『東京、八王子の焦土地帯にエインヘリアルの要塞が出現』
緊急連絡に集まったケルベロスたちに リリエ・グレッツェンド(シャドウエルフのヘリオライダー・en0127)は状況を説明する。
「出現したのは磨羯宮『ブレイザブリク』。守護に当たっているのは第九王子サフィーロ、その配下の蒼玉騎士団のようだ」
敵は既に『蒼狂紅のツグハ』が指揮する略奪部隊を尖兵として繰り出しており、市街地で殺戮と略奪を行おうとしてきているという。
「指揮官のツグハは殺戮を好む残虐な性格なうえ、数も多い。まずは焦土地帯から出る前に彼らを迎撃し、都民を守ってくほしい」
蒼玉騎士団は本国のエリート部隊と言われているが、地球とケルベロスについて過小評価している点も見られるとリリエは言う。
「指揮官である『狂紅のツグハ』を討ち取るか、撤退させられれば騎士団も一緒にひくはずだ。敵を侮るのは危険だが、油断をついて翻弄できれば食らいつくことはできるだろう」
戦場に一般人はおらず、今なお残っている市営地下鉄跡、駅周辺の地下街などはケルベロスの味方をしてくれる。
焦土と化してなお、八王子は人類の街、ケルベロスの味方だとリリエは力強く告げた。
「……改めて、蒼玉騎士団の戦力について説明する。今回、戦うことになる略奪部隊は蒼玉衛士団と呼ばれている。数は一般兵が250、それらを指揮する督戦兵が50。一般兵五人に督戦兵一人で一個小隊という編成だ。行動はこの小隊単位で偵察や戦闘を行っている」
衛士団は一般兵の戦力こそ低いが、異変があった場合や会敵した場合、他の小隊が駆け付けてくることもあるなど統制に優れており、戦闘を仕掛ける際は増援を避ける手立てが必要だろう。
「単純に増援が来る前の決着を図る、部隊をツグハの本隊から引き離して戦う等だな……あるいは戦闘を行わず、攪乱に専念するのも手かもしれない」
うまく連携し、攪乱班が多くの正体を引き離せば、残る小隊で一気にツグハの本陣を強襲する事もできるだろう、とリリエは言う。
「幸い、攪乱や切り離しを仕掛けるためのポイントは多くある。先にも述べた地下鉄跡や地下街、それに市街地の廃墟や幹線道路なども身を隠す助けになってくれるはずだ」
また蒼玉衛士団の構成も敵部隊を切り崩すポイントとなるはずだ、とリリエ。
「部隊単位での統率は取れている……と話したが、蒼玉衛士団、特に一般兵の戦闘力と士気はそう高くない。督戦兵が名前の通り、後衛から督戦して戦わせている歪な構図だ。うまく督戦兵を倒せれば一般兵が戦闘を継続することはないはずだ」
督戦兵は罪人エインヘリアルと同程度の強さの強敵だが、傲慢で面倒事を一般兵に押し付ける傾向がある。一般兵の能力がケルベロス一人よりやや弱い点をつけば、切り離しての撃破も可能だろう。
ツグハを撃破できれば磨羯宮『ブレイザブリク』の攻略も着手できるだろう。そのためにも、まずは略奪部隊の迎撃だ。
「王子直属のエリート部隊といえば聞こえはいいが、蒼玉騎士団は実戦経験の少ない戦場の新参者だ。地獄の猟犬の本場、存分に味合わせてやるといい」
リリエはそう不敵に笑った。
参加者 | |
---|---|
ティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827) |
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685) |
霧崎・天音(星の導きを・e18738) |
東雲・憐(光翼の戦姫・e19275) |
軋峰・双吉(黒液双翼・e21069) |
マーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176) |
