城ヶ島制圧戦~蒼眼にして豪腕

作者:Oh-No

 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、集ったケルベロスたちを見渡して口を開く。
「これより、城ヶ島の制圧作戦について説明いたします」
 ケルベロスたちも現状は既に知っているから、驚きの声は上がらなかった。城ヶ島の強行調査により、『固定化された魔空回廊』の存在が明らかになったのだ。この『固定化された魔空回廊』に侵入、突破することができれば、ドラゴンたちが使用する『ゲート』の位置を特定することができるだろう。
 そうなれば、今度は『ゲート』の破壊が視野に入ってくる。『ゲート』さえ壊してしまえば、ドラゴン勢力による地球侵攻が終わる。
「つまり、『固定化された魔空回廊』を抑えることにより、ドラゴン勢力の喉元に刃を突きつけることが出来るのです」
 強行調査からは、ドラゴンたちが『固定化された魔空回廊』の破壊を最後の手段と考えていることがわかっている。迅速な城ヶ島の制圧により、『固定化された魔空回廊』を奪取することは決して夢物語ではないのだ。
 ドラゴン勢力の侵略を止めるためにも、多くのケルベロスたちの協力が求められている。
「皆さんにお願いする役割は、ドラゴン1体の撃破です。確実に勝利できるよう、その一点に集中してください」
 戦うことになるのは、ドラゴンの巣窟である城ヶ島公園においてだ。そこまでは、仲間が築いてくれた橋頭堡から進軍することになる。経路などは全てヘリオライダーの予知によって割り出されており、その通りに移動する必要があり、またそうすることにより担当するドラゴンと確実に遭遇することが出来る。
「1体とはいえドラゴンは強力であり、難敵です。ですが勝てない相手ではありません。『固定化された魔空回廊』の奪取のためには勝利が必要なのです」
 そして、セリカは戦うことになるドラゴンの詳細について話し出した。
 そのドラゴンは、燃えるように赤い鱗と、美しい蒼眼を持つという。加えて、他の平均的なドラゴンに比べて太い身体を持つ。
 大きいのではない。太いのだ。筋肉ではち切れんばかりに、太い。
 飛ぶことは出来る。炎のブレスも吐く。だがそれよりも、自らの鋭い爪で、あるいはあまりにも太い尾で、直接攻撃することを好んでいる。4本の足で大地を踏みしめて、重厚な体躯からは想像し難い、機敏な動作で襲いかかってくるのだ。
 このドラゴンは退くことはないだろう。策を弄するようなこともなく、ただ愚直に真っ向から戦う。
 だが、怯むことはなく、驕ることもない。厄介な破壊の化身だ。とくに鋭い爪の一撃は、大抵のケルベロスが二発は受け止めきれないだろう。
 説明を終えたセリカは、強い信頼を込めた眼差しでケルベロスたちを見つめた。
「……厄介な相手であることは間違いありません。けれども、私は皆さんなら確実に打ち倒せると信じているのです。1体でも多くのドラゴンを倒すことがこの作戦の鍵です。必ずや、勝利を持ち帰ってきてください」


参加者
コッペリア・オートマタ(アンティークドール・e00616)
シルク・アディエスト(巡る命・e00636)
ジョン・コリンズ(ドラゴニアンの降魔拳士・e01742)
相馬・竜人(掟守・e01889)
ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)
漣・紗耶(心優しき眠り姫・e09737)
祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)
アト・タウィル(レプリカントのミュージックファイター・e12058)

