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資料を手にザイフリート王子(エインヘリアルのヘリオライダー)がヘリポートに足を運ぶと、既にケルベロス達が集まっていた。
「東京焦土地帯にエインヘリアルの要塞が出現した」
その声に周囲は緊張を隠せない。よほど緊急の事なのだろう。その声は鋭く、手にする資料も走り書きに近いものだった。
歩調を緩めないザイフリートはケルベロス達の前までくると、かつんと立つ。
「出現したエインヘリアルの要塞は磨羯宮『ブレイザブリク』。これを第九王子サフィーロと配下の蒼玉騎士団が守護しているようだ」
ザイフリートによれば、要塞出現と同時に蒼玉騎士団の尖兵が東京焦土地帯を制圧、周辺の市街地へと略奪を仕掛けようと出陣したという。
略奪部隊は殺戮を好む『蒼狂紅のツグハ』が指揮しており、なんと市街地で殺戮と略奪を行おうとしているのだ。
「我々としては当然、そんな凶行は絶対に許さない。その為にもお前達ケルベロスが立ち塞がり蒼玉騎士団の略奪部隊を迎え撃ってくれ」
相手は第九王子サフィーロ配下の蒼玉騎士団。統率の取れた騎士団で数も多い。だが本国のエリートである為、ケルベロスの実力を過少に評価しているそうだ。
「こちらは幾つかの小部隊に別れて奇襲や伏撃を繰り返すなどして敵を翻弄し、指揮官である『狂紅のツグハ』を討ち取るか、撤退させ騎士団も撤退させる。これが今回の作戦になる」
そう話し、ザイフリートは説明を続ける。
戦場は八王子の東京焦土地帯。周辺に一般人がいない場所である。
「敵の戦力だが騎士団の規模は蒼玉衛士団督戦兵が50体、蒼玉衛士団一般兵が250体で、300体程度だ。督戦兵1体が一般兵5体を率いる『小隊』が50あると考えて欲しい」
この小隊は何か異変があった場合や、敵が現れた場合は偵察を行ったり、敵の撃退を行うという。
「戦闘時は別の小隊が増援として派遣される可能性が高い。その為、戦闘を行う場合はある程度本体から引き離さなければならない。増援が来る前に決着をつけるか、撤退するのが良いだろう」
説明するザイフリートは手にする資料へちらりと視線を落とし、
「これは可能性の話になるが、戦闘は行わずかく乱する事によって多くの小隊を本体から引き離す事ができれば、本陣への強襲も可能かもしれない」
「敵の戦闘能力はどれくらいあるんだ?」
説明を聞いているケルベロスから質問の声があると、ザイフリートはその声に向く。
「蒼玉騎士団はエインヘリアルの王子直属のエリートで、実戦の経験は少ないようだ。一般兵のエインヘリアルの戦闘能力はあまり高くはないが、督戦兵のエインヘリアルは罪人エインヘリアル程度の強さがあると思ってくれ」
更にザイフリートはこの敵に対し全力を尽くして戦えば、督戦兵1体と一般兵5体を同時に相手にして、五分五分で勝利する事が不可能ではないと話したうえで、戦闘後は戦闘不能者を抱えて撤退するしかなくなるとも話す。
「督戦兵は傲慢で、自分は面倒な事は全て一般兵に押し付ける傾向がある。それを利用すれば、派遣されてきた小隊を更に各個撃破できるかもしれない。また、小隊の指揮官である督戦兵を撃破できれば、残りの一般兵は戦闘を中断して撤退しようとするので、指揮官をピンポイントで狙う戦術も有効だろう」
話ながら向けるザイフリートの瞳には、ケルベロス達を信頼する光が宿っていた。
「お前達は幾多の戦いを経験した歴戦のケルベロスだ。これらの情報を利用して有利に立ち回れるだろう」
ヘリポート内は作戦に向けての準備が急ピッチで進められており、慌ただしい状況だ。
「磨羯宮『ブレイザブリク』はエインヘリアルのゲートを守護する為に出現したのだと思われる。この磨羯宮を攻略しない限り、エインヘリアルのゲートへの道は開かれないだろう」
緊張の中ザイフリートは言い、ぐるりとケルベロス達を見渡した。
「ツグハの略奪部隊を撃破できれば、ダンジョン化した磨羯宮『ブレイザブリク』の攻略を開始する事が出来るだろう。お前達の行動に全てがかかっている。……頑張ってくれ」
説明を終えたザイフリートはそう告げるとヘリオン出発の準備に取り掛かる。
