磨羯宮決戦~東京焦土地帯戦記

作者:沙羅衝

「みんな聞いて! 東京焦土地帯にな、エインヘリアルの要塞が出現したみたいやねん」
 宮元・絹(レプリカントのヘリオライダー・en0084) が、夏の思い出を楽しそうに話していたケルベロスたちに焦った様子で話しかけた。ただならぬ絹の様子に、他のケルベロスも集まってくる。
「出てきた要塞は、磨羯宮『ブレイザブリク』。で、そこを護ってるんは、第九王子サフィーロと配下の蒼玉騎士団や。
 そんで、それだけやないんや。出現と同時に、蒼玉騎士団の尖兵が、東京焦土地帯を制圧。周辺の市街地へと略奪を仕掛けようと出陣しはじめたんや。
 この部隊は略奪部隊になっててな、どうやら殺戮を好む『蒼狂紅のツグハ』が指揮してる事がわかった。目的は市街地で殺戮と略奪や」
 そこまで一気に話した絹は、少し息を整えて全員の様子を確認する。そして、また話はじめた。
「当然止めるで。
 敵は、統率の取れた騎士団で数も多いっちゅう情報や、でも本国のエリートの中には、うちらケルベロスの実力を過少に評価してるヤツらもおる。
 そこでや、うちらは幾つかの小部隊に別れてそれぞれ奇襲、そんで潜伏を繰り返して各個撃破していくで。敵を翻弄するんや。
 そんで最後には、指揮官の『狂紅のツグハ』を討ち取るか撤退させる。そうしたら、騎士団も撤退するやろう」
 絹の情況説明に納得のケルベロス達。続いて、詳細を求めた。
「まず場所は『八王子の東京焦土地帯』。これを頭に入れておいて欲しい。焦土っちゅうても全部が全部なーんも無くなってしもたわけや無いで。幹線道路はボロボロの状態やけど道であった事はすぐに分かるし、市街地は廃墟として残ってる。自然の地形はそのままあるわけや。
 駅とかビル、インフラ設備も残ってる。まあ、ボロボロやねんけどな。そんなわけで、当然一般人はおらへんから、そこは安心してええで」
 絹の言葉に、寂しいような表情をする者、ほっとした表情をする者とそれは様々である。絹はそんなケルベロスの様子を見ながら、視線を情報のあるタブレット端末に移す。
「敵の規模やねんけど、蒼玉衛士団督戦兵が50体、蒼玉衛士団一般兵が250体で、300体程度って言われてる。そんで、督戦兵1体が一般兵5体を率いる『小隊』が50あると考えてもろてええ。基本的に動くのはこの小隊規模になるわけやな。
 それらを撃破していって欲しいわけやけど、当然増援もその小隊規模になるわけやから、そこは注意せなあかん。戦場の見極めが結構大事になってくるな。
 作戦も色々と取れるやろ。小隊には目もくれず本体を狙ったり、その小隊を次々に撃破していったり、後は撹乱なんかも有効や。さっき言うた地形の特徴を把握すれば、そんな事もできるで」
 絹の言う通りではある。エインヘリアル達は地球の人間では無い。逆にケルベロス達は、例え廃墟となった八王子であったとしても、その設備などに関しては間違い無く敵よりも明るい為だ。
 絹は全員が把握したと思った時に、敵に関しての説明を行う。
「まず、一般兵やねんけど、そんなに強くない。で、小隊を率いてる督戦兵のエインヘリアルは、罪人エインヘリアルくらいの強さやろう。
 せやから一回の戦闘に関しては、全員をまともに相手すると、勝負は五分五分くらいやろうっていう情報や。
 督戦兵は傲慢で、面倒な事は全て一般兵に押し付ける傾向があるから、その辺をうまく利用してハメてもええ。そうしたらこっちの被害を最小限に防げて、また次の小隊を相手にできるっちゅう事やな。で、督戦兵を倒してしもたら、残りの一般兵は撤退しようとするから、その督戦兵だけを狙っていくのもアリや」
 様々な作戦を考える事が出来るだろう。目的は市街地に侵攻する蒼玉騎士団を迎撃、撃破し、指揮官の『狂紅のツグハ』を討ち取るか撤退させる事だ。敵を多く討ち取る事に越した事は無いだろう。
 絹は最後に、ええかな、と言って口を開いた。
「蒼玉騎士団はエインヘリアルの王子直属のエリートやけど、実は実戦の経験は少ないみたいでな、うまくやったら敵の戦力の全てを出させること無く攻略できるやろ。
 頭の使いどころや、頑張ってな。いつも通りご飯作って待ってるから、頼んだで!」


