神の獣が目を覚ます時

作者:ゆうきつかさ

●茨城県某山中
 そこは廃棄家電の墓場であった。
 近づく者は、違法な業者だけ。
 地主ですらも近づく事がないその場所に、怪獣ロボットが捨てられていた。
 その怪獣ロボットは日本で人気のあった怪獣映画を海外で無許可にリメイクしたモノで、神の獣と呼ばれる怪獣がロボット化して暴れ回るキワモノ映画だったようである。
 そのせいで、まったく人気が無かったらしく、同じような怪獣ロボットが辺りに山積みされていた。
 その中のひとつに握り拳程の大きさの小型ダモクレスが入り込み、機械的なヒールで家電製品っぽい雰囲気のダモクレスに変化した。
「ガォォォォォォォォォォォォォォォン!」
 次の瞬間、怪獣型ダモクレスが咆哮を響かせ、人々の命を奪うため、ゆっくりと山を下りていった。

●セリカからの依頼
「六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)さんが危惧していた通り、茨城県にある山中に不法投棄されていた家電製品の一つが、ダモクレスになってしまう事件が発生するようです。幸い、まだ被害は出ていませんが、ダモクレスを放置すれば、多くの人々が虐殺されてグラビティ・チェインを奪われてしまう事でしょう。その前に現場に向かって、ダモクレスを撃破してください」
 セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
「このダモクレスはティラノサウルスとワニをイグアナで割ったような姿をしており、何処かで見たようなデザインをしています」
 そう言ってセリカがケルベロス達に資料を配っていく。
 資料にはダモクレスのイメージイラストと、出現場所に印がつけられた地図も添付されていた。
「ダモクレスの目的は、人々の命を奪う事。そういった意味でも一般人に危険が及ぶ可能性が高いので、絶対に倒してください!」
 そして、セリカはケルベロス達に対して、ダモクレス退治を依頼するのであった。


参加者
六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)
比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)
嵯峨野・槐(オーヴァーロード・e84290)

■リプレイ

●茨城県某山中
「夏休みといえば恐竜! しかもロボです! ギゴガギゴでヤンチャ、もっとファイヤーで夏映画っぽいとゆーかロマンですよね!」
 六連星・こすも(ころす系お嬢さん・e02758)は瞳をキラキラと輝かせながら、仲間達と共に、怪獣型ダモクレスが現れる予定になっている茨城県某山中にやってきた。
 怪獣型ダモクレスは日本で人気のあった怪獣映画を海外で無許可にリメイクしたモノで、かなりのキワモノ映画だったようである。
 そのモチーフになっているのは複数の恐竜で、怪獣になってしまった経緯などが事細かに設定されていたのだが、リメイクを担当したデザイナーによって改悪されてしまい、かなり大味な設定に変更されてしまったらしい。
 そのため、知る人ぞ知る怪作であったものの、今ではそれが味となって再評価されつつあるようだ。
「地球では有名な映画に登場していた怪獣ではなく、それを無許可で模倣した怪獣のダモクレスか。随分とややこしい事になっているようだが、倒してしまえば問題ないな」
 そんな中、嵯峨野・槐(オーヴァーロード・e84290)がセリカから受け取った地図を元に、ダモクレスの出現ポイントを絞り込み、なるべく被害が少ない地形で迎え撃つ準備を整えた。
 既に警察などに要請して、一般人達の避難が終わっているため、多少の被害が出たとしても、誰かを巻き込む事はない。
 そう言った意味でも、安心して戦う事が出来るため、怪獣ダモクレスが現れ次第、全力で戦おうとしているようだ。
「アンギャアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァアス!」
 次の瞬間、怪獣ダモクレスが、大地を揺らすほどの勢いで咆哮を上げた。
 その途端、小動物達が我先にと言わんばかりの勢いで、ケルベロス達の横を通り過ぎていった。
 怪獣ダモクレスも、その後を追うようにして、辺りの木々を薙ぎ倒しながら、滑るようにして山を下りてきた。
 その姿は、まるで手負いのケモノ。
 後先考えず、目的地に向かって真っすぐ滑り降りていく様は、狂気すら感じるほどだった。
「……ん? このロボはびみょーに見たことないです。ひょっとして、映画限定のロボかしら? 赤ロボの合体変形ギミックは生かしたまま、色とガワを変えて新ロボに仕立てるやつ。夏が終わると玩具がワゴン行きになるやつ?」
 こすもが複雑な気持ちになりながら、山の上から駆け下りてきた怪獣型ダモクレスを見つめ、不思議そうに首を傾げた。
 何となく見た事があるような気がするものの、妙なアレンジが加わっているせいで、パチモノ感がハンパなかった。
 そのため、残念な気持ちが、心の中がいっぱいになった。
 だからと言って、怪獣のデザインを担当したデザイナーが手を抜いた訳ではない。
 おそらく、デザイナーなりに恰好よく、インパクトのあるデザインを考えた結果、一般人には理解される事のない奇抜なデザインになってしまったのだろう。
 そこにデザイナーの自信がドヤ顔で乗ったため、余計にタチの悪いデザインになってしまったのかも知れない。
「恐竜……というより……怪獣寄りですね……。でも、なんだか……電化製品で出来てるせいか……ちょっと可愛いですね……」
 それとは対照的に、荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)は、怪獣ダモクレスのデザインにある程度の理解を示した。
 どうやら、ダモクレスと化す時に、辺りに不法投棄されていた家電製品を取り込んだらしく、元のデザインよりも恰好よくなってきた。
 そのおかげで、見れば見るほど、その良さが分かってくるスルメテイストなデザイン。
 先程までションボリ感満載で、怪獣ダモクレスを眺めていたこすもでさえ、『……あれ? ひょっとして、格好いい?』という気持ちがヒョッコリと芽生えてきた。
 それでも、元のデザインよりマシになっただげなので、単なる気のせいである可能性も高かった。
「とにかく、ここでダモクレスを破壊しておかないと……。街に被害が出るようなことがあれば、それこそシャレにならないから……」
 そう言って比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)が自分自身に気合を入れ、怪獣ダモクレスを倒すため、山を駆け上がっていくのであった。

