天聖光輪極楽焦土菩薩決戦~クリード・ピリオド

作者:鹿崎シーカー

 時は夕暮れ、鎌倉市内の洞窟奥深く。
 沈みゆく橙色の太陽を見据え、天聖光輪極楽焦土菩薩は座禅を組んだ姿勢でうなり声を上げた。
「ぐむゥゥゥ……憎らしや、番犬どもめ……」
 菩薩の背後に金色の曼陀羅模様が浮き上がり、金の燐光が舞う。しかしその光は薄く、弱々しく明滅している。菩薩の呼吸もまた荒く、絶え絶えとなっていた。
(ドラゴン勢力の強襲型魔空回廊を潰し、その際に得たグラビティ・チェインを使ってビルシャナ大菩薩を再臨させる……。確実に、再臨は成功するはずだったのだ!)
「それを、それをォォォッ…………!」
 曼荼羅が金色の炎に包まれ、燃え上がる。双眸に怒りと敵愾心を浮かべた菩薩は――――しかし深呼吸をして心を沈めた。曼荼羅を焼く炎が収まる。
(だが、完全な失敗を喫したわけではない。大菩薩というわけにはいかなかったが……代わりに高位ビルシャナの降臨には成功できた。後は、彼らが再臨の儀を続けてくれる。しかし……)
 菩薩は翼の両手を合わせ、全身に力を込めた。羽根のひとつひとつに灯る金色の閃光。それに呼応して洞窟の岸壁に所狭しと描かれた曼荼羅模様が、うっすらと光を帯び始めた。
「まだ、諦めるわけにはいかぬ……衆生無辺誓願度。せめて、せめてもう一体! 高位ビルシャナを召喚できれば……ッ!」
 天聖光輪極楽焦土菩薩がまとう光が強まり、洞窟の曼陀羅模様が脈打つように輝き始める。
 荒げた呼気を振り絞り、彼は祈りの読経を紡ぎ始めた。


「はてさて、その執念はお見事というべきなのかどうなのか……と」
 呟きながら、跳鹿・穫は首をひねった。
 シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)の調査により、天聖光輪極楽焦土菩薩の予知を得ることが出来た。
 天聖光輪極楽焦土菩薩は、ドラゴン勢力のミッション地域を破壊してビルシャナ大菩薩の降臨を試みていた菩薩級のビルシャナだ。もっとも、その目論見はケルベロスの活躍により阻止されたのだが――――代わりに、三体の高位ビルシャナが召喚されることとなってしまった。
 グラビティ・チェインの大半を使い切った天聖光輪極楽焦土菩薩は、ビルシャナ大菩薩再臨を高位ビルシャナに任せることにしたようだ。しかし、その手助けとして新たな高位ビルシャナを召喚しようともしている。
 居場所が割れた今がチャンスだ。次の高位ビルシャナが降臨する前に天聖光輪極楽焦土菩薩を討伐し、後顧の憂いを断ってほしい。
 天聖光輪極楽焦土菩薩がいるのは、鎌倉市内に出来た洞窟の奥深く。ここはビルシャナ大菩薩再臨のための儀式場となっており、岩壁という岩壁にビルシャナ曼荼羅が描き込まれている。これに力を注ぎ込むことで、高位ビルシャナの召喚を試みているようだ。
 天聖光輪極楽焦土菩薩は強力な菩薩ではあるのだが、大菩薩を再臨させるために力をほとんど使い果たしてしまっている。しかし、それでも油断はできない。
 天聖光輪極楽焦土菩薩は、複数の光の輪を駆使して戦う固定砲台型の戦闘スタイル。光の輪は直接ぶつけて斬撃にしたり、輪の中央から強力なビームを放ったりする。菩薩級だけあって、力を使い果たしてなお攻撃力は侮れない。
 加えて、一定時間が経過すると、最後の力を振り絞った一撃『極大閃光』を繰り出してくる。一度の発動に12分ほどかかる、一発撃つと反動で動けなくなるといったデメリットはあるものの、超強力な全方位攻撃である上に戦場は閉所。まともに食らえば、少なくとも戦闘不能は避けられまい。
 即ち、短期決戦が必至となる。
「ビルシャナの脅威は依然として続きますが、ここで回復や次の策を許すわけには行きません。ここで確実に、天聖光輪極楽焦土菩薩を討ち取ってください!」


参加者
相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)
シィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)
機理原・真理(フォートレスガール・e08508)
ウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)
花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)
服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)
人首・ツグミ(絶対正義・e37943)
アクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)

■リプレイ

「おおおおおお、おおおおおおおおおおッ!」
 光が煌々と輝き、洞窟の壁に刻まれた曼荼羅へと吸い込まれていく。
 脈打つように点滅を繰り返す紋様は、新たな力の胎動であり産声である。座禅を組み、両腕を合わせた天聖光輪極楽焦土菩薩は祝詞を唱えた。
「出でよ、出でよ、新たな同胞。祈りは違えど、心に差あれど、我らが願いはただ一つ。過酷あふれる世界に救いを! この世の命あるもの全てに、大菩薩の威光をもたらさんがため! 彼方の光より来たれ、救済の使徒よ―――――――ッ!」
 菩薩の光が一際強まり、洞窟内を染め上げる。
 金色の輝きに照らされた曼荼羅が、全て脈動を止め発光。一寸先すら見えぬ光が洞窟内を満たした、その時である!
