城ヶ島制圧戦~黒鋼の雷竜

作者:雨音瑛

●城ヶ島強行調査結果
 木枯らしの吹く、ヘリポート。ケルベロスたちの姿を目に留めたセリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)は、丁寧に頭を下げた。
「お集まりいただき、ありがとうございます。実は、先日行われた城ヶ島の強行調査により、城ヶ島に『固定化された魔空回廊』が存在することが判明したのです」
 ケルベロスたちの反応を確認し、セリカが続ける。
「固定化された魔空回廊へ侵入して突破する事ができれば、ドラゴンたちが使用する『ゲート』の位置を特定することができるようになります」
 『ゲート』の位置を特定すれば、ケルベロス・ウォーを発動して『ゲート』の破壊を試みることもできるだろう。もちろん『ゲート』がある地域の調査も必要だが。
 また『ゲート』を破壊できれば、ドラゴン勢力が地球侵攻を行うのは不可能になる。つまり、と続けるセリカの顔がほんの少し明るくなった。
「城ヶ島を制圧し、固定された魔空回廊を確保する事ができれば、ドラゴン勢力の急所を押さえられるのです!」
 強行調査の結果によると、固定された魔空回廊の破壊は最後の手段である、とドラゴンたちは考えているらしい。
「いま電撃戦で城ヶ島を制圧してしまえば、魔空回廊の奪取も可能です。ドラゴン勢力によるさらなる侵略を阻止するため、どうか力を貸してください」
 その懇願を、ケルベロスたちは二つ返事で聞き入れるだった。
 
●竜への進軍
「それではさっそく、作戦の概要を説明しますね」
 と、城ヶ島の地図を広げる。
 今回の作戦では、仲間たちが築いてくれた橋頭堡から城ヶ島公園に向けて進軍する事になる。城ヶ島公園は、調査の結果ドラゴンの巣窟になっていることがわかったのだ。
「公園までの進軍経路などは、ヘリオライダーの予知によって全て割り出しています。ケルベロスのみなさんには、その通りに移動してもらうことになります」
 ヘリオライダーの予知は絶対だ。もしも予知で割り出された経路以外から進軍したならば、何が起こるかわからない。魔空回廊の奪取のためにも、ここは指示に従った方が良いだろう。
「そして魔空回廊を奪取するために必要なのは、ドラゴンの勢力を大きく削ぐことです。とはいえ、ドラゴンはかなりの強敵です」
 ドラゴンが相手では、ほんの僅かな油断すら大きな負傷に繋がりかねない。
「それでも……ケルベロスの皆さんならきっとできる。私は信じています」
 セリカは祈るように両手を合わせ、しばしの間、目を閉じた。
「黒鋼の雷竜――便宜上そう呼びますが、このドラゴンの撃破をお願いします」
 このドラゴンは、体表は黒く染められた金属のように輝き、瞳孔が縦に走る金色の瞳を持っているという。
 黒鋼の雷竜は、いくつもの鉄塔を喰らったことで背から鉄塔の先端のようなものが数本生え、電のブレスを放つ力を得ている。
 また、鉄塔と同時に送電線も喰らったために、長い尻尾は送電線を束ねたような形状をしており、凄まじい薙ぎ払いの攻撃を仕掛けてくる。
 そして銀色の爪は、呪的防御ごと撃ち砕く破壊力を持つ。
「鉄塔の骨組み構造を模した銀色の翼で飛行する黒鋼の雷竜は、ひどく好戦的なようです」
 要するに――強敵、だ。
 黒鋼の雷竜はよほど自信があるのか、どれだけ攻撃を受けても逃げ出すようなことはなく、決着が着くまで戦い続ける可能性が高いという。一方で、ケルベロスたちが逃走をせざるを得ないような状況になっても深追いすることは無いという。
「ドラゴンに敗北した場合は、魔空回廊の奪取作戦を断念することもあり得ます。私はケルベロスの皆さんの力を信じています。……どうか、ご武運を」
 セリカは真っ直ぐにケルベロスたちを見つめ、ヘリオンへと促した。


