磨羯宮決戦~一つ上の扉へ

作者:幾夜緋琉

●磨羯宮決戦~一つ上の扉へ
「皆さん、緊急で集まって貰い、申し訳ありません。早速ですが、説明させて戴きます」
 と、セリカ・リュミエールは、集まったケルベロスらを見渡し。
「東京焦土地帯……ここに、エインヘリアルの要塞が突如出現したのです」
「この出現した要塞の名前は磨羯宮『ブレイザブリク』。第九王子サフィーロと、その配下の蒼玉騎士団が守護している様なのです」
「そして、この要塞出現と同時に、蒼玉騎士団の尖兵が、東京焦土地帯を制圧し、周囲の市街地に略奪を仕掛けようと出陣を開始しています。この略奪部隊は、殺戮を好む『蒼狂紅のツグハ』が指揮しており、市街地にて殺戮と略奪を行おうとしています」
「市街地の殺戮行為をさせる訳にはいきません。となれば、蒼玉騎士団の略奪部隊を迎え撃つ必要があります」
「確かに敵陣は、統率の取れた騎士団であり、数も多いです。しかしながら本国のエリート集団であるが為か、私達ケルベロスの実力を過小に評価している様な部分もあります」
「幾つかの小部隊に分かれ、奇襲や伏撃を繰り返す事による敵の翻弄作戦を行う事で、指揮官である『狂紅のツグハ』を討ち取る、もしくは撤退させる事で、騎士団も撤退していく事と思われます」
 更にセリカは。、
「幸いな事に、彼らが降り立つのは『八王子の東京焦土地帯』。その周囲に一般人の影はありません」
「駅前を通る国道なども、ある程度の原形を留めている様ですが……周囲の建物は廃墟隣、身を隠して不意打ちを掛けるには良いかもしれません」
「しかしながら、敵陣の規模はかなりのものです。蒼玉衛士団督戦兵が50体、蒼玉衛士団一般兵が250体の、合わせて300体程度……恐らく督戦兵一体の一個小隊が、衛士団5人を匹連れている……という具合の様です」
「逆に言えば、作戦体型もこの一個小隊単位で動くようです。異変の調査、敵への迎撃……それらも、まずはこの一個小隊が相手となるでしょう。無論、その後増援などがやって来るとは思われます」
「つまり、この一個小隊単位でスピーディーに撃破することが勝利のカギとなる筈です。大量の増援が来てしまえば、倒す事は自ずと難しくなります」
「又、戦闘を行わず、彼らを攪乱する事で多くの小隊を本隊から引き離す事が出来れば、本陣への強襲も可能かもしれません」
「尚、一般兵のエインヘリアルの戦闘能力はそこまで高く無い様です。督戦兵のエインヘリアルが、罪人エインヘリアルと同程度という具合でしょうか……つまり、皆さんが全力を以てして戦うならば、この一個小隊を倒す事は五分五分といった所です」
「無論、小隊の数が増えれば加速度的に敗北の確立が高くなります。どうしても逃げられない時、とかにはそういった覚悟も必要かもしれません」
「又、督戦兵ですが、彼らは立場を手に入れた事で傲慢な傾向がある様です。自分に面倒な事は全て一般兵へと押しつける傾向がある様なので、それを利用する事で、派遣されてきた小隊を更に各個撃破出来るかも知れません」
「また、小隊の指揮官である督戦兵を撃破すれば、残る一般兵は戦闘を中断し逃げる様です。指揮官をピンポイントで狙う戦術も有効でしょう」
 そこまで言うと、最後にセリカは。
「蒼玉騎士団はエインヘリアルの王子直属のエリートです。その為、実戦の経験は少ないようです。皆さんの様な歴戦のケルベロスならば、それを利用して有利に立ち回れると思います。頑張って来て下さい」
 と、頭を下げた。


参加者
キサナ・ドゥ(カースシンガー・e01283)
本山・葵(ユートレマジャポニカ・e04016)
フレッシュ・ボーン(裏路地に蔓延る影・e27332)
煉獄寺・カナ(地球人の巫術士・e40151)
