磨羯宮決戦~侮りし略奪を迎撃せよ

作者:柊透胡

「緊急速報です」
 緊張帯びた硬い表情で、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は口を開く。
「東京焦土地帯に、エインヘリアルの要塞が出現しました」
 出現した要塞は、磨羯宮『ブレイザブリク』――ダンジョン化しており、第九王子サフィーロと配下の蒼玉騎士団が守護しているという。
「要塞出現と同時に、蒼玉騎士団の尖兵が東京焦土地帯を制圧。周辺市街地を略奪するべく出陣した模様です」
 この部隊は、殺戮を好む『蒼狂紅のツグハ』が指揮している。このままでは、殺戮と略奪で凄惨な事態となるだろう。
「けして看過出来ません。皆さんには、蒼玉騎士団略奪部隊の迎撃をお願い致します」
 敵は、統率の取れた騎士団で数も多い。だが、本国のエリートである故に、ケルベロスの実力を過少評価している所に付け入る隙がある。
「こちらも幾つかの小部隊に別れ、奇襲や伏撃を繰り返して敵を翻弄。指揮官の『狂紅のツグハ』を討伐、或いは撤退させれば、騎士団の方も退くでしょう」
 今回の戦場は『八王子の東京焦土地帯』。一般人はいない。周辺の地形は、自然地形の他に廃墟となった市街地、幹線道路等があるようだ。
「騎士団の規模は蒼玉衛士団督戦兵が50体、蒼玉衛士団一般兵が250体、合計300体程となります」
 督戦兵1体が一般兵5体を率いる『小隊』が50あると考えれば、判り易いだろう。何らか異変が生じた場合、又は敵の出現の際は、この小隊規模で偵察を行ったり、敵の撃退に当たる。
「戦闘となれば、別の小隊が増援として派遣される可能性が高いでしょう。戦闘の際は、ある程度本隊から小隊を引き離し、増援が来る前に決着を付けるか、撤退するのが良さそうです」
 又、戦闘の代わりに攪乱行動で、多くの小隊を本隊から引き離せられれば、本陣への強襲も可能かもしれない。
「攪乱に動くのでしたら、廃墟となったビルや駅ビルの地下街、下水道等、周辺地形を上手く利用してみて下さい」
 続いて、ヘリオライダーは敵の戦闘能力を分析する。
「一般兵の戦闘能力は、エインヘリアルといえど余り高くありません。一方、督戦兵は、罪人エインヘリアル相当と見るべきです」
 全力を尽くして戦えば、一小隊『督戦兵1体と一般兵5体』を同時に相手取り、五分五分の勝利が見込めるが、戦闘後は戦闘不能者を抱えて撤退せざるを得なくなるだろう。
「但し、督戦兵は傲慢で、面倒事は全て一般兵に押し付ける傾向があります。これを上手く利用すれば、派遣されてきた小隊を更に各個撃破出来るかもしれません」
 又、小隊の指揮官である督戦兵を撃破すれば、残る一般兵は戦闘を中断、撤退しようとする。指揮官をピンポイントで狙う戦術も有効と言えよう。
「磨羯宮『ブレイザブリク』の出現は、エインヘリアルのゲート守護の為と推測されています。となれば、磨羯宮『ブレイザブリク』を攻略しない限り、エインヘリアルのゲートへの道は開かれません」
 幸い、先陣を切った略奪部隊が属する蒼玉騎士団は、エインヘリアルの王子直属のエリートで実戦経験は少ないようだ。歴戦のケルベロスならば、それをも利用して有利に立ち回れるだろう。
「ツグハの略奪部隊を撃破すれば、磨羯宮『ブレイザブリク』の攻略を開始出来ます。これまでは迎撃のみであったエインヘリアルに対して、初めて攻勢に転じられる訳です」
 今回の戦いは、エインヘリアルとの決戦に向けた第1歩となるだろう。
「皆さんの健闘を、祈ります」


参加者
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
浅川・恭介(ジザニオン・e01367)
四辻・樒(黒の背反・e03880)
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)
イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)
鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)
鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)

