城ヶ島制圧戦~天地穿つ翡翠の竜

作者:戸高露木

「城ヶ島の強行調査により、城ヶ島に『固定化された魔空回廊』が存在することが判明しました」
 セリカは集まったケルベロス達へと一礼し、そう切り出していた。
 固定化された魔空回廊に侵入し、その内部を突破する事ができれば、ドラゴン達が使用する『ゲート』の位置を特定する事が可能となるのだと言う。
『ゲート』の位置さえ判明すれば、その地域の調査を行った上で、ケルベロス・ウォーにより『ゲート』の破壊を試みることもできるだろう。
「ゲートを破壊する事が叶えば、ドラゴン勢力は新たな地球侵攻を行う事ができなくなるでしょう」
 つまり、城ヶ島を制圧し、固定された魔空回廊を確保する事ができれば、ドラゴン勢力の急所を押さえる事ができるということか。
「ドラゴン勢力の侵略を阻止する為にも。どうか、みなさんの力を貸してください」
 強行調査の結果によると、ドラゴン達は固定された魔空回廊の破壊は最後の手段であると考えているようだ。電撃戦で城ヶ島を制圧し、魔空回廊を奪取する事は、決して不可能ではない。
「今回の作戦は、私たちの仲間に築いていただいた橋頭堡から、ドラゴンの巣窟である城ヶ島公園に向けて進軍する事となります」
 資料に目を通せば、進軍の経路などは全てヘリオライダーの予知によって割り出されていた。今回はその通りに移動するのが最善だろう。
 固定化された魔空回廊を奪取するには、ドラゴンの戦力を大きく削ぐ必要があるという。
「強敵です。けれど、必勝の気概で挑めば皆さんが勝利すると、私は信じています」

「皆さんの敵は大地の下に巣を作る、硬いウロコが特徴のドラゴンとなります」
 敵となるドラゴンは、岩や鉱物を好んで喰らい、それに伴う進化をしたのだという。
 戦闘面で特筆するべきはその耐久力だろう。外見は緑を基調とし、体の一部は宝石化しているらしい。
「ドラゴンは地中に巣を作っているため、皆さんには洞窟を進み、攻略していただくことになります。けれど、」
 セリカはケルベロスの身を案じるように僅かに視線を落とし、
「洞窟はすでに、敵の領域の一部です。皆さんの侵入は察知され、ドラゴンは準備を整えることでしょう」
 ケルベロスがセリカの用意した資料に視線を通す。洞窟内の地図に、予知の範囲で知り得た情報が記載されていた。
 見れば、通路と呼べないまでも、洞窟に風を通す穴、日の光を降らせるための穴なども多数認められた。
 セリカの用意した地図を頼りに進めば、洞窟の特徴から敵との距離を予測することも可能となるだろう。
「どうか、ご武運を」
 上げた視線に、信頼を乗せて。セリカは祈りの言葉を紡いだ。
「強行調査で得た情報を無駄にしないためにも、この作戦は成功させましょう」


参加者
ノア・ノワール(黒から黒へ・e00225)
筒路・茜(躑躅・e00679)
天蓼・テオドシウス(勇なき獅子・e04004)
ランスロット・グレヴィリウス(孤狼の遠吼・e04203)
簒奪・蒐集(現住所はダンジョン・e14165)
ソル・ログナー(希望を護りし勇士・e14612)
黒夜葬・鬼百合(クソニート君・e15222)