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
ウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)
空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)
黒住・舞彩(鶏竜拳士ドラゴニャン・e04871)
イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)
霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)
大紫・アゲハ(セラータファルファッラ・e61407)

■リプレイ

●八王子中心部
 ケルベロス達は焦土地域になった八王子中心部に潜伏していた。
「暫く動きが無いと思いきや、こんな風に仕掛けてくるとは。……思い通りになどさせるものか」
 霧山・和希(碧眼の渡鴉・e34973)は、手持ちの地図と、GPSを交互に確認しながら、そう呟いた。
「どうやら、GPSは使えないみたいですね。ですが、地形が変わるほど荒廃していないようですので、大丈夫でしょう」
 和希に気付いたウィッカ・アルマンダイン(魔導の探究者・e02707)が、一つの場所から近づいて言った。どうやらウィッカは、ある『仕掛け』を仕掛けて来た所のようだった。そして、少し視線を前に向ける。 彼女等の視線の先には、空を見上げている大紫・アゲハ(セラータファルファッラ・e61407)が居た。アゲハは、此方に気が付いた用で掌だけを向けた。そしてそのまま上空を見上げた状態で静止していると、その掌を握った。アゲハの視線の先には、翼を広げて目立たないように飛行する黒住・舞彩(鶏竜拳士ドラゴニャン・e04871)の姿があった。彼女はビルの間から間へと飛んでいた。
(「準備はOKという事ね。了解っと」)
 舞彩はアゲハに向けてまず人差し指を立てた。そして、視線をもう少し先へと向ける。そこには、地下道への入り口があった。駅の地下のような大きな地下動ではなさそうだが、その階段に向けてもう一本の指を立てた。
 イッパイアッテナ・ルドルフ(ドワーフの鎧装騎兵・e10770)は階段の影に隠れながら上空に向けて右手を握り、その後に左手を自らの胸を軽くドンと叩いた。そして、もう一度地下道を見て、先ほどウィッカの仕掛けていったものを確認して、今度は地下道の奥へと歩いていった。
 ドシュ……!!
 その時二箇所から、信号弾が打ち上げられた。これは味方同士で立てた作戦の一つだ。信号弾は狼煙のごとく、ケルベロスの来訪を告げているのだ。すると、中心部がざわつき始めたことに気が付く。
 作戦の時だ。
 空鳴・無月(宵星の蒼・e04245)はその信号弾を見ながら、最前線にいるフラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)を確認する。
 フラッタリーは風を計算に入れ、気配を殺して、前方を見ていた。すると彼女は手を無月に対して裏に向け人差し指と中指を水平に立てた。
 接敵の合図である。無月は同じように後ろに向けて同じ合図を素早く伝える。
「成る程これはー、優秀な方々のご様子ですわねぇー」
 大きいが荒れた道の中心部に、フラッタリーが縛霊手『廻之翅』を展開し、体には重武装を施し、敢えて大きな声で威圧しつつ前に出た。
「出たな、ケルベロスだ! 相手は一人。殺せ!」
 すると一人のエインヘリアルが、部下の5人に向けて指示を出す。
「これはー。苦戦をー、するかもしれませんねぇー」
 フラッタリーはそのまま、後方へと逃走するように、走り始めた。すると、エインヘリアル達は、自らの武器を出現させ、フラッタリーを追う。
 フラッタリーと、エインヘリアル達の距離は30メートル程であろうか。ケルベロスも早いが、当然エインヘリアル達の動きも早い。徐々にフラッタリーとの距離が詰まって行く。
「あーれぇー」
 フラッタリーはそう言いながら、一つの路地に入った。
「あっちだ!」
「逃がすか!」
 エインヘリアル達の声が聞こえるが、フラッタリーはそのまま更に奥地へと進み、すっと掌を上空に向けて広げ、振り下ろす。そして自らはそのまま、ビルとビルの間に入り込んで消えたのだった。
「おい! 何処へ行った!」
「探せ!」
 フラッタリーを見失ったエインヘリアル達は、路地裏をきょろきょろと見渡しながら叫ぶ。
 するとその時、ぼふっっと言う音と共に、なにやらガスが充満し始めた。
「何だこれは!」
「奇襲か!!」
 そんな声が聞こえたと思った時、路地裏に差し込んだ一つの光の先に、一人のケルベロスが居る事に気が付く。
「悪いが、この先は通すわけにはいかないな」
 妖精弓『Luk Husarii』を構えていたのは、カジミェシュ・タルノフスキー(機巧之翼・e17834)だった。彼は矢の先をエインヘリアル達に向けたまま、消えたのだった。

