フワフワモコモコこそ至高である!

作者:ゆうきつかさ

●都内某所
「俺は常々思うんだッ! フワフワモコモコこそ至高である、と! だって、そうだろ。フワフワな上にモコモコだぞ? ある意味、ヘヴン&ヘヴン。天国と天国がサンドイッチ状態で、俺達を包んでいるようなモノだ。これ以上の至福があるか? ハッキリ言って……ない! 少なくとも、この世には存在していない! そう断言する事が出来るほどのヘヴン! だからこそ、俺は言いたいッ! フワフワモコモコこそ至高である、と!」
 ビルシャナが廃墟と化したビルに信者達を集め、自らの教義を語っていた。
 そこにあったのは、フワフワモコモコの空間。
 何から何までフワモコとしており、まるで雲の上にいるのではないかと錯覚するほど、フワフワモコモコとしていた。
 しかも、ビルシャナ達もフワフワモコモコとしており、まるで羊のような感じになっていた。

●セリカからの依頼
「シフカ・ヴェルランド(血濡れの白鳥・e11532)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
 ビルシャナが拠点にしているのは、廃墟と化したビル。
 ただし、ビルシャナによって、違法に改装が施されているため、室内は天井から床までフワモコ。
 歩くというよりも、フワモコを掻き分けて、先に進んでいくような感じのようである。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。ここでビルシャナ化した人間の主張を覆すようなインパクトのある主張を行えば、周囲の人間が信者になる事を防ぐことができるかもしれません。ビルシャナの信者となった人間は、ビルシャナが撃破されるまでの間、ビルシャナのサーヴァントのような扱いとなり、戦闘に参加します。ビルシャナさえ倒せば、元に戻るので、救出は可能ですが、信者が多くなれば、それだけ戦闘で不利になるでしょう」
 セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
 ビルシャナ達はフワモコの恰好をしているため、本気で殴ってきたとしても、フワ……モコッとするだけなので、苦戦をする事はないだろう。
 そのため、万が一説得に失敗したとしても、まったく心配する必要がないようである。
「また信者達を説得する事さえ出来れば、ビルシャナの戦力を大幅に削る事が出来るでしょう。とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくお願いします」
 そう言ってセリカがケルベロス達に対して、ビルシャナの退治を依頼するのであった。


参加者
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)
細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)
天乃原・周(不眠の魔法使い・e35675)
ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)

■リプレイ

●都内某所
「きゃーっ、ふわっふわで、もっこもこーっ! 何だか見ているだけで幸せな気持ちになりますね」
 細咲・つらら(煌剣の氷柱・e24964)は仲間達と共に、ビルシャナが拠点にしているビルにやってきた。
 ビルシャナ達の拠点となっているビルは、何から何までフワフワ、モコモコ。
 それが原因で、近所の子供達も頻繁に立ち寄る癒しスポットと化していた。
 そういった意味で、気持ちがふんわり緩んでしまうものの、それこそビルシャナが仕掛けた罠ッ!
 油断すれば、あっと言う間にフワフワモコモコの虜。
 その事がキッカケになって、信者になってしまった一般人も、少なからずいるようだ。
「ふわふわもこもことは……むむむ……悪魔の誘惑のごとく……です」
 荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)が警戒した様子で、フワモコのビルを睨みつけた。
 採算度外視でフワモコにしたビルは、他のビルと比べても、魅力的。
 この時点で、フワフワモコモコの地面にダイブしたい衝動に襲われているものの、そんな事をすれば、ビルシャナ達の思うツボ。
 フワフワモコモコの沼に沈んで、這い上がる事が出来なくなってしまう可能性も捨てくれない。
「……ごめんな。これ……説得、出来ねぇ。いっそ、堪能す……イッテェ! なんで?! シラユキなんで叩くの?! しかも、わざわざ杖で!」
 天乃原・周(不眠の魔法使い・e35675)が涙目なって、シャーマンズゴーストのシラユキを睨みつけた。
 しかし、何故かシラユキが、御立腹!
 明らかにイライラしている事が分かるほど怒っていた。
「……あっ! ひょっとして、拗ねてる? ……ふふふ、可愛い奴め!」
 そんな空気を察した周が、シラユキのつるつるヒンヤリとしたたてがみを優しく撫でた。
「……!」
 シラユキも、まんざらではない様子で、フンと鼻を鳴らした。
「……とはいえ、フワモコか。何やら、とてもすてきな響きがするな。しかし、相手はビルシャナである。ここは心を鬼にして思う存分フワモコするぞ」
 ルイーゼ・トマス(迷い鬼・e58503)が物思いに耽ながら、どこか遠くを見つめた。
 それと同時に、仲間達が『……えっ!?』と言わんばかりに、ルイーゼの顔を見た。
 だが、そう思ってしまう程、フワモコは魅力的。
 例え、その事によって、仲間達を裏切ることになったとしても、仕方がないと思ってしまう程、フワモコは魅力的であった。
「こ、今回ばかりは、流石のつららちゃんもビルシャナさんの信者に……って駄目です、駄目ですっ! ふわもこの虜になるのはマズいです。そんなことになったら、由々しき問題ですっ! こうなったら、つららちゃん、心を鬼にして頑張りますよっ!」
 そう言って、つららが気持ちを切り替え、フワフワモコモコとしたビルに足を踏み入れた。