■リプレイ

●竜の舞う公園
 現在の城ヶ島公園はドラゴンの巣窟である。
 数多のドラゴンが、空を舞い、地を駆け、ブレスを吐く。そんな魔境じみた光景の中を今、数多のケルベロスたちが進軍していく。
 仲間たちが築いてくれた橋頭堡から、ドラゴンの巣窟になだれ込んだのだ。仲間たちのためにも、必ずや『ゲート』の位置を明らかにしなければならないと、ケルベロスたちの意気は高い。
「これがドラゴン……。なんとも壮大な敵ですね」
 ミント・ハーバルガーデン(眠れる薔薇姫・e05471)は、そこかしこに見えるドラゴンの姿を目にして無表情に呟いた。
 だが生物としての強大さに感心するものの、臆しているわけではけしてない。例えドラゴンが如何に強大であろうと、負けるつもりなど毛頭ないのだ。
 ミントは気負わずに、そう感じていた。
「私たちの相手は……、あの赤いドラゴンですね」
 一番に公園の片隅に鎮座しているドラゴンの存在を見つけ出したのは、アト・タウィル(レプリカントのミュージックファイター・e12058)だった。
 一行は進路を即座に補正する。ほぼ聞いていた通りの位置。太い首をもたげて、襲い来るケルベロスの姿に視線を投げかけていた。まだ動き出してはいないものの、時間の問題だろう。すぐに目に映るケルベロスに襲いかかるはずだ。
 そうなる前に、自分たちでドラゴンを引き受けなくてはならない。
「破壊の化身であろうと、なんであろうと、やることはただ一つ。定命を持たぬ歪な命に終焉を」
 自らを鼓舞するように口の端に乗せて、シルク・アディエスト(巡る命・e00636)がすらっとした脚で地面を蹴り、速度を増した。
 ドラゴンは如何にも強者という雰囲気を纏っている。はち切れんばかりに太い四足が肉厚な胴が、そして燃え盛るように鮮やかな赤い鱗が見るものに威圧感をもたらしている。
「相手にとって不足はありませんな。思う様にこの拳を振るうとしましょう」
 けれど、ジョン・コリンズ(ドラゴニアンの降魔拳士・e01742)は、あくまで平静に受け流す。
 コッペリア・オートマタ(アンティークドール・e00616)もまた、一見、何のプレッシャーを感じていないように見えた。
「竜殺しはいつの時代も勇士の誉れ。皆でドラゴンスレイヤーの称号を手に入れるのでございます」
 しかし、淡々と語るコッペリアの言葉からは、隠し切れない激情の一部が垣間見えている。デウスエクスを、地球の簒奪者を、必ずや滅ぼさんという苛烈な意志の欠片が姿を表している。
 赤いドラゴンは、自らに向けられている敵意を感じ取ったのかもしれない。首を回して、コッペリアをはじめとするケルベロスたちを視界に収めた。外観には似合わぬ澄んだ蒼眼を細め、折りたたんでいた四足に力を込めてドラゴンが立ち上がる。
 祟・イミナ(祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟・e10083)は無表情なままに、厄い思念が籠もった瞳でドラゴンを真っ向から睨み返した。
(「……強行調査時に手傷を負うほどに祟っても、なお祟り足りない。……今一度、目の前のドラゴンを祟る」)
 イミナは連れたビハインドに告げる。
「……蝕影鬼、祟るぞ」
 呪おうぞ、祟ろうぞ、苛もうぞ。身体の内から湧き上がる衝動を、只々ドラゴンに叩きつけんが為に。