そして、ケルベロス達を乗せたヘリオンは東京焦土地帯へと出発するのだった。
参加者 | |
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ヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354) |
シル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695) |
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701) |
ジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706) |
クリム・スフィアード(水天の幻槍・e01189) |
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308) |
ハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231) |
刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595) |
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その光景は身を潜めるケルベロス達にも良く見えた。
空に明るく輝きを放つそれは信号弾。
東京焦土地帯――上空に打ち上げられる数多のそれは仕掛けをしているのだろう。八王子市街のあちこちでいくつも上がり、狼煙が上がるのも見えた。
これだけ派手なものを気付かないモノはまずいないだろう。
そう――蒼狂紅のツグハも絶対にこれをどこかで見ているいる筈だ。
盛大な信号を見たツグハはここ八王子市街地に潜伏しているあろうケルベロス達を狩るべく兵を放つだろう。
信号弾が消え、しばらくの沈黙。物音を立てぬ様、細心の注意を払うヴォルフ・フェアレーター(闇狼・e00354)は周囲を警戒し、敵がいない事を確かめた上で仲間達にそれを示す。
フィスト・フィズム(白銀のドラゴンメイド・e02308)が覗き込む双眼鏡の先では別行動の班がこちらに送るハンドサインが見えた。周囲には敵の姿はなく、前進するとの合図に応え、こちらも注意深く動く。
今回の作戦で立てたメインの方針は、二班での分断作戦である。
狙うべき敵を探るべく行動を続けるが、
「そっちは?」
マキナ・アルカディア(蒼銀の鋼乙女・e00701)に問われたシル・ウィンディア(蒼風の精霊術士・e00695)は眉を寄せ、小さく首を振る。
連絡に用意した通信機器は機能せず、能力を駆使してもそれは繋がらない。
「デウスエクスの妨害なの?」
「可能性はあるな。クッソ面倒くせェ……」
仕方なくしまうシルを目にジョーイ・ガーシュイン(初対面以上知人未満の間柄・e00706)はぼりぼりと頭をかき、
「あちらにとっては前哨戦かもしれないけど、油断は出来ないね」
クリム・スフィアード(水天の幻槍・e01189)にハル・エーヴィヒカイト(閃花の剣精・e11231)は頷くと、信号弾の名残が残る空を目に周囲に気を配る。
「この戦いを制すればエインヘリアルのゲートの情報が……、こんな不毛な戦い、早く終わらせよう」
フィストの傍らでウイングキャット・テラがゆらりと尾を揺らす。
ここ八王子の地下にあるエインヘリアルのゲート『魔導神殿群ヴァルハラ』から分離した磨羯宮『ブレイザブリク』。今回の戦いの先に新たな道が開けるだろうと参加した者達はみな確信している。
そして、東京焦土地帯を制圧、周辺の市街地へと略奪を仕掛けようとする蒼玉騎士団の略奪部隊をここで潰さねばならない。
だからこそ確実に敵を潰すべく今回は他の班と組んでの分断作戦を立て、今まさにその作戦通りに動き始めていたのだが――。
「まずいな」
刈安・透希(透音を歌う黒金・e44595)の呟きに仲間達はそれに気付く。
囮となった他班が引きつけている小隊とは別の小隊がこちらに近づいてきたのだ。
