磨羯宮決戦~血塗れの蒼玉

作者:寅杜柳

●磨羯宮出現
 皆、緊急事態だ! 東京焦土地帯にエインヘリアルの要塞、磨羯宮『ブレイザブリク』が出現した」
 突然の雨河・知香(白熊ヘリオライダー・en0259)からの連絡に、集まったケルベロス達に緊張が走る。
「そして要塞は第九王子サフィーロ配下の蒼玉騎士団が守護しており、その尖兵が東京庄戸地帯を静圧、さらには周囲の市街地へと略奪を仕掛けようと出陣している。しかもこの部隊は殺戮を好む『蒼狂紅のツグハ』がに率いられているから、迎撃しなければ市街地で殺戮と略奪が行われてしまう」
 それだけはなんとしてでも阻止しなくてはならない、と知香は言う。
「相手は統率の取れた騎士団で数も多い。だが本国のエリートだからかケルベロスの実力を過少評価している。そこが狙い目だ」
 彼女の告げた作戦は幾つかの小部隊に別れ奇襲や伏撃を繰り返す等で敵を翻弄、指揮官である『狂紅のツグハ』を討ち取るか撤退させて騎士団を撤退させる作戦。
「敵数が多く難しい作戦になるだろうが、どうか力を貸してほしい」
 そして知香は資料を広げ、戦場についての説明を始める。
「迎撃するのは八王子の東京焦土地帯だ。周辺に一般人はいないから遠慮なく戦えるのは幸いだ」
 地形については自然地形、市街地の廃墟などあるから上手く使えば有利に戦えるかもしれないと知香が付け加える。
「そして敵の構成だが、蒼玉衛士団督戦兵が50体、一般兵が250体の合計300体程度になる。督戦兵一体が五体の一般兵を率いる小隊が50あると考えるのが分かりやすいかな。異変や敵襲に対して小隊単位で偵察や撃退を行うようで、戦闘時には別の小隊が増援に来る可能性が高い。ある程度本隊から引き離して増援が来る前に決着をつけるか撤退するかがいいだろう」
 一方で戦闘を行わず撹乱して多くの小隊を引き離す事ができれば本隊への強襲も可能かもしれないとヘリオライダーは付け加える。
「そして蒼玉騎士団の兵の能力については……それほど高くはない。武器についてはルーンアックスやゾディアックソードのグラビティなどを使って連携して攻撃してくるんだが、ケルベロス達なら小隊一つ相手にしても全力で戦えば互角に戦える。ただ、他の小隊の増援があるから戦闘後は撤退するしかないだろう。あと、督戦兵はエリートだからか傲慢で面倒ごとを配下に押し付ける傾向があるからそれを利用出来ればより多くの戦果が見込めるかもしれない」
 さらに知香は小隊指揮官である督戦兵を撃破できれば残りの一般兵は撤退しようとするからそこを狙うのも悪くないかもしれないと補足した。
「蒼玉騎士団はエインヘリアルの王子直属のエリートで、実戦の経験は少ないようだ。経験豊富な皆なら、その経験の浅さを突いて一泡吹かせてやることもできると思う」
 虐殺阻止の為によろしく頼む、信頼に満ちた声で知香は説明を締め括った。


参加者
七星・さくら(しあわせのいろ・e04235)
スズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079)
ヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)
マヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)
ルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)
一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)
朧・遊鬼(火車・e36891)
狼炎・ジグ(恨み喰らう者・e83604)

