●磨羯宮『ブレイザブリク』出現!
東京都八王子市にある、『東京焦土地帯』にエインヘリアルの要塞が出現した。
集まったケルベロスたちに挨拶したあと、石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)はそう告げた。
「出現した要塞は磨羯宮『ブレイザブリク』です。エインヘリアルの第九王子サフィーロと、その配下の蒼玉騎士団が守護しているようです」
ただし、今回ケルベロスに依頼したいことは要塞への攻撃ではない。
「ブレイザブリク出現と同時に、騎士団の尖兵が出撃しました。東京焦土地帯を制圧し、さらに周辺地域を略奪するのが目的のようです」
略奪部隊の指揮官は『蒼狂紅のツグハ』と呼ばれるエインヘリアル。殺戮を好む人物だ。
阻止するために、彼らを迎え撃たなければならない。
「敵は統率のとれた騎士団で数も多いですが、エリートであるため皆さんたちケルベロスを過小評価しているようです」
奇襲や待ち伏せを繰り返して敵を翻弄し、指揮官の『蒼狂紅のツグハ』を撃破あるいは撤退に追い込めば、騎士団も撤退するはずだ。
一度言葉を切ってから、芹架はさらに説明を続けた。
「今回の作戦では、敵が市街地へ到達する前に戦いを挑むことができます。戦場になるのは八王子の東京焦土地帯です」
つまり、戦場に一般人はいない。
いない場所に敵をとどまらせなければならない。
「蒼玉騎士団の兵力は、合計で300体ほどです。そのうち50体が督戦兵という強力な兵士で、残る250体は一般兵です」
督戦兵1体が一般兵5体を率いる小隊が50あると考えるといいだろう。
「異変があったり敵が現れたとき、騎士団はまず、この小隊規模で行動して対処しようとします」
とはいえ、もちろん本格的な戦闘になれば敵は増援を送り込んでくる。
戦闘時はなるべく本隊から敵を引き離して攻撃すべきだろう。
増援が到着する前に決着をつけることを目指し、撤退することも考えながら戦闘したほうがいい。
「戦闘ではなく撹乱を重視して行動し、多くの敵を本隊から引き離すことを目指すのも手です」
十分に本隊の戦力を減らすことができれば、そこに強襲をかけることも可能かもしれない。
また、焦土地帯には廃墟となった市街地や幹線道路が残っている。廃ビルを利用するなど地形をうまく生かせば有利に動けるかもしれない。
「敵の戦力についてですが、一般兵についてはそれほど強くはありません。しかし、督戦兵は強力です」
今も頻繁に送り込まれる罪人エインヘリアルと同程度の戦力があり、督戦兵単独でケルベロス1チームとそれなりに戦えるだろう。
敵はゾディアックソードやルーンアックス、バトルオーラといった武器を主に使うが、それ以外の武器や独自の技を持つ敵がいる可能性ももちろんある。
督戦兵1体と一般兵5体の小隊とケルベロス1チームが正面から戦えば、勝率は五分五分といったところか。勝っても戦闘不能者は出るのは避けられず、戦闘後は撤退するしかなくなるだろう。
「ただ、督戦兵は傲慢で、できるだけ一般兵に仕事を押しつけようとする傾向があります。その性格をうまく利用すれば被害を押さえて撃破できるかもしれません」
もしくは、指揮官である督戦兵を撃破することができれば、残った一般兵たちは一時撤退することを選ぶ可能性が高い。集中攻撃をしかけてみるのも1つの手だ。
統率のとれた敵を相手にそれを狙うのは簡単ではないかもしれないが。
「蒼玉騎士団は王子直属のエリート部隊であるためか、能力はともかく実戦経験は多くないようです」
歴戦のケルベロスたちなら、きっとうまく立ち回ることができるはずだ。
「最後に。ブレイザブリクはエインヘリアルのゲートを守るために現れたと推測できます」
人々を守り、さらにはエインヘリアルとの決着をつけるために、どうかケルベロスの力を貸して欲しいと芹架は告げた。
参加者 | |