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710) |
湊弐・響(真鍮の戦闘支援妖精・e37129) |
●Give it a shot
作戦開始の信号弾からニ十と二分。
蒼玉騎士団の本陣、首魁たる狂紅のツグハへの強襲を選び突入した東雲・憐(光翼の戦姫・e19275)たちは苦しい判断を強いられていた。
「市街地で三十小隊は引き付けられている、そこから囮と増援が十四……」
「六班とツグハ。戦力差はほぼ倍だ、かなり苦しいぞ」
地下廃墟から這い上がりながら数える憐に、階下で足場を務めるマーク・ナイン(取り残された戦闘マシン・e21176)が呼び上げた。
先行した仲間たちは三班、本陣のエインヘリアルたちとはおよそ二倍の戦力差だ。『R/D-1』に検証を求めるまでもないほど、状況はケルベロスたちが大きく不利。
「強襲が完全に決まったのだけがこっちの優位だな……わざわざ敵地に本陣を築くってのは、住環境悪いのか? ブレイザブリク。メッチャ剣じゃねぇか」
「まぁ恐らくはご想像通りですわ」
つぶやく軋峰・双吉(黒液双翼・e21069)に、人馬宮を思い起こし湊弐・響(真鍮の戦闘支援妖精・e37129)は口だけで笑う。
双吉たちの身にまとう『隠密気流』は仲間たちを完全に隠しており、事実この声に反応するものもない。
「どうする? 騎士団から殲滅するか?」
「いえ、当初の予定通り攻めましょう。一か八か……ですが、これは絶好の機会です」
攻めるか? 否か?
確認するティーシャ・マグノリア(殲滅の末妹・e05827)に、力強く答えたのは響だった。
「根拠を聞いてもいい?」
「一つ、不利ではありますが、先行班の方々はエインヘリアルを抑えられていますわ。二つ、『狂紅のツグハ』の性格が聞いた通りなら、この状況で逃げたり、増援を呼びことはしないはず。そして三つ――」
リティ・ニクソン(沈黙の魔女・e29710)の求めへ流暢に答える響。
そして最後の結論を先どった霧崎・天音(星の導きを・e18738)の一言が決断を促した。
「ツグハ一人が相手なら、やれる」
「決まり、だね」
七宝・瑪璃瑠(ラビットバースライオンライヴ・e15685)の掲げた『二律背反矛盾螺旋・夢』の輝きが増す。
その輝きが示す本陣の最奥へ、八人のケルベロスたちは突入した。
「SYSTEM COMBAT MODE! EX-GUNNER SYSTEM STAND BY」
黒鋼の鉄騎が走り跳び、吼える。
援護するティーシャの『Iron Nemesis』ブーツが火花を散らし、『バスターライフルMark9』が唸りを上げてゼログラビトンを斉射する。
しぶとくも食らいつく督戦兵だが、白い茨が瞬く間に締め上げた。
「さ。皆行って。アイツに、最高の絶望をプレゼントして。覚悟キメるよ……あたしも」
鋭く横を向く萌花に謝意のパッシングを示し、マークは最奥へと突入する。
「M158 GATLING SELECT」
『HW-13S』防盾を半身に構えたマークのキャバリアランページが戦場を切り裂き、『エクスガンナーシステム ver.β』に制御された多銃身機銃の掃射が鋼鉄の陣幕を抉じ開けた。
「作戦に参加した全てのケルベロス――そして八王子の街と、そこで生きたヒトたちが作ってくれたこの機会……ボクたちは逃しはしないんだよ!」
駆け抜け様、戦場を支える同胞にブロックサインを送る瑪璃瑠。粉砕された本陣の最奥、撃つべき敵将の姿はそこに見えた。
●ツグハ、シズハ
機械仕掛けの右腕を杖のようにつき、女エインヘリアルは余裕たっぷりに立ち上がった。
「よくまぁ頑張ったじゃないか、しずちゃん」
