城ヶ島制圧戦~竜殺しの名を得よ

作者:あき缶

●城ヶ島強行調査報告
 ヘリポートに集まったケルベロスに、香久山・いかる(ウェアライダーのヘリオライダー・cn0042)はこう切り出した。
「こないだ、城ヶ島の強行調査があったのは知ってるやんな?」
 一様に頷きを返すケルベロスに、いかるは続ける。
「その結果、城ヶ島には『固定化された魔空回廊』があるってことが分かったんや」
 この魔空回廊を突破できれば、ドラゴン達の『ゲート』がどこにあるかを特定することが出来る。
 位置さえわかれば、調査次第ではケルベロス・ウォーで『ゲート』を破壊することすら可能だ。
「ゲート壊せたら、ドラゴンはもう地球に来れなくなるんや」
 ざわりと聴衆はざわめいた。
 つまり、城ヶ島の魔空回廊を確保できれば、ドラゴン勢力の急所を押さえたも同然なのだ。
「調査の結果、ドラゴン的には、魔空回廊の破壊は最終手段にしたいって思ってるぽいねん。城ヶ島制圧できたら、魔空回廊ゲット、ワンチャンあるで」
 いかるはニッと笑った。
「皆、ドラゴンぎゃふんと言わせるために、力貸してくれへんかな?」
 作戦に賛同したケルベロスに、いかるは詳細を説明する。
「今回の目的地は、城ヶ島公園や。仲間が作ってくれた橋の周りの砦から向かうんやで。経路は僕が予知したとおりに移動してくれれば大丈夫や」
 固定化された魔空回廊は、ドラゴンにとっても生命線である。必死の抵抗が予想される。魔空回廊奪取のためには、ドラゴン戦力を大きく削ぐ必要があるのだ。
「ドラゴンは強い。めっちゃ強い。せやけど、今回は必勝のつもりでお願いやで」
 いかるが予知した相対するドラゴンは、稲妻竜だという。目に痛いほどの黄色の体躯に、紫の翼……なかなか見た目が派手だ。
「主な攻撃手段は電撃ブレスや。ガンッガン麻痺させてきよる。妨害が得意な奴っぽいわ。肉弾戦も出来る奴でな、しっぽアタックもえげつないけど、爪でブッスーいかれるんが一番怖いな。一撃でかなり持っていかれるやろうから、回復のタイミングに気をつけてな」
 といかるは敵の情報を、関西人らしい表現で伝えてくる。
「負けたら、魔空回廊をゲットする作戦もパーになるかもしれへん。命がけで調査してきてくれた皆のためにも、がんばっていきましょ!」
 いかるはパンと手を打ち鳴らし、ケルベロス達を鼓舞した。


参加者
ロイ・リーィング(勁草之節・e00970)
エレ・ニーレンベルギア(漸う夢の如く・e01027)
早川・夏輝(お気楽トルーパー・e01092)
ピアディーナ・ポスポリア(ポスポリアキッド・e01919)
維天・乃恵美(奉雅駆の戦巫女・e02168)
炬・灼(ドラコニック侍・e04527)
忍乃・飛影丸(ダークブレイズ・e09881)
チューマ・ウチョマージ(荒野の鉄火・e11970)