■リプレイ


 ねっとりとした闇に一筋の光がさし込む。
 洞窟を進むケルベロス達の先に目印とした通気口が姿を現した。
「経験則だが、備えは多いに越したことはない」
 ソル・ログナー(希望を護りし勇士・e14612)の声が洞窟に反響する。
 ソルは先の城ヶ島強行調査に参加し、大きな役割を果たした。
 だがその過程で歯がゆい思いをする場面もあったのだろう。
「ソルとしては相手は違えどリベンジマッチ、というわけだ――」
 薄闇の中にあって、ノア・ノワール(黒から黒へ・e00225)の瑞々しい美貌は損なわれていない。
 人の心を見通すような妖艶な眼差しの似合う美人だった。
 突然、通気口にアリアドネの糸を使用し目印をつけた天蓼・テオドシウス(勇なき獅子・e04004)が「わ!」と叫んだ。
 何事かと視線を向ける仲間に、
「あ、いや。背中に水滴が落ちてびっくりしたんだ。うう、変に焦ってしまった……!」
「――、恋に焦らないだけいいというやつなんだよ?」
 フォローする声の主は筒路・茜(躑躅・e00679)
 気怠そうな表情と悪戯っぽい眼差しの似合う、こちらも稀有な美人といえた。

 音が聞こえたわけでもない。闇の奥に見えたわけでもない。
 それでも何かを予感したように、ソルは仲間よりも少し先を進んでいた。
 前触れもなく、破壊音と共に壁の向こう側から毒霧が噴出しソルを焼いた。
 新たに空いた風穴の向こうから、洞窟の主の瞳が欄と光る。
「――奴さん、お出ましだぜ」
 ケルベロス達は迅速に戦闘態勢へと移る。
「生きて帰るぞ」
 ランスロット・グレヴィリウス(孤狼の遠吼・e04203)は満月を思わせる癒しの光で、毒に焼けたソルの肌を塗る。
「ああ。大事な人達の為に、生きることから逃げずに戦うさ」
 ソルは確かめるように拳を握る。抜けきらない痛みに、いっそう身が引き締まる。
「俺が守る。俺が切り開く。――さあ、トカゲ狩りだ!」
 

「はぁぁっ!!」
 漆黒の剣に炎を纏わせて叩きつける。
 その手応えに、クリスフォード・フォールンボルグ(想穹剣閃・e18046)は息を呑んだ。
 手に残る痺れ。推し量るに、ドラゴンは鋼の如き鱗を有しているのだろう。
 上げたドラゴンの爪がテオドシウスへと振い落される。
「させないっ!!」
 それが届くより先に、クリスフォードは剣を下段から切り上げることで相克した。
 殺しきれぬ勢いから吹き飛ばされるが、続けてドラゴンが振り払った尾は簒奪・蒐集(現住所はダンジョン・e14165)が身を盾とすることで防ぎ、ランスロットが癒しの力を贈ることでクリスフォードは体勢をたてなおし戦列へ復帰を果たす。
「――、君の逆鱗が何処か分からないからさ、全部叩き潰す事に決めたんだよねっ♪」 
 茜の放つ弾幕はドラゴンへのダメージに加え、僅かに逸れた攻撃がドラゴンの住処を傷つけていく。
 不況を買ったようにドラゴンはブレスの照準を定めるように口を茜へと向け――、次の瞬間、思い直したように視線を巡らせ、目前のミミックを爪で弾いた。
「燃えろ、凍てつけ、石となれ」
 自身のサーヴァントが傷を負ったことを契機とするように、蒐集の心を縛る枷が外れた。
 紳士的とも言える物腰から一転し、粗野が滲んだ語調を響かせる。
「ここは地中のハラワタだ。その臓物、安心してぶちまけろ」
 手にした魔導書の紙片を舞い散らし、呪いの力と変えてドラゴンの腹を切り刻んでいく。
「てめーにも舐めさせてやるよ。自宅を追われる絶望の味をよぉ」
 赤い瞳を欄と輝かせる黒夜葬・鬼百合(クソニート君・e15222)はヒヒ、と喉を鳴らす。
 攻撃の手は休めずに、鬼百合は手のひらの上でくるりと携帯電話を躍らせた。
 狂気と冷静。外部に音を拾わせる演出。ありもしない地上に待ち構える味方を連想させ、ドラゴンの判断が鈍れば上出来だろう。
「我ら地球の守護者として、全身全霊でお相手しよう!」
 魔力を込めた拳をドラゴンの胸へと掲げ、ドラゴンの反応を待つ。
 だが、ぎょろりとした瞳で一瞥したのみで、興味を失ったようにドラゴンは顔を背けた。
「……っ!」
 侮られている。それが現時点でケルベロスに対しての評価であった。
 本能がただちに踵を返し逃げるべきだと告げるのを、心の熱で強引に従わせ足を踏ん張らせる。
(「こいつに勝てたなら、僕にも勇気ってのが何なのかわかるかな」)