「シズ……?」
「……知らないな」
親しげ、いや馴れ馴れしげな呼びかけに見返す響を、憐は手で制した。
「お前、まさか……人間?」
いぶかしむ双吉の声を肯定するように顔が笑う。
エインヘリアルらしい巨躯、内面を示すように歪んだ顔つき……だがそこには、『狂紅のツグハ』には、よく知った面影があった。
かたや叡智を象徴するような白磁の鎧装、かたや狂面を秘めた蒼の甲冑。形見写しのような対照さで、憐とツグハは対峙した。
「暇つぶしに迎え入れてやったというのに……つれないじゃあないか、しーずちゃん!」
「しずちゃんなんて知らないな、私は東雲・憐だ。ツグハッ!」
流れるように振るわれた右腕が火花を散らす。憐の意志に呼応して襲うビハインド『セイナ』の鎌を一閃に返し、高らかな笑いで切り返す。
「あはは! そうかい! じゃあ私も知らないね! 私はツグハ、狂紅のツグハだ!」
「CROSS ATTACK WARNING!」
警鐘を鳴らし前進するマークのガトリング斉射が切り払われる。
プリマのようにぐるりと旋回するツグハの回転切りは、飛びかかるケルベロスを一網打尽に跳ね返した。
「ははは弱い弱い! あと十分、九分かなぁ。お前らの仲間は残らず全滅だよ? そうしたら、しずちゃんたちもおーしまい……」
「そうは、させないっ!」
跳ね起きた天音の蹴りが二回転目と嘲笑を受けた。気迫の声と共に『天音専用エアシューズ』の滑車がチェーンソー剣を弾き、空中へと跳躍する。
「これまでどれだけ……! これ以上っ、何も、誰も!」
「天音……!?」
少女に絡みつくどす黒い輝きをティーシャは見た。
それは彼女に共生するオウガメタルのもの、そのはずだが……『怨讐を浴びしオウガメタル「EXE-15エルドリア」』、憎悪のまま叫ぶ天音には、彼女が手にかけた宿敵がちらついた。
「っと、危ないねぇ」
力任せに振り下ろされるダブルスパイラルバンカーのワン・ツーが痛んだ舗装床にクレーターを開ける。
今度はツグハが衝撃を利用、身を弾かせながらロングコートを柔肌ごとズタズタに裂いた。
「そぉら一つ!」
止めと剣を振り上げたツグハ、しかしそれを受ける力場、跳ね飛ばす閃光。
「因縁なれど、お姉さまに比べ大仰が過ぎますわ。蒼狂紅の」
「仕切り直しだ、天音!」
響のマインドシールドが受け止め、ティーシャの『カアス・シャアガ』重砲から轟竜砲が流れを断つ。
そして受け止めた猛攻に勢いをつけ返すのはリティの剣閃だ。
「先ほどの弁を二つ修正する。経過時間は二分過ぎて二分三十秒、あなたの体感より三十秒遅い。そして」
リティの手にした長大な『対艦戦用重力鎖鋸剣』がぐんと伸びる。
「残り八分、あなたを倒せば何も問題はないわ」
「ならやってみろよぉっ!」
両の手と『強行偵察型アームドフォート』のサブアーム、三本の腕をフル活用して沈黙の魔女は対艦戦用の高出力チェーンソーを縦横無尽に振るい、エインヘリアルをそのプライドともども切り裂いていく。
「天音、大丈夫……みんな、殺させはしないんだよ……東京のヒトたちも、共に戦う仲間たちも」
「ん……ありがとう……ごめん。もう負けないようにしないと……」
二振りのチェーンソーが斬り合う中、瑪璃瑠のワイルドインベイジョンが灼熱の翼を描き、天音は息を吐き出した。
『目を逸らすな、副隊長』
まただ、あの声が憎しみを呼び起こす。
「気にすんな、抑えて負けちゃあ仕舞だぜ」
ドキリとしたのは声にみやった双吉の顔、つけられた『『キラキラプリプリ魔法少女☆ラッキーフタバ』のお面』とそこから漏れる『悪鬼羅刹紋』だ。
「友達は選んだほうがよくないかい、しずちゃんっ!」
「てめぇがいうか!」