参加者
天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)
リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)
鳳・ミコト(レプリカントのウィッチドクター・e00733)
リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)
ラハティエル・マッケンゼン(黄金炎の天使・e01199)
葉山・芽咲(小さな芽吹き・e04511)
レイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)
アーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)

■リプレイ

●触
 冷たい風が吹く中、ケルベロスたちは急ぐ。ヘリオライダーに指示された通りのルートを抜けると、無事に城ヶ島公園へ到着することができた。彼らの姿を認めた一匹のドラゴンは、鉄塔の骨組み構造を模した翼を羽ばたかせ、飛行を始める。そう、黒鋼の雷竜だ。
「ドラゴン達をこの地球から追い出せる千載一遇のチャンス、到来だぜ!」
「そのようなことは、この黒鋼の雷竜の攻撃に耐えてから言うのだな」
 天満・十夜(天秤宮の野干・e00151)の軽口を受けて雷竜の背が光る。それを視認したラハティエル・マッケンゼン(黄金炎の天使・e01199)が警戒を促す。
「来るぞ!」
 吐き出された雷のブレスは、後衛全員に大きなダメージを与える。
(「やっぱり強敵だな……あっちが慢心してるとこに勝機を見つけるしかないかな……」)
 ブレスの猛攻に耐えながら、鳳・ミコト(レプリカントのウィッチドクター・e00733)が思案する。
 しかし、攻撃を喰らわせないことには始まらない。初撃を撃ち込もうと、十夜がゾディアックソードを掲げ、魔力を帯びた咆哮を上げる。仲間の攻撃を当てやすくするという狙いもある。続くはボクスドラゴンのアグニ。炎属性のブレスで、果敢に立ち向かう。
 畳み掛けるはレイ・ジョーカー(魔弾魔狼・e05510)。弾丸を速射すると、ライドキャリバーのファントムも主を真似るかのようにガトリング砲を連射する。
「ドラゴン退治とは、また派手なことだ。気合い入れて思いっきりいくとするか! さぁ、レッツドラゴンスレイ!」
 リーファリナ・フラッグス(拳で語るお姉さん・e00877)が両手を打ち鳴らして展開するのは「継界攻撃式、絶望」。闇に包み込まれた雷竜へ、ラハティエルも名乗りを上げる。
「我が名はラハティエル、希望と共に戦う者。この世界は、我々ケルベロスが護り抜く!」
 時空凍結弾は雷竜を撃ち抜く。凍った左前足へとアーティラリィ・エレクセリア(闇を照らす日輪・e05574)も同じ攻撃を仕掛け、氷を厚くした。
「ふん、相手にとって不足なし……じゃな」
 雷竜はまだ、ものともしていないのだろう。体力を削っていくのは当然として、ダメージを軽減できなければ長期戦になる。
(「消耗戦だけは避けたいわ……」)
 リリア・カサブランカ(春告げのカンパネラ・e00241)は魔法陣を描く。同じ動作で、鳳・ミコト(レプリカントのウィッチドクター・e00733)も前衛の守りを固める。だが、防備を固めるのは前衛だけではない。
「星の加護を……いまみんなに!」
 後衛の回復を効率的にするためにも、葉山・芽咲(小さな芽吹き・e04511)がスターサンクチュアリで後衛の耐性を高めた。
「姑息なことを……」
 雷竜はケルベロスに近づいて下降し、尾で薙ぎ払った。前衛は軽く吹き飛ばされ、地面へと身体を打ちつける。
 どう見ても強敵の雷竜を見て、十夜が楽しそうに笑った。
「オレ様がドラゴンスレイヤーとして名を馳せる時が来たようだな!」
 冗談じみた本音を口にしながら、十夜は咆哮で雷竜の足止めを狙う。箱にヒビが入ったアグニは、炎の属性を自らにインストールして回復を図る。
 リーファリナが精霊を召喚すると、吹雪が雷竜を覆う。左足を伝って首も氷漬けにされたところで、レイが一歩進み出て跳躍する。放たれた蹴りは雷竜の右前足に直撃し、纏わせた炎を燃え移らせた。
「そう簡単に落とせねーか……」
「だが、炎の付与は戦術的に有効だ……フッ」
 ファントムがガトリング砲を撃つ横で、ラハティエルが炎を纏った弾丸を放つ。雷竜の右前足へと着弾すると、右前足の炎が強まる。アーティラリィも炎を纏った蹴りを放ち、さらに炎を強める。次に雷竜が攻撃を仕掛けてきた時に、炎は体力を削ってくれるだろう。それでもまだ余裕があるのか、雷竜は意に介さない顔で翼を羽ばたかせていた。