■リプレイ

●突然の稼働
 東京都八王子市――通称『東京焦土地帯』。
 エインヘリアルの第九王子サフィーロは、ゲート『魔導神殿群ヴァルハラ』から磨羯宮『ブレイザブリク』を分離。突如、地上へ浮上させた。
「また悪趣味なオブジェ持ち込んできやがってよぉ」
 鵤・道弘(チョークブレイカー・e45254)はそうぼやいたものだが……エインヘリアル側の意図は、ケルベロスの脅威に対抗した措置と推測される。実際、サフィーロは麾下の騎士団を磨羯宮の防衛に充てている。
 尤も、その指揮官自身が傲慢な狂戦士であれば、大人しく守備に就く筈もない。それどころかグラビティ・チェインを略奪せんと、要塞より出撃しているのだ。
 そこに付け入る隙があると、ケルベロス達は迎撃態勢を整えている。
「エインヘリアルのゲートへの道、絶対に切り開かなければいけませんね!」
 桜花咲く銀髪を揺らし、イリス・フルーリア(銀天の剣・e09423)は凛と背筋を伸ばす。
「その為には、この作戦も成功させるしかなさそうです!」
 だが、意気軒昂なイリスと対照的に、神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)は、何ともげんなりした面持ち――めんどくさい。非常にめんどくさい。
(「特に、その存在自体がめんどくさい」)
 侮られている方が、戦う時は寧ろ楽かもしれないが……憤りも覚えているのは、歴戦の自負が少なからず有るからか――表向きは軽口叩く楽観主義者でいて、その実、瑞樹は責任感が強いし、自他共に厳しい。
「皆さんごきげんよう、怪力無双で作ってみようのお時間です。工作員の浅川と助手の安田さんです」
 何故かカメラ目線で実況するのは、浅川・恭介(ジザニオン・e01367)&テレビウムの安田さん。
「あちらは一見何の変哲もない残骸に見えながら、実は快適に隠れられるという秘密工作です」
 防具特徴の怪力無双を活用して、せっせと迎撃工作に勤しんでいる模様。
「何という事でしょう、こちらは瓦礫を不自然に動かして、敵の注意を引く裏工作です」
「ふむ……こっちの道が狭いのは?」
「そちらは予め仕掛けたさりげない心理誘導で、敵に通ってほしい道を選ばせる事前工作です」
「へぇ、手が込んでるな。俺は、目星付けた建物に逃げ込んで、地の利を得るくらいしか考えてなかったが」
 恭介の解説に、道弘は感心の表情だ。
「そう言えば……あれだけ湧き出し続けたザルバルクが、消えた事も気懸りではあるけれど……」
 ふと、怪訝そうに首を傾げる端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)だが……二兎追う者は一兎も追えず。死神についてはこの迎撃戦を乗り切り、略奪から人々を護ってからの話。
「此度、我らの仕事は敵の攪乱と引き離し。皆の道を切り開く、大事な、大事なお仕事じゃ。手抜かりはせぬ」
 広範囲をカバーし、出来るだけ多くの小隊を誘き寄せるに越した事は無い。作戦領域が過度に重ならないよう、括は他の班との打合せに余念がなかった。尤も、戦場ではアイズフォン、携帯電話、トランシーバーなど通信機器の類は一切使用出来ない。他との刷り合せは、現地に入るまでに入念に。
(「そうだな。作戦を成功させる為にも、多くの敵小隊を引き付けたいものだな」)
「樒、エインヘリアルのゲートって、地中深くにあるのだったっけ?」
 作戦開始の時間まで、無言で待機していた四辻・樒(黒の背反・e03880)に、月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)は屈託なく声を掛ける。
「確かに、地中にあるらしいな。上手くゲートへ辿り着く方法を、見付けられれば良いんだが」
 最愛の人を前にすれば、自然と唇も綻ぶもの。灯の言葉に穏やかに頷く樒。実際、ゲート到達の方策には期待を寄せている。
「はぁぁー。王子も手伝ってくれればいいのにーなのだ」
「ザイフリート王子ですか? 流石に、もう定命化しているでしょう。ヘリオライダーに無理はさせられませんよ」
 妹分のボヤキに応じたのは、鞘柄・奏過(曜変天目の光翼・e29532)。今はスーパーGPSを駆使して、現在位置を把握中。
「あ、奏兄。今日はよろしくなのだ」
「最近はよく会うな。鞘柄、今回も宜しく頼む」
「こちらこそ」
 和気あいあいと挨拶しながらも、やはり作戦前の空気は何処か緊張を孕んでいる――さあ、さくさく仕事を済ませて、さくさく帰るとしよう。
「じゃあ、さくっとお仕事がんばるのだ」