庇い受けたチェーソーに引き千切れる羅刹紋、だが全て織り込み済みと刃を受け止めたブラックスライムが白く炎をあげた。
「ここが焦土で良かったぜ、延焼とか気にしないで全力ブッ放できっからなァ……!」
『黒液模倣・乙女白炎』……模倣なれど、黒と白がまだらに混ぜる炎上液体の絢爛さは本物さながら、逃す隙も与えずにエインヘリアルへと食らいつく。
「『徳』も『武勲』も……例え、誰に理解されずとも、重ねてきたモンは自分(テメェ)の胸で燃えているんだッ!」
「き、きさまぁぁぁーっ!」
エインヘリアルの巨躯が燃えあがり、地を転がった。
●分水嶺三分
「がぁぁぁ、よくも……よくも!」
「TARGET SURVIVE!」
身を炎に包みつつも膝すらつかぬ炎の影に、マークの警告と『DMR-164C』バスターライフルの斉射が飛ぶ。よろめきながらも迫るツグハに立て続け、打ち込まれるのは炎と氷。
「天と地……炎と氷……二つの力に敵はない……絶対に守り抜いてみせる!」
天変・地異の残霊より受け取った氷、己に燃える炎を結った太極紋が食らいつき、冷熱衝撃が蒼玉の鎧を打ち砕く。
「ツグハ!」
「甘いなぁ! シズちゃんさぁ!」
しかしまだだ。止めと踏み蹴る憐のグラインドファイアを、チェーンソー剣が転ばし切る。逆袈裟の切り上げに憐は咄嗟に蹴り受けるも、止めきれる勢いがアームフォートを裂く。
「その技、シャイターンのかい? 満点なのは見た目だけだねぇっ」
高まる騒音の衝撃波が粘りつく白炎ごと、ケルベロスたちを跳ねのける。
「あいにくと『武勲』はヤツの借り物でな……まぁ最高の評価じゃねぇか、どうする?」
ツグハの嘲笑も当然と受け流す双吉だが、時間ばかりはそう余裕を決めさせてはくれない。
「猶予四分少し、向こうも言うほどの余裕はないとみる、けど……決定打もない」
その手のチェーンソードはゾディアックソードの性質も有しているのか、ツグハを癒そうとする精神の結界をリティは殺神ウイルスで潰していく。
残り時間はわずか。最大火力を叩き込もうにも、体躯によらぬ機動力と猛攻がそれを邪魔し、ケルベロスたちを追い詰めてくる。
「R/D-1」
『状況分析、彼我の戦力差は互角やや劣勢。我の優位点……戦力数……地ッ』
ガン、と切り込まれる衝撃がマークと『R/D-1』戦術システムの思考を阻む。『HW-13S』肩部防盾を両断してチェーンソー剣食い込む『2型追加装甲』の部位を投棄。
間一髪でやり過ごし、フロストレーザーの連射で距離を稼ぐ。
「マークさん!」
「熟考の時間はない、賭けに出るぞ!」
瑪璃瑠に後を託し、ティーシャは『R.F.NVゴーグル』を狙撃モードで起動。騒音に割り込む残霊のテレサ・コールより『ジャイロフラフープ』アームドフォートを合体。『斬環の末妹』へと移行する。
「火遊びに続いて輪投げかい? あっははは来てみなよぉ!?」
「デウスエクリプス!!」
「ALL RIGHT,READY ALL WEAPON!」
挑発に答えたティーシャに続き、片膝をつきの姿勢を踵部バンカーで固定したマークが懸架兵装を全発射する。
強引な姿勢ゆえの凄まじい反動は『エクスガンナーシステム ver.β』をしても補正しきれず、誘導弾がコアブラスターのビームが、ツグハ周囲の本陣を吹き飛ばし、爆風と瓦礫の雨を降らす。
「あっひゃひゃ、ひどいもんじゃないか! お仲間ごと吹っ飛ばす気かい?! お仲間の輪投げもどっかに……ッ!?」
「『此処』だって、八王子の街なんだよ」
瑪璃瑠は呟きと同時、身を逸らすツグハを地からのジャイロフラフープが霞めて飛んだ。恐るべき反応と危険察知。だが必殺の戦輪を逃れたツグハに息をつく暇はない。
「お前は誰だ……?」
囲まれている。既に。誰に?
