アンジェリカにとっての誕生日とは、ずっと静かに過ごすものであった。
穏やかに歌い祈りごくごくささやかに。それで幸せであったし、なんと思ったこともなかった。
けれどもこの国に来て、誕生日とはそれだけではないと知った。
去年、いろんな人におめでとうといってもらえて、とても嬉しかったのだ。
……そして、
「誕生日に、友達と一緒に遊園地行くんだ!」
何の都合であったか。
町を歩いていたとき、 アンジェリカ・アンセム(オラトリオのパラディオン・en0268)はそんな言葉を聞いたのである。
「アトラクション色々あるから、コンプリートしなきゃ」
ついでにそんな声も聞えてきて、
成る程そういえば、遊園地はいったことがなかったな、と。
アンジェリカは思って視線を向けた。
同じ年ぐらいだろうか。道をいく女子たちはとても楽しそうで、
純粋に、いいな。と、アンジェリカは思ったのである。
そして……。
●
「遊園地?」
誰かの言葉に、アンジェリカは大きくうなずいた。
「そう。そう言えば私、行ったことがなかったので。……その」
言ってから、少し、言い淀む。それから照れたように、ほんの少し微笑んだ。
「わがままかもしれませんが、そう。友達のように、共に遊園地を回ることができたなら、嬉しいな、と思うのです」
そう言って、アンジェリカは一枚のパンフレットを示した。
遊園地のパンフレットであった。
「それで、どこがいいかといろいろ探してきたのですが、ここはいかがでしょう」
どうやら海際の遊園地である。ごくごくありふれた遊園地で、一部ヨーロッパ風の建物も建てられており、そこを散策するだけでも充分楽しそうであった。
食べ物の持ち込みも可能で、ちょっとした休憩スペースも多く、のんびり休むこともできるし、
勿論、遊園地ではお決まりのジェットコースターやお化けやしきなんかも完備している。急流すべりは割と本格的らしいし、この時期だと水を使った海賊ショーや、ミュージカルなんかもあるらしい。どのアトラクションも楽しそうだ。
お土産物もいろいろある。海近くということもあって、イルカのマスコットが人気らしい。
また、漁港も近いので、市場のようにとれたての魚を打っていたり、そのままバーベキューや海鮮丼に使用したりする施設もあるそうだ。
「いろいろあって楽しいのですが……なんといっても、夜が楽しそうで」
夜はまた、イルミネーションで遊園地全部が彩られていて何とも美しい。かわいいキャラクターたちが踊るパレードに、そして海からは花火が上がるという。
「よろしければ、一緒に……。あ、勿論、一緒でなくてもかまいません。遊園地に、行きませんか?」
ね? と、アンジェリカは微笑んで、そう周囲の人たちに語りかける。
「目指せ、あとらくしょんこんぷりーと、です」
その声は、とても明るかった。
●
「遊園地って、すごく広いのですね……っ」
月はきょろきょろと周りを見回す。それから、
「アンジェリカさん、よろしければ、僕と一緒にあれに乗っていただけませんか?」
観覧車を指差した。
「ええ。喜んで。お好きなのですか?」
「はい。高いところから見下ろすの、楽しそうなのですよー」
アンジェリカも笑って頷くと、二人で一緒に観覧車へと乗り込んだ。
ゆっくり地上が遠ざかっていく。
観覧車は結構な大きさで、どんどん高くなっていく景色に、
「思った以上にすごいのです。遊園地の景色が全部見えるのですよ」
月は目を輝かせて覗き込む。アンジェリカも小さく頷いた。
「アンジェリカさんは、どの辺に興味ありますか? 僕は、あのコーヒーカップとか楽しそうだなって思うのですよ」
「そうですね。私は……あれはなんでしょうか?」