「ぬぁあああああああ―――――っ!」
 洞窟に咆哮轟く。儀式が生み出す光に高速突入したのは、右手を振りかぶった服部・無明丸(オラトリオの鹵獲術士・e30027)! 握り拳を輝かせた彼女は猛然と疾走しながら叫ぶ!
「わははははは! 見ぃぃぃつけたぞぉぉぉぉぉぉっ! 貴様の救済とやらも今日限りじゃあああああああッ!」
「うぬっ!?」
 光の中、ぎょっと目を見開いた菩薩が反射的に合掌解除! 両の翼を前に突き出して大型光輪を召喚し、輪の中央からビームを放つ。無明丸は迎撃の光線めがけ、輝く右ストレートを繰り出した!
「はぁああああああああッ!」
 鉄拳と光線が真正面から激突し、轟音と激しい光芒を周囲に散らす! 破壊の閃光と拮抗する無明丸。しかし踏ん張る足は後ろに滑り、やがて拳と接触した部分が大爆轟を引き起こした。
 爆発から連続バク転で飛び出した無明丸は、右手から煙を上げつつも好戦的な微笑みを浮かべて跳躍! その背後、いつの間にか立っていたウィルマ・ゴールドクレスト(地球人の降魔拳士・e23007)と人首・ツグミ(絶対正義・e37943)がそれぞれ青と黒の炎でその身を燃やす!
「いまさら、ですけれど、ゲートを通るのでなく、呼ぶ、と来られるん、です、ね。ビルシャナの方って。まあとに、かく、これ以上お代わりをされる前に、その意図を挫いてさしあげま、しょう」
「悪の量産が善行であるはずもないですからねーぇ。……くふ! 懲罰の時間ですーぅ!」
 ウィルマの両手で膨れ上がった火球が爆ぜ、禍々しいドラゴンめいた形の大砲を顕現!
 機械の右手に矢を召喚したツグミが弦を引いて黒炎の矢を生み出し、撃ち出すと同時にウィルマの大砲が蒼炎を噴き出す。襲いかかる二色の炎に、菩薩は両腕を引き絞った。彼女の左右に大光輪が出現し、高速回転!
「これこそは、邪を断ち切る聖なる剣!」
 菩薩が両腕を突き出して光輪発射! 洞窟の地面を引き裂いて走った光の刃は、二人の炎を斬り裂いてウィルマとツグミに突っ込んでいく。
 左右に散開した二人が炎を突き破った光輪を避けると、後方から走って来た相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が光輪を飛び越えた。着地から裸足で洞窟の岩場を走る彼の背後上空、ギター片手に宙を舞うシィカ・セィカ(デッドオアライブ・e00612)が六本の弦に液体金属をまとわせた。
「シィカ! 援護頼むぜ!」
「はいデス! ロックンロ―――――――ルっ!」
 ギュィィィィィン! ギターの音色と共に広がる光の粒子が泰地を包む! ハイジャンプした泰地は洞窟の天井を蹴って方向転換し、菩薩へ流星じみた飛び蹴り!