●伏撃開始
 伏撃を狙うチームは「ビルや地下街での戦闘」を想定。故に、ケルベロス達は戦場に「八王子の中心部」を選択。つまり、八王子駅周辺に布陣した。
 ザルバルクと共に放置されてきた焦土地帯は、人の住めぬ地となって久しければ、生活感など微塵も残っていない。
 ――――!!
 果たして、磨羯宮より出撃した略奪部隊が八王子駅に接近したタイミングで、信号弾が多数打ち上げられた。
 ――――!!
 時限式も利用した信号弾は、市街のあちこちで連続して発射。狼煙も同時に上がり、かなり派手な様相を呈する。
「市街戦でオレ達を止めるつもりか? 生意気な雑魚め」
 略奪部隊の指揮官である狂紅のツグハは覿面、反応する。
「お前達、狩りだして首を持ち帰って来い」
 全軍の半数程度、30小隊が次々と市街地に押し寄せる。
「八王子中心部に潜伏しているのは、わしらも含めて9チーム。ちまちま攪乱するだけでは、埒が明かんぞ」
 眉根を寄せて唸る括。市街地制圧部隊は、180ものエインヘリアル。数の面では圧倒的に不利。身長3mからの視界の広さも侮れない。集まって来られると非常に厄介だ。
「めんどくさいが短期決戦、だな」
 瑞樹の言葉に否やはない。元より、本隊から小隊を引き離す算段だった。既に、エインヘリアルの略奪部隊は、50小隊から30小隊の戦力を市街地制圧に割いた。この規模を更に小さくすれば良い。
「えーっと、1小隊とわたし達が正面衝突して5分の勝率だから……」
「小隊を更に分割させて、各個撃破、だな」
 いっそのんびりした灯音の言葉を、道弘が補足する。
「了解した。撃破の順位は督戦兵からだな?」
「離脱困難な場合は、督戦兵に集中攻撃、だったと思いますが」
「んん……?  一般兵の方を素早く撃破して、敵戦力を削るんですよね?」
 樒と奏過の確認に、恭介は怪訝そうに首を傾げたが――まずは、一般兵を陽動で個別に誘い込み、小隊そのものを分断。一般兵の数をある程度減らすのが先だろう。
 督戦兵を集中攻撃して、小隊そのものを壊滅させるのは最後の段階だ。
「うむ、そのやり方で行こう」
「そろそろ来ます!」
 イリスの報せに、ケルベロス達は視線を交わす。作戦の段取りで齟齬を来たして致命的となるよりも。エインヘリアルの接近ギリギリまで見解の統一を図り、ケルベロス達は一斉に動く。