●神の獣
「それでは、やっつけてしまいましょう。こんなのが街に出たら、大変なことになりますし……」
 すぐさま、こすもがフォートレスキャノンを発動させ、アームドフォートの主砲を一斉発射する事で、怪獣ダモクレスを足止めした。
「カ、カ、カ、カイジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
 その途端、怪獣ダモクレスが悲鳴にも似た唸り声を上げ、ケルベロス達がいる方向に身体を向けた。
 それと同時に爆発的に殺意が膨らみ、それが鋭い刃物となってケルベロス達に向けられた。
 ある意味、それは宣戦布告ッ!
 そして、ケルベロス達を倒すべき敵であると、認識した瞬間でもあった。
「キョウリュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
 しかも、怪獣ダモクレスの動きは速く、地面を卦って飛び上がったと思った時には、ケルベロス達の前に降り立っていた。
「……は、速いッ!」
 それに驚いた黄泉が合いを取りつつ、怪獣ダモクレスにスターゲイザーを炸裂させた。
 しかし、怪獣ダモクレスは怯む事なく、大きく口を開いてエネルギー光線を放ってきた。
 その一撃は岩を砕き、地面を削り取るほどの破壊力ッ!
 万が一、直撃するようなことがあれば、決して無傷では済まないほど、強力な一撃であった。
「さすがに……これは……可愛くないですね……」
 間一髪で、その攻撃を避けた綺華が怪獣ダモクレスの死角に回り込み、オラトリオヴェールを発動させ、オーロラのような光で仲間達を包み込んだ。
 だからと言って、油断は禁物。
 一瞬でも気を抜けば、消し炭と化す最悪の事態。
 それが分かっているためか、ケルベロス達の間にも緊張が走っていた。
「まあ、その方が躊躇いなく、壊す事が出来る。むしろ……好都合だ」
 それに合わせて、槐もスチームバリアを展開し、武器や動力装甲から魔導金属片を含んだ蒸気を噴出させて、防御力を増強した。
「カ、カ、カ、カイジュウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ!」
 だが、怪獣ダモクレスの暴走は止まらないっ!
 背びれから放射線状に熱線を放ち、辺りに生えていた木々を倒しながら、再びケルベロス達に襲い掛かってきた。
「私も、ここで退く訳にはいかないのでなッ! どちらかが動かなくなるまで戦い続ける。ただ……それだけだ!」
 それを迎え撃つようにして、槐が怪獣ダモクレスの前に陣取った。
 そこに迷いはなく、覚悟があった。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」
 次の瞬間、怪獣ダモクレスが咆哮を響かせ、鋭い爪を振り下ろした。
「……!」
 それよりも早く槐が一気に間合いを詰め、怪獣ダモクレスを殴りつけて、網状の霊力を放出すると、そのまま動きを封じ込めた。
「のろわれた者ども……わたしから離れて……悪魔と……その使いたちのために……用意された永遠の火に……入れ……です……」
 続いて、綺華がウイングキャットの『ばすてとさま』と連携を取りつつ、【審判ノ刻ハ来タリ(チェインアクション・バレットダンス)】を使い、踊るような動きで怪獣ダモクレスの攻撃を躱しつつ、正確な射撃を繰り返して、装甲を削っていった。
 そのたび、家電製品で出来た装甲が音を立てて飛び、ザクザクと地面に突き刺さり、怪獣ダモクレスのボディが丸裸になった。
「花の登場が恐竜を絶滅に追いやったって説をご存知ですか? 巨大隕石が落ちるよりも前に植生の変化によって恐竜の主食だったシダ植物が減っていたって説です。……というわけであなたのトドメにはコズミックフラワーがふさわしいです!」
 次の瞬間、こすもが怪獣ダモクレスの前に陣取り、コズミックフラワーを発動させた。
 それと同時に、こすもの周囲に光の粒子が花のような形で展開した後、無数の光弾が怪獣ダモクレスめがけて降り注いだ。
「カ、カイジュウウウウウウウウウウウウウ!」
 それでも、怪獣ダモクレスがエネルギー光線を放とうとしたものの、廃棄家電で出来た肉体が悲鳴をあげ、弾け飛ぶようにして消滅した。
「何とか、ダモクレスが山を下りる前に倒す事が出来たね」
 黄泉がホッとした様子で、怪獣ダモクレスだったモノに視線を送る。
 怪獣ダモクレスは原型を留めぬほど壊れ、もう二度と動き出す事はない。
 周囲に出た被害もヒールで直す事が出来るため、ケルベロス達の完全勝利と言えた。
 その事を改めて確認して後、ケルベロス達は山を下りていった。

作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月17日
難度:普通
参加:4人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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