城ヶ島制圧戦~竜の屍を野に晒せ

作者:天枷由良

「強行調査により、城ヶ島に『固定化された魔空回廊』が存在することが判明しました」
 ケルベロスたちを集め、セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は緊張した面持ちで伝えた。
「この固定化された魔空回廊に侵入し、内部を突破する事ができれば、ドラゴン達が使用する『ゲート』の位置を特定する事が可能となります」
 位置が特定出来れば、その地域の調査を行った上で、ケルベロス・ウォーにより『ゲート』の破壊を試みることも出来るだろう。
 そして『ゲート』を破壊する事ができれば、ドラゴンたちは新たな地球侵攻を企てる事が出来なくなる。
「つまり城ヶ島を制圧、固定化された魔空回廊を確保出来れば、我々ケルベロスはドラゴンたちの喉元へ牙を突き立てられるという事です」
 強行調査で得られた情報から、ドラゴンたちは固定化された魔空回廊の破壊は最後の手段と考えているようだ。
 ならば電撃戦で城ヶ島を制圧し、魔空回廊を奪取する事は決して不可能ではない。
「ドラゴンたちの侵略を食い止める為にも、皆さんの力を貸してください」
 今回の作戦は、仲間の築いた橋頭堡からドラゴンの巣窟である城ヶ島公園に向けて進軍する事になる。
「進軍の経路などは全て、ヘリオライダーの予知によって割り出しています。皆さんは、その指示の通りに移動してください」
 固定化された魔空回廊を奪取するには、ドラゴンたちの戦力を大きく削ぐ必要がある。
 ドラゴンは強敵だが、必ず撃破するという心構えで挑まねばならない。
「皆さんが相手取るドラゴンは、様々な毒を食らいながら進化してきた個体です。頭には肥大化した目玉が2つと、捻れた短い角が2本。大きさ8メートルほどの身体は紫色で、所々に緑の斑点が浮いており、翼はまるで蝙蝠のよう。皮膚は僅かに爛れた様になっています」
 一見して柔そうにも見えるが、粘液のにじむ鱗で覆われている為、簡単に斬り裂くことは出来ない。
「4つの太い脚でしっかりと地面を踏みしめ、口から猛毒の含まれた霧状の息を広く吐き散らします。角と同じように、手足に生えた爪は捻れており、皆さんの防御を容易く打ち破って、肉を抉り取ろうと向かってくるでしょう」
 毒の息と爪以外に、丸太のような太さの尻尾を振るうこともある。
 尻尾を包む鱗は一部逆立っていて、近くにいる者たちを纏めて薙ぎ払ってしまうだろう。
「何よりも好むのは、自らの毒で相手が苦しむ様を、まじまじと近くで見て笑うことです。とても陰湿で気味の悪いドラゴンですが、それだけ強力な毒を有しているのでしょう」
 対抗する手段をしっかり用意してください、と言って、セリカは暫し間を置いた。
「……皆さんが敗北すれば、魔空回廊の奪取作戦自体を断念する事もありえます。決死の強行偵察で得られた機会を無駄にしないよう、必ず、作戦を成功させましょう。そして、無事に帰ってきてくださいね」


参加者
天神・世羅(紫唐揚羽師団のセイントマザー・e00129)
早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・e00339)
風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)
テオドール・クス(渡り風・e01835)
ケルン・ヒルデガント(戦場駆ける戦乙女・e02427)
ブレイ・ディジョン(獄獣合体ヘリオブレイザー・e05435)
阿部・知世(青の魔術師・e14598)
シャドウ・ホーク(お子様ランチ・e18017)