「とりあえずじっとしていろ!」
「次から次へと! 貴様の方こそ頭を垂れよ! 首を差し出せェェェェェいッ!」
 菩薩は振り上げた左翼の先に光輪を生成し、高速回転させて泰地へ投げた。斜めに飛翔した斬撃属性の光と素の足裏が激突! チェーンソー駆動音じみた甲高い音が洞窟に響き、泰地の足が僅かに裂ける!
 地肌を斬られながらも、泰地は歯を食いしばって蹴り足を振り上げサマーソルトキック! 受け流された光輪が洞窟の天井に直撃する中、菩薩は宙返りして虚空停止した泰地をにらんだ。彼女の両目の前に出現した二つの光輪が、ドーナツ状に空いた穴の中央に光を溜め込む!
「隙を見せたなケルベロス! せめてもの慈悲だ、痛みすら感じぬままに逝くが良い! 和光同塵!」
 眩い閃光で洞窟内の暗闇を照らす天聖光輪極楽焦土菩薩。必殺のビームが放たれるその寸前、しかし泰地は不敵にニヤリと笑って見せた!
「いいや、隙を見せたのはお前の方だ! 真理、綾奈! そこだぜッ!」
 直後、菩薩の懐に機理原・真理(フォートレスガール・e08508)と花見里・綾奈(閃光の魔法剣士・e29677)が飛び込んだ! 視線を二人の元へと下ろす菩薩の前で、真理は銀の大型ガントレットの拳を握り、綾奈が金色の槍に稲妻をまとわせる!
「ありがとうございます、相馬さん。捉えたのですよ……!」
「参ります。この神速の突き、見切れますか?」
 二人はそれぞれ菩薩の腹に目にもとまらぬ一撃を打つ! 菩薩の背中がの衝撃によりわずかに膨張!
「ぬ……おおおおおおッ!」
「ふっ!」
「せあッ!」
 真理と綾奈は得物を振り抜いた。吹き飛ばされた菩薩は、弾丸めいて奥の岩壁に激突して粉塵を巻き起こす。そのちょうど反対側、洞窟の入り口から遅れて駆けこんで来たアクア・スフィア(ヴァルキュリアのブラックウィザード・e49743)が両腕を広げた。
「皆さん、ご無事ですか? 今治療を……」
 湖の水面めいて青く輝くオーラを身にまとうアクア。反面、洞窟の奥で閃光を爆発させた菩薩は、座禅状態で浮遊し体を金光で覆い尽くした。その両目には燃え滾る憤怒!
「おのれ、あともう少しというところで!」
「それはこっちの台詞だ!」
 泰地が拳を構えて啖呵を切る。片眉を吊り上げる菩薩に対し、彼は膝を軽く折り曲げる予備動作をとりつつ言い放った。
「ビルシャナ大菩薩再臨などいらんことしやがって……ドラゴン残党のミッション破壊も、オレ達ケルベロスがやるはずだったっていうのに! おかげでこっちは再降臨阻止にも駆け回る羽目になっちまった! 覚悟しろ、お前の野望は!」
「ここでロックに防ぐのデス! アクアさん、照明カモン!」
 シィカがギターをかき鳴らしながら右手を振り上げる。ひとつ頷いたアクアはその身を包む水面の輝きを両手の平に集中させた。水に跳ね返された陽光の如き煌めき!
「水よ、光よ、煌く万華鏡の様に皆に届け」
 瞬間、アクアの両手が無数のシャボン玉を噴き出した! シャボンは光を乱反射し、さながらライブステージじみで洞窟を彩ってのける。光の一部を右手に浴びた無明丸と、ツグミが菩薩に対して身構えて告げた。
「さぁ! いざ尋常に、勝負ッ! 今日は都合が悪いのでまた今度、などとは言うまいな!」
「都合が悪くとも、見逃すつもりはありませんけどねーぇ? くふふっ」
「望むところよ……!」
 菩薩は再度翼で合掌。背後に巨大光輪を召喚し、さらに両手を振り上げ扇状に複数の光輪を展開してみせる。腕を下ろし、手の平に当たる部分を上向けた状態で翼を広げた菩薩の背中。光輪の頂点に光球がひとつ灯めいて現れた。
「民草を苦界に縛りつけ、救済を否定する悪鬼の群れども! この天聖光輪極楽焦土菩薩、今この時はビルシャナ大菩薩のアヴァターラとして、貴様らを駆逐してくれよう! 死せよ、滅せよ! それが貴様らに捧ぐ……」
 菩薩の頭上に広がった複数の光輪が中央の穴に光をチャージ。クワッと鳥目から閃光を放った菩薩は煌々たる光をまといながら宣告する!