■リプレイ

●THUNDERBOLT
 まばゆい星座の光を見て、雷竜はちろりと紫の瞳を流した。
 矮小な人間どもが八人、己に対峙していることに気づいた雷竜は、面倒そうに目を細め、そして『消えよ』と言わんばかりに紫電の息を吐きかける。
 地面に描いた守護星座、その力が少しでもドラゴンの麻痺の力に対抗できれば。と、ピアディーナ・ポスポリア(ポスポリアキッド・e01919)は祈る気持ちでドラゴンを見つめた。
「雷の守護を、此処に!」
 僅かだが、エレ・ニーレンベルギア(漸う夢の如く・e01027)の雷壁が仲間の体力を下支える。エレの狙いは回復ではなく、電撃による麻痺から人々を救うことだ。
「さぁ、ドラゴン退治の始まりよ!」
 アームドフォートを構え、早川・夏輝(お気楽トルーパー・e01092)が叫ぶ。
「不退転の覚悟で行きましょう! ……もちろん、生きて帰るつもりでねっ」
 弾幕のように弾丸がばらまかれる。
「ここで絶対に勝たないとね……」
 びりびりと体を走る痺れに、眉をひそめながらも、ロイ・リーィング(勁草之節・e00970)は覚悟を口にした。
 ロイがかざしたのはファミリアロッド。その杖をフェネックに変えて、ロイは小さな使役獣を巨大な竜にけしかけた。
「ソフス、邪魔してきて!」
 ちょろちょろとフェネックはドラゴンの前を駆けまわり、あぐと口を開けて、目に痛い黄色い鱗に噛み付いた。
 ぶんとドラゴンは身を震わせ、ソフスを跳ね除ける。
「キキィッ」
 てんてんと地面を転がって、ロイの元に戻ってきたフェネックはロッドに戻った。
 ピアディーナのライドキャリバー『タイムチェイサー』がガトリングを連射するも、かする程度だ。
 強者の威圧的な空気に冷や汗を垂らしながらも、不敵に維天・乃恵美(奉雅駆の戦巫女・e02168)は笑う。
「あたしは嫌いじゃないですよ、この緊張感♪」
 鉄火場の空気、竜退治の大一番。乃恵美は嬉しそうに肩を揺らした。
「英雄の介添人として……乗りましょう!」
 己の身に宿りし御業の巨腕がドラゴンの首を握りしめる。
 次の瞬間、銀に光る日本刀の刀身から這い上がった黒き影が、ドラゴンに絡みつく。
「そうとも。忌わしき竜どもに王手を掛ける絶好機でござるからな」
 そう呟く炬・灼(ドラコニック侍・e04527)の影鰐だ。
「Wasshoi!!」
 高々と跳ね上がった褐色の女がぐるんと空中でトンボを切り、ドラゴンの眉間めがけて足を突き出す。
 ダンと硬い鱗の反発によって跳ねた忍乃・飛影丸(ダークブレイズ・e09881)、ぐるぐると回転することで衝撃を逃し、地面に音もなく忍んで着いた。
「ドーモ、ドラゴニアサン。ダークブレイズです」
 声を低めて名乗り、飛影丸はニヤと歯を見せた。
「ドラゴンの固定魔空回廊……千載一遇とはまさにこの事、この星の未来のために負けられないな」
 エアシューズの力を借りて、チューマ・ウチョマージ(荒野の鉄火・e11970)は天へと舞い上がる。
 当たらなければ意味が無い――スナイパーを厚くした布陣。確かにほぼ攻撃はドラゴンに届いた。だが、そのどれもが、ドラゴンにとっては些細なものだった。決め手に欠ける……。
 ドラゴンはその程度か、と言わんばかりに目を閉じた。
 そして胸を膨らませ、嘲弄するがごとく雷撃のブレスを後衛達に噴きつける。息にまとわりつく紫電の群れ、その凄まじさに雷鳴すら響き渡る――。
 主人を守ろうとしたタイムチェイサーが、融けて消えた。