●ケルベロスと督戦兵
「っち……! アイツら、何をやっている!」
 一人ケルベロスの襲撃に遭った督戦兵は、そう舌打ちをしながら、巨大な剣を振り回していた。既に大きな傷が数箇所出来ている。
 その攻撃をイッパイアッテナが受け止めて吹き飛ばされるが、また立ち上がる。イッパイアッテナにはアゲハが施していた守護星座の力で、相手の攻撃の効果を最小限に食い止めていた。
「ふふ……。大丈夫。アゲハに任せて」
 そのダメージを見たアゲハが、すかさず快楽エネルギーをイッパイアッテナに施す。
「有難う御座います、アゲハさん」
 ケルベロス達は最初、フラッタリーとカジミェシュを欠く中、即効で攻め落とすべく敵の攻撃に構わずに攻撃を繰り出していた。
『足元……注意……。……もう遅いけど』
 無月が督戦兵の足元から、無数の槍を発生させ、舞彩が追撃の如く鶏ファミリアの『メイ』を飛ばす。
「こ……の……!!」
 舞彩の放った『メイ』の攻撃で、足に突き刺さる槍の傷みを広げるのだろう。『メイ』の爪や嘴の攻撃を明らかに嫌がる督戦兵。
 無論、ケルベロス達も無傷ではいられなかった。その相手の攻撃の重さは、流石に一部隊を率いるだけの事はあった。
 既に前で仲間を護るイッパイアッテナのミミック『ザラキ』の姿は消えていた。
 それでも、ケルベロス達の士気は落ちなかった。
 この敵を如何に素早く打ち倒すかによって、勝敗が決まるからだ。
 和希がオウガメタル『イクス』を拳に集め、鋼と化させる。
 どうっ!!
 その和希の拳が、督戦兵の鳩尾にめり込んで行く。最初は和希の攻撃は当たる事が難しい状態だった。しかし、後衛からの足止め一点狙いの攻撃を受け、漸く和希の攻撃がまともにヒットしたのだ。
「ふ……ざ……けろぉ!!」
 こめかみに血管を浮き上がらせ、怒りの形相で和希を睨む督戦兵。そして力任せに巨大な剣を思いっきりぶんと振り回した。
 その剣速に衰えはなく、まともに喰らってしまえば、大きなダメージは避けられない。
 だが其処に、一つの影が飛び込んでくる。
 ガギギ!!
 激しく火花を散らし、金属通しが啼く音が大きな道に響き渡る。
「待たせたな……」
 そう言ったのは、『タイラントシールド』で督戦兵の巨大な剣を受け止めきったカジミェシュだった。
「汝rAノ武威、心乃裡。吾ガ業炎ニtE明ラカNIセン!!!」
 ゴウッ!!!
 そして巨大な光弾が、和希の目の前の督戦兵に襲い掛かった。その光を放ったのは金色の瞳を輝かせたフラッタリーだった。彼女は表情から狂気を浮かべ、隠そうともしない。
 ケルベロスが8人揃った事で、実力的にはこれで五分になった。いや、それでもそれまでに与えていた敵を封じ込める効果の分、ケルベロスにやや分があった。
 しかしその時、ウィッカが声を発した。
「一人……戻ってきました」
 それは、督戦隊のエインヘリアルを見捨てる事が、後々に自らの不利となる事に気が付いた一般兵のエインヘリアルの一人だろう。
「まだ一人だけど、どんどんと戻ってくるかもしれませんね……。『仕掛け』が、うまく働いてくれると良いのですが……」
 ウィッカはそう言うと、向かってきた一般兵に足を向け、両手に雷を発生させ始めた。
「私が抑えます。……そして、東京の人たちの殺戮など、私たちが絶対に止めて見せます!」
 ウィッカはゆっくりと両手を組み、その一般兵に向けて突き出した。
『雷よ!我が前に立ちふさがる者どもを束縛せよ!カラミティスパーク!』