■リプレイ

●蒼玉の騎士達
 八王子の中心近くでケルベロス達を察知した蒼玉騎士団は、半数を中心部の索敵に向かわせ、二十程の小隊が指揮官である『蒼狂紅のツグハ』の周囲を守っていた。
 そんな小隊の一つに瑠璃色の光沢をもつ硝子の百足が突然出現し、喰らいついた。
 周囲をよく見れば闇を纏う赤い魔女、さらに季節外れの桜の花弁がふわりと舞い、不可解に思った刹那雷の矢が雨のように降り注ぐと、狐火が追撃するよう襲い掛かる。
 だがそれらによる傷は浅い。
「嘘!? 強い?」
「参ったわ、ね。強敵だわ……」
 声のした側を見れば海色の医術服を纏った白黒斑の翼の女、そして銀狐の少女と白龍の少年と黒髪の女がいる。
「強い敵に当たるなんて、運が無いですね……」
 銀狐の少女が悔しげに言うが、
「たかだかこの程度の数で……僕達の相手が出来ると思ったのか?」
 白龍の少年のよく通る声。殆ど傷になってもいないのにそれも理解できない若造、そんな風に騎士達は捉える。
 そう、只の若造。けれど、
「蒼玉騎士団なんて名乗ってる割に、大した事はないんだな!」
 その言葉は流石に癇に障ったようだ。白龍の少年へと殺意が向けられた瞬間、
「一旦逃げて、作戦を立て直しです!」
 悪い空気を断ち切るかのように駆け出す女達に白龍の少年は微妙に不服そう、
「大丈夫、おねーさんについて来れば逃げられるから!」
 だが、斑翼の女が涙目で頼りなさげに促すと渋々と言った体で銀狐を追いかける。
 逃す道理もない。すぐに指揮官からの追撃命令が出され、その小隊は追跡に向かった。

 追跡する小隊と付かず離れず微妙な距離を取りつつ、猟犬は廃墟の市街地を走る。兵士達の攻撃は逃げに専念する彼らを上手く捉えることもできず、当たってもすぐさま治療されてしまう。
「いつまで追ってくるんですか! というかあの偉そうな奴まで追ってくるなんて……」
 狐の少女がそんな悪態を吐くが、赤い羽根や足跡等が所々に残っている。それを追いかけ蒼玉騎士団は、やがてとある廃ビルが並ぶ地へと辿り着いた。
 出入口はここだけ。ならばと督戦兵はケルベロスと同数の一般兵四人を捜索に向かわせ、自身は一人を護衛に待つ。
 この時点でケルベロスの策に嵌っているなどと、督戦兵は慢心故に気付いていなかった。

●猟犬の奇襲
 そのビルの上階窓から四人の猟犬が外の様子を窺っていた。
「おお、なんか……コバエホイホイに群がるコバエみてぇな数だな……」
 そう呟く竜人は狼炎・ジグ(恨み喰らう者・e83604)。降下時に見えた二千近くの敵、その一部と考えればそんな嫌悪感を抱いてしまう。
「あんだけいるのにこれだけしか出さねえとか、捨て駒か?」
「捨て駒か……あり得なくはないな」
 ジグの言葉に朧・遊鬼(火車・e36891)は静かに思案する。
(「あんなにいたはずのザルバルクはどうしたんだろう?」)
 一方、ムームーを纏うマヒナ・マオリ(カミサマガタリ・e26402)は、焦土と化した地に心を痛めながらも、元々この地に溢れていた死神の事が引っ掛かっていた。
「とにかく、まずは連中を退ける。各々方、油断めされるな」
 赤竜のヴァルカン・ソル(龍侠・e22558)が真剣な表情で云う。彼が言うまでもなく、全員の気合は十分。それでも口にしてしまうのは、囮の仲間の無事が気になる故。
「さっさと叩いて駆除するとするか!」
 獰猛な笑みを浮かべ、ジグが真っ先に階下へと駆け出す。
(「死神も気になるけど…今はやるべきことに集中しないと」)
 この地はマヒナの友人の故郷でもある。この地を再び戦場にされるのはきっと辛いだろう。
 そんな彼の為に早く決着をつけようと思考を切り替え、マヒナも立ち上がるとふるふる震えるシャーマンズゴースト、アロアロと仲間二人と共に階下へ向かった。