●NUMBNESS
「可能な限り、私達でコンディションは保たせる……、行こう!」
 サーヴァントの早々の戦線離脱を悲しんでいる暇はない。ピアディーナは満月のようなエネルギーをチューマに送る。
「でも、列で攻撃されると……っ、どこから手を付ければいいのか……」
 むしろ一番危ないのは自分自身だ。自分が倒れては、回復手はピアディーナだけになってしまう、と乃恵美は迷うも。
「お手伝いします。今すぐに治療しますね!」
 エレが乃恵美に溜めた気力を分けてやる。
 人心地ついた乃恵美は、ルーンアックスに光の布を張った。
「ありがとうございますっ! 八百万の神は此処に在りて、遍く衆生には浄福の光を。そして凶星を祓う猛き兵には神風の護を……! さぁ皆さん、御旗は用意しましたよっ!」
 乃恵美がルーンアックスを振り回せば、ばさりばさりと光がはためき、後衛達の痺れと損傷を癒していく。癒せる量はピアディーナやエレのような単体相手のものに比べれば、ごくわずか。それでも、無いよりずいぶんいい。
「長期戦覚悟だけど、本当に長期戦になりそうね。なるべくなら、早く倒したいのだけれど」
 夏輝のアームドフォートがまばゆい光を撃ちだす。ドラゴンの体を確かに貫くも、ドラゴンは表情を微動だに変えない。
「強敵だね……。でも、勝てればきっと、俺のいい糧になる……!」
 狼の四肢に変えた自分のそれを、ロイはドラゴンめがけて高速で振りぬく。
 だが。当たらない。
 夏輝が空けた穴を灼は鞘に溜めた反動を活かし、高速で抜いた刀で切り広げる。
「拙者ならば、当たるか」
 ほっとしたように灼は笑み、再び刀を鞘に収めた。
 ドリル状の飛影丸の腕がドラゴンの鱗を削る。
「龍殺しか。英雄、と言うには獲物も狩人も数が多すぎるが、敵の強さは伝説通りだな」
 チューマはナイフを抜こうとし、固まった。
(「ちっ、麻痺か!」)
 乃恵美の雅流神宮儀・終天の奉旗による浄化も必ず障りを取り除けるわけではない。
 ドワーフらしい幼い顔を上げ、憎々しげにチューマはドラゴンを見る。
 何度も何度も同じようにブレスを吐くくせに、確実にドラゴンの攻撃はケルベロスに当たる。
(「こっちの見切りなんざ、些細なことということか……」)
 そしてまた、ドラゴンは息を吸い込む。もはやこれしかやるつもりはないらしい。
 後衛に容赦なく噴きつけるブレス。
「そう何度もっ!」
 ロイがチューマの前に飛び出して庇う。
 エレは乃恵美を、灼もピアディーナを庇った。
「ッ、すまない、助かった!」
 ピアディーナは、庇い手を救わんとハーブの調合を始める。
 攻撃を返そうとしたロイとエレだが稲妻に縛られ、動けない。
「Mr.リーィング、ちょっと染みるよ……効き目も即効性もあるから、我慢してて」
 ロイにピアディーナが素早く調合したハーブを振りかける。
「人生わからないですね、こんな大役を仰せつかるとは」
 誰も倒れないように、というのは難しい仕事だ。乃恵美がエレに気力を分ける。奇しくも先ほどとは逆になった。
「いったいわね……倍にして返してやるんだから……!」
 ぼやきながらも、夏輝は混乱に乗じて立ち位置を変えた。スナイパーで埒があかないのであれば、前のめりになるしか無い。
 灼は動けない。何重にもがんじがらめにされた紫電の縄から抜け出せない。
「覚悟を決めて行きまスヨ!!」
 絶叫。飛影丸は裂帛の気合で己を縛るものを吹き飛ばす。
(「今回ばかりはオタッシャ重点でとはいかなそうデース」)
 回復ばかりしていては事態が進まない。重傷覚悟でも攻撃しなければ。
「守られてばかりでは格好がつかないからな! 超銃! 合身!!」
 チューマの呼び声に応え、天の彼方から超銃ガングリフォンが舞い降り、彼と超銃合身。
「超銃器神! ガンッ! グリッ! オォォォォン!!!」
 最大火力の弾丸がドラゴンの眉間を貫く。クリティカルヒット! ドラゴンがはじめて苦悶の顔を見せた。

●BACKFOOT
 言うなれば、『このような蚊トンボに痛手を負わされるとは』だろうか。ドラゴンは憎悪の表情で、喉を大きく膨らませてブレスを噴きつけた。
 きっと、本来なら爪で貫きたかったのだろう。だが、チューマの位置まで爪は届かない。故にドラゴンはバカの一つ覚えのように雷息を噴くしかないのだ。
「うっ……届かなかったか……。すまない、Ms.維天……あとは頼んだ……」
 他の者より体力に劣るピアディーナはここで崩れた。
「あちゃー、ハコ割れですかね……」
 乃恵美は青ざめた。自分は今回もエレに庇ってもらえたから立てている。だが、こう何度も後衛全体に麻痺の息を掛けられては、自分一人で支えきるのは至難の業だ。
 焦りの表情を見せる乃恵美に、自分も痛手を負っているというのにエレは微笑んで見せる。
「大丈夫。諦めなければ、きっと……! そうやって、今までだって、進んできたんですから!」
 自分自身に気力を溜めるエレの言葉を聞き、乃恵美は真剣な表情で頷く。
「吹き荒べ、八百万の神風。叢雲に潜む、凶星を祓え!」
 再びルーンアックスに張った浄化の旗が振られた。
 ロイの斬霊刀がドラゴンの鱗の間隙を正確に突く。今度はあたった。そのまま、弱点をこじ開けるように刀は動いた。
「攻めに転じるわよ。……これがあたしの、ジョーカーよ!」
 背のアームドフォートを小脇に抱え、夏輝は砲をドラゴンの足元に連射。そのまま背のバーニアを噴いて、足のローラーを滑らせ、走るよりも高速にドラゴンに殺到した夏輝は、アームドフォートの銃口を、ロイが空けた防御の隙に、ぞぶりと突っ込んだ。
 ズドドドドドドド!!! と地響きすら響く勢いで、砲撃がドラゴンの体内へと叩き込まれる。
 クラッシャーに移動したのは良策だった。ドラゴンは苦痛に身を捩る。夏輝は確かな手応えを感じ、目を輝かせた。
「此度の戦、必ずや勝利して駒を得ねばならんでござる」
 刃を突き立て、影をドラゴンに這い登らせる灼の目は爛々と輝いている。
「ソノトーリ! 強敵ドラゴン死すべしデース」
 天から、大声と共に飛影丸が飛来して足をドラゴンの眉間に突き立てた。
 チューマのアームドフォートが火を噴き、光線を放つ。灼熱の光によってドラゴンの体が焦げていく。
 憤怒がドラゴンの目に宿る。死ねと言わんばかりの、壮絶な雷撃風が再び後列へ。
 乃恵美を庇いに入った灼が耐え切れずに落ちる。
 そしてドラゴンは間髪入れず、もう一度とどめとばかりに後衛にブレスを浴びせる。
「そんな!」
 ロイが予想外の展開に悲痛な声を上げた。
 回復をする余裕もなく、チューマも倒れた。回復の手は足らず、全員を癒やしきるには弱く。圧倒的な敵攻撃の威力にジリ貧ではあった。
「すっかり減ったわね」
 夏輝は冷や汗を流し、呟く。今立っているのは、夏輝のほかはロイとエレ、乃恵美、飛影丸だ。
「劣勢もいいところ……でも、ここで諦めてちゃ、ガルソ様どころか誰も守れない。全力で!!」
 ロイはソフスをドラゴンにけしかけた。
「これ以上誰も……倒させない。生き残らなきゃ意味がありませんからっ!」
 エレはライトニングウォールを前衛に形成する。
「一勝の為に元手を全てブチ込むのは無謀と知っています。でも、ラスト一ハロン、駆け抜けますよぉ!」
 ドワーフの巫女はそう叫ぶなり、御業を喚んだ。がしりと御業の腕がドラゴンの長い首を絞める。
 飛影丸の正確無比なる気咬弾がドラゴンにまともにぶち当たる。
 電光石火の砲撃を撃ちこんだ夏輝は笑む。
「さあ、あたしは倒れるなら前のめり。どれだけ怪我しようが、あなたを倒すまで砲撃はやめないわ。来るなら来なさいッ!」
 睨みつけた地球人の紫の瞳を、同じ色の目を持つドラゴンは怒りに満ち満ちて睨み返し、そして爪を振りかざそうとし……、止まった。

