交差するものたち

作者:雨音瑛

 ここ最近目立っていた「螺旋忍軍による竜十字島の探索」について進展があったと、ウィズ・ホライズン(レプリカントのヘリオライダー・en0158)が告げる。
「この事件に関わった多くのケルベロスから『マスター・ビースト』との関連が疑われる、という報告を受けた。そこで彼ら彼女らが持ち帰った情報を元に予知を行ったところ、竜十字島には秘密の部屋が隠されていることがわかったんだ」
 もちろん、螺旋忍軍側もその場所――柱や壁が残る、何らかの遺構に迫っている。しかし正確な場所は把握していないようで、いまだ秘密の部屋の発見には至っていない。
「今ならば、こちらが先手を打てるかもしれない。そこで作戦の概要だが――まず、螺旋忍軍たちを撃破。その後、螺旋忍軍が探していたものを探索して突き止め、可能ならばそれを奪取。……事と次第によっては、破壊を頼みたい」
 表情を引き締め、ウィズは続ける。
 今回、竜十字島で探索を行っている者の名は「カムクロ・ガラク」。二足歩行する老いたコヨーテのような外見をしている螺旋忍軍だ。どうやらシャーマン的な力を用いて探索を行って目的の場所に近付いたらしい。
「カムクロ・ガラクと彼率いるオーク型の攻性植物『オークプラント』は、君たちが到着する頃、ちょうど遺構に立ち入る。ほぼ真上にヘリオンをつけるから、降下後は速やかに戦闘に入って欲しい。また、カムクロ・ガラクの目的はあくまで『マスター・ビーストに関する何か』だ。戦闘時は隙あらば配下のオークプラントに足止めさせ、逃走しようとするだろう」
 カムクロ・ガラクは、戦闘においては厄介な状態異常を引き起こすグラビティを使用する。風を呼んで足止めさせたり、プレッシャーを与える呪いで包み込んだり、毒矢を放ったりするようだ。とはいえ、戦闘能力自体はあまり高くない。
 引き連れているオークプラントはカムクロ・ガラクよりさらに戦闘力が劣り、動きは愚鈍だという。こちらは毒の花粉を噴射したり、蔦で絡め取ったり、体力を回復する効果のある花弁を撒くようだ。
 カムクロ・ガラクとオークプラント撃破後は、遺構にて螺旋忍軍が求めていたものを探索することになる。
 しかし、螺旋忍軍が探索していたものの詳細は未だ不明。簡単に手に入るかどうかもわからない。
 何より、とウィズはケルベロスたちを見渡した。
「状況によっては、螺旋忍軍など及びもつかない強敵と相まみえる可能性もある。つまり、今回はかなり危険な任務になる、ということだ。――螺旋忍軍との戦闘と探索にとどまらず、あらゆる状況を想定し、何があっても生き延びる気概で臨んで欲しい。無事に帰還することを、祈っている」


参加者
ティアン・バ(褪灰・e00040)
キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)
奏真・一十(無風徒行・e03433)
空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)
リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)
ゼー・フラクトゥール(篝火・e32448)
カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)