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幸・鳳琴(黄龍拳・e00039) |
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664) |
神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898) |
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426) |
タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699) |
渡羽・数汰(勇者候補生・e15313) |
九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360) |
村崎・優(黄昏色の妖刀使い・e61387) |
●東京焦土地帯
今や人の住めない場所と化した地に、ケルベロスたちは脚を踏みいれた。
「東京焦土地帯とは懐かしいのう。あたし達は最初にここに来ておったからのう」
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は豊かな髭――つけヒゲではあるが――をたくわえた顔でゆっくりと周囲を見回した。
倒れた建物、崩れた道路、曲がった電柱。
それらはかつてはここが確かに、人が住んでいた街であったことをケルベロスたちに伝えてくる。
「磨羯宮か……また唐突に出てきましたね? 内部で何かしらあったのかねだぜ」
緑色のドラゴニアン、タクティ・ハーロット(重喰尽晶龍・e06699)が遠くにある磨羯宮をながめて呟いた。
「そういえば、ここにはエインヘリアルの者達のゲートもあったらしいからのう」
エインヘリアルの要塞がある方角をウィゼもまたながめていた。
「磨羯宮がここに現れてもおかしくはないのじゃが、あれだけウヨウヨおったザルバンクも姿を消して何やら不穏な雰囲気なのじゃ」
「まー出て来てくれんなら対応するだけなのだぜ。気楽に行きましょうやだぜー」
タクティがそう言って、ブレイザブリクから出撃した敵がいるはずの方向へ向かって足を踏み出した。
今考えるべきことは、狂紅のツグハ率いる蒼玉騎士団をいかに止めるかだ。
敵に見つからぬよう慎重に、ケルベロスたちは焦土地帯を進んでいく。
地形を利用しやすい市街の中心部、八王子駅付近でケルベロスたちは進軍を待ち構えていた。
「トランシーバーは使えないようだな」
落ち着いた声で言ったのは村崎・優(黄昏色の妖刀使い・e61387)だった。
近づいてくる兵士たちをトランシーバーを利用して分断するつもりだったが、どうやら例によって例のごとく、無線通信はなんらかの手段で阻害されているようだ。
「やはりな。無線の類いが敵地では使えん報告も多いからのう。テープレコーダーを用意してきて正解であったな」
ウィゼの言葉に皆がうなづく。
トランシーバーほど柔軟には使えないが、音声を流して注意を引くことはできるはずだ。
「それじゃ、敵が通りそうな場所に設置しておこう」
念のため身を隠す気流をまとった数人が、敵が通過しそうな場所にテープレコーダーを隠しておく。
他のチームもそれぞれに敵をおびき寄せる算段をしているはずだが、どこにいるかわからない。
いくつかのチームが伏せる八王子の駅付近へ敵が近づいてくるまで、さして時間はかからなかった。
「……」
幸・鳳琴(黄龍拳・e00039)は無言で聞こえてくる軍勢が起こす足音や、金属がこすれあう音に聞き耳を立てていた。
「鳳琴ちゃん、準備はいいかい?」
同門の盟友である渡羽・数汰(勇者候補生・e15313)に声をかけられて、少女拳士がうなづいた。水色のリボンがゆれる。
胸が高鳴るのは、果たして高揚のためか、緊張のためか。あるいはその両方か。
色とりどりの光と煙が遠くで巻き起こったのはその時だった。