「おい!」
 督戦兵が指差す先――ビルの狭間に飛行の影。すぐに瓦礫に隠れて見えなくなった。
「あれが、ケルベロス……?」
「何グズグズしている! たかが羽虫1匹、さっさと仕留めて来い!」
 不審げな一般兵達に、督戦兵は居丈高に命令する。
「あの……上官殿は?」
「はぁ? 何で俺様がわざわざ出向く必要がある? 働くのは貴様ら雑兵、手柄は隊長の俺様のものに決まってるだろうが」
 嫌らしい笑みを浮かべ、督戦兵はぞんざいに顎でしゃくる。
「貴様らの銃剣は飾りか? 無駄口叩く暇があるなら、さっさと俺様に駄犬の首を献上しろ!」
「……」
 黙り込んだ一般兵達は、渋々瓦礫の向こうへ足を踏み入れる。
 ガラン――。
「!?」
 かつてのビル街に向かった一般兵の1人が瓦礫の崩れる音に身構えれば、ブロック塀の向こうに走り去る人影。
「馬鹿め、丸見えだ」
 長躯を誇るようにまびさしの下の双眸を細め、彼は大股で人影を追う。
「何処を見ている。私はこちらだぞ」
「……くそっ。ちょこまかと!」
 一般兵とて王子直属の騎士団員のプライドはある。敵の縦横無尽な動きで突出していく事は認知しながらも、逃げ隠れする羽虫相手に負けるなど考えもしない――。
 ――――!!
 果たして路地裏に入り込んだ時、よもや、突如爆発したビルの瓦礫が、バラバラと降り注ごうとは。
「くっ!?」
 デウスエクスならば瓦礫程度に損なわれる事も無いが、巨大なコンクリート塊が当たれば流石に痛い。
 咄嗟に半ば倒壊したビル陰に、一般兵が避難した次の瞬間。
「樒、いくのだっ」
「1体1体確実に仕留める」
 右から灯音の熾炎業炎砲、左から樒のスターゲイザーが強襲する。
「何……!?」
「光よ、かの敵を縫い止める針と成せ!」
 銀天剣・弐の斬! イリスが全天より光を集めた1本の大針が、一般兵を穿つと同時、大量の光鎖が絡み付いて動きを封じる。
「迷ったら轟竜砲っと」
 道弘のアダマントガロンより竜砲弾が轟音上げて迸り、奏過は立て続けの集中砲火に苦笑を浮かべる。
「回復は私がやりますので、皆さんは心置きなく……もう、やっちゃっていますけど」
 せめて援護をと奏過が仕込み雷杖『朧白夜』を振えば、電気ショックにその身を賦活された瑞樹は一般兵の背後を取って身構える。
「……あ、マズイ」
 ここで螺旋氷縛波とか【氷結の槍騎兵】とか、氷結の攻撃を放てれば良かったが……活性化していないものは仕方ない。
「というか……ちょっと緩み過ぎだな、反省」
 どんなに良い作戦を思い付いても、活性化していないグラビティは使えない。やむを得ずとも今出来る事を、と瑞樹は炎の御業を編み上げる。
「安田さん、行きますよ!」
 恭介とテレビウムの息を合わせ、キラキラしい星形のオーラと禍々しい凶器が相次いで閃いた。
「オノレッ!」
 怒りの声を上げ、一般兵は銃剣をぶっ放す。すかさず、道弘がその射線を遮った。
「早速、感謝なのじゃ」
 偉丈夫の背中に声を掛け、一転、括は断罪する。
「衛士なればこそ、矢面に出る機会はついぞなかったのやもしれぬがの……然様に半可な心持で、蘆原の生命を奪おうなぞと見くびった対価は如何ほどか」
「うるさいうるさい! 定命風情が!」
「その目に確と焼きつけよ!」
 流星の煌めきと重力を宿した飛び蹴りが、真っ向からエインヘリアルの胸板を蹴り抜いた。