「救済であぁぁぁぁるッ!」
 光輪がマシンガンめいてビームを乱射すると同時に泰地、真理、綾奈、無明丸が走り出した! アクアは指揮者のように両手を振るってシャボン玉を操作。翼を広げて浮かんだシィカにスポットライトめいて光を集中!
「シィカさん、どうぞ……!」
「レッツ、ロックンロール! ケルベロスライブ、スタートデース! イェーイ!」
 腕を全速力で動かして旋律を奏でるシィカ! その音波は光の粒子と化して周囲に拡散。アクアのシャボン玉に命中してさらに規模を拡大し、光線弾幕に向かって走る仲間たちの背中を照らす! 紅色の六枚翼を広げた綾奈は自らの体を赤光に変えた。
「道を、開きます!」
 赤い綾奈のシルエットが槍を回転させて横薙ぎ一閃! 真紅の閃光が弾幕を引き裂き、光弾をまとめて爆発四散消滅させた。無明丸と共に降り注ぐ金光の粒に突っ込んだ真理は軽く跳躍し、相棒の名を呼ぶ!
「プライド・ワン!」
 威勢のいいエンジン音を上げ、黒い一輪バイクが真理の真下に滑り込んだ。騎乗した真理がハンドルをひねった刹那、黒バイクは爆速ターボ! 対する菩薩は両手を円を描くように動かし、目前に大型の光輪を呼び出した。真理はなおも速度を上げて声を張る!
「何もかも滅ぼす教義が、救いのはずがないのですよ! そのような破滅を、人々は救済とは言わないのです!」
「否ァァァッ!」
 合掌しながら菩薩が反論!
「過酷あふれる世界に救いを。安らかなる死を。魂に永遠の安寧を! 地平の一切焦土と変えて民の全てをニルヴァーナへと導いてみせる。散るがいい! 蓮華の花びらのように!」
 光輪が極太の光線を発射! ハンドルから両手を離した真理はガントレットの拳に冷たい蒼白の光を溜め込み、大振りのパンチと一緒に射出した。凍結光線と光輪のビームが正面衝突! だが真理の光はあっさりと押し返されていく!
「っ……!」
 決死の形相で腕に力を注ぎ込み、真理は対抗を試みる。その一方、菩薩を挟んで左右に展開した無明丸と泰地が直角ターンを決め挟撃疾走! そろって拳に電光まとわせ、全速力で殴りにかかる!
「さあ! いざと覚悟し往生せい! ぬぅあああああああ――――ッッッ!」
「どらああああああああッ!」
「フン! 小癪!」
 迫りくる二人の拳! だが立てた両腕を光で覆い、一歩も動かず防御の構え。零距離に達した無明丸と泰地が稲妻の鉄拳によるラッシュを仕掛けた。激しく爆ぜ散る火花と雷鳴、そして血飛沫。しかし菩薩の表情は一切変わらぬ! 乱打のたびに飛び散る血の雫は、無明丸と泰地の拳から放たれていた! 遠目にそれを見たアクアが駆け出しながら叫ぶ。
「お二人とも、今すぐ離れて……っ!」
 必死に青いオーラをまとった手を伸ばすアクア。だが無明丸は血みどろの手刀を振り上げ、泰地はズタズタになった腕の代わりに足を引く!
「ふぬああああああッ!」
「ぜあああああああッ!」
 ギロチンめいたチョップと蹴り上げが菩薩の両腕を鎧う光に激突し、引き裂かれて鮮血を噴いた! 防御に用いた光の正体、それは即ち魚の鱗めいて密集した、無数の極小斬撃光輪! 表情を苦悶に歪める二人を横目に、菩薩は説法を説く。
「痛むか、猟犬。生きている限り決して逃れえぬ痛み。全ての生命が不条理にも受けさせられた、カルマの痛み! だが安心するが良い」
 菩薩の両腕を覆う極小光輪が全て逆立つ! ハリネズミの針めいて光刃鎧は高速で回りながら牙を剥いた。
「死なば、その痛みからも救われる! 衆生無辺誓願度! 『法雲・炸裂』!」
 とっさに飛び下がる二人を、無数の極小光輪が横殴りの雨じみて急襲! だが無明丸の前にシィカが、泰地の前に綾奈が割り込む。シィカ必死の速弾きが白金の閃光を放ち、綾奈は神速の槍さばきで光輪を次々と受け流していく!