●激
 リリアが再び守りを固める魔法陣を描くと、ミコトも同じように後衛の守りを固める。
(「あぁ、昔から脳筋相手は相性が悪かったなぁ……」)
 心の中で嘆きながら、ミコトは状況を確認する。後衛に届く攻撃はブレスだけとはいえ、何度も喰らっては敵わない。かといって前衛を撃破されるようなことがあれば、たまったものではない。
「後ろのみんなには手を出させませんっ! わたしがとめますっ!」
 と、芽咲がスターサンクチュアリを前衛へと展開した。
「そのようなことで、いつまで持つ?」
 雷竜が炎のダメージを受けながらも雷を吐き出し、後衛を摩耗させる。
「それはこっちのセリフだぜ! さあ、オレ様に見下ろされる時間だぜ!」
 勝気に続くのは十夜の魔法。呪詛を施された雷竜へ、ダメ元とはわかっていながらもアグニがブレスで攻撃する。
 確実な打撃をと、リーファリナが静かに古代語を詠唱する。魔法の光線は雷竜の動きをさらに鈍らせていく。満身創痍のレイも咆哮を上げる。主を気にしながらも、ファントムは回り込んでガトリングを撃ちこんでいく。急ぎレイの傷を癒やすのはリリア。臨機応変な彼女の対応を一瞥して、ラハティエルが呟く。
「信頼して背中を預けられる人がいるのは、良いものだな。フッ……」
 自分の時も頼むと告げ、再び放った時空凍結弾は雷竜の腹を覆うように凍らせた。身をよじらせる雷竜、その隙をついて芽咲が狙う。
「自由を奪え! バインドブリッド!」
 麻痺の効果を持った弾丸は、見事に雷竜の左後足を撃ち抜いた。
「どうやら、少しはやるようだな」
「当然だ、誇り高き者よ。真っ向から受けて立つと言うのであれば、こちらも躊躇無く遠慮無く、全力で挑ませてもらおうぞ」
 そう言い放ち、アーティラリィは「継界召喚式、希望」でひときわ大きなダメージを雷竜に与える。雷竜は眩さに目が眩みそうになるものの、なおも飛行を続ける。
 またブレスが来ては大きな被害を被るのは免れない。今は後衛のヒールを先に、とミコトは静かに詠唱を始める。
「領域定義。偽装術式展開。――わたしの王国はここに」
 エミュレートされたグラビティとはいえ、効果は十分。ミコトのヒールは、後衛を癒やしたのだった。
 翼を大きく広げた雷竜は前衛へ急襲し、再び前衛を尾で薙ぎ払った。危うく膝をつきそうになったリーファリナは、魔人降臨でダメージを回復する。
(「アティも一緒だ、格好悪いところ見せられないしな」)
 自分たちはジリ貧になりつつあるのに、雷竜にはまだ余裕が見える。レイが忌々しげに雷竜を見上げ、クイックドロウで狙撃する。重なるファントムのガトリング掃射は、しなる尾に弾かれた。
 十夜もスイッチを押して、雷竜の体表に貼り付けた爆弾を爆発させる。アグニは先程のダメージを回復させるために属性インストールを自らに施した。
「ラハティエルさんっ……!」
 青ざめた顔で、リリアがラハティエルを回復する。攻撃を途絶えさせないためにも。そして、愛おしい人だからこそ。今ここで倒れさせるわけにはいかない。
「これくらい、かすり傷も同然だ。大切な貴女が無事なら、それで良い……」
 今すぐにでも彼女を抱きしめたい気持ちを抑え、ラハティエルは雷竜へと向き直る。喰らわせるのはフレイムグリード。アーティラリィも雷竜へ時空凍結弾を当てていく。
 それでもまだ、雷竜はびくともしない。