■リプレイ

●紫色の猛毒
「くっ……」
 紫色の霧を浴び、天神・世羅(紫唐揚羽師団のセイントマザー・e00129)は膝をついた。
 隣では、相棒のボクスドラゴン『フィム』がぐったりと地に伏し、ケルン・ヒルデガント(戦場駆ける戦乙女・e02427)と、風峰・恵(地球人の刀剣士・e00989)も、武器を地に刺して苦しげに身を支えている。
 その姿を見て、ドラゴンはくぐもった笑い声を上げた。
 視界に入っただけでも嫌悪感を喚び起こしそうな、緑の斑点が浮かぶ紫の肌。
 太い脚をゆっくりと動かして近づいてくるにつれ、異様に肥大化した目玉が爬虫類の様にグリグリと回る。
 そして文字通り、敵の姿を見下ろしていた頭を下げ、鼻息が当たるのではないかというほどに近づいてケルベロスたちを眺めた。
 気圧されてなるものかと、強気に敵の目を見返す世羅をじっくりと見つめ、ドラゴンは身震いをさせて再び笑い声を漏らす。
 一度染み込めば、毒は形のない死の恐怖となって身体を蝕んでいく。
 それに抗おうとする者の姿ほど、この性悪な竜にとって堪らないものはない。
 ――あぁ、何と素晴らしい光景だろうか。
 そう言わんばかりの表情でドラゴンが恍惚に浸っていられたのは、ほんの僅かな間。
 目を伏せたまま何かを歌い始め、赤い光に包まれていった世羅が、立ち上がるなり舞い踊るようにしてドラゴンの横っ面を引っ叩いたのだ。
「……何をとぼけた顔をしているの? しっかりと私の歌を聞きなさい」
 歌い続ける世羅を見て目を瞬かせたドラゴンだが、事態を理解するにつれて沸々と怒りがこみ上げてきた。
 頬を張られるなど、初めての経験だろう。
 あまりの出来事にまた笑い始めたドラゴンの頭上から、更に呼びかける声。
「そうやって笑えるのも今日が最期だ。醜いデカブツめ」
 首をもたげたドラゴンの眉間に、テオドール・クス(渡り風・e01835)が思い切り片脚を振り下ろす。
 炎を纏った一撃は粘液に包まれた鱗を容易く貫き、その汚らしい肌を燃やしながら穴を穿った。
 悲鳴、ではなく唸り声というべき音を轟かせ、大きくのけぞって後退していくドラゴン。
 その肌をもう一方の脚で蹴りあげて、テオドールは大地へ降り立つ。
「……ちっ、汚らしい。この靴、どーしてくれんだよ」
 突き出したエアシューズは、ドラゴンと皮膚と同じ紫色の体液で汚れていた。
 ずけずけと文句を垂れるテオドールの後ろから、一際大きな声が響く。
「クリアキャリバー!」
 呼び寄せた愛機が放つ装備を受け取り、ブレイ・ディジョン(獄獣合体ヘリオブレイザー・e05435)は最終決戦仕様へと変化していく。
「マスク・オン! 獄獣合体、ヘリオブレイザー!」
 掛け声と共にマスクを展開してクリアキャリバーに搭乗したブレイは、剣をドラゴンに向けて言い放った。
「毒吐きドラゴン! このヘリオブレイザーが相手だ!」
 気合十分のレプリカントを見て、持っていた本を開きながら阿部・知世(青の魔術師・e14598)が呟く。
「……まるで、神話に描かれた竜退治の勇者のようですね」
 それが聞こえたか、ケルンは杖代わりにしていた二本の斧を持ち上げると、片方を敵へ、片方を知世へと向ける。
「ならば知世、その書に妾の名も刻むがよい! 新たな竜殺しの誉、こやつの首と共にもらってゆくぞ!」
 叫んだ口の端を、胃の底から湧き上がってきた血が伝うのも厭わず。
 ケルンの目は、昂ぶって煌々と輝く。
 ――面白い。
 これほどまでに生の力に満ち溢れたものと、相対したのは初めてだ。
 何処まで耐えられるものか。
 三度笑うドラゴンにケルベロスたちは反攻の意志を示す。
「そんな余裕を見せられるのも、今の内なんだから」
「我々に追いつめられていくその姿、しっかりと記録させて頂きマス」
 魔法の木の葉を纏って力を高めた早門瀬・リカ(星影のイリュージョニスト・e00339)が刀を、戦闘に不要な装備を切り捨てたシャドウ・ホーク(お子様ランチ・e18017)がライフルを構え、ドラゴンへ狙い定める。
「……一意専心、推して参る」
 ただ一振りの愛刀、その切っ先を相手の喉元へと向けて柄を握りなおし、恵はドラゴンへ斬りかかっていく。
 迫る剣士の姿を見据え、ドラゴンは戦場に響き渡る咆哮を上げた。