「広場かな? お花の咲く広場もすごく綺麗ですね。きぐるみさんがいっぱいいます!」
「まあ、なんと愛らしい! では……あれは?」
「あれですか? あれは……」
「ありがとうございます、楽しかったですー」
「いいえ、こちらこそ、とても楽しかったです」
観覧車から降りると、二人はついついお礼をいいあってまた笑って。
「あ、この後お好きなものごちそうさせてくださいです!」
「まあ。よろしいのですか? では、先ほど見えていた広場の近くに……」
行きましょう、って楽しそうに歩き出すのであった……。
●
クラリスは角カチューシャをつけ。ヨハンと顔を見合わす。
「ヨハンの角とお揃いみたいでしょ?」
「僕とお揃いみたいとは……何だか照れますね」
クラリスの言葉に嬉しそうな声が混じるヨハン。
そんな微笑ましくも楽しいやり取りもつかの間……、
「私、ずっと前から乗りたかったの……この大きなジェットコースターに!」
「成る程、これがジェットコースター……!」
きらきらした表情のクラリスに、ヨハンが思わず声を上げる。彼はまだ自分の運命に気づいてはいない。席に座ればまだ余裕の表情である。
「一人じゃちょっと怖いけど、二人でならと思って」
「安全バーにシートベルト?」
この辺から雲行きが怪しくなった。思わず呟いたヨハンにクラリスは気づかない。しかし何とか余裕の表情を保ったままのヨハン。何せ彼は有翼種であるからして……、
「? ごめん、ヨハンよく聞えな……まぁいいや、出発進行!」
そんなことを言っている間にも、無常なる列車は彼を旅立たせ……、
「いや飛行とは誰にも縛られず自由で何と言うか救われていないと駄目なのですこうも身体を固定され振り回されるのは違ぁあああ!!」
ゴウッ! とものすごい風を着る音と共に、急降下を開始したのであった。
ヨハンの声と合わせて、きゃああああ! とクラリスの声が響く。
同じような悲鳴のはずなのに、二人の声の色がまったく、違っていた。
「もうおしまい? なんて爽快なの!」
振り返ってみれば一瞬の旅であった。終着駅に辿り着けば、ご機嫌で立ち上がるクラリス。
「あれ……大丈夫?」
漸くクラリスは隣でぐったりしているヨハンの気づ来てを差し出すのであった。
「……お手をどうぞ? こんなヨハンは珍しいね」
「ええ。今日のあなたは、いつも以上に頼もしく見えますよ……」
なお、ライド写真は楽しそうにはしゃぐクラリスと、魂が飛んで行きそうな顔をしたヨハンが映っており、
「うぅ、有翼種の名に恥じる……」
「ふふ、いい思い出だよね、これも」
クラリスに上機嫌で購入されたという。
「せっかくですしパレードは空から見ませんか?」
「わ、嬉しい。空から見るパレード、忘れられない景色になりそう」
その後名誉挽回できたかどうかは、二人のみぞ知ることである……。
●
「今日は楽しみにしていた遊園地おでーと!」
「おお……」
リュシエンヌの言葉に、ウリルも感心したような声が漏れた。
「遊園地に来たらポップコーンを買わなくちゃなの!」
「へえ、味が何種類もあるんだね。どれにするの?」
テンション高いリュシエンヌ。旦那さまの手を引いて、お目当てのワゴンへと。
「この、可愛らしいバスケットを! ミルクティ味よ♪」
「嬉しそうだね、俺にも少しくれ」
「もちろん、どうぞ!」
仲良く二人、いただいて。次は何を使用かと、ウリルがいいかけたとき、
「ショーが始まる前にジェットコースターへ……ん?」
「ルル、きづきました! うりるさん……はい!」
キャラクターものの耳カチューシャをリュシエンヌは差し出した。
「遊園地でのますとはぶ!」
「そ、それは……」
リュシエンヌは満面の笑みである!