●抗
「できる限り戦力を削いでみせる! そのためにここまで強くなったんだからっ!」
 続く芽咲のファミリアシュートが、雷竜を抉っていく。だが、芽咲きの身体は度重なる攻撃でぼろぼろだ。ミコトが芽咲を癒やすオーラを発動して癒やすが、次の攻撃に耐えられるかどうか。
 とはいえ、雷竜にも傷が目立っている。
「小賢しいケルベロスどもがッ……!」
 雷竜の振るう腕、その爪がリーファリナを狙う。理解はしても回避はできない程の速度。リーファリナの眼前に鋭い爪が迫る。――が。奇跡とも言えるタイミングと速度で、一人の少女が割って入った。
「わたしが、守ってみせる……っ!」
 芽咲だ。雷竜の爪は容赦なく彼女を抉り、宙に浮かせる。遠のく意識の中、リーファリナの無事を確認した。目の前で誰かが死ぬのは耐えられない。暴走も辞さないつもりでいたが、その必要はなさそうだ。あとは仲間へ託し、そのまま地面へと身体を打ちつけた芽咲は意識を失った。
 リーファリナはすぐさま怒りの形相でペトリフィケイションを放つ。芽咲に守られたこの身で、何としても雷竜を倒さなければ、と強く拳を握った。続けてミコトが回復のオーラでリーファリナを癒やす。戦いが終わったら、すぐに芽咲へとヒールを、と杖を握りしめた。
「俺の魔弾……避けれるモンなら、避けてみろよっ!!」
 静かな怒りを秘めたレイも、歯噛みしながら光葬魔弾・ブリューナクを放つ。正胴体を穿たれて吼える雷竜へファントムがガトリング掃射を行えば、十夜も負けじと逆打ツ刻で幻影を見せる。アグニも必死にボクスブレスで応戦する。
 リリアが、離れた場所で倒れる芽咲をちらりと見る。回復が及ばなかったことを悔やみつつも、敵を見据えて後衛を回復する。今はただ、できることを、と。
 必死のリリアを心配しながらも、ラハティエルは時空凍結弾で雷竜の尾を撃ち抜いた。雷竜が降り立ってくれば仕掛けるつもりの攻撃もあったが、そう簡単には降りてくるつもりは無いらしい。降下のためには手番を消費する必要がある。それをしないということは、雷竜もかなり消耗しているということだろう。
「もはや根競べじゃのう……しかし、先に音を上げる訳にはゆかんのでな?」
 こちらも戦力を削がれたものの、向こうも手負いなのは間違いない。アーティラリィは雷竜へ接近すると、グラインドファイアを叩きつけた。
 燃える箇所と凍る箇所をそのままに、雷竜はまたもや尾を振るう。送電線を束ねたような形状の尾は、サーヴァント二体を消し飛ばした。
「あ、アグニ!? ……くそおッ!」
 最近おやつ絡みで懐き度合いが低下していたものの、十夜の大切なサーヴァントには違いない。十夜は咆哮を上げて、遠隔爆破する。同じくファントムを破壊されたレイも、舌打ちをしながらクイックドロウを放つ。立ち上る煙を眺めながら、さらなる敵意を向けていた。
 こうも一方的な攻撃を許すわけにはいかない。ならば、とリーファリナはアーティラリィへと目配せをした。意図を汲んだアーティラリィは、笑みを返す。
「ふん、余と行くのじゃ。後れを取るでないぞ、リーファ」
「それは私の台詞だな。ほら、アティも気合い入れていくぞっ」
「ふふり、では合わせていこうかの。……悠久なる日輪の輝き」
「漆黒たる夜天の深遠よ」
「余の光」
「私の闇は」
「希望を照らす光となり」
「絶望を束ねし闇を纏いて」
 繋げた言葉が次を待つ。二人は顔を見合わせてうなずくと、同時に雷竜を睨んだ。
「「我等が敵を討ち滅ぼさん!!」」
 闇が、続けて光が雷竜を襲った。