●フワモコビル
「……ビルの中もフワモコのようだな」
 ルイーゼが警戒した様子で、ゆっくりと辺りを見回した。
 天井から床まで、すべてフワモコ。
 歩くたびにフワフワモコモコしており、何とも言えない幸せな気持ちになった。
 しかも、室内には犬や猫、鶏やハムスター等が走り回っており、それがフワモコの床からヒョコヒョコと顔を出していた。
「……!」
 だが、ルイーゼが触ろうとすると、ぴゅー!
 まるで風の如く勢いで、その手を擦り抜け、フワモコの床に潜り込んだ。
「おひさまを浴びたお布団のようです……ふわふわ……もこもこ……」
 そんな中、綺華が吸い込まれるようにして、スヤァ……と深い眠りについた。
 そこはフワフワモコモコなユメセカイ。
 まるで雲の上で昼寝をしているような感覚に襲われ、身も心もポカポカになった。
「……と言うか、この状況で説得なんて出来ませんっ! ふわもこの何がいけないのか、つららちゃんにも分かりませんっ!」
 つららも複雑な気持ちになりつつ、フワモコの床に沈んでいった。
 その途端、つららの全身を包んだのは、何とも言えない無重力感であった。
 いっそ、このままフワモコの床と同化したい。
 そんな気持ちに襲われながら、つららの意識が、フワモコの世界に旅立った。
「どうやら、お前達もフワモコの虜になってしまったようだな!」
 そんな中、現れたのは、ビルシャナ達であった。
 ビルシャナ達はフワモコの衣装に身を包み、まるで羊のようになっていた。
 そのため、みんな愛らしい感じになっているものの、ビルシャナだけはブサカワ感満載であった。
「わたしはフワモコを堪能するために来たのだ。だが、みんな逃げてしまう。フワモコが至高なのであれば、大人しくフワモコされるべきなのだぞ」
 ルイーゼが不満げな様子で、ビルシャナをジロリと睨みつけた。
「確かに……」
 ビルシャナも納得した様子で、ルイーゼを抱きしめた。
 普段であれば、ビルシャナという時点で拒絶するところではあるものの、そんな気持ちを感じさせない程のフワモコ感。
 それはビルシャナであったものを、全く別のモノに変えるほどの力を持っており、『この中に埋もれたい!』という衝動に襲われた。
(「――触れると視覚以上のフワフワ感が指先から伝わってくる。意気込んで更に指を沈めればモコ、とした絶妙な弾力となめらかさが感じ取れそうだ。上質な毛皮を撫でているような、いやそれ以上のフワモコ感……。これぞ……しふく……」)
 ルイーゼがフワフワモフモフの感触に心を奪われ、幸せな気持ちに包まれた。
「クックックッ! 見たか! これぞ、フワモコの力ッ!」
 ビルシャナが勝ち誇った様子で、高笑いを響かせた。
 まわりにいた信者達も、自分の手柄の如く、高笑い。
「……ん? なんだ、シラユキ? ……なるほど。『フワモコは、その他の触感があるから引き立つのだ! ゴツゴツを触ったあとの方がフワモコのフワモコっぷりがわかるだろ? ずっとフワモコってたら麻痺しちゃってフワモコを堪能出来ない!』だってさ。んっと、つまり……」
 周がシラユキの体を触った後、ルイーゼの髪を触った。
 ルイーゼの髪は雪のように白く、たっぷりとした量と長さを誇るため、なかなかのフワモコ。
 そのため、周が病みつきになるほどのフワモコであった。
「……!」
 次の瞬間、シラユキがイラっとした様子で、周をポカンと杖で殴った。
「あだ? シラユキ殴らない! ……あ、催眠かかりかかってた? ありがとう、シラユキ!」
 一撃を喰らったビルシャナが、涙目になりつつ、シラユキにお礼を言った。
「……催眠」
 その言葉に坊主頭の信者が、キョトン。
 ビルシャナも、つられてキョトン。
 まだ何もしていなかったのか、頭の上に沢山のハテナマークが浮かんでいた。
「はっ……いけません……戦いに来たのでした……」
 そんな中、綺華がハッとした表情を浮かべ、慌てた様子で飛び起きた。
 時間にすれば、数分……いや、数十秒程度かも知れないが、だいぶ眠っていたような感じである。
 そのおかげもあって、気持ちがスッキリ。
 何やら清々しい気持ちになっているものの、ここでノンビリしている暇はない。
 すぐさま、気持ちを切り替え、戦闘モード!
「うう、ごめんなさいっ、うっかり別の攻撃に当たらないように、眠っててくださーいっ!」
 つららも複雑な気持ちになりつつ、フワモコの床から起き上がり、手加減攻撃で信者達の意識を奪っていった。