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「探せ! ケルベロスはどこかに隠れている筈だ。必ず探し出し、首を持ち帰るのだ!」
その声は朽ちかけた建物の間をこだまする。
フィストがそっと双眼鏡でのぞき見ると、督戦兵が一般兵を率いてこちらへ進んでいるようだ。距離はまだ遠く、こちらに気付いていない。
ケルベロス達は選択を迫られる。
今の作戦を継続し、囮が引き離した督戦兵を叩くか。それともこちらへ近づいてきている小隊へターゲットを変えるか。
長考する時はない。
――ならば。
「作戦は変更だね」
「臨機応変に、ってね」
透希とマキナの会話に仲間達の間に張り詰めた緊張は一気に高まっていく。
緊急に話し合う必要などなかった。
連携し戦う方針で色々と計画を立ててきたが、全てが順調にいくとは限らない。不測の事態の可能性についてもしっかり打ち合わせしている。
物陰に身を潜めたフィストは事前に調べておいた廃墟ビルの近くへ気咬弾を撃ち込むと透希も続き、軽量化されたハンマーを手にシルが放つ砲弾は近くに転がる車がどおんと吹っ飛んだ。
警戒している敵の事だ。これを気付かぬ訳がない。
「何だ? 今の音は。おい、確認して来い」
「はっ」
「了解しました」
督戦兵の指示に兵達が動き出す。陽動で攻撃を撃ちこんだ方へ警戒しつつ向かっている様子を確認したジョーイはハンドサインで離れた仲間に伝え、廃墟ビルへ入ったのを確認したハルが入口を封じ、
「クリムさん」
シルの合図に頷き応え、小高い場所に身を隠すクリムは成形した巨大な魔力の槍を手にとった。
ズズズ……ドオォン!!
苦痛は魔槍と共に放たれ、その衝撃で1階は崩れると免れた階が押しつぶす。生死は確認できないが、そうやすやすと出てこれないだろう。
あとは督戦兵を叩くのみ。
「Weigern……」
ヴォルフは紡ぐ。
敵を破壊すべく、太古の魔術を。
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ビルを叩く轟音は兵の報告を待つ督戦兵にも十分聞こえていた。
何事かと駆ける最中にヴォルフの魔術が牙を剥く。
「なっ……?!」
「いくよっ!」
突然の魔術に驚く督戦兵は抜剣し周囲を見るが、ケルベロスを探しに行かせた兵達の姿はない。
「くっ、兵はどこにいる! いったい何をしているんだ!」
「教えないよっ! 略奪だなんて絶対にさせないっ!」
シルが撃ち込む砲弾に続くクリムの一撃を受けた督戦兵はマキナの砲弾を打ち払い、
「おおりゃァァ!!」
「く、っ!」
ぎ、ぃんっ!!
冥刀と剣が打ち合い火花が散った。ボロボロのアスファルトが重い一撃に耐え切れず、衝撃で砕ける中でぎりぎりと嫌な音を耳にする中、離れるとフィストの刃が後を追う。
雷の霊力を纏わせた刃はがぢんと新たな火花を散らし、
「テラ」
「交戦開始。速やかに斬る」
ウイングキャットへ指示するフィストはハルが展開する領域から具現化させた剣――閃光剣を見た。
その名の通り閃光のような一閃は督戦兵の肩口を裂くと、ばっと紅が咲き散った。
「ええい、どこだ! 兵どもは一体どこに行ったというんだ!」
大したダメージではないだろうが、実戦経験が少ないからか督戦兵はその痛みに眉を寄せ、苛立ちを隠さぬ顔をする。
さて、督戦兵が放った兵はいずこと問われれば。
「兵は寝ているぞ、その辺のビルでな」
「なにっ?」
仲間達を守るべく紡ぐ歌の合間に放った言葉に督戦兵は透希へと向ける。
「おのれ……おのれケルベロス!!」
鋭い眼光と殺意。ぎんと重い刃を受けるがまだ戦いは始まったばかり。
「人を見下すのも大概にしろ」
頬に鋭い痛みを感じ、触れてみればぬるりと血が指に着く。刀で払う際に頬を何かがかすめたのだろう。ぐいと拭うその間も視界の先ではヴォルフとシルの攻撃にクリムが続き、マキナの攻撃をかわした督戦兵はジョーイの一撃を刃で受け、再びフィストと火花を散らす。
ハルの閃きをものともしないその姿を前にし握る拳に力をこめ。
「負ける訳にはいかない」
がっ、づっ!!