どこかのチームが信号弾を放って、敵の注意を引こうとしているのだ。
「市街戦でオレ達を止めるつもりか? 生意気な雑魚め、お前達、狩りだして首を持ち帰って来い」
遠くなのではっきりとは聞き取れなかったが、そんな指示をツグハは配下の者たちに下したようだった。
指揮官の命令に応えて、おそらく騎士団のうち半数ほどのエインヘリアルが動く。
8人が隠れている場所にも敵が近づいてくる。
「くっくっく、神門忍者の必殺、魅せてやろう」
動きだしたエインヘリアルたちの様子を確かめて、神門・柧魅(孤高のかどみうむ缶・e00898)が不敵な表情を見せる。
「正面からではなく暗殺、不意打ち……忍者の技能が活きるのだ。ま、オレが居るからには成功間違いなしだな……」
マフラーをたなびかせ、彼女は自信に満ちた様子で断言した。
使える者は身を隠す気流をまとい、さらに崩れた建物を利用して隠れながら、敵を待ち構える。
「敵がテープレコーダーの音に気づいたよ。ひっかかってくれたみたいだ」
九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)が八重歯をむき出しにして笑みを浮かべた。
まるで、これから起こる戦いを楽しみにしているかのように。
督戦兵が、一般兵たちに、音の出所を確かめるように命令を下した。
身を隠す必要があるとも思っていない、大きな声だ。少し離れた場所からもはっきりと聞こえるほど。
すぐに数体の一般兵が近づいてくるのが隠れ場所から見えた。
散らばって声の出所を探している敵が4体。
不満をぼやいているらしい声も聞こえてくる。
ただ、文句を言いつつも探索はしっかりしている。動くなら急がねばならない。
彼らを迂回し、ケルベロスたちは残っている督戦兵へと向かった。
「さて、手早く片をつけよう」
新城・恭平(黒曜の魔術師・e00664)はウィザードハットをかぶり直すと武器を手にして身を起こす。
体を覆っていた気流が溶けるように消えて、ケルベロスたちは一気に敵へと攻撃をしかけた。
●奇襲
真っ先に動いたのは鳳琴だ。
「番犬の連携、お見せしますっ」
身にまとった紅蓮の魂より炎を放ち、督戦兵へと食らいつかせる。
さらにその炎と同じ軌道を走って、数汰がエインへリアルへと接近した。
「冥府の最下層、陽の光届かぬ牢獄に汝を繋ぐ。全てが静止する永劫の無限獄にて魂まで凍てつけ!」
掌に産み出したのは、負の無限熱量。絶対零度すら下回る冷気をのせて、督戦兵へと打ち込む。
督戦兵の鎧が氷におおわれ、そして爆ぜて血が飛び散った。
「ちっ、あのバカども、偵察1つできないのかよ」
督戦兵が毒づく。
「王子直属のエリートというのも大したことは無いな、この程度か?」
挑発的な言葉を投げかけながら数汰が敵を見上げると、督戦兵は不快さを隠す気もない様子で眉を寄せていた。感情が顔に出るのは未熟の証明だ。
「なんでもかんでも部下のせいにするのはよくないんだぜ!」
続いてタクティが結晶棘の生えたハンマーガントレットから竜の爪を伸ばして、敵を切り裂いていた。
「そうそう。ごちゃごちゃ言わずに、キミの力を見せてくれよ!」
力任せに幻が長柄の武器の竜牙を振り下ろす。
タクティのミミックの攻撃はかわされたものの、次の瞬間赤い影が宙を舞う。
白い髪をふわりと浮いた。柧魅の引き締まった美しい足が、奇麗な弧を描いて督戦兵を切り裂いている。
「燃えろ!」
恭平のエアシューズが焦土地帯の大地とこすれあって摩擦熱の炎を起こした。
優は両手に喰霊刀を構えて督戦兵へと接近した。
「エインヘリアルめ、やっと出てきやがったな! この街を滅茶苦茶にした借り、今こそ返してやる!」
少年はそう叫んだはずだったが、口から出たのは意味をなさぬ叫びだった。
強烈な呪詛が宿る黒影の刃と、まったく呪詛を宿さぬ透明な刃。暗牙と織心の銘を持つ二振りを軽くこすりあわせながら、少年の口からさらに叫びがほとばしる。
「っ゛ら゛ぁん゛うぅけ゛えええええええっ!!!」