●猛る竜
 立ち上がったドラゴンは、向こうからもこちらに駆け出してきた。太い脚で大地を蹴り飛ばし、身を上げに踊らせて、大地を揺らす。
 ドラゴンの思考など知る由もないが、一気呵成に蹴散らそうとでも言うのか――。
 けれど、そんな訳にはいかない。――いかせない!
 漣・紗耶(心優しき眠り姫・e09737)は、先陣を切ってドラゴンと交錯せんとする仲間たちの背中を押すように、声を張り上げた。
「守って見せる! いつだってどんなときだって!」
 大きく動かした両腕が、空を切り、印を切る。呼び出したは力の神、『手力男命』。
「力の神よ……、みんなに加護を!」
 紗耶が放った光に包まれて、ドラゴンに迫る前衛陣。だがその攻撃より一手先に、ミントが雨あられとリボルバー銃の弾丸を振りまいた。
「この攻撃を、見切れますか?」
 さらに、アトがドラゴンの前に、同じくらい大きな、燃えるドラゴンの幻影を投影する。
「幻影とはいえ、身に纏った炎は本物ですからね……、焼き捨てなさい」
 だがドラゴンは、ただ真っ向から避けもせずに突っ込んできた。一切の躊躇なく、ケルベロスたちの目前に巨体を晒し、斜めに交差するように踏み込んで、その長く太い尾を振るう!
 尾に生えた剣のように鋭い鱗が、触れたものを容赦なく斬り裂く。イミナを、ビハインドを、相馬・竜人(掟守・e01889)を巻き込んで、次はコッペリアというところで。
(「ここはひるむ場面ではございません。――抗う場面でございます」)
 小さくつぶやいたコッペリアは目前に迫り来る太い尾を恐れず、むしろ足を進めて十字に交差させた鉄塊の如き剣で押さえつけにかかる。
 ――身を貫く、鈍重な衝撃。剣の隙間から突き出た鱗が、コッペリアの身を傷つける。だが、振るわれた尾はそこで止まった。
「……感謝を!」
 尾が止まらなければ、自らもまた巻き込まれていただろうシルクが、コッペリアの背をすり抜けて駆ける。その耳に、血を流し傷ついたイミナが唱える呪が届いた。
「……浄めるように祟る。祟る。祟る祟る祟る祟る祟る祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟祟……弾キ、消セ……!」
 黒髪を振り乱して紡がれる呪は、結界を形成し内にある悪しき力を相殺、仲間を支える。
 その姿を視界の端に認めながら、シルクは身体に固定した砲を抱え、ドラゴンの腹部に潜りこむように肉薄した。外しようもないほどの至近距離まで近づいて、砲を撃ち放つ。
 その瞬間にも足は止めない。同じ所には一瞬たりとも留まらず、ドラゴンの巨体の陰に隠れるように回りこむ。
 ドラゴンの視線は、シルクの後姿を追うが――。
「よそ見してるんじゃねェよ!」
 巡らせた頭部に、流星の煌めきを纏った踵が突き刺さる。いち早く体勢を立て直した、竜人のスターゲイザーだ。
 反動でバク転し距離を取った竜人は、右手の指をドラゴンに突きつけて言う。
「俺らの事なんざ、虫けらか何かとしか見てねえだろ? ツラ見りゃ分かるぜ」
 ジロリ、とドラゴンの視線が竜人を舐め、鋭い爪が生えた前脚を振り上げる。だが、竜人は怯まずにドラゴンの蒼眼を、被った髑髏のような仮面の下から睨み返し、
「ああ、何を思おうがテメエの勝手さ。だが気に食わねえ……殺すッ!」
 氣魄を込めて言い切った。
 上から降ってきたドラゴンの爪は、身を反らし躱して。
「若人らしいその意気、大変よろしゅうございますな」
 入れ替わるように、ジョンが飛び込む。地面を滑るような低い姿勢で懐に潜り込み、体を捻って跳び上がるように放った後ろ回し蹴りが、ドラゴンの顎に突き刺さった。
「失敬、私も熱気に当てられてしまいましたかな」
 タン、と軽い音とともに着地して、ジョンは笑う。