■リプレイ

●獣の呪術師
 ヘリオンから降下してすぐ、ケルベロスたちは獣人の螺旋忍軍『カムクロ・ガラク』とオークプラントの一団を包囲した。
 といっても相手は11、こちらは8とサーヴァント数体。完全な包囲こそできないが、戦意を示すのには充分だ。
『あと少しというのに邪魔者が入りおったか……仕方がない。豚ども、ひとまず儂を守るのじゃ!』
 カムクロの指示を受けて、オークプラントたちは陣形を整える。
「おっと、そう勝手には動き回らせねえぜ」
 グレイン・シュリーフェン(森狼・e02868)が言うが早いか、ケルベロスたちも臨戦態勢だ。
「その通り。目指すは早期撃破、であるな」
 奏真・一十(無風徒行・e03433)は涼しげに言い放った。ルーンアックス「タプテ」を手に地面を蹴れば、敵軍の頭上に位置を取る。
 当然、オークプラントが庇うものと思っていたカムクロは回避行動など取らない。けれど一十が斧を振り下ろす速度に愚鈍なオークプラントが追いつけるはずもなく、カムクロの頭上に思い一撃が落ちる。
『ぐうっ……! 何をしておるか豚ども、しっかり儂を庇わんか!』
 頭を抑えるカムクロを、止みそうにない雨が濡らす。
 そのグラビティを行使したゼー・フラクトゥール(篝火・e32448)の太く老獪に捻くれたムフロンの角も、薄墨色の鱗も濡れることはない。雨に包まれるのは、カムクロだけだ。
『ええい、愚図どもめ……!』
 続いてカムクロに狙いをつけるは、2体のボクスドラゴン。一十のお目付役のようなサキミが水のブレスで、ゼーの弟子であるリィーンリィーンが体当たり仕掛けると、二度もさせぬと言わんばかりにオークプラントたちが立ちはだかった。
「並んでくれて丁度良い」
 とは、ティアン・バ(褪灰・e00040)の言葉。リボルバー銃「mono」から銃弾が撃ち出されるたびに、反動で灰色の挑発も跳ねる。髪と同じ色をした目は、ただ敵を逃さぬことだけに集中している。オークプラントの体表を穿った後は、
「キソラ、頼む」
 それだけでいいのは、向ける言葉の先が気心知れた相手であるから。
「了解! ――塞いでも、無駄ダヨ」
 キソラ・ライゼ(空の破片・e02771)は遠くで鳴く雷のような音、その余韻を広げオークプラントの防備を下げる。どうとでもとれる笑みを口元に浮かべて。
「カロン、頼りにしてるヨ! もちろんフォーマルハウトサンも!」
 キソラが視線を向けるのは兎のウェアライダー、カロン・レインズ(悪戯と嘘・e37629)だ。
「はい、こちらこそよろしくお願いします……!」
 ミミックのフォーマルハウトが偽の黄金をばらまくのを横目に、カロンは呼吸を整える。竜十字島の調査という今回の仕事に、いたく緊張しているのだ。
「グレインさん、私は前衛に耐性を付与しますね」
「わかった、では俺は後衛を担おう」
 グレインと手分けし、仲間へと加護を与えるべく動くカロン。剣の柄を握る力がいつもと同じかそれ以上かもよくわからなくなっているが、この島に秘められた何かに好奇心も掻き立てられる。臆病な部分を興味で無理矢理上書きして、カロンは星辰の剣で魔法陣を描いた。グレインもゾディアックソード[Taurus]にて地面を削り、魔法陣を描く。
 そこでやっと、オークプラントたちが攻撃のために動く。花粉や触手が飛び交い、癒しの花弁が舞うのを、カムクロは鼻を鳴らして見遣っている。
『ふん、少しは使えないと困るのでな』
 続いてカムクロが不思議な舞とともに怪しげな呪文を唱えると、空国・モカ(街を吹き抜ける風・e07709)に重圧がのしかかった。
「――ふむ、この程度か。大したことないな」
『なに?』
 こともなげに言ったモカは口角を上げ、縛霊手を用いてオークプラントたちを光の弾丸で制圧する。
「わたしたちも行くよ、アミクス!」
 ツインテールの少女、リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)が呼ぶビハインドの名は、本名ではない。けれどそう呼ばれたビハインドは同意を示し、オークプラント1体の動きを制限する。
 するといつの間にか宙へと躍り出ていたリューインが、その個体を踏みつけるように星屑混じりの蹴撃を加えた。