 上階への痕跡を辿り、斧を持つ一般兵四人は階段を登っていた。散らばって各階を探るには相手数が多く、念のために索敵している。
 後方に控える督戦兵達への愚痴を零しながら虱潰しに兵士達は探索を続け、四階の部屋にて目標を発見。
「とうとう観念したか」
 部屋に入ってきた兵士の言葉に振り返る白黒斑の翼のオラトリオは七星・さくら(しあわせのいろ・e04235)。だがその桜の瞳は自信に満ち、エインヘリアル達を見据えている。
「おねーさん、ちょっと本気出しちゃうわよ? ……降り注げ、桜雷雨!」
 季節外れの桜の花弁と共に雷の矢が一般兵達を撃ち抜き、同時に別方向から狐火が襲い掛かる。いずれも先程の奇襲とは比べ物にならない威力だ。
「見た目で油断しちゃ駄目ですよ?」
 狐耳の少女、スズナ・スエヒロ(ぎんいろきつねみこ・e09079)が悪戯っぽく告げ、ようやく兵士達は嵌められた事を悟る。その様子に赤い魔女、ルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)も表情には出ないが、策の成功を確信。
 慌てて部屋外で状態を立て直そうとする兵士だが、
「ナル、力を貸して」
 上階から降りて来た四人が退路を塞ぎ、マヒナの召喚した静かなさざ波が兵士の足を取れば、さらに南国風のシャーマンズゴーストが召喚した原初の炎が動きの鈍った兵士を炎で包み込む。同時、逆方向から白龍の少年、一之瀬・白(闘龍鍛拳・e31651)が兵士達に白尾を叩きつけるよう薙ぎ払う。
 それにあわせ、噴出する螺旋力で加速したジグが消耗の大きい兵士の胴の鎧にパイルバンカーをねじ込む。慌てて治療する兵士、しかし、
「これで決める、いくぞさくら!」
「オッケー!出し惜しみなしで行くわよ!」
 ヴァルカンとさくらが兵士越しに声を掛け合い、雷弾の嵐と地獄の炎を纏う二振りの刃を兵士に叩き込む。比翼連理の夫婦が繰り出す舞踏のように鮮やかな雷と炎の嵐に哀れな兵士は耐え切れず、緋色の桜を咲かせる礎となり崩れ落ちた。
「くっ……舐めるな!」
 ここでようやく一人が反撃に出て、輝く斧を赤竜に叩きつけようとするが、回り込んだ白が代わりに受け止める。その負傷を即座にナノナノのルーナがバリアを展開し治療。その主である遊鬼は鎖で床に陣を描き、その加護により前衛の守りを固めている。
「……長蛇が如く、梢が如く……石を銀を、問わずに喰らえ……」
 赤い魔女の胸の宝石が輝けば、瑠璃色の硝子百足が召喚される。本気で召喚した百足達は兵士達の足に巻きつき締め上げる。その百足を払い除け、ジグへと斧を叩きつけようとする兵士達の攻撃はスズナとサイに其々防がれる。スズナは即座に檳榔子黒色の杖に意識を集中、廃墟を構成する無機物と同調し、精神を安定させ傷を癒やし、サイの傷もアロアロの祈りにより半分は塞がれる。
(「ここを抜けられたらすぐ市街地、絶対に食い止めないといけません」)
 銀狐の少女はぎゅっと杖を握り、守りの為の意志を強くする。そんな主を慮ってか、スズナが連れた古い木箱型のミミック、サイが偽物の前衛をばら撒きその輝きは兵士達を惑わせる。その惑わしに乗じ白のビハインド、百火がその手の翠鎖を兵士の足に絡みつかせて動きを縛れば連携した白が鋼の鬼と化したオウガメタルの拳を、遊鬼が竜を象った稲妻を解き放つ。電撃の直後、赤竜が双刀に地獄の炎を纏わせ鋭く交差させるように叩きつけると、ジグの降魔の力を宿す拳がエインヘリアルを殴り飛ばし、その生命力を奪い尽くした。
「なんだ、やっぱり雑魚か。そんな実力でよく番犬の尻尾なんか踏もうとしたよな」
 根性だけは逆に尊敬するぜ! と挑発する彼に他の兵士はその刃を向ける。
 だが、ここで階下から二人の兵士が現れる。督戦兵とその護衛――戦闘音に気付き上がってきたようだ。分断し殲滅できるのが最善だったのだろうが、得たリードは大きい。
「捨て駒だったのか、そうでなければ自分達だけでやれると言う慢心か……だったら侮られたものだな」
「舐めるな人間風情が。この程度枷にもならぬわ」
 遊鬼の言葉に督戦兵は傲慢に返す。
「へっ。ぎゃんぎゃんよく吠える虫どもだな。叩き潰して黙らせるか」
 荒っぽい言葉でジグが挑発するが、督戦兵は鼻で笑う。既に兵力が減らされているのにこの自信、余程力量があるのだろう。
 さくらと遊鬼が銀の粒子を自身の周囲と後衛に分担し散布する。そして、
「頑張ったら、あとでご褒美あげるから、ね?」
 さくらがヴァルカンの耳元で囁き、赤竜が一瞬固まり、直後威圧感が増した。
「……エインヘリアル共、今日の私は一味違うぞ」
 最愛の妻の言葉、それは夫を奮い立たせるもの。
 勝利を掴む為、猟犬達は戦いを再開する。