●RUN-ON
「!?」
 信じられない、という顔をしたのは双方だった。
「動けないんだ! こっちの麻痺が効いている!」
 いち早く状況を飲み込んだロイが、しめたと叫ぶ。
 灼、夏輝、チューマ、ロイが与え続けた麻痺が今、ドラゴンを縛り付けた。
「チャンス、ですねっ!」
 諦めなかったからこそ訪れた好機を逃す訳にはいかない。
 喜色を頬に浮かべ、エレは手を祈りの形に組むと、目を閉じた。
「大いなる空、母なる海……。その狭間に住まう、小さき我らに力をお貸しください……!」
 空から降る、不思議な美しい光の――刃。
 巨体のドラゴンに容赦なく刃は刺さり続けた。
 苦悶に体をよじるドラゴンは、かろうじてロイの刀を跳ね除ける。
「ハァーッ、イヤァーッ!」
 飛影丸の心臓となっている地獄が激しく燃え盛る。全身から炎を放ち、まるで全身が地獄のようになった飛影丸は、ドラゴンの巨体を掴んで、捨て身の投げを放った。
「ジョーカー……切らせてもらいましょうか!」
 乃恵美がシャーマンズカードを投げるなり、氷の槍騎兵が起き上がろうとするドラゴンに突撃し、刺突を放つ。
「……いいわね。好きよ、そういうの。じゃあ、あたしもジョーカーを切るわ」
 夏輝は再びアームドフォートを脇に抱えた。
「BMセレクト……パターン・ジョーカー! これがアタシの切り札よ!」
 火を噴く背のバーニア、再びのゼロ距離射撃。
 体の内部をかき回される激痛に暴れまわったドラゴンの、死に物狂いの一撃。巨大な爪が掬いあげるように夏輝の腹を貫いた。
「か、はっ」
 落ちてくる夏輝を受け止め、ロイは彼女に囁く。
「ありがとう。あとは、俺が」
 そっと力尽きた彼女を地に横たえ、抜刀したロイは狙いすまし、ドラゴンの弱点に刀身を深々と埋めた。
 まるでスイッチを切ったかのように、ドラゴンの爛々と光っていた目はどろりと濁り、脱力して倒れる。
「や、やりました……っ」
 エレが呟く。
「皆さん、お疲れ様でしたっ! はぁあ、やり通せましたね。よかったです!」
 ばさりばさりと光の旗を振り、乃恵美は勝利を喜ぶ。
 飛影丸は自分の胸に手を当てる。メインコアのオーバードライブは避けることが出来た。思わず飛影丸の口から安堵の息が漏れ出る。
「さあ、行こう。怪我した人を運ばないとね」
 ロイは激戦を制したケルベロス達に優しい眼差しを向けて、そう告げた。

作者:あき缶 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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