●電光石火
 戦況は、明らかであった。
 盾役を担っていたオークプラントは瞬く間に全滅したのだ、当然だろう。
「想像以上に早く終えられそうだな」
『うぬぬぬ……』
 モカの視線を受け、カムクロは苦渋の表情を浮かべる。
 無理もない、オークプラントが3体撃破されたうえ、ケルベロスたちの刃はカムクロへと及びはじめたのだ。
『無能どもめ……これでは逃げられぬではないか!』
「――そう簡単に逃がすかよ」
 言いつつ、流体金属の形状を変じさせるグレインの脳裏に苦い思い出が蘇る。
 少し前に竜十字島を訪れた際、ここを調査する螺旋忍軍には惜しくも逃走されたのだ。
(「あんたがそっちに立つ以上、容赦するわけには行かねえ。勝手はさせやしねえぜ」)
 改めて意識しながら、次は拳とカムクロとの距離へと意識を移すグレイン。
 数歩踏み出した先で拳を叩き込めば、吹き飛ばされたカムクロが遺構に背を打ち付けた。
『ぐあっ――!』
 カムクロの額から一筋の血が流れ、毛並みを濡らす。
「あの様子じゃ撃破も近いだろうな。キソラ、頼めるか?」
「勿論。さーて、コレでお終いだヨ!」
 キソラの手にあるガネーシャパズルが、稲光の光を灯す。やがて竜の形をとった稲光はカムクロを直撃し、全身を焦がした。
『ぬぅ……むね、ん……』
 呻くように呟き、カムクロが倒れ臥す。そのままやがて灰燼とり、どこからともなく吹いた風にかき消されていった。
「あとは、と」
 キソラが、残るオークプラントたちを見渡す。愚鈍な緑の豚たちは、それでも与えられた仕事を全うしようと襲いかかってくる。
 しかし、頭を失ったオークプラントはもはや敵ではない。これまでに花粉も触手も花弁も、無意味とも思える精度でケルベロスたちの間を抜けてゆく。
 首をわずかに傾けて蔦の触手を回避すると、遊び友達に視線を向けて片目を閉じる。
「こいつらを倒すだけだネ、カズ」
「ふむ、キソラさんの言うとおりであるな。では、一気呵成に行かせてもらおうか」
 斧槍タプテで一度前方を払いつつ、一十はルーンを発動させた。
「――そら」
 数歩駆けた先、軽々と振り下ろしたタプテでオークプラントを両断する。飛び散る緑色の体液は、タプテを用いて全て弾いた。
「ティアンくん、隣の個体がかなり弱っているようだ」
「成る程、確かに」
 そう返答するティアンの口元から、乾いた笑い声のようなものが漏れる。そこから黝く濁った炎がオークプラント一体の周囲を囲うまで、ほぼ一瞬。オークプラントは為す術もなく倒れ、また数を減らす。
「あとは彼奴らだけ、じゃの。空国殿が牽制してくれていたおかげで、すぐに倒せそうじゃ」
 ゼーが見遣る先には、オークプラント5体。彼らに混沌の波を及ばせて押し流せば、さらなるダメージを与えるべくモカが追う。
「私だけの力じゃないさ、フラクトゥール。それぞれが役割を全うしたからこその結果だ」
 モカが触れたオークプラントが、内側からの衝撃によって破裂した。
 次いでサキミが封印箱に入り、体当たりをする。その個体がちょうどリィーンリィーンのいる場所へと弾き飛ばされたものだから、これ幸いとばかりにブレスが出迎える。直撃によって絶えきれず消え去ったオークプラントを確認したリューインは、次に狙う個体に見当をつける。
 手元には、魔槍ゲイ・ジャルグ。穂先で狙うのは、オークプラントの腹部に刻まれた傷跡だ。正確無比な軌跡は、オークプラントを真横に切断する。
「よし、撃破したよ! アミクスはあいつを狙って!」
 静かに頷いたアミクスが、遺構に散らばる煉瓦のようなものを浮かせ、一斉にオークプラントを攻める。重ねてフォーマルハウトが噛みつき、オークプラントは動きを止めた。
「あとはこの個体だけですね。行きます――!」
 オークプラント最後の一体、その側面に回り込んだカロンは右の足に重力を宿す。軸足は左、回転を伴って繰り出された右の足は、オークプラントを吹き飛ばすより速く消滅させた。
 カムクロ・ガラクとオークプラントは全て、斃した。
 ひとまず他の脅威は見当たらないのを確認して、変わらぬ薄笑をたたえる一十が片手を挙げる。
「――では、しばしの休憩を取るとしようか。周囲への警戒は僕が担おう。皆、わずかな時間ではあるがゆっくり休むと良い」
「此度の調査、無事に終わって戻れたのなら温泉でも巡りたいものじゃのぅ」
 空を見上げ、ゼーが呟いた。