●食らわば飲み乾せ
 恵の刀が振るわれるよりも早く、ケルンが古代語を詠唱して魔法の光を放った。
 己の身体が、まるで石のように重く感じ始めたことに気を取られ、ドラゴンは迫る敵の姿を視界から切ってしまう。
 その僅かな隙で詰め寄った恵は、刀を月光のように煌めかせて振り下ろす。
 刃は太い脚を正面から捉え、抜ける途中で何か堅い腱のようなものを断った。
 思わず引き上げようとした脚に、フィムがブレスを吹きかける。
 まだ大したダメージではないが、鬱陶しい事に違いはない。
 僅かに毒霧を漏らしながら、ドラゴンは大きな口を開いた。
 そこへ、ブレイの乗るクリアキャリバーが掃射する銃弾と、シャドウがバスターライフルから放った光弾が炸裂して、溜まり始めていた霧は爆風に吹き飛ばされる。
「……やはり、簡単には倒れなさそうデスネ」
 ドラゴンは口内を焼かれた事よりも、アイデンティティーである毒霧を散らされた事に苛立っていた。
 あの様子ではどれほどの体力を持っているかも分からない。
 長期戦を覚悟するシャドウの前を、剣を地面に突き刺しながらブレイが駆け抜けた。
 やがて完成した守護星座が輝き、知世が生み出したオーロラのようなものと共にケルベロスたちを包んでいく。
 その清らかな光は、世羅たちの身体に蔓延っていたドラゴンの毒を全て打ち消した。
「どうしましょう。英雄譚を書き連ねるには、あなたの毒では盛り上がりに欠けますね」
 真っ白なページの上を踊っていた羽ペンが止まり、知世はドラゴンを見上げる。
 独り言とも取れるほどに小さくぼそぼそと呟いた言葉は、やんわりとした表現に包まれているが。
「要するに、お前の毒は大したものでは無いと、そう言う事デスネ」
 シャドウがわざわざ平たい表現に直して聞かせてしまったので、ドラゴンを撹乱するために跳ね回っていたリカは思わず立ち止まって笑ってしまう。
「あははっ、そんなはっきり言ったら可哀想だよ!」
 まぁ、実際大したこと無いみたいだけど。
 そう付け加えながら、リカは手裏剣を影の弾丸として放つ。
「目には目を、毒には毒を、だよね?」
 突き刺さった影は、ドラゴンの紫色の肌を黒く染め直していこうとする。
 変色していく部分に痛みを感じながら、ドラゴンは再び毒霧を吐こうと息を吸い込んだ。
「毒に自信を持っているようデスガ、来ると分かっているものを黙って受けはしマセン」
 仲間たちを守るために、シャドウが大量に散布した霊力を帯びた紙兵たち。
 その間を縫って、刀を携えたテオドールが、半拍遅れて続く恵と共にドラゴンへと向かっていく。
 空の霊力を帯びた二振りの刃はドラゴンの傷を斬り広げて、感じる痛みを倍増させる。
 更に敵の動きを阻害するべく、ブレイはクリアキャリバーから飛び降りて腰の主砲を一斉発射。
 クリアキャリバーも単身突撃して、ドラゴンの周囲を激しく動きまわる。
 しかし、ドラゴンは受けた攻撃を全く顧みず、濃度を上げた毒を大量に吐き出した。
 守護星座の光や紙兵の防御を打ち破り、殺到する紫の霧を浴びて、世羅から響き続けていた歌が止まる。
 代わって聞こえたのは、その喉を通って飛び散る鮮血の音。
 ふらりと倒れそうになった主の体を、フィムが慌てて支える。
 ――これだけの毒を喰らえば、ひとたまりもあるまい。
 毒霧を一手に引き受け、顔を青白くして脚を震わせる世羅を見て、ドラゴンは敵の死を確信した。