●援軍前に
 そして数合、グラビティの遣り取りが続く。
 指揮官が合流した兵士達は状態を立て直し、互角に戦っている。
 暴風を伴うジグの強烈な廻し蹴り、だが精度が甘いからか二体にしか当たらない。彼に振るわれる反撃の斧をスズナが受け止め、すかさず周囲の無機物と同調、傷を癒やす。代わりに魔女の瑠璃色硝子の百足が放たれ兵士達の動きを縛る。
「そういえば貴方でしたっけ」
「何がだ?」
 ごく自然に話しかけるスズナに兵士がつい返す。
「『いっつも面倒押し付けやがって、ホントは足遅ぇんじゃねえのか?』」
 銀狐の言葉に、兵士は硬直。
「あとそちらの方が……『それ隠したいだけだったらウケる』でしたっけ?」
 さらにスズナが続ける。彼女の銀の狐耳は、追跡する一般兵の愚痴をしっかりと捉えていた。
「後ろの人にですよねきっと。そう言われてましたよー」
 スズナからの流れ弾を受けた兵士は跳躍、後方から感じる殺意を断ち切るよう斧を振り下ろすが、白龍の少年が庇う。さらに督戦兵は後方より剣に宿す山羊座のオーラを解き放ち、前衛の猟犬を精確に包みこむ。
 不仲な上司に面倒事を押し付けられた兵士達、気の毒に思う気持ちもマヒナにはあるが、
「ごめんね、ワタシ達にも譲れないものがあるから……」
 それとこれとは話は別。無機物と同調し精神を安定させたマヒナの癒しの風が前衛達の負傷を癒やす。
 攻撃重視の相手の猛攻は厳しい。僅かにでも回復を緩めれば崩されるだろうが、ルーナとマヒナとアロアロ、そしてスズナとが連携して回復に専念している為、崩れない。
 一方、騎士達は護衛以外攻撃一辺倒。時折斧のルーンにより治療するが、督戦兵合流前に負ったダメージを回復しきれていない。
 ルベウスの背後に輝く黒き太陽が兵士達を照らし、黒光がその足を鈍らせると、
「さぁ、俺が鬼だ。精々綺麗に凍りついてくれ」
 連携した遊鬼の周囲に複数の鬼火が召喚、エルフの青年が駆け出すと共にその足に纏わりつく。護衛に向け放たれた蹴りは手甲で防がれるが、浸透するよう広がる青の鬼火により芯から熱を奪い、凍てつく感覚にたまらず兵士は遊鬼を弾き飛ばす。その入れ替わりにヴァルカンが雷の霊力を纏う刀で神速の一撃を突き込んだ。
 そんな頼れる夫の姿を、さくらは温かい気持ちで見つめ、負けじと時空凍結弾を命中させる。
「体をバラバラにされる痛みと恐怖を知ってるやつはいるか?」
 連続攻撃を受け、オーラを溜め治療する兵士にジグが問いかける。あるわけないだろう、返そうとする兵士の言葉を待たず、
「あー、答えは聞いてねぇ。どちらにしても、バラバラになってあの世に行ってもらうんだからなぁ!」
 グラビティを放つ。その業はあるエインヘリアルへの恨みを具現化したもの。生きながらに刻まれた恨みは、怨敵の同族の体に引き裂かれるような苦痛を与え、呪縛を増幅。さらに、
「百火、動きを止めろ!」
 主の言葉に従い、百火が両腕に纏う翠鎖で兵士を地面に拘束。同時、城が手刀を構え魂魄を戦斧の形に収束させて拘束された兵士へと肉薄、
「噛み砕け、咬龍の牙!」
 その剥き出しの頸に手刀を振り下ろし、頭を落とした。
 これで配下二人に督戦兵。
 遊鬼の氷鏡の欠片からの稲妻が督戦兵を直撃、その動きを鈍らせるれば、さくらの轟竜砲が続き命中。督戦兵は強力だったが、オウガ粒子により活性化された感覚がその技量を上回る形で発揮されている。
 さらにヴァルカンの炎弾が動きを鈍らせた兵士に命中、ルベウスの呪力を纏う角銭を連ねた鎖が督戦兵に絡みつく。
 だが、ここで遊鬼が外を見遣り、
「……まずい、下から援軍が来ている」
 その言葉に猟犬達の緊張が高まる。業を煮やしたからの増援かは分からないが、今合流されれば一気に不利になる。合流までに何とか督戦兵だけでも討たねばならないだろう。
「雑魚に構ってる時間は無い、道を開けろ!」
 リングから具現化した光剣の一閃が兵士を斬り裂くが、白の攻撃は全て接近戦用。後衛の督戦兵には配下を全滅させねば届かない。
 時間稼ぎに督戦兵が自信を治療しようとする。だが、その動きが電撃の痺れにより停止させられる。
 ここが好機。
 ヴァルカンが双刀を構え督戦兵を狙う。
 赤竜を止めようと二人の兵士が迫るが、ヴァルカンは退かない。不安にも思わない。なぜなら周囲に仲間がいて、背を任せるのは最も信ずる射手なのだから。
 片方の一閃は空を切った。白に与えられた重圧によりその一撃に狂いが生じていたのだ。もう一人の兵士の一撃は命中、だがマヒナとスズナが即座に連携し、彼と霊的に接続する事で負傷を一気に癒す。
 動きを止めた督戦兵にさくらの砲弾が命中、さらに態勢を整えたヴァルカンが二振りの刃を振るう。その太刀筋の先にいた督戦兵は空間ごと斬り裂かれ、上半身が下半身からずり落ちてしまう。
「結局、一人じゃ勝てません」
 援軍到着を目前に倒れた督戦兵に、スズナが呟いた。

