楽しんでいた王子様。……それなのに。
 シェスティンは回復に当たろうとするが、前衛陣は一撃の元に皆倒されてしまっていた。
「何が起こったんだ!?」
 レイヴンシューターから凍結光線を発射するクロウも、戸惑いを隠せない。
 箱竜ワカクサは危機を察してか、属性の力で主を護ろうと動く。
「……鼻だよ」
 ノーフィアは見ていた。
 ポンペリポッサはあの長い鼻で、前線の仲間を一撃のもとに倒してしまったのだ。
 とてつもない破壊力に、残るメンバーは対抗するすべが思いつかない。
 まだ、他のチームは南瓜うにうにと交戦中だと思われ、まず間違いなく次の一撃までに救援は間に合わない。
 残り僅かなこのタイミングでできることは、攻撃を加えることだとノーフィアは判断して。
「我、流るるものの簒奪者にして、不滅なるものの捕食者なり」
 彼女が生み出したは、立体的に描かれた魔法陣で構築された漆黒の球体だ。
「然れば我は求め訴えたり、奪え、ただその闇が欲する儘に」
 それによって、ノーフィアは敵を球体に引きずり込もうとするが、相手は規格外のドリームイーターだ。球体の方が小さく、敵を圧壊するには至らない。
「ソラマル……」
 志保は自身の翼猫を気遣いながらも、締め殺しの荊棘を蔓触手形態として敵を締め付けようとする。
 だが、ポンペリポッサが止まることはなく。
「お前達に構っている暇はないんだよ」
 次に、その魔女は首に巻いていたウィンナーソーセージを千切って投げ捨ててくる。
 自らの血肉を削ぎながら周囲を爆裂させてきているのだが、この場のケルベロス達はそれを把握することもなく。
 後衛にいた狙撃役ノーフィア、クロウ、志保と、箱竜ペレ。それに回復役のシェスティンが意識を失って崩れて落ちてしまう。
 地面に伏したノーフィアから転がり落ちる飴。
 それを拾った箱竜ワカクサが倒れた主のクロウへと寄り添った直後、この場に遠くから駆け付けてくるケルベロス達の足音が聞こえてきたのだった。

作者:なちゅい 重傷:フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172) ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720) シェスティン・オーストレーム(無窮のアスクレピオス・e02527) 霧崎・天音(ラストドラゴンスレイヤー・e18738) 篠・佐久弥(塵塚怪王・e19558) クロウ・リトルラウンド(ストレイキャリバー・e37937) 那磁霧・摩琴(医女神の万能箱・e42383) 犬飼・志保(拳華嬢闘・e61383) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年11月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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