之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)
ヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)
トリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)
黒澤・薊(動き出す心・e64049)

■リプレイ

●扉を開くは
 東京都、八王子市。
 その八王子市中心部は、最早人の住まない焦土地帯と化して長い時が経過している。
 ……そこに突如として現れたのが、『磨羯宮『ブレイザブリク』』。更にそこからは、蒼玉騎士団の尖兵達が出陣を開始してきている。
 その『ブレイザブリク』の外見に、本山・葵(ユートレマジャポニカ・e04016)が。
「……んー。何だかウニみたいな姿ですね。中はどうなっているんでしょうか?」
 と小首を傾げる。
 ……勿論、中に入った事がある人はいないので、その答えを知りうる由もない、ただ。
「……大掛かりな敵の侵攻……ですか」
 と、煉獄寺・カナ(地球人の巫術士・e40151)が軽く目を瞑りながら呟くと、それに黒澤・薊(動き出す心・e64049)と之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)も。
「そうだな……敵陣はエインヘリアルと……苦い思いをさせられた連中か……」
「ええ。それを18チームで敵50小隊を潰さなければならない訳ですか……正直、多すぎる気はしますが、まぁ何とかなるでしょう。一歩一歩、確実にやっていかなければなりませんね」
「そうですね……確かにかなり有事ではありますが、これは同時にチャンスと言えるでしょう! 何としても食い止めて、こちらから攻める足がかりにしなければ!」
 そんな二人の会話を聞きつつ、周りを見渡すヴィクトル・ヴェルマン(ネズミ機兵・e44135)。
「……しかし、東京焦土か……ケルベロスとして気付けば足を踏み入れていたあの場所か……」
 静かなながらも、見覚えのある光景に息を吐く。
 それにキサナ・ドゥ(カースシンガー・e01283)とトリューム・ウンニル(碧き天災の運び手・e61351)も。
「ああ。何度か足を運んじゃいるが……八王子、東京焦土地帯。オレたちの戦いが始まった地、と。くひひ、そろそろ巻き返してやろうと思って居たトコだ! オレたちの実力を見せて、とっちめてやらないとな!!」
「そうね! ワタシ達の力、高慢ちきなエインヘリアルの鼻っ柱をへし折ってやらないとね!」
 東京焦土地帯に掛ける思いは様々ではあるが……ここがケルベロスとしての始まりの地である、というのも覆い。
 ……そしてしおんとヴィクトルも。
「……本当、この街もすっかり変わり果ててしまいましたしね」
「ああ……しかしあのデカい影は一体どこへ行ったんだろうな?」
「そうですね……まぁ無限沸きするザルバルク。あれを一時的にでも止める方法があるのなら、故郷の八王子……ここを取り戻せるのかもしれませんしね……ですよね、ボーンさん」
 不意に振られたフレッシュ・ボーン(裏路地に蔓延る影・e27332)は、面倒臭そうに髪を掻き上げ。
「ん? ……ああ」
 と軽く頷く。
 が……その内心では。
(「……チッ。帰ってきたらうちの近所がえれェことになってンじゃねェかよ。本当、ふざけやがって……」)
 苛立つ彼。
 ただ、それを周りの仲間達は知り得ない……そうしていると、次々と『蒼玉騎士団』の尖兵達が、八王子焦土地帯に向けて降り立ち始める。
 その数、300体程度という、大部隊。
「どうやら来始めた様だな……んじゃ、始めるとするか!!」
 と、ぐっと拳を握りしめたキサナ。