●血は流されず
 合流ギリギリの所で督戦兵を撃破したケルベロス達は連戦を避ける為、翼持つ者が持たぬ者を抱えて窓から飛び出す。即座に増援部隊が追いかけるが、さくらの雷弾の嵐、ジグとヴァルカンの地獄の炎弾が叩きこまれその隙に猟犬達は走り出す。周辺の地理はさくらが把握している為迷う可能性は低い。
 逃走する猟犬達に追撃が飛んでくるが、真っ向から戦い続けるよりは消耗は抑えられる。
 マヒナとスズナの癒しの風で猟犬達を包めば問題ない程度。白とスズナには負傷も蓄積されているが、分断成功によりまだ戦える程度ではある。
 ルベウスが時折けしかける瑠璃色硝子の百足も小隊の足止めには役立っていた。
 そうして十分ほど追撃をいなすと、何かを察してエインヘリアル達が撤退を開始する。
「ツグハが討たれたのか?」
「……そのようだな」
 白龍の言葉に赤竜が返す。この急変はそれ以外には考え辛い。
「よし、これで雑魚でしかないゴミ共はいなくなったな」
 逃げ去る兵士達の姿を見てジグが言う。磨羯宮は残っているとはいえ、略奪は阻止されたのだ。
 スズナとマヒナも一安心し、息を吐く。
「撤退しよう」
 周囲をしっかり見渡した遊鬼が提案する。長居するのも危険だろう。
 そうしてケルベロス達は、八王子より勝利の報せを持ち帰ったのであった。

作者:寅杜柳 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月21日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
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