「傷つけさせないデスよ! ロックにみんなを守ってみせるデース!」
「死が救済、なんてお題目、押しつけないで、ください……!」
「……愚かな!」
 菩薩が両手にあたる部分を握る。一層強まる光輪の嵐がシィカと綾奈の防御を超えて、彼女たちの全身を刻みにかかった。裂けた肌から血を流し、それでもなおピックと槍を振るう二人を菩薩は侮蔑の眼差しで睨む!
「ふん、救いようがないとはまさにこのこと! 苦痛を是とし、一体何億人を苦悶の世界に縛りつける気だ! 死なねばならぬ! 滅ばねばならぬ! この世一切焦土と為せば、即ち我欲、悪辣、不平等、あらゆる魔羅が無に還る! ビルシャナ大菩薩がそれを為す! 我ら個々の力で救済できずとも、かの力があれば――――ッ!」
「なるほど、ええ。よーくわかりましたーぁ」
 菩薩の言葉を間延びした声が遮った。直後、地面を突き破って飛び出したツグミがアッパーカットを菩薩の顎に叩き込む! のけ反って白目を剥いた菩薩の腕から光が消えると同時、アクアは膝を突いた綾奈に駆け寄った。
「大丈夫ですか、すぐに緊急手術しますね」
「私は、後で……夢幻、治療を、急いで……!」
 綾奈が傍らの子猫に無明丸の治癒を命じる一方、ツグミはガラ空きになった胴体に黒いオーラをまとった拳を打ち込む! 砲弾の形をとらせたオーラで零距離砲撃! 吹き飛び、背中から壁に叩きつけられた菩薩を一瞥したツグミの真横をウィルマが抜ける!
「つ、追撃、行きます」
 ツグミの真横を駆け抜けたウィルマは地面スレスレに手を落とし、手の平から燃え広がった蒼炎を握る。内から爆ぜた炎は黒刀をさらし、刃を不吉に光らせた。
 両手で刀を握り、斬り上げをしかけてくるウィルマを前に、首を振った菩薩は光輪を手裏剣めいて連投! ウィルマはジグザグ走行と斬撃で光輪を避けながらなおも肉迫。菩薩は血走った目で周囲を見回す。
「おのれッ……!」
 無明丸と泰地の寄り添ったデブ猫とココアカラーの子猫が翼を羽ばたかせ、清い風で傷口を撫でる。シィカの方はアクアを模したゴーストによって傷を癒やされていた。全員の目は真っ直ぐ、菩薩の方へと向けられている。戦意冷めやらず!
 背後の光輪に意識を向ければ、時計回りに光球が11。目前にまで進んだ必殺技のカウントダウン!
(数秒! あと数秒あれば……!)
 菩薩の思考を派手なエンジン音がかき乱した。見上げれば、そこには跳躍した黒バイク! 光線との鍔迫り合いから解放された真理が、胸部を変形展開させてルビーじみたコアの光を菩薩に向ける!
「人を救いたいというあなたの心、それ自体は間違いではないですよ。けれど、そのために無辜の人々の人生を奪うことは許されないのです!」
「おのれ、おのれ、おのれぇぇぇぇッ……!」
 極大閃光は間に合わぬ! 菩薩は合掌して目の前に大型光輪を生み出した。次の瞬間、真理のコアと光輪が同時に極大の光線を発射! ぶつかり合った赤と金の光は押し合い――――菩薩の光がわずかに押し込む! 真理が歯を食いしばり、全エネルギーをコアに集中!
「く、あああああああああああッ!」
「ッ!」
 赤い極光が膨張し、菩薩の光を押し返す! 鮮血めいた鮮やかな真紅が洞窟内を染め上げ、さらに膨らみ――――金の光を弾き飛ばした!
「馬鹿な!?」
 愕然と叫ぶ菩薩の前で光線を放っていた輪が砕け散る。照らし出された菩薩はやがて光に飲み込まれてシルエットを消し飛ばされる。
 数秒後、洞窟から紅蓮の爆風が噴き出した。

作者:鹿崎シーカー 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月10日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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