「っぐ……ケルベロスごときが生意気な!!」
予想以上の相手と悟ったのだろう。構えなおす姿を捕らえ、ヴォルフも身構えた。
激しい刃の音が響く。
「Code A.I.D.S……,start up.Crystal generate.……Ready,Go ahead」
詠唱と共に展開するマキナのグラビティが見えた。蒼く輝く菱形と同様のそれはジョーイの傷ついた体を癒すが、それだけではない。守りの為のシールドも展開されていく。
「ありがとう、マキナ」
「感謝する」
「回復と支援は任せて」
フィストとハルの礼に応えるマキナだが、ふとハルの髪の色に違和感を覚えてしまう。戦う前と色が違うような気がするのだ。
確か――、
「助かったぜ!」
思案はジョーイの豪快な一閃で途切れてしまう。
今は戦いの中。思案に裂く余裕などなかった。
「他の小隊が来るかもしれないよね」
戦靴で地を蹴り電光石火の脚撃と共に呟かれる声はクリムの耳にもしっかり聞こえた。
計画通りに進まない事は多々ある。もちろん今回もだ。
「増援が来る前に倒す」
「うん、頑張ろうね!」
大切な指輪にそっと触れるシルと言葉を交わし、クリムは死角に回り一撃を叩きつける。
「ケルベロスごときが!!」
「見下していると痛い目を見るぞ」
ふわり。
敵意と殺意をむき出しにする刃は発揮されるウェアライダーの運動能力によって空を斬る。
だんと蹴り宙を飛ぶ透希の姿にあるものは、頬を伝う一筋の紅。
戦いを長引かせる訳にはいかない。全力をもってここで叩かねば。
「ヴォルフ今だ!」
透希はその一瞬を見逃さなかった。宙から見えたその一瞬。小さな隙。
経験から全てを計算し、回り込み斬り裂くそれは正確に督戦兵の急所を捕らえた。
「ぐああっ!!」
ざぐんとえぐられ仰け反る督戦兵の傷口から血が流れ出す。予想外の大ダメージに呻きよろめくが、かろうじて踏みとどまった。
「よし、一気に潰すぞ!」
「ぬかせケルベロス!」
ジョーイの啖呵にデウスエクスは咆えるが、既に勝負はついていた。
ケルベロスを甘く見ていた事もあり、回復を怠っていた督戦兵からは止まる事無く血が流れ、鎧を染めていく。止まらない。命のともしびが消えるまでそれは流れるだろう。
そんな姿に透希は攻撃し口にする。
「驕りは自分の身を滅ぼすぞ」
「ここで……負ける? ……ふざけるなあっ!!」
声を張り上げ督戦兵は剣を握り直すと、刃にオーラを纏わせ振り上げ――!
「フィスト」
剣から放たれるそれを前にし、クリムの声にフィストは頷き動く。
仲間達へ牙を剥く攻撃はロッドによって打ち払われ、形見の剣が斬り裂いた。
それは振り絞った最後の力だったのだろう。凄まじい勢いであったが、ここで決着をつけようとする意志がそれに勝ったのだ。
「おのれ……!」
「これで終わりだ」
呻きに冷酷な声を重ね、ヴォルフの手にある大型のシースナイフは閃き紅の花を咲かせ、
(「いつもの六芒精霊収束砲より威力は低いけど……」)
ぎゅっと握るシルだが、左手にあるプロミスリングがちかりと輝きをみせた。
大丈夫。これが――大切な人がいる限り。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ……。混じりて力となり、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
狙いを定め、属性エネルギーを一点に収束させて放ったシルの視界にクリムが高所へ移動するのが見え、
「この位置なら外さない……!」
詠唱と共に魔槍は再びその手に現れる。
掌は炎に焼かれ、その激痛、その苦痛は筆舌しがたいものである。だが、この一槍を。
「貫くは己の信念、穿つは悪しき妄念……。我が敵を突き抜けろ、ルーン・オブ・ケルトハル!」
「私達を侮る事がどういう事になるか、身を以って知って貰いましょう」
魔槍の直撃にマキナの攻撃が畳みかける。
「が、っ……! お、おのれおのれおのれ!!」
血を流し、督戦兵は呻く。立っているのも限界のように見えるが、それでも耐えていた。
「クッソ面倒くせェのは解るぜ? 俺もそうだからよ……だが」
鬼神が如きオーラを身に纏ったジョーイは上段に構えてみせる。隙は大きいが、今なら――!