●歯車の欠けた一歯
 ケルベロスたちの作戦は、状態異常を積み重ね、ドラゴンの動きを縛ろうというもの。戦いが長引くほどに有利に戦える、それまでの間を耐え忍べば、勝利が見えてくる。
「それまで皆さんを支えるのが、私の役目ですから……!」
 普段なら眠気をたたえているアトの瞳に、力が篭もる。手にしたハーモニカを唇にあて、呼気を吹き込む。
 流れ出る、いささか暗い曲調の単調な音楽。
(「今の皆さんでいられるよう、私から送る曲です。どうぞ……」)
 繰り返される調べが、仲間たちを恒常の状態へと誘うのだ。
 ドラゴンの攻撃は、尾を振るうことによるものが中心だった。前衛として戦うものの多さからすれば、当然の選択と言える。
 今もまた、その重厚な巨体からは信じられぬほどの身軽さでドラゴンが突っ込んでくる。
「……戒めるように祟る」
 その進路から飛び退けながら、イミナは縛霊手を振るった。叩き付けた祭壇から放出された霊力が、ドラゴンの身を縛る。
 だがやはりドラゴンは気にも留めない。狙った獲物を見定めて、一直線に距離を詰める。
 ――振り上げる前脚! 今度は尾ではない。
 ターゲットは、先ほどから幾度と無く仲間を庇ってきたイミナのビハインド、蝕影鬼。
 主とともに仲間を支える存在を邪魔だと思ったか、振り上げた鋭い爪を真っ向から叩きつける。
 穿たれる、深い傷。
「蝕影鬼……!」
 イミナが呼びかけるも、ビハインドの反応はない。
 相性の悪さと体力の低さは否めず、それまでに肩代わりした傷もあって、そのままあえなく力尽き、戦闘不能となる……。
「これ以上は、もう傷つけさせない――!」
 紗耶は静かな決意を込めて、ドラゴンを睨みつけた。
 昔、紗耶を守ってくれた両親や、救ってくれた巫術士の記憶が、心の奥底に蘇る。ケルベロスとなって戦ういまこそが、彼らになり代わって仲間を護るときだと、決意して。
 印を切り、飛ばした御魂が竜人を覆うように鎧となった。
「まだまだ、ここからだろ! あんなヤツ、デケえトカゲにすぎねェぜ……!」
 吠える竜人は神秘的な斧を引っさげて、ドラゴンの羽をちぎるように光輝く一撃を叩き込む。
「その身に降り積もった淀みを、さらに増やして差し上げますよ」
 状態異常が積み重なってきたことを見越し、ミントは振り上げたチェーンソー剣をドラゴンの傷口に叩きこみ、ねじ込んだ。
「ここが一番の堪えどころですな」
 落ち着いた態度こそ崩さないものの、ジョンの身体もひどく傷ついている。重い一撃をひとたび受けたなら、すぐには癒せない傷も深くなる。
 血の滴る身体に無理を言わせ、地獄の炎を纏った一撃をドラゴンに叩き込んだ。
 ドラゴンも黙ってはいない。少しずつ身体の動きが鈍ろうとも、闘志は僅かたりとも色褪せぬ。
「――――!」
 一際高く雄叫びを上げ、突撃。距離を取る暇も与えずに、ドラゴンは尾で周囲一帯を薙ぐ。
「――危険、と判断するのでございます」
「……やはりしぶとい。…ワタシも祟りきるのに手間が掛かりそうだ」
 イミナとコッペリアが守りを固めるが、受けきれていない。とくに余裕の無いコッペリアは、アトと視線を交わした。ここで一度交代するべきか。
 そのやり取りを尻目に、シルクがドラゴンへ吶喊する。
 まともに尾の一撃を受けた後にもかかわらず、怯まず足を進めていく。鋭い刃のような鱗が掠め、一筋の血が流れようと気にも止めず。
 かと思えば、巨体の陰に潜るように身を潜め、敵の急所へ密やかにエアシューズの一撃を叩き込んだ。
「怯まず、驕らずはこちらも同じ。被害なくアナタに死を与えられるなどとは思っていませんよ」
 血に酔っているかのような凶暴な光を瞳に浮かべて、シルクは荒ぶっている。

「代わりますね」
「すぐに戻るのでございます」
 シルクをはじめとする仲間たちが攻撃を仕掛けている隙に、アトとコッペリアはポジションを入れ替えた。
「次は私が交代しますね。……はい、これでどう?」
 後方に下がってきたコッペリアを、すかさず紗耶が護殻装殻術で癒やす。
 危険を避けた一手とはいえ、この瞬間は手数が明らかに減少している。対ドラゴンの体勢に隙が生じる――。
 ドラゴンは、手の届くうちで確実に倒せる相手を見定めていた。そして、今現在のディフェンダーは一枚、イミナのみ。
「――――!」
 ドラゴンはその豪腕を、冷酷に振り下ろす。鋭い爪が斬り裂いたのは、ジョンだった。
 躱しようのない一撃。
 肩代わりできるものもいない。
「不覚……」
 悔しげに唇を震わせたジョンが膝から崩れ落ち、蒼眼のドラゴンが周囲を揺らすような、腹の奥底からの咆哮を上げる。
「――ッ、殺すッ!」
 眦を釣り上げた竜人がルーンアックスを肩に担ぎ上げ、宙に舞う。ドラゴンの背を足場に再び跳躍、全身の力を込めてルーンアックスを振り下ろした。