 膠着の兆しを見せた戦いは、主軸としたバッドステータスの成果が現れ始めたことで徐々にケルベロス優勢へと天秤を傾ける。
「ふふっ……おいで、みんな」
 とぷりと、ノアの影から闇が浮かぶ。コウモリへと形作りドラゴンへ向かい大気を疾走した。
 それは幾度となくケルベロスを襲った敵の尾に命中した。コウモリは黒い鎖へと姿を変え拘束する。
 ならばと振り上げられた爪を、今度は鬼百合が走らせた電撃が貫きその手元を痺れさせた。
 その隙に自己回復のグラビティを持つケルベロスは己を鼓舞し、それでも足りぬ者にはランスロットが癒しの福音を紡ぎ、生きる活力を呼び戻す。
「……、ッ」
 苦悶と呼ぶにはあまりに僅かな変化。
 次の瞬間に噴出された毒霧のブレスは、巣の保全を念頭から捨てたような破壊的な力でケルベロスを襲った。
「――、モグラ気取りのトカゲが良い気になってるんじゃないんだよっ」
 ダメージよりも、洋服を汚されたことに立腹したように茜はその愛らしい頬を尖らせる。
 同じく巻き込まれたランスロットは、すぐさまブレス攻撃によって変化した戦場を観察する。
 見れば、溶けた岩の下には闇が広がっていた。足場となる土の床が薄い作りとなっているようだ。
 洞窟に空洞が目立つように、戦場となるこの部屋の真下もまた、大部屋となっているのだろう。
『劣勢となったドラゴンは洞窟を崩落させる』
 出発前に目を通した資料の予言が脳裏によぎる。
 ドラゴンが天井を崩せば、落下する瓦礫は勢いそのままに床を砕き足場は失われるだろう。
 ランスロットの背筋に冷ややかなものが走り、用意した備えに力を傾けていく。
「地上には仲間が来てるんだよなあ」
 それは鬼百合の用意した渾身のブラフ。
 敵は洞窟を崩落させたあと、地上へと向かうのだという。
 ありもしない仲間の姿を思い浮かべ、崩落を踏みとどまれば良し。そうでなくても、ドラゴンしか知りえない奇策を言い当てることで動揺を誘えれば十分だろう。
「……洞窟を崩してオレらを一網打尽にする気だろ?バレてるぜ。
 それをした時点でてめーの負け。この場で決着つけるしか生き残る方法はねーんだよ、お互いになァ」
 はじめて、ドラゴンの表情に色が映った。
 その時見せた瞳から最初に読み取れたのは驚愕。それから健闘を見せたケルベロスを賞賛するように僅かに黙考し、再び目を開いた時には、秘中の策を見抜いたところで為すすべを持たぬ者への憐憫といった、不思議な色を湛えていた。
「くるぞ!」
 麻痺から解かれたドラゴンが天を仰ぐように咆哮を響かせる。
 次いで放たれたブレスが天井に着弾すると、洞窟全体が大きく振動した。
 崩落が始まった。