「夢は傍ら」
「現の果まで」
『――零を番えて無限と成せ』
緋眼のメリー。金眼のリル。そして獣神の巫女……かわしよけた先こそは、夢と現を合一した瑪璃瑠のただなか。限界を超え、三者に分身したライオンラビットの『二律背反矛盾螺旋』が交差する。
雪の花のように舞い散る、儚くも美しい三位一体の斬撃。
対抗するツグハのなりふり構わぬチェーンソー乱舞。
「見届けていただきましょう、しかと」
護る者と奪う者、美と悪徳の『零夢現六花白蓮』。謡うように響が告げる。そして。
「今一度言わせてもらおう――切り裂け!」
ティーシャの声に合わせ、凌ぎ切ったツグハの足元、時間差で飛び出したジャイロフラフープが左腕を切り裂いた。
●Last Stand
「あ、あぁぁぁぁーっ!? よ、よくも! 私の腕! よくもぉっ!」
「……響」
狂気にぎらつくツグハの目に呟く憐へ、皆まで言うなと寄り添う【妖精砲手の飛翔】。
「こっちは打ち止めだ、後は頼むぜ……!」
「お姉さま……私は、私たちお姉さまと常に共にありますわ」
騒音刃を受け止め、背よりヒーリングパピヨンをはばたかせた双吉が膝をつく。もはやヒールは尽きているが、ぶれる照準への補正はありがたいものだ。
地を蹴った憐の背中を見守り、響は最期の一撃を祈り託す。
「それが新しい妹かよ! だから私はいらないってのかよぉ!?」
ツグハの声は嗤っていた。狂気の懇願のようで、そうではない。計算づくの心理攻撃……エインヘリアルと化して歪んだか、あるいは元よりなのか?
「……どうにしろ、逃しはしない。内蔵兵装ロック解除」
リティの手にした『電磁施術攻杖』より、展開したグラビティフィールドに沿って『ライトニングウィップ』が伸びる。
動じる仲間ではないと信じるが、その叫びはいささか喧しい。
「がぁ……っ! なぁどうなんだよぉ、シズちゃんはさぁ!」
「憐、それ以上は……!」
会話を遮るように天音のマルチプルミサイルが弾幕を張った。過去の自分が告げている、深入りすれば傷つくだけだと。
「知らないな……ツグハ。私はそこまで人間を辞めていない……だから、お前は絶対に私が止める」
爆風のなかを突進するツグハにアームドフォート『RLA-VK』キャノンを照準。残り一分、ここまでの戦闘でダメージは甚大だが、託された妖精砲手たちの支えがあれば。
「行きなさい。お姉さまの……私たちの奏でるワルツと共に」
「これが……お前の選んだ、終焉だ」
「シ……!」
引かれた銃爪の起こした『終焉の衝撃』の轟音がツグハを断末魔ごと飲み込んだ。
フルパワーの接射に、半壊のRLA-VKキャノンが、それを支える『妖精砲手』ごとに弾け飛ぶ。
あふれ出たエネルギーが爆発し、空に火柱を墓標とあげた。
「いっちまったか……」
「うん……終わったんだよ」
嵐が去った後、唯一残った、地に突き立ったツグハの右腕……漆黒のチェーンソー剣に双吉と瑪璃瑠はぽつりとつぶやいた。
それ以外、ツグハという存在を示すものは何一つ残らなかった。
「…………」
それを見つめる憐の心内はいかなものか。だが今は時間がない。
「まだですわ……お姉さま」
「わかってる」
自分にできることはこれだけだと、響は引き抜いたツグハのチェーンソー剣を受け取り、言葉ない憐に代わり、リティと共に戦場へと空を駆けた。
「あなたたちの指揮官、狂紅のツグハは討ち取りましたわ! 音と聞き見るがいい、蒼玉騎士団!」
リティの『エアロスライダー』に支えられ、チェーンソー剣を首級と掲げた響は空に謡う。凛々しくも可憐な声は本陣、そして八王子の戦場へと力強くあふれていった。
作者:のずみりん |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 7/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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