●ドラゴンバスター
 だが、ドラゴンがケルベロスを追い詰めたのはここまでだった。
 降り積もった状態異常は、シルクとミントの攻撃によって加速度的に積み上がっていく。如何にドラゴンが最後まで闘志を失わずにいようと、身動きが取れなくなればどうしようもない。
 ケルベロスたちの堅実な策が、実を結んだのだ。
 鈍重な挙動となりながら、それでも抗い続けるドラゴンに最期をもたらすため、ケルベロスたちはあらん限りの力で攻撃を仕掛けた。
「……祟る。祟り足りぬ。祟る祟る祟祟祟祟……」
 狂気を孕んだ調子で言い募りながら、イミナはドラゴン目掛けて飛び上がった。
「……祟りの重圧に潰れてしまえ」
 鋭い蹴りの一撃を浴びせつつも、纏う雰囲気は何処までも厄い。
 コッペリアが平板な声で告げる。
「地獄に二界あり、一方は業火の地獄、他方は凍土の地獄。我が身はそれら二界の地獄を宿すもの」
 放たれる地獄は、燃えさかる炎にして凍てつく氷。
「彼方より来る侵略者よ、汝の罪にふさわしき裁きを受けるのでございます」
 それら地獄がドラゴンを苛み――、
「貴方を倒すことが皆を守ることに繋がるのなら、私だって……!」
 決然とした色を瞳に浮かべて、紗耶が召喚した御魂に、熾烈な火炎弾で燃やし尽くされる。
 自らも火の属性を持つドラゴンが、炎の中で苦しんでいる。
 さらにアトが放つ石化の光が、ミントの念動による爆破がドラゴンの身を削り、
「喜びなさい、破壊の化身たるアナタも死を識ることが出来るのだから」
 シルクが視認困難な攻撃を積み重ねていく。
 そして、ルーンアックスを片手にぶら下げた竜人が、鬼気迫る目で死にゆくドラゴンを睨みつける。
 斧をゆっくりと振り上げると、その刃が炎を反射して煌めいた。竜人は大地を蹴り、残された距離を詰めて。
「よぅ、地獄への切符は忘れてねェか? なに、忘れてたってしっかりと殺してやるからルールに沿って今すぐ死ねやッ!」
 荒ぶる感情のままに、ドラゴンの眉間を目掛け、力任せに斧を振り下ろした。
 ドラゴンの頭蓋に深い傷が刻まれて、だがその蒼眼は自らに終焉をもたらした竜人を睨み続けている。
 竜人もまた微動だにせず。やがてドラゴンは燃えさかる炎の中で、静かに消えていった――。

「皆さん、無事ですか? ……なんて聞くまでもなく、無事とは言いがたいですか」
「ま、生きてはいるさ」
 長かった戦いが終わり、静かに問うたミントに、竜人が悪態混じりに応えた。
 周囲でも、戦闘に決着がつき始めているようだった。見える範囲では、ケルベロスが押しているように思える。
「他の皆さんも、勝利を手にしていらしたら良いのですが」
 アトは祈るように目を閉じた。
 勝利を手にしたとはいえ、ここは戦場のただ中である。倒れた仲間を救助するとともに、状況を把握するため、ケルベロスたちは疲れた身体に鞭打って、情報収集を始めるのだった。

作者:Oh-No 重傷:ジョン・コリンズ(ドラゴニアンの降魔拳士・e01742) 
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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