●戦いの行方
 ケルベロス達と督戦兵の戦いは、長期戦となってしまっていた。早く仕留め、次の敵へと移りたいが、徐々に一人、また一人と一般兵が帰ってきていたためだ。
 一般兵の強さはそれ程ではないが、ウィッカ一人で動きを止めておくのは限界があった。ウィッカの前衛にイッパイアッテナが立ち塞がり、回復にカジミェシュのボクスドラゴン『ボハテル』がそれを補う。すると、何とかバランスを取る事は出来たが、如何せん督戦兵を倒しきるには時間がかかってしまう。
 そしてカジミェシュが今、督戦兵の剣が懐に深く突き刺さる。
「それが、君の渾身の業なのか?」
 だが、カジミェシュはその懐を確認しようともせず、真直ぐに督戦兵を見定める。
「はぁっ……はぁっ……」
 督戦兵はケルベロス達の攻撃で、自らの攻撃の威力がかなり弱まっている事が分かっているのだろう。息を荒く吐き、憎悪の視線をカジミェシュに突き刺した。
『サa沙、深淵ヲ垣間見ン――吾、三明通し。汝、六輪廻る。然らば千葉蓮華空け放たれり』
 フラッタリーがカジミェシュの後頭部と頸椎の間に三本の指を突き刺す。勿論打撃ではない。彼女のグラビティ・チェインをカジミェシュに与える事による回復技である。そしてその力は、カジミェシュに更なる硬化の力を施すのだ。
「皆さん。こっちはもう大丈夫です」
 その時、ウィッカがそう声を発した。見ると、一般兵の動きがかなり鈍っている事が分かる。もし束になって戻ってきていたとしたら、更なる苦戦は必至だっただろう。だが、一般兵はバラバラであった為、対処することが出来たのである。ひょっとすると、ケルベロス達が仕込んだ『仕掛け』に引っかかっていた一般兵もいたかもしれない。
「じゃあ、一気に行こうか」
 無月はそう言って、ゲシュタルトグレイブ『星天鎗アザヤ』を構えた。その重鎗をくるりと大きく振り回し、暗く、明るい幻想的な光を放ちながら無月は駆けた。
「無月さん。続きます!」
 すると、一般兵の前に立っていたイッパイアッテナが、彼女の反対方向から同じように駆けた。それは丁度挟撃のような形となり、督戦兵の判断を鈍らせた。
 ケルベロス達には、数々の支援の力が施されていた。イッパイアッテナはそれらの力を感じ取りながら、懐に飛び込み、そのバトルオーラ『救護オーラ』を纏わせた拳で、督戦兵の胸部を打ち付ける。
 バゴッ!!
 鈍い音と共に、督戦兵の鎧が砕ける。そしてその鎧が砕けた部分に、無月の稲妻を帯びた刃が突き刺さった。
「……ぐぉ!」
 督戦兵はくぐもった声をあげ、そのまま少し後ずさろうとする。
「無理ね。もう、あなたは動けない。それに、殺戮も虐殺も、させないわよ」
 舞彩は、左腕の地獄から生成した『竜殺しの大剣』を呼び出し、闘気を纏わせる。そしてそれを督戦兵に打ち付けた。
『魔人降臨、ドラゴンスレイヤー。ウェポン、オーバーロード。我、竜牙連斬!』
 バリバリバリバリ!!
 舞彩の放った闘気と雷光がほとばしり、大きなダメージと共に督戦兵の鎧を完全に破壊した。
「あっは♪ アゲハとあっそびましょ?」
 そして督戦兵の目の前にアゲハが現れ、光の蝶を呼び出した。
『アゲハが忘れさせてあげるね?』
 その蝶がひらひらと督戦兵の頭を回ると、ぴたりと止まる。すると督戦兵は急に惚けたような表情で、あらぬ方向を見つめたのだ。
「せめてもの慈悲……か? まあ、どうでも良い……狩るだけだ」
 和希はその督戦兵に冷たい視線を投げつつ、バスターライフル『ブラックバード』と『アナイアレイター』を両手で構え、グラビティをその砲身に集めた。
 和希の砲身から放たれたのは幾つもの異形の魔法陣。そして、二つのバスターライフルの引き金を引いた。
 勢い良く放たれた魔法光線が幾つも放たれた魔法陣を通過する。すると、その光は拡散し、また、魔方陣を通り抜ける。
 それが一瞬にして幾度も繰り返され、加速する。
『墜ちろ……ッ!』
 ドウッ!!
 そして最後に、集束した魔法光が一度に督戦兵に突き刺ささり、貫いたのだった。