「……耳をつけるのは園内限定だからな」
あっさり負けるウリルであった。
「わあわあ、……可愛いっ。ほらほら、カメラ!」
「あ、写真撮る?」
「うんっ! ほっぺを寄せて、ポーズ!」
二人して、写真に納まる。写真に写ったウリルは割りとまんざらでもない顔をしていた。
いろんな所へ、たくさん遊んで。
「さすが人気のアトラクションは凄い列だ。何時間待ちだ、これ」
あちこち歩き回れば、自然と待ち時間は長くなる。けれど……、
「2人いっしょだから、待ってる時間もアトラクションね」
「ああ。待っている間も苦にはならない。……いい事を言うじゃないか、ルル」
のんびり並びながらも、おしゃべりが尽きることはなかった。
待ち時間を気にすることなく、笑顔全開のリュシエンヌに、ウリルも一緒に嬉しくなって微笑む。
「そう考えると、二人で歩む時間は壮大なテーマパークなのかもしれないね」
なんていうので。思わずリュシエンヌはウリルに抱きついた。
「んもぅ……うりるさんこそいい事言うのっ」
「はは。……一緒に遊園地へ行きたいと思っていたから、今日は楽しみにしてたんだ。本当に、楽しい」
「……っ、うん! ルルも楽しい! それにそれに、ルルもとっても楽しみにしてたのよ!」
リュシエンヌが抱きしめる手に力をこめると、そっとウリルもその背中に手を回した。
●
「ゆるゆる回っているけれど、それでも結構歩いたね」
「ほんと、だいぶ歩いたよなぁ」
ロストークがパンフレットを覗き込む。手にしていた砂糖がほんの少しこぼれるのを気にしながらチュロスを齧るっていると、隣のエリオットも同じように覗き込んで移動距離を目で追いかけた。キャラメルのかかったバニラアイスを、コーンからうっかり落とさぬようにスプーンでつついている。
そんな二人の隣で、んー。とエリヤは塩バニラソフトを口に入れた。
「おいしー。おやつ、おいしいね」
ゆるゆるっと幸せそうな笑顔に、エリオットの表情が思わず緩む。そしてあわててお兄ちゃんモードの顔を作るのであった。
「ソフトクリームも好きだし、カップの下にざらざらって溜まったコーンフレーク食べるのも好き」
「わかったわかった」
「それにねそれにね……あっ」
「ん?」
ふと声を上げるエリヤに、ロストークが覗き込む。
「カップの柄よく見たらちっちゃくイルカさんがいる。かわいい」
見て、と指し示すエリヤ。
「ん、ほんとだ、かわいいカップだね」
「でしょう? でしょう?」
「イルカ? ああ本当だ。可愛いもんだね。俺のにも紙とかに書いてねぇかな」
そうなると自分も気になるので。自分の紙を覗き込むエリオットと、
「他にもいないかな……」
更に自分のカップを覗き込むエリヤ。
その仕草がそっくりで、思わずロストークから笑みがこぼれた。
「ん?」
「いや……。そうだリョーシャ、さっきなにか撮っていたよね? どんな写真が撮れたんだい?」
二人に和んでた、とまでは口に出さずに、ロストークが話題をかえる。
「写真か。色々かな。花壇の広場で昼飯食ってた時とか……」
見るか? とエリオットは己のデジカメを示す。
「あ。見せて見せてー。それ、お昼ご飯の時のだ。他には写真、どんなの撮ったの?」
エリヤが横から覗き込むと、エリオットも頷く。
「これは……待機列に並ぶローシャ。遠目でもよく分かるよなぁ」
「なんでそんなところを……」
「んで、ローシャは何か撮ったのか?」
「えーっと、待機列に並ぶリョーシャとエーリャとか……」
「いや、なんでそんなところ撮るんだよ」
二人して同じタイミングで眠そうにしてたのでつい。と言うことらしかった。
「ああ。そうだ。同じと言えば……」
思い出したようにロストークは小さいデジカメを操る。
「ほら」
「あ。着ぐるみ見つけた時のもあるんだ。着ぐるみ、ついつい目で追っちゃうよね」
「おう。ついつい目で追うよな。……こう」
通りがかったきぐるみを、同じ顔で同じ仕草で目で追っているエリヤとエリオットの姿がそこにはあった。
なんとなく、何気ない仕草の写真が多いことに三人は気づいて、
「ね、次どこ行く?」
楽しげにエリヤが言う。ロストークがデジカメを仕舞いながら、
「どこにいこうか。ここから近いのは……ああ、そこの小径がお城への近道になっているみたいだよ」
「お城? あ、地図にもでっかく載っているあれだね。行ってみよう」