●侮る敵意を粉砕せよ
「……ふん、役立たず共が」
 既に物言わぬ部下を見下ろし、督戦兵は悪し様に罵り、骸を蹴り付ける。
 これで、2体目だ。
 捜索に出たきりの余りの遅さに、悪態を吐きながら探せば、廃墟のビルで1体目が事切れているのを発見した。それなりの数がいたのは足跡から知れたが、敵もとっくに去った後。
 次は狼煙だ。雑多な色合いの煙に戦闘を推測して、再び部下を向かわせた。やはり、1人帰還せず、仕方なくそいつが向かった方向を探索すれば案の定。地下へと向かう下り階段が崩落した所に、頭を突っ込んで倒れていたのだ。無論、周囲に人影はない。
「俺様が来るまで、足止めも出来ないのか!」
 吐き捨てたその様子に、一切の哀悼はない。督戦兵の後ろに控える残り3体の一般兵は、何とも言えない面持ちで顔を見合わせる。
「……貴様ら、誰が休んで良いと言った。自分の首が惜しければ、さっさと狩り立てて来い!」
「……」
 これ見よがしに爆破スイッチを見せつけられ、一般兵達は無言で踵を返した。
(「そろそろ、潮時のようだな」)
 隠密気流を纏い、エインヘリアルの様子を窺っていた瑞樹は、不敵に唇を歪める。
 一般兵を軽んじ捨て駒扱いする督戦兵に、残る部下達がうんざりしているのは明らかだ。
(「連中、すっかりやる気をなくしているな」)
 やはり隠密気流を纏う道弘は、呆れたように腕を組む。一見、一般兵達は捜索を再開したようでいて、その実「振り」でしかない。これ以上は、こちらが誘っても怪しい場所に踏み込んでくる事はなさそうだ。
(「ならば、いよいよ、頭を叩きますか」)
 イリスの視線に頷き返し、灯音はいっそ軽やかに瓦礫を上る。
(「地球人て、美味しそうにみえると聞いた事があるのだ」)
 そんな訳で、督戦兵に投げキッスしてみました。
(「これできっと敵もイチコロなのだ!」)
「貴様ぁッ!」
 ……余計に怒らせただけだった。
「おのれ、これでもくらえばいいのだ!」
「では、私からもささやかなプレゼントだ」
 シュゥゥ――パ、パーンッ!!
 何か逆切れした灯音のねずみ花火に合わせて、樒もかんしゃく玉をお見舞いする。
 極めつけ、エインヘリアルの目線の高さにドドンと「初心者エインヘリアル一行様歓迎」の垂れ幕が。
「所詮は、実戦経験のないお人形さん達……磨羯宮に飾られたままの方が良かったんじゃないですか?」
 朗々たる奏過の挑発が、響き渡る。
「よくもよくも、この俺様を愚弄しやがってぇぇッ!」
 ガキィィッ!
「おお、安田さん、カッコいいです」
 今しも、灯音の首を刈らんとした督戦兵の剣閃を、テレビウムのバールみたいなものがしっかと受ける。その勇姿に歓声を上げた恭介は、無造作に自らの髪の花を毟り取った。
「当ったらゆっくりになれ~」
 オラトリオの力が込められたその花弁は、命中した対象の時間を一時的に緩やかにするのだ。
「さて、おぬしの御魂は此方側かの、彼方側かの?」
 すかさず、括はリボルバー銃の6発の弾丸に、御業を込めて6体の分身と為す。
 ひとふたみぃよぉいつむぅなな。七生心に報いて根国の縁をひとくくり――。
「葦原を荒らす不届き者は、眉間にズドン、じゃ」
 七生報心・黄泉津括――銃弾で陣を描き、瞬間的に生と死を分かつ結界を作り出す。この結界の中、括が最後に撃ちこむ1発の弾丸は、葦原に害為すものの生命を削り取る。
「こ、このぉっ!」
 督戦兵は、確かに一般兵より強かった。ケルベロスの集中攻撃を浴びながら、早々に膝突く事なくゾディアックソードを振う。その標的は、早々にファナティックレインボウを奔らせた道弘だ。
「今瞳に映るは鏡像……信じて身を委ねて欲しい」
 だが、奏過が握る赤光のメスは「傷つける行為」を「癒す行為」に反転する。
「降り立て、白癒」
 更には、灯音の癒しの白霧が盾の如く、敵を阻めば。
「樒!」
「ん、行こうか。足元、気をつけるんだぞ」
 ただ、全てを切り裂くのみ――灯音には優しく声を掛け、一転、樒は冷ややかに斬を振う。次いで、瑞樹のシャドウリッパーも駄目押しするように閃いた。
「……地に這いずる、チビ虫如きが」
「おいおい、失礼な奴だな」
 ファミリアシュートを撃ちながら、豪快に肩を竦める道弘。
「督戦兵でこの程度なら、後何回かおかわり出来そうだが」
「ほざけぇぇっ!」
「銀天剣、イリス・フルーリア―――参りますっ!!」
 憤激の叫びが轟くと同時、一気に肉迫したイリスの持ち得る最大火力、月光斬が鮮やかな弧を描いて、引導を渡した。

 最初の信号弾発射から32分後――残敵が慌てて撤退を始める。
 それは、指揮官撃破と同義。比較的余力を残す彼らは、敵を1体でも撃破するべく市街戦を継続すべきか……些か頭を悩ませたという。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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