●撃
 光に包まれた雷竜の様子は、未だ不明だ。だが、とアーティラリィは見慣れた顔を横目で見る。
(「リーファと轡を並べて戦えば、不思議と負ける気はせぬのぅ」)
 アーティラリィの魔法による光消え、現れた雷竜の姿は壮絶だった。体表の一部が剥がれ、翼は折れ曲がり、束ねられていた尾は先端が分散している。それでもまだ戦う意欲を示すのか、雷竜は大きく吼えた。
 咆哮に耳鳴りを覚えながらも、ラハティエルはリリアを見向き、手を伸ばす。
「さぁ、リリア。我々も今こそ心を合わせ、共に進もう!」
「ええ!」
 うなずき微笑むリリアを見て、ラハティエルは翼を広げる。そして、雷竜を指差す。
「黒き鋼の雷竜よ、我が黄金の一撃を受けよ。そして……絶望せよ!」
 地獄の炎を纏った弾丸が、雷竜の胴体を撃ち抜いていく。
「罪には裁きを、そして赦しを願いなさい」
 続くリリアも、同じように雷竜を指差す。放たれた光の矢はラハティエルの放った弾丸と同じ軌道で雷竜を撃ち抜いた。身体を貫く炎でもがく雷竜を前に、ミコトは偽装術式・王国之剣で後衛を癒やした。
 不利なのは、雷竜も同じ。ただ、あと一撃叩き込むことができれば勝機が見える。
 雷竜は傾きながらも鼻息を荒くし、羽ばたくのを止めない。
「ケルベロスどもめ……この黒鋼の雷竜、ただでは死なんぞッ!」
 前衛の二人を襲うのは、ブレスの猛攻。全身を巡る雷撃に、ラハティエルが膝をついた。間もなく意識が途絶えてしまうのを、彼は自覚する。
「リリア……大切な貴女が無事なら……」
 言葉は途中で消える。最後に見えたのは、大切な人の今にも泣きそうな顔。心配しないで欲しい、しばしの間意識を失うだけ――紡ぎそこねた言葉は届かず、ラハティエルは静かに倒れた。駆け寄るリリアを見て、レイはゆらりと進み出る。
「悲しんでくれる人がいるヤツを、よくもやってくれたな」
 いざという時は暴走もためらわないつもりでいた。だが、倒れていくのは他の者。この状態で自分の成すこと、といえば。レイは雷竜を睨むように見上げ、魔狼銃フェンリルの銃口を向ける。
「全てを撃ち抜け! ブリューナクッッ!!!」
 レイが吼えるように叫ぶと、発射された高密度のエネルギーは途中で5つに分裂する。それは正確に雷竜の額を撃ち抜き、とどめの一撃となった。
 雷竜は空中でのたうちまわり、呪詛めいた言葉を呻いている。次第に勢いは弱まり、最後は放電するように弾けて消えた。
「オレ様たちの勝利だぜ!」
 十夜がゾディアックソードを掲げ、高らかに宣言する。そう、痛手を負ったものの、間違いなくケルベロスたちの勝利だ。
 戦闘の終了を確認したメディックは、急ぎ戦闘不能となった二人へヒールを施す。
「かっこよかったわ、ラハティエルさん……ああ、無事でよかった!」
 彼の頬へと唇を重ね、抱き起こすリリア。拠点へ戻ったならば仲間へこの成果を報告しようと、瞳をうるませている。
「無茶するんじゃないよう、もう……!」
 芽咲をヒールするのはミコト。彼女が仲間をかばってくれたからこそ、戦線を維持できたのだ。ミコトは小さく感謝の言葉を述べ、小さな勇者を起こして肩にかつぐ。
「やったな」
「うむ、やったのじゃ」
 リーファリナとアーティラリィはお互いの拳をかるくぶつけ、健闘を讃えあう。そして、他の戦場も上手くいっていることを願って――成すべきことを成したケルベロスたちは、戦場から離脱した。

作者:雨音瑛 重傷:ラハティエル・マッケンゼン(マドンナリリーの花婿・e01199) 葉山・芽咲(うなぎ釣りの神・e04511) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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