いうと、エリヤも笑って頷いた。
「じゃ、そこで三人で写真撮るか」
エリオットの言葉にロストークも微笑んで、
「ちゃんとしたっていうのかな、そういうの撮って貰おうか」
「……んっ」
エリアも嬉しそうに頷いた。記念写真なんて、ちょっと恥ずかしいけれども。
アイスを食べ終え、行こうかと立ち上がった三人の声は弾んでいた。
●
「遊園地って初めてだ。こんなに混んでるものなんだな」
夜鷹が目を丸くしていた。その顔をティアンはふんわりと覗き込む。
「何だ夜鷹初めてか。ティアンは2度目だ。先輩だ」
ティアンの言葉にギフトは軽く笑ってサメの被り物を示した。
「遊園地、来たってだけでワクワクするわ。遊園地っていったら、これを被るのが常識だぜ?」
更なる先輩面である。そして信じる二人。被り物を被って、大量のお菓子を抱えて。そして……、
「そうだ。花火を上げているのは海の方だって聞いたぞ」
花火を見上げながら、「なァ、どの乗り物が最高だった?」なんて、あれこれ今日の話をしていたとき、不意にティアンがそう声を上げた。
「ん? そうだな。近くに行けばもっとでっかい音するかな? 絶叫系って言うの? ああいうぐらい」
夜鷹は丁度砂糖をたっぷりかけたドーナッツを頬張りながら歩いているところであった。今日はお行儀とかいわれないので気分がいい。
「そうだな。ウォーターシュートは爽快だったし、やっぱスピード系だろ。花火から飛び降りられたら楽しそうなのにな」
ギフトも冗談めかして言う中で、ティアンがひとつ、
「もっとそっちまで行ってみないか」
そういった。パレードからは外れたこの周辺は人影がまばらだ。もっと海際までだって、走っていくことも出来るだろう。
「つまりは」
そしてなぜか今日の夕飯、ポップコーンをギフトに手渡した。
「誰が一番に涯に辿り着くか、勝負」
そのまま返事も待たずに走り出した。イルミネーションがきらきら輝いて足元を照らしていた。
「了解。ギフト。俺からのプレゼントだ。落とさないようにゆっくり来いよ!」
即座に夜鷹が反応する。半ば押し付けるようにギフトに食べかけのドーナッツを渡して走り出した。
「なんだ競争か? ズルいぜティアン! 抜け駆けすんな。ってかヨダカも待てってオイ。落ちたゾ!」
ギフトが声を上げるが、聞いちゃいない。全力で走っていく二人の背中をギフトはあわてて追いかける。そして、
「いちばん」
「本気だったんだけどな……。二番だ」
「あー。何だよコレ。こうしてやる!」
一着ティアン。二着夜鷹。
そんな二人の背後に、ギフトが転げる勢いで二人にダイブしてゴールした。
「ギフト、重い」
「んだよー。いいだろォ?」
「いい。……そして見ろ。花火、とびきり大きい」
ティアンと夜鷹に背負われたまま、ギフトが顔を上げる。
「すッげェ。空から降ってくるみてェ」
遮るものの何もない海沿い、視界いっぱいの花火。
「うん、綺麗だ。夏も終わるな……」
夜鷹が呟く。ティアンが天に向かってデジカメで写真を一枚、撮ると。
「花火と一緒に俺らも撮ろうぜ」
ギフトがいった。それでティアンが首をかしげて、
「待った。撮るなら三人だろ、ティアンも入れよ」
夜鷹にそんなことを言われた。
「……勿論」
上機嫌に、ティアンが耳を揺らす。
「よし、じゃァ、次の花火で撮るぜェ」
「ああ。もっと寄ろう。暑いけどその方が綺麗に花火が入るだろ」
「ん……」
次の花火が上がった、その瞬間、
「撮る」
「おっ」
「……少し右だった。もう一回」
自撮り故にうまくいかない。次だと意気込むティアンに、夜鷹とギフトも任せろ、と頷いた。
今日は遅くまで好きなだけ遊んでいられる日だから、まだまだいっぱい、花火を見てもいいしその後お菓子を食べてもいいのだ。
●
レストランのテラス席。
パレードを眼下に眺めながらの、華やかな夕食会。
「この夜と妹の日。そしてアンジェリカの生まれた日に。乾杯」
【九龍】の清士朗がそう音頭を取ると、
「アンジェリカ様お誕生日おめでとうございます!」
「アンセムさん、お誕生日おめでとうございます」
エルスが笑顔を向ける。志苑が礼儀正しく礼ををするので、アンジェリカも嬉しそうに笑って、丁寧にお辞儀を返した。
「お誕生日おめでとう! あとらくしょんこんぷりーと、できた?」