 だが、フィムが自らの力を注入していくと共に、ケルンが練り上げた生命力を分け与えたことで毒はすぐに薄まっていく。
 極めつけとばかりに、知世が宙空に羽ペンを走らせた。
 その軌跡は青く輝く文字となり、世羅をぐるりと取り囲む。
 文字の群れが意味を成す詩の一節となったとき、湧き出てきた青い光の粒が、世羅の体からあらゆる不純物を取り除く。
 再び歌を――今度は敵を煽るためでなく、自分と仲間たちを癒やすために歌いながら、両手を広げてドラゴンに立ちはだかる世羅。
 その目は、全てを守り通すと言う強い意志に満ちていた。
 ――気に食わぬ。
 自慢の毒を、二度も完膚なきまでに叩き潰され、なりふり構わなくなったドラゴンは丸太の様に太い尻尾を振るった。
 ケルンとフィムがその一薙ぎで吹き飛ばされ、地を転がっていく。
 その勢いのまま迫ってきた尻尾を、世羅は気合を入れて正面から受け止めた。
 単調で大振り、力任せの攻撃はそのまま勢いをなくし、垂れた尾を抱きかかえたまま、歌を響かせ続ける。
 わざわざ自分から、ケルベロスたちへ背を晒す形になったドラゴンに、テオドールがナイフを向けて飛ぶ。
 そのまま首を一刺しにして、噴き出す血飛沫を避けながら竜の背を駆け下りていく。
 振り返ったドラゴンの喉元に、今度はリカが刀を突き立てた。
 体内から毒を送り出すために重要な気管を傷つけられ、喉を押さえて呻く敵を蹴り飛ばし、リカは宙を舞って華麗に着地する。
 その間に起き上がったフィムが、自身の体内で力を循環させて傷を癒やし始めると、ケルンの元へは知世が駆け寄っていく。
 気を失っているのか、寝転がったままのケルンの身体を魔術で切り開くと、知世はありったけの魔力を流しこんだ。
 吸収しきれないほどの力に刺激され、びくりと一度身体を跳ねさせたケルンは、がばりと飛び起きて斧を構える。
「……元気に、なりましたか?」
「うむ、些かやり過ぎではないかと思ったがの!」
 戦いの最中に緊急手術を受けるとは思っていなかったケルンへ、知世は強引とも言える治療について魔術的に解説しようとした。
 が、饒舌になるよりも先にケルンがドラゴンへ向かってしまったので、仕方なく本を開いて治療の成果を記しておく。
「ケルンさん! 私の後に!」
 斧を手に駆けてくるケルンへ呼び掛け、恵は先んじて刀を突き出した。
 雷鳴の如き瞬速の突きが、ドラゴンの鱗をめくり上げる。
 引きぬいた刀に付いた血を払い、鞘へと収めながら恵は退いていく。
「ほう、ちょうどよさそうな隙間じゃの!」
 入れ替わりで肉薄したケルンは、両手の斧を浮いた鱗の下へ潜りこませた。
 そのままこじ開けるように、ドラゴンの身体を抉り取る。
 暴れだしたドラゴンの足元をかい潜り、クリアキャリバーはガトリングガンを乱射。
 ブレイのライフルと、シャドウのアームドフォートも一斉に火を噴く。
 大小様々な砲弾が突き刺さっていき、ドラゴンの動きは徐々に鈍り始めた。
 ――こんな事があってたまるものか。
 自身の全てを懸けて、ドラゴンは全力で毒霧を吐きつける。
 それは確かにケルベロスたちの身体に浸透していったが、回復術を受ける度に引き上げられていた治癒能力が功を奏した。
 ケルベロスたちが不調を来すよりも早く、毒は身体から駆逐されていく。
 与えるはずだった絶望、それを自分が感じ取る羽目になり、動揺したドラゴンの目が忙しなく動き回る。