●探索
 10分ほどの休憩をした後、ケルベロスたちは遺構の調査へと取りかかった。
 隊列を組で慎重に調べてゆく中、リューインは見上げたり見下ろしたり見回したりと楽しそうな様子だ。
「こういうのって、ちょっとわくわくするよね」
「ああ。しかし危険であることには変わりない、充分に気をつけるのである」
 そう話す一十であるが、遺構に残る柱や石畳に触れる様子は躊躇無く、いっそ楽観的にも見える。
「今のところ、罠は見当たらないな」
「そうですね。柱や地面も相当古くなっていますし、崩落にも気をつけないと――」
 仲間に危害を加えられぬようにと、注意深く辺りを調査するのがグレインとカロン。
「いずれにせよ、慎重に――おや」
 不意に、地面を調べていたティアンが手を止めた。土や石とは異なる材質の手応えだ。すかさず草を引き抜き、土を払う。
「みんな、見てくれ」
 ティアンが示した先には、取っ手のようなものが付いた無機質な扉が一枚。
「これは……地下への扉か」
「では、開けてみるのである」
 モカが覗き込むのと同時に、一十がゆっくりと扉を開ける。
 日の光が射し込む中、見えるのは地下へと続く階段だ。
「ティアンが先頭となろう。丁度、照明の持ち合わせがあるからな」
 黒鉄式携行用電灯を点けて進むティアンを先頭にして進んで行くと、あたりは洞窟のような様相を呈してきた。
「今のところ一本道じゃが、念のため地図を記しておくかの何があるかわからんからのぅ」
 マッピングするのゼーの言葉が、洞窟内に反響する。
 ほどなくして突き当たった行き止まりは、少し開けた場所となっていた。ケルベロスたちの視線は、部屋の中心へと注がれることになる。
 黄金色に光る『鍵』が鎮座していたからだ。
 周囲には黒光りするモノリスのようなものが『鍵』を守るように配置されている。おそらく、これが封印の役割を果たしているのだろう。
 それだけ、というには充分すぎるものがそこにあった。
 早速調査、といきたいところだが、何があるか解らない。ケルベロスたちの半分が、現場の撮影に動く。
「ティアンちゃん、上達したんじゃない?」
 手元を覗き込むキソラに、ティアンは仄かな笑みを返して。
「だとしたら、キソラの教え方が上手いのだろう」
 時折キソラにも習って少しずつ上達してきた、ティアンのカメラの腕。たまたま始めた写真撮影ではあったが、こういったものを撮影することになるとは何とも不思議なものだ。
 モカとカロンが周囲や『鍵』の撮影をするのを邪魔しない範囲で、ゼーはモノリスのようなものをまじまじと見た。
「どうやら、『鍵』はドラゴンの力で封印されているようじゃのう」
 何気なくゼーが口にした言葉に、ティアンは思わず撮影の手を止めた。ティアンにとって、ドラゴンは決して好ましい種族ではない。この『鍵』がドラゴン勢に渡るくらいなら破壊も厭わない程度、には。
「となると――この封印を解き、鍵を手に入れることが螺旋忍軍の目的だったんだろうな」
 ティアンの見解に、しかし、とグレインが腕組みをする。
「この『鍵』を持ち帰るには封印を破壊する必要がありそうだな……」
「だからといって放置しても、ここは螺旋忍軍が探索していた場所だから――次に来る螺旋忍軍が回収するだけ、じゃないかな?」
 悩みつつ、リューインも言葉をひねり出す。
 ならば、と口を開いたのは一十だ。
「放置して戻るという選択肢は取るべきでは無いだろうな」
「であれば、封印を破壊して持ち帰るべきだろう」
 『鍵』をちらりと見て、モカが息を吐く。
「とはいえ、何か危険がありそうなら破壊も視野に入れるべきだと思いますが……」
 万が一何かの事態が発生したとして、この場に仲間を残していくのは何としても避けたいカロンだ。
「でもドラゴンが破壊せずに封印しているンだから、利用価値があるか――あるいは、ドラゴンでもこの鍵みたいなのを破壊できないかのどちらかじゃないか?」
 と、キソラの発案。
「つまり、じゃ。皆の意見をまとめると『可能なら持ち帰るべき』ということじゃの」
 決まりだ。ケルベロスたちは視線を交わし、頷いた。
「ならば、『鍵』を持ち帰るのである。周囲の警戒は、僕が担当しよう。皆はモノリスの破壊を頼む」
 一十が周囲の気配に気を配る中、ケルベロスたちは一斉にモノリスに攻撃を仕掛けた。
 モノリスが砕け、『鍵』への道が開かれる。
「……では、僭越ながらわしが」
 部屋の中心に歩みを進めたゼーは、鍵を手に取ったのだった。