リリィが拍手と共に尋ねると、アンジェリカもはい、と明るい返事をする。今日一日、時に一緒に遊んだり、時に分かれたりして、色々皆過ごしていたのだ。
「お祝い、ありがとうございます。はい。なんとか。どれもこれも楽しくて……。皆さんは何が印象に残りましたか?」
「そうですね。やはり、以前より大変興味深かったのでお化け屋敷なるものに入れたことが何よりの……。中々凝っておりましたね」
言われて、志苑が少し考えた後に答える。うんうん。と、にこにこ笑いながらリリィが話を聞いていて、
「噂では本物も混ざっている事もあるとか。お会い出来たでしょうか」
「え!? 本物……??」
「ああ……」
「清士朗さん。なんでそんな顔……?」
「……そうだ、あの綿あめ売りのでかいクマさん、もふもふで抱き心地大変よかったね。綿あめも美味しかったの」
青い顔をするリリィにエルスが話を変えてスマホを示す。今美味しい料理を撮影したり、みんなを撮影することも忘れない。リリィもはっと、
「あ、そうそう。私はね、食べ歩きしてたの。ワンハンドスナックこんぷりーと、完了よ♪」
撮影したお菓子を示す。
「まあ、こんなに沢山……」
「うん。……あ、海鮮づくしは別腹です」
アンジェリカの感心したような言葉に、リリィはね♪ とエルスのほうを見ると、エルスもこくりと頷いた。
「勿論別腹……。この魚料理、とても美味しいです! どうやって作ったのかしら?」
今日のメニューは海鮮尽くし。魚を使った複雑な料理まで様様な料理がある。
「うーん、たぶんスパイスも使ったけど、うちでも作れるかな?」
真剣なエルスの言葉に、あ。とリリィは思い出したように声を上げる。そして清士朗のほうをちらり、と見ると、
「これお弁当に入ってると嬉しいと思うわ……師匠再現してください。ここのお料理も♪」
可愛く語尾を上げながらリリィはねだる。エルスが目を輝かせた。
「再現、か?」
「そうそう。味は……」
真剣な表情で説明していくリリィ。清士朗は即答は避けるが、頭の中で作り方を考えているようであった。
「清士朗さんは、お料理が上手なのですね」
「そうそう。玄人はだしの料理上手♪ なの」
「おだてても何も……ああ。料理が出るのか。これは頑張らねばな」
清士朗がそういうと、志苑はふふ、と微笑んだ。
「これは……責任重大ですね?」
「ああ。昼間皆とはぐれた時に匹敵する危機だ」
冗談めかして答えた清士朗に、志苑はあら、と聞き返す。
「……何かあったのですか?」
「ああ。空から探そうとして、翼飛行は危険だからご遠慮下さいと注意されてしまったのだ」
アンジェリカが瞬きをする。
「まあ。危ないことなんてするはずも無いのに……」
「ちょっとジェットコースターのレールの上を走ってみたいとは思ったがな」
なんていう清士朗に、皆で顔を見合わせて笑った。
「楽しかったのはアレだな。ヴィーグルで撃ちあいしたやつだ」
そんな会話に沿うように、清士朗が思い出す。水上で水上でランダムに動く乗り物に乗り、水鉄砲で撃ちあいをするアトラクションだ。
「あれは案外難しくて……」
「ああいうのは、躊躇わないほうが、強いです。清士朗様には勝てませんでしたが」
頬に手を当てるリリィに、エルスが指摘する。清士朗が肩をすくめた。
「だが、最後には連合軍にやられてしまった」
清士朗の言葉に、志苑とアンジェリカは顔を見合わせて笑った。
「不慮の出来事もありましたけれどこんな時もたまには良いものですね」
そうして食事が終わるころには、エルスは遊び疲れてうとうととし始めて。志苑は微笑む。
「遊園地に来たのは初めてなのですが、楽しかったです」
「ええ。それにとっても、美味しかった!」
リリィが嬉しそうに言って。清士朗もそっと微笑んだ。
「……アンジェは日本に来て、良かったと思うか?」
不意に。いわれた言葉にアンジェリカは瞬きをする。それから、
「勿論……私は、幸せです」
と、嬉しそうな笑みを向けた……。
作者:ふじもりみきや |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年9月9日
難度:易しい
参加:15人
結果:成功!
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