 上下左右に荒れ狂う土砂の波濤。
 蒐集は今、その鱗を掴むことでドラゴンに張り付き地中を進んでいる。
 間一髪だった。ドラゴンは天井に放ったブレスの成果を確かめもせずに地中へと潜った。
 心に備えがあろうと、あらかじめ前衛の位置取りをしていなければ手の届かないほどの速さ。
 視線を回らせば、傍らのミミックの他にもクリスフォードとソルが同じく組み付いている姿が見て取れた。
「!!!」
 だが、ケルベロスを振り落とさんと荒れた舵を取る航海にあって、主人ほどの器用さを見込めぬサーヴァントには荷が重い。
 ミミックは鱗に噛み付くことで掴もうとしたが、鋼のような硬度に歯が立たなかったのだろう。ついにミミックは吸い込まれるように闇に溶けていく。
「クソ!」
 蒐集は半ば無意識に手を伸ばした。判断が素早く無事にミミックをキャッチしたものの、残る片手で乗り切れるほど甘い運転ではない。
 支えとしていた鱗から手は外れ、地面に放り出された勢いそのままに転がる。
 見上げた時にはドラゴンの姿ははるか頭上。
 恐るべき進行速度だった。先に天井を崩してからここに至るまで、時間にして十秒ほどの出来事なのだろう。
 まだ、間に合う。
 蒐集はミミックを大事そうに抱えると、翼を広げ闇の空へと追走を開始した。

 ドラゴンが地表に出ると同時に、クリスフォードとソルは鱗を手放しその足で大地を踏みしめる。
「悪いな、タダ乗りしちまって」
 ソルは挑発気味な視線でドラゴンを射抜く。だがその実、先の戦闘で体力は枯れている。
 ペインキラーにより限界を偽ることで、癒し手の負担を減らしていたのだろう。
 回復を担うランスロットにはもう一つの役割があった。となれば、意地を貫き盾としての役割を果たすことこそソルの矜持。
「届かなかった過去を胸に。まだ届く今は二振りの腕(かいな)に――」
 力ある詠唱に、蒼いドーム型の結界がソルを中心として展開し術者を守る盾を成す。
 瞳を閉じる。まぶたの奥に仲間の姿が浮かべる。
 ここにきて竜に焦りの色が見えた。
 ドラゴンは早急に地中に埋めたケルベロスの位置を特定し、追撃で沈ませなければならず。
 この場に立つ者は、仲間と合流を果たすまで戦闘を継続し、高い集中力を必要とするその探知能力の発動を防がなくてはならない。
 ソルの瞳が再び開く。ドラゴンと視線が交差する。今度は明確な殺意が乗せられていた。
「――星夜に煌めけ! 守護者の光!」
 毒霧のブレスを真っ向から受け止め、視線で火花を散らす。
 ソルにとってはごく当たり前の、味方を庇うという行為。
 けれど、受けたクリスフォードにとって、それはやわらかな不意打ちだった。
 その背中に頼もしさを覚えたようにクリスフォードは顔をほころばせた。
 きっと、場違いと自戒したのだろう。
 ふるふるとかぶりを振った後は、真剣な面持ちとなり詠唱を開始する。
「我と共に生きるは、勇敢なる勇者達」
 胸を焦がす想いを声に乗せ、天空に響かせる。
 見開いた瞳に、かつて共に戦い、散った仲間たちの姿が映った。
「――、」
 懐かしい仲間たちの面影が、クリスフォードに微笑んだ気がした。
 洞窟を抜けたばかりの目に光はまだ慣れていないから。きっと、やわらかな日差しが見せた幻だったのだろう。
「皆、お願い……!」
 紡がれた言葉を号令とし、騎士たちは眼前の敵を殲滅せんと疾走する。
 

 それはドラゴンの巣という、ひとつの自宅の終焉。
「ひ、ィ――」
 鬼百合はガチガチと歯の奥を震わせ、崩落していく様を呆然自失といった表情で見ていた。
 住処を失ったドラゴンの胸中を推察しようとしたことが失着となった。
 それが引き金となり、鬼百合本人が自宅を追われた日のトラウマが脳裏に蘇る。
「鬼百合、こっちだ!」
 泣き出しそうな表情を声のした方に向けた。
 見れば、ランスロットの作成した巣作りのエフェクトの一部が形作られていた。
 足場となる土台と、瓦礫を防ぐ屋根。
 戦闘中では難しい巣作りの展開であったが、仲間たちが癒し手であるランスロットの負担を減らすことで、巣作りの作成に専念する時間を稼いだ。