●次の戦場へと
「皆、怪我の状態はどう?」
 一小隊を倒しきったケルベロス達は、まず傷を癒した。舞彩が言うように、全てがうまくは行かなかったため、次の戦闘に耐え得るかを、確認しておきたかった。
「そうですね。それぞれがある程度の傷を負っている……といったところでしょうか」
 イッパイアッテナの隣に、ザラキの姿はない。恐らく一番ダメージを受けているだろう。それは同じく前で盾となっていたカジミェシュにも当てはまるが、サーヴァントを持たない彼のほうが、まだ良いといった所だ。
「無辜の民を守る事こそが我らの責務。ツグハの首は他に任せれば良い。今は、一つでも多くの小隊を瓦解させねばならん」
 カジミェシュはそれだけ言い、他の判断は任せるといった仕草をする。
「そうですね。ある程度敵を倒すという事に変わりは無いですが、同時に無理も出来ないでしょう」
 和希が冷静にそう判断をすると、アゲハが頷いた。
「経験の少ない子と遊ぶのもいいわねぇ?」
「さっきの一般兵くらいなら、相手にはできそう」
 無月はアゲハの言葉の意味を読み取り、それだけ言った。
「ではー。そうしますかー」
 フラッタリーも同意する。ケルベロス達の次の動きは決まったようだった。一体でも多くのエインヘリアルを倒し、他を楽にさせる。潜伏などを繰り返し、数を減らすのだ。
 ただ、無理はしない程度に。
「そうね、油断せずにいきましょうか」
「大丈夫でしょう。明らかに督戦兵には油断がありましたし」
 舞彩とウィッカの声と共に、ケルベロス達はまた市街地へと動き始めた。
 耳を澄ませば他の地点から、剣戟や爆音が聞えてくる。それぞれに、出来る事を行なうのだ。

 こうして、また戦場へと向かい、幾度か敵を屠った後、敵が逃走し始めるのを確認することが出来た。
 すれ違ったケルベロスの一人に確認すると、どうやらツグハが倒されたという事だった。
 聞えてくる歓声が、ケルベロス達を包み込むと、彼らはその場に座り込んだ。
 どちらかと言うと安堵の色が濃いケルベロス達だったが、同時に達成感もじわじわと沸いてきた。
 見上げる空が、自らが無事である事を肯定する。

 ケルベロス達が顔を合わせると、無言のまま自然と笑みがこぼれた。
 それは、信号弾の狼煙から32分後のことだった。

作者:沙羅衝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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