瞳から紫炎のオーラを吹き出し、サファイアのごとく変じた透明な刃を突き出す。
暗雲を裂く稲光のごとく督戦兵を貫いた刃から、魂すらも麻痺させる強い呪詛を優は敵へとぶち込んだ。
「この……いつまでも調子に乗ってるんじゃねえぞ、ザコどもが! おい、さっさと俺の傷を治せ!」
1体だけ残っていた一般兵に向かって督戦兵が怒鳴りつける。
ウィゼはその声を聞きながら、自らの治癒能力を強化していた。
「あたしにかかればこのぐらいの医療設備は携帯可能なのじゃ」
取り出したのはアームドフォートの技術を応用して作った医療設備だ。
エインヘリアルの反撃に、彼女は備えていた。
もっとも、反撃に移ろうとした督戦兵は、苦痛のうめきをあげて動きを止めていた。ケルベロスたちの攻撃が効果を上げているのだ。
「おい、あっちで戦ってるみたいだぞ!」
「くそっ、急いで戻れ! 後でなにを言われるかわからないぞ!」
後衛で回復に努めようとしていたウィゼの耳に、テープレコーダーでおびき寄せた一般兵たちの声が遠くから聞こえてくる。こちらに戻ってこようとしているようだ。
「皆、急ぐのじゃ!」
「今のうちに攻撃を集中しよう!」
同じく後衛にいた恭平も聞こえたらしい。鋭い眼光をエインヘリアルへと向けて、しっかりと狙いをつけている。
「必ず勝ってみせますから――!」
鳳琴が後退しようとしていた督戦兵を追って接近すると、力強く拳を繰り出す。
「ミミック、今のうちに全力で行くんだぜ! たとえ、何者であろうとも砕き潰すのみ……! 魔王掌!」
タクティはサーヴァントに声をかけながら、しかし同時に接近していくミミックや他の仲間を巻き込まぬよう細心の注意を払い、籠手に覆われた右拳を突き出した。
まだ氷ついていた督戦兵の体が……いや、督戦兵の体を含めた空間そのものが、タクティの右拳を中心に結晶へと変わっていく。
「晶滅!」
拳を握ると、結晶と共にエインヘリアルの鎧に包まれた体が砕けた。
回復役らしい一般兵がオーラを飛ばして指揮官を回復するが、ケルベロスたちの攻撃の勢いは止まらない。
柧魅の手から伸びた鋼糸が、督戦兵へと巻き付く。
「この銀雨が最後に見る景色……かもなっ。おい、死ぬ前にツグハのことを教えろよ。何か吐け、あるだろう? 何が好きとか、嫌いとか」
「貴様もバカか? 俺が、敵の欲しい情報を教える無能に見えるのか?」
嘲りの言葉を発した敵に、銀の雨を伝って柧魅の体内の水分が浸透していく。
そしてまた、督戦兵の体が爆ぜた。
「ついでに、白い鎧のエインヘリアルのことも聞きたかったが、答えちゃくれなさそうだな。探してるんだが」
柧魅は小さく息を吐いた。
「そこに降るは黒き連針!」
恭平が古代魔法と精霊魔法を複合させて詠唱すると、帯電する黒曜石の針が周囲に浮かび上がった。
一点に集中した針が督戦兵を貫く。
だが、エインへリアルはまだ倒れない。
「すみません、遅くなりました!」
「なにやってんだ、クズども! 俺がやられたらどうする気だ? 少しは考えろよ!」
駆けつけてきた一般兵に督戦兵が罵声を放つ。
それでも、2体の兵士たちは指揮官を守るようにケルベロスたちとの間に割り込んでくる。
戦いはまだまだ終わりそうになかった。
●騎士団の反撃
督戦兵の物言いに不満げではあったものの、それでも一般兵たちは前衛に立って指揮官を守り始めた。
まずは2体が戻ってきて、それから1分ほどして残る2体も戻った。1体は中衛のようだ。
ただ音を出すだけでなく、もう一工夫あればあと数分は稼げたかもしれないが、今さら言っても仕方のないことだ。
「督戦兵に攻撃を集中してくざたい! 押しきりましょう!」
鳳琴が仲間たちに声をかけながら、地獄の炎を飛ばす。
「そうしたいのはやまやまなんだけどね」
幻が言った。
集中攻撃を受けた督戦兵が部下を盾にして後衛に下がってしまったので、近距離用の技しか用意していなかった何人かは攻撃が届かなくなってしまったのだ。