●遭遇
 元来た道を戻り、ケルベロスたちは地上に出た。
「――む」
 短く呟き、ゼーが手元に視線を落とす。『鍵』が、強く光り始めたのだ。
「嫌な感じがします。たとえば、魔空回廊でも開きそうな――」
 カロンが言うや否や、獣人姿のデウスエクスがケルベロスたちを取り囲んだ。
 そのうえ彼ら彼女らの佇まいが、無駄のない動きが、歴戦の強者であるということを物語っている。この包囲はそう簡単に突破できるものではないと、誰もが感じ取る。
「状況から察するに、奴らは螺旋忍軍か」
 モカが口にするのと同時に、1体の獣人が進み出た。赤いスーツを着用したゴリラだ。彼は、ゼーの手元で光る『鍵』に視線を送りつつ話し始める。
「『月の鍵』を返してもらおう。それは、お前達が持って良いものでは無い」
「貴殿がマスタービースト……というわけではなさそうじゃのう。いずれにせよ、まずは名を名乗るのが礼儀ではないかえ?」
 いっそう強く『月の鍵』と呼ばれたものを握りしめ、ゼーが返す。
 マフィアのボスのようなゴリラに対し、老獪な武将、といった風情のゼーだ。渡り合うための風格は充分だろう。
「これは失礼した。我らは、ズーランド・ファミリー。『月の鍵』奪還の為に、月面拠点から遣わされた精鋭部隊である」
 軽く帽子を持ち上げ、ゴリラが告げた。
 ケルベロスたちは包囲の中心へと後ずさりしながら、お互いの距離を詰める。
(「まずいな。こいつらは、今までの螺旋忍軍とは別格の強さだ」)
 ズーランド・ファミリーには聞こえない音量で話すモカに、グレインが頷く。
(「だとすると月からやってきたというのはあながち嘘ではないかもしれないな」)
 月、という単語にカロンはぴくりと反応した。
(「姿を消したマスター・ビーストは、魔竜王に月の拠点ごと封印された……と考えれば、辻褄は合いますね」)
(「どうする? この月の鍵とやらを渡せば戦わずに済むかもしれないけど……」)
 視線をズーランド・ファミリーから外さず、リューインが囁く。
 今さら打ち合わせるまでもない、結論はとうに決まっているのだ。
 ケルベロスたちは、同時に頷きあった。
 月の鍵を手にしたまま、ゼーはゴリラに水を向ける。
「成る程成る程、精鋭部隊のズーランド・ファミリー。……もし、この『月の鍵』とやらを渡さない、と言ったら?」
「戦って奪い取るのみだ。結果は変わらないのだから、素直に渡した方がお互いの為だろう?」
 ゴリラが一歩進み出るよりも早く、ゼーがリューインに月の鍵を押しつけた。
「行くのじゃ、アルマトラ殿!」
 返事をする時間すら惜しい。リューインは無言で駆け、光る翼で飛行を始めた。その後ろを、アミクスが守るように追う。
「逃がすものか。お前達、行け」
 ゴリラが指を鳴らしたのを合図に、7体の螺旋忍軍が駆け出した。直後、ゴリラ自身もリューインの追跡を始める。
 無論、それを黙って見ているケルベロスたちではない。全員がすぐさま、ズーランド・ファミリーの後を追うべく駆け出した。
「行かせませんよ! フォーマルハウト、僕に続いて!」
 カロンは、友人と共に。
「折角見つけたんじゃ、横取りされるわけにはいかんからのぅ。リィーンリィーン、修行の成果を見せる時じゃ」
 ゼーは、リィーンリィーンを肩に乗せて。
「さて、僕達も――わかっているのである、サキミ」
 一十は、急かすように足へと尻尾を打ち付けるサキミを抱えて。
「ドラゴンだろうが螺旋忍軍だろうが、渡しはしない」
 ティアンは、さながら暗殺者の身のこなしで。
「折角手に入れたモノを渡すにはいかないンだよね」
 キソラは、へらりと笑って。
「結局はこうなるわけだな。覚悟はしていたさ」
 モカは、自嘲気味に笑って。
「リューインのところまでは通さねえ、通すのは俺達の信念だけだ!」
 グレインは拳を握りしめ、あらん限りの速度で。
 追う者と追われる者は、竜十字島を駆ける。
 『月の鍵』を手にするために。

作者:雨音瑛 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 14/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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