●ビルシャナ
「な、何故だ! 俺は……いや、俺達は何も悪い事をしていないのに……! 一体、俺達が何をした! ただみんなをフワモコにしたかっただけなのに……。それが悪い事だというのか!? みんな、こんなに喜んでいるのに……。ならば、俺は鬼になる! フワモコが悪だというなら、戦うまでだ! 喰らえ、必殺……フワモコビーム!」
 ビルシャナが思わせぶりにポーズに決め、フワモコビームでケルベロス達の身体をフワモコにした。
「こ、これは……!」
 その一撃をモロに喰らったルイーゼが、全身フワモコになり、めくるめくフワモコの世界に旅立った。
 それはルイーゼにとって、パラダイス。
 身体を動かすたび、フワフワ、モコモコ。
 思わず天に昇ってしまう程、フワモコ感が満載であった。
「もこもこ……なんだか癒されてしまいそうです……」
 綺華がフワモコになり、複雑な気持ちになった。
 だが、全身フワモコのせいで、幸せな気持ちに飲み込まれた。
 あっちもフワモコ。
 こっちもフワモコ。
 幸せいっぱい、夢いっぱい。
 半ば思考停止状態に陥りながら、綺華が頭をクラクラさせた。
「みんな催眠に掛からないで! それってキュアで、どうにか出来ないから……」
 周が困った様子で、仲間達にツッコミを入れた。
 しかし、仲間達はフワフワモコモコ、夢心地。
 『ビルシャナ、何それ? 美味しい?』状態に陥っているため、周の言葉も華麗にスルー。
「ハッハッハッ! このまま、みんなフワモコになってしまえ! 喰らえ、必殺フワモコパァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーンチ!」
 ビルシャナが高笑いを響かせながら、ケルベロス達に対して、フワモコパンチを繰り出した。
 だが、その一撃はまったく殺傷力のないフワモコな一撃。
 そのため、どんなに食らわせても、相手が幸せな気持ちになるだけの一撃であった。
「特に恨みはないのですけどぉ……。でもでもっ、ビルシャナさんというだけでギルティですっ! 多分っ! い、いかにふわもこでも、ダメなものはダメなんですーっ!」
 次の瞬間、つららがヴァルキュリアブラストを発動させ、光の翼を暴走させ、つつ全身を光の粒子に変えて、ビルシャナに突撃した。
「な、何故だあああああああああああああああ! 俺は悪くない! フワモコは悪くない! それなのにィィィィィィィィィィィィィィィイイイ!」
 それと同時にビルシャナが断末魔を響かせ、フワフワモコモコの中に沈んでいった。
「はぁ……これで、ようやく……」
 そして、つららはホッとした様子で、フワモコの床に沈んでいった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年10月10日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 0
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