「邪魔なこいつらをまず片付ける。全霊の剣で挑ませて貰おう」
ケルベロスとなり、つながりを得てしまった今はすべきでない戦いかたなのかもしれない。
だが、幻は捨て身の戦い方しか知らない。
数多の激闘の末に編み出した神速の斬撃を、前衛の一般兵たちへ一気に叩き込む。
鍛えたオウガの肉体が敵中で躍り、一般兵たちを切り刻んでいく。
遠距離攻撃ができる者たちは督戦兵を狙っていたが、前衛のディフェンダーたちはそれさえかばってきた。
そして、余裕を取り戻した督戦兵が後方からケルベロスたちへと強力な攻撃を放ってくる。
攻撃から皆をかばい、まずミミックが倒れた。
「よくもやりやがったなだぜ!」
「ふん、まだ切り足りんわ!」
タクティが怒りの声をあげるが、督戦兵はゾディアックソードを手に薄笑いを浮かべる。
星座が描き出されて後衛のウィゼや恭平に向かう。それを、タクティと鳳琴が素早く受け止めた。
さらに一般兵たちの追撃も2人を傷つける。
「皆を倒れさせるわけにはいかないのじゃ!」
ウィゼが蒸気のバリアをはって、より傷ついているタクティを癒す。
「汝、いまだ倒れる定めにあらず」
ネクロオーブで占って、恭平も鳳琴を支えている。
意味不明な叫びと共に、優が放つ幸運の星がエインへリアルの鎧を引き裂く。
数汰や幻、柧魅の攻撃は敵一般兵を削っているが、先に倒れたのはケルベロス側だった。
「ああぁぁぁぁっ!」
悲鳴をあげて倒れながら、鳳琴は反撃の意思を込めて敵を見据える。
もう戦える状態でない彼女に敵が警戒の態勢をとった。
その間に数汰が敵の背後に回り込んでいた。
「鳳琴ちゃん! あとは任せて!」
冥府の女王の髪からできた漆黒の羽扇をつきつけて視界をふさぐ。
そさて、数汰は掌に冷気を発生させた。
動揺した敵をつかみあげると、ディフェンダーの1人が凍りつき、砕け散った。
さらにもう1体の防衛役が倒れたのは、それから少し後。
「ツグハ討伐を狙うとか、考えてる場合じゃなさそうだな!」
真紅の長手袋から伸びるカギ爪に豊富なグラビティを込めて、柧魅の一撃が敵を断ち切る。
だが直後、督戦兵が振り下ろした剣の重たい一撃がタクティをとらえた。
両手のガントレットを交差させて受け止めようとするが、敵がさらに力を込めて無理やり振り切る。
「覚えてやがれ……だぜ……」
そのまま、タクティは膝をついた。
「さすがに力はあるようだな」
後退する敵に恭平が声をかける。
督戦兵が一瞬動きを止めたのは声の出元がわからなかったからだ。
「だが、まだまだ未熟。訓練場にはこのような地形はあるまい。縛!」
瓦礫の影から伸びた鎖が督戦兵に絡みつく。
「みんなも、地形を利用して戦おう! 遮蔽をとって、なるべく隠れながら戦うんだ」
「ああ、そうだな。これ以上まともに戦ってたら、すぐに撤退に追い込まれる」
恭平の言葉に数汰がうなづく。
「敵は倒せそうもないが、このまま負けるよりはマシか……」
歯を噛み締めて柧魅が言う。
「倒れた2人は私に任せてもらおう。なに、私にとっては軽いものだ」
幻が鳳琴とタクティを軽々とかつぎあげる。
「わしも行こう。手当てをしたら戻るから無理はするでないぞ」
駆け出した幻をウィゼが追った。
優が両手の得物をこすり合わせて、叫ぶ。だがそれでも、彼もまた瓦礫の影に身を隠す。
逃がすなと、督戦兵が叫んだ。
潜伏して敵をやり過ごしながら、時折攻撃をしかける戦いで、ケルベロスたちは少しずつ敵を削っていく。
結局敵を倒すことはできなかったが、やがてエインへリアルたちが撤退し始めた。
ツグハが討たれたのだ。
戦果は十分とは言えなかったが、役割は果たせたことに、ケルベロスたちは安堵の息を吐いた。
作者:青葉桂都 |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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