 そして銃に込めた信号弾を宙に向けて、ぶっ放すと……周りの仲間達も、その信号弾に気づき、八王子市街地へ展開を開始するのであった。

●焦土の上に
『……さっき、信号弾が上がったのはここらへんだった筈だが……いねえじゃねえか。ケルベロスの連中、怖じ気づいて逃げたんじゃねえのか?』
 と、市街地に降り立つ『蒼玉騎士団』の騎士団の一人。
 周りの一般兵に比べて華美な装備に身を包んだのは……恐らく督戦兵であろう。
 そして、その周りに居る一般兵達は、督戦兵を護る様に周囲を警戒し続けている。
『おい、お前。本当に信号弾、ここで上がったんだろうな?』
『は、はい……その筈です』
『見間違いとかじゃねえの? ま……いいか。取りあえずケルベロスを見つけんぞ」
 明らかに、一般兵達を蔑む態度。
 しかしながら、一般兵達は、督戦兵を嫌々にせよ、護るべく構えている。
 ……そんな一般兵と提督兵の力関係を、隠れながら監視するヴィクトル。
「……取りあえず、一般兵達を引き離せばよさそうだな」
「ああ。んじゃ、こいつを使って見るか」
 ニッ、と笑みを浮かべたキサナの手には、ドローン。
 その胴体部分には、音楽再生機器と、スピーカーを繋げ、そこから音が響きわたるようにしている。
 再生ボタンを押し、数分無音を流した後……自分達より少し離れた方で、音が響きわたる。
『……あっちから、何か聞こえます!』
 そして、更にトリュームが。
「おい、そこの奴ら、ケルベロスはこっちにいるぜー!」
 と、ボクスドラゴンのギョルソーと共に一般兵と督戦兵の間を飛んで行く。
『……おい、行ってこい。何かあっても、お前の責任だけどな!』
『……はい』
 と、面倒臭そうだが、督戦兵の言う言葉には従わざるを得ない一般兵。
 ……そして、一般兵達が、ドローンの音に誘われるがまま、督戦兵の周りから離れていくと……そこに待機していたケルベロス達。
「うふふっ、いい感じに誘き寄せられていますね」
「良し……それじゃ、一気に仕掛けるぜ!」
 と、葵とキサナの声と共に、ケルベロス達が一気に督戦兵に向けて突撃。
『……ん……? 何っ!?』
 と、突然の襲撃に驚きの表情を浮かべる督戦兵。
「お前らは知らねぇだろうさ。あの何でもない歌の事なんてさ……だが、あれは俺達地球の人達の力強い歌なのさ!!」
 と、威勢良く言いながら、督戦兵の真っ正面に立つ。
『あぁ? あんな汚え歌なんて聞いてたまるかよ! くそっ、戻ってこい、お前ら!!』
 怒号を響かせ、一般兵に向けて叫ぶ督戦兵。
 その怒号に驚き、ドローンとトリュームの方に向かって居た一般兵達は、慌てて戻ろうとする。
 が。
「一筋縄ではいかせないぜ!」
 とトリュームとギョルソーが一般兵達に牽制攻撃を行い、合流を遅らせる。
 その間に、カナは。
「我が身に宿りし師は玄武……皆を穢れから守りたまえ!」
 と後衛陣に『四神降臨・玄武護防結界』でBS耐性付与。
 ……そして、他のケルベロス達は、その間に督戦兵へ攻撃開始。
「ったく。お前達が来たせいで、俺の根城はこんな目にあっちまった。まぁ、その為に命まで張る気はしねえけどよ……俺ァ任侠道に足突っ込んだ任侠の徒ってヤツだ。手の届く範囲で一般人が殺されるのを見過ごす訳にはいかねぇんだよ!」
 と最初に手を出したのはフレッシュ。
 その拳に力を込めて、督戦兵の顎を突き上げるアッパーの一撃。
 続くヴィクトルが。
「電撃砲、アップデート完了。チャージ開始……食らっていけ、雷の大嵐、撃て!!」
 と『Donner Unwetter』を放ち、督戦兵に電撃のパラライズ攻撃。
 そして、薊が跳弾射撃を死角から放ち、不意打ちを仕掛けつつ、更にしおんは太陽の方向から攻撃を仕掛ける『太陽光に紛れての一撃』で、斬りかかる。