●食い千切れ
「今が好機よ!」
 世羅が声を張り上げた。
 身体を這いまわる毒を打ち破り、残ったダメージはドラゴンの毒霧自体から受けた回復不可能なものばかり。
 ここで押し切って敵を沈めると、ケルベロスたちは一斉に攻撃に転じた。
 まずは知世がケルベロスチェインを大地に這わせ、描かれた魔法陣がケルベロスたちの肉体を強化していく。
「さぁ、地獄に引きずり下ろしてやる!」
 テオドールのナイフが輝き、ドラゴンの身体を幾度も斬り刻む。
 フィムが、己の何十倍もの巨体へ向けて体当たりを仕掛け、世羅が放った気咬弾はドラゴンの顎を真下から砕くように打ち上げた。
「――我が呼び出すは、虚なる雷の獣!」
 仰け反るドラゴンの眼前へ飛び込んで、リカは刀を突き出す。
 腕から刀へと幾重もの稲光が走り、それはひと塊になって獣の形を作り上げていく。
 生み出された牙獣は主と共にドラゴンを見据え――。
「目の前の敵を噛み砕け!」
 号令一下、宙を駆けてドラゴンの身体へ牙を突き立てた。
 その姿は幻なれども、与える痛みは真なるもの。
 びくびくと打ち震えるドラゴンを眺め、ケルンは斧を手放して一枚の金貨を取り出した。
「我が自慢の姉妹の一人よ。どうやらそなたに、竜殺しの名がつきそうじゃの!」
 ダリアの描かれたそれに呼びかけながら、ドラゴンを狙い定めて弾く。
 撃ちだされた金貨は真っすぐに飛び、鱗も皮膚も物ともせず、首の肉をごっそりと削ぎ落としていく。
 飛び散る細かな肉片ごと、シャドウの放ったレーザーが傷口を凍らせた。
 もちろんそれは、止血の為ではない。
 ドラゴンの尾から背を駆け上ったクリアキャリバーが、激しくスピンして凍った部分を更に砕いた。
「よし、今だ! 超・電・拘トルネーーーードォ!!」
 愛機が離脱していくのを確認しつつ、ブレイは胸部装甲を開放して叫んだ。
 露わになった砲口から放たれた電磁波。
 それは光の竜巻となって紫色の巨躯を締め上げていく。
 辛うじて目玉を動かし、ケルベロスたちを見やるドラゴン。
 その視線が、剣士の元で止まった。
 恵は刀の柄に手をかけたまま、短く息を吐いて敵を見据える。
 思考は冷静に、しかしその心には敵を屠る熱き火を。
 ドラゴンに向けて駆けた恵は、すれ違いざまに刃を煌めかせた。
「斬り―――刻む!!」
 振るわれたのはほんの一瞬。
 だが、神速の連撃によって与えられた苦痛は、ドラゴンにとって永遠に思えるほど続く。
 ぐらりと揺れた身体が、大きな音を立てて崩れていく。
 ドラゴンはその生命の終わりを持って、ようやく痛みから解放されたのだった。

 揺れるイヤーカフを撫でながら敵の残骸を見つめていたテオドールの元へ、通常形態へと戻ったブレイがやってきた。
 二人は手を叩き合わせて、互いを労う。
 毒に対抗するために幾つもの回復手段を講じたため、全員無事ではある。
 しかし、ドラゴンの攻撃が集中した前衛陣の疲労は色濃い。
 世羅はフィムと共にへたり込み、リカと知世、シャドウに治療を施されている。
「ひとまずここまで、ということかの」
 斧を拾い上げ、ケルンはふぅ、と息を吐いた。
 そこでようやく、己の口元を汚していた血に気づき、軽く拭う。
 気がはやるが、ドラゴンたちの戦力を削ぐという目的は果たした。
 他の仲間たちも、上手くやってくれていればいいのだが。
 恵は祈りながら、固定化された魔空回廊のある方角を見つめていた。

作者:天枷由良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 1/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 0
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