「一発デケェの行くからしっかり受け止めろよ? ……でぇりゃァァァ!!!!」
一気に振り下ろすと、それでも耐えようと冥刀を刃で受けようとするが、それも限界だった。
ばぎ、んっっ!!
大きな音が響き、剣は真っ二つとなり、
「境界収束――集いて奔れ破邪の光塵。解放、白蓮星華ッ!」
本来の色に染まる髪が揺れ、ハルが放つのは静かなビーム――数億の白い刃の集合体。
「――さよならだ」
「人を見下したのが命取りだったな」
ざ、ぐん。
「ああっ!」
「なんという……!」
崩落した1階部分からようやく脱出できた兵が見たものは。
「馬鹿、が……遅、い……」
ケルベロス達の攻撃を一身に受け、紅を流す透希の刃に貫かれた督戦兵の姿だった。
●
「お、お……おの……れ……」
呻きに近い声を絞り、射貫くほどの眼光を向けたまま、督戦兵は膝をつく。
もう戦えないだろう事は分かっていても、ケルベロス達はそれぞれ武器を抱えたまま、それを解く事はしなかった。
「……おの……ケル……ベ……」
ばしゃん。
率いていた兵達の視線を受けながら、督戦兵は自らが流した血の池に崩れ落ち、そして、絶命した。
対峙する間を沈黙の空気がしんと流れ、すと紅の瞳――ヴォルフは刃を向け、無言で問う。
督戦兵は倒れた。ここで退くか、それとも。
「戦うか?」
「わたし達は絶対に負けないよっ!」
ロッドを手に問うクリムの隣でぶおんとシルのハンマーは呻りを上げる。
――と、
「新手のようだな」
ハルの一言に緊張が走ると同時に失っていた戦意を兵達が取り戻したのだ。
「探せ! ケルベロスは見つけ次第、殺せ!」
新たな気配と新たな足音。それは作戦に参加している他のケルベロスのではない事は聞こえる声で明らかだった。
「ここです!」
「ケルベロスがいます! 早く!」
増援として派遣された小隊へと兵達が大声を張り上げる。今から分断を狙うなど到底無理で、増援はすぐこちらへやって来るだろう。
新たな小隊に加えて目の前にいる一般兵。体力を消耗しているケルベロス達では戦いは荷が重すぎる。
だが、まだ出来る事はある。
「もうひと頑張りだな、テラ」
フィストの声に傍らでちりんと鈴が鳴り、
「まだいけるよ。回復と支援は任せて」
言いながらマキナは戦いで乱れた銀糸をばさりと払う。
「どれほど新手が来ようとも、負ける訳にはいかない」
刀を握り直し、透希は睨む。金の瞳は新たな戦いに再び紅を零すだろう。
「次行くか。ったく、クッソ面倒くせェ……」
吐き捨てるように冥刀を構え、ジョーイもまた仲間達と新たな戦いへ身を投じる。
こうしてケルベロス達の戦いは続く。
数で不利だと分かっていても、誰一人としてそれを表に出さず、倒すべき敵から引き離すように巧みな行動をとり続けた。
そしてその戦いの末に得るもの。
それは、最良の一報であった。
作者:カンナミユ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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