 更に葵がマルチプルミサイルを穿ち、一方キサナは。
「この歌を聴くならば 死を思え敵対者! 流れ出る命脈の鼓動 その弱拍に 死の呪いは突き刺さる! ――オール・ザット・レイ・デッド!」
 声高らかなカース・ソング『All that lay dead』で、敵を捕らえる。
 ……そんなケルベロスらの連続攻撃に、体力が削られる督戦兵。
『ってえなぁ!! おい、早く戻ってこい!!』
 と、もたもたしている一般兵達を怒号で呼び戻しつつ、彼自身剣を振り回し、至近距離へ近づく相手をぶった切る様に反撃。
 ……トリュームとギョルソーの攻撃を上手く回避した一体が戻ると共に、督戦兵の前に立ち、近づかせないように対峙する。
 それに対し、キサナは督戦兵に向けて。
「くひひ、督戦兵だかなんだか知らねえが! お前はオレの様なチビ女にブッ殺される弱い生き物かよォ!? 一般兵に守られなきゃ何も出来ねえ様な弱っちいヤツなのかよ?」
 と、更なる挑発を加える。
 が、督戦兵は、一般兵が戻ってきたのに少し気が大きくなった様で。
『うるせえなぁ! 人の使い方ってのも督戦兵の戦い方ってヤツなんだよ!!』
 と、減らず口をたたくようになる。
 ……そして一般兵も。
『ああ、必ずお前達を倒す……!』
 と、かなり士気は高い状態で参戦。
 ……その太刀筋は少々未熟ながらも、ケルベロス達を絶対倒す意思が十分。
 その攻撃を受けたキサナへ、すぐに気力溜めを飛ばすカナ。
「キサナさん……頑張って下さい!」
「ああ!!」
 指を立てつつ、そのまま敵陣に突っ込む。
 それに合わせる様にフレッシュの殴打、葵のロックオンレーザーと、薊の絶空斬、そしてしおんのドラゴンサンダーの集中砲火。
 ……しかし身を呈して庇う一般兵の為、中々督戦兵にはダメージが行かない。
 その後も、トリュームとギョルソーの牽制を逃れた一般兵達が一体、また一体……と、督戦兵の元に戻って行き、身を持って督戦兵の守護に当たる。
「仕方ねえ……一般兵を集中攻撃するぜ!」
 とキサナの声に頷き、一般兵へ集中攻撃。
 時間はかかるものの……督戦兵の守りを削っていく。
 そして、最初の信号弾発射から30分程が経過した頃。
『ぐ、ううぅ……!』
 と、最後の守りであった一般兵が倒れ、再び残るは督戦兵のみ。
「ほら、てめえの仲間、全員倒れたぜ?」
 と、フレッシュが言い放つと、督戦兵はぎりっ、と睨み付け。
『……うるせえ!! この足手まといの奴らめ!!』
 と、一般兵を足蹴にしつつ、再度剣を握りしめる。
 ……それに薊が冷たい視線で。
「……自分を守っていた一般兵に対し、その様に言い放つとは……性根まで腐りきっている様だな」
 と言い放ちながら、薊のサイコフォース。
 武器封じの効果に立ち尽くした所を、他のケルベロス達が一斉攻撃。
 そして……次の瞬間。
『……何っ……!?』
 今迄の表情とは明らかに違う、驚きの表情を浮かべた督戦兵。
 ……そして、督戦兵は。
『ったく……仕方ねえ……お前ら、この借りは後で返してやる……!!』
 と、捨て台詞を吐きながら、その場から素早く飛び去っていく。
「……逃げた、か」
 ……それを追いかける事は出来なかった。
 流石に督戦兵と一般兵の部隊を相手するのは、こちらも無事にはいかない訳で……気をはっていたものの、かなり限界に近い状況ではあった。
「……しかし、何だろうな……あの表情……もしや……」
 と薊は少し考えつつ、空に目を向ける。
 すると……他の生き延びた督戦兵達も、次々と撤退しつつあるのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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