「鬼百合の様子が変なんだ。だいじょうぶかな?」
 テオドシウスの言葉に、ノアは思案するように頬に指をあてる。
 見れば鬼百合は「自宅は死んだ」と、よくわからないことを繰り返し呟いている。
 心に傷を負ったのなら、元気になれる提案をすることで気力を取り戻せるのではないか。 
「――、そうだね。帰ったら祝勝会をするのも楽しいかも?」
「お祝い……。ぱーてぃ……。リア、充?」
 反応は上々といえた。
 その様子に悪戯心をくすぐられたのか、茜は息をするような自然さで唇から言葉を紡ぐ。
「パーティーといえばもうすぐクリスマスだね? ――きっと鬼百合には素敵な恋人が待っていて爆発するくらいリア充なクリスマスを満喫するに違いないんだよ。いやー憧れちゃうなー」
「アアアアアア」
 独り身の心をえぐるような棒読みだった。鬼百合は膝を抱え込むように座り、ブツブツと暗唱しはじめる。
 テオドシウスが鬼百合をひょいと抱え上げる。心ここにあらずといった表情で抵抗はなく、これはこれで扱いやすい。
 あえて口は挟まず、その様子を眺めていたランスロットは瞳を伏せた。
「さっさと出るぞ」
 確保した足場から、鬼百合を抱えたテオドシウスは天井を睨み狙いを定める。
 最初にアリアドネの糸で印を付けた通気口だった。崩落の影響から今は閉じているが、それでも他の箇所より壁は薄いだろう。
「いくぞ、巨人化だ!」 
 マインドインフィニティの呼び名を持つ、巨人化した術者に光を纏わせ突撃させるグラビティを頭上に向けて放つ。仲間たちはテオドシウスを掴むことで同時に地上へと帰還した。
 テオドシウスが洞窟から脱出するのと、ミミックを抱えた蒐集が地表へ飛び出たのはほぼ同時だった。
「知ってるかい? 神話の時代から、竜退治は騎士様のお役目なのさ」
 テオドシウスの巨人化は天井を破壊したことで効力を失い、急速にサイズを戻していく。視界を遮るものがなくなったことで、その巨体の陰に隠れていたノアと茜の姿が現れた。
「喰らいつけ、ルナエクリプスッ!」
 絶妙なコンビネーションを見せる2人が放つグラビティの着弾はほぼ同時だった。
 ぐらり、ドラゴンの巨体が揺れる。
「お前の死体は全て俺様が有効に使ってやる。安心してその屍をさらせ」
 蒐集は炎を操りドラゴンを焼く。たまらず火を振り払おうとするドラゴンの目に、燃えるような鬼百合の瞳が映った。
「オレの、自宅……返せよォ」
 紆余曲折の思考の果てに、ドラゴンを自宅の敵として認識したらしい。守りを度外視した全体重を乗せた飛び蹴りでドラゴンの体勢を崩す。

「ルン・ラティーク・ジハード」
 魔力が術者であるテオドシウスの肉体の熱量を上げていく。
 その大詠唱に赤い風が巻き上がり、髪をさらった。
「ミ・ハード・イヴォント・リヴュー」
 迸る魔力の奔流は黄金色に輝く炎に姿を変えテオドシウスに鎧われた。
 虚空に手を伸ばす。確かめるように、ゆっくりと拳を形作る。
 見据えた先は緑の竜。かつて感じた恐怖も、今は視界に映らない。
 瞳に映るドラゴンが牙をむき出し、既に回避すらままなぬ深手を負った仲間へとブレスを吐いた。
 それが口火を切ったように、テオドシウスの踏みしめる足が地を穿つ。
 炎渦巻く破壊的な力の奔流となり、弾丸の如き速度でドラゴンに肉迫する。
「――我が獅子の牙をもって、砕けよ翡翠の竜!」

 竜の命と引き換える形で放たれた毒霧のブレスは、クリスフォードが身を盾とすることで防いだ。
「仲間はもう、失わせないっ!」
 霧が晴れたあと、澄んだ冬の風がクリスフォードを包んだ。

作者:戸高露木 重傷:ソル・ログナー(陽光煌星・e14612) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 9/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 4
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