●都内某所
「俺は常々、思うんだ。この世界には、お色気が不足している、と! だって、そうだろ! 夏だぞ、夏! もっと欲望を剥き出しにして、頑張らなきゃダメだろ!」
ビルシャナが信者達を前にして、自らの教義を語っていた。
「だからこそ、俺は思うんだ。男は温泉街を襲って、ナンボ! 女達を襲って一人前である、と!」
ビルシャナが吠えた!
俺様路線、全開で!
そこにあるのは、まっすぐな欲望ッ!
それ以上でも、それ以下でもなく、欲望丸出しであった。
●セリカからの依頼
「霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)さんが危惧していた通り、ビルシャナ大菩薩から飛び去った光の影響で、悟りを開きビルシャナになってしまう人間が出ているようです」
セリカ・リュミエール(シャドウエルフのヘリオライダー・en0002)が、教室ほどの大きさがある部屋にケルベロス達を集め、今回の依頼を説明し始めた。
ビルシャナは温泉街を襲う事こそ至高であると訴え、その手始めとして温泉宿の襲撃を目論んでいるようだ。
この温泉宿は女性専用を謳っており、スタッフも全員女性。
対するビルシャナ達は、揃いも揃って、女に飢えたケダモノ揃い。
「今回の目的は、悟りを開いてビルシャナ化した人間とその配下と戦って、ビルシャナ化した人間を撃破する事です。ただし、ビルシャナ化した人間は、周囲の人間に自分の考えを布教して、信者を増やしています。ビルシャナ化している人間の言葉には強い説得力がある為、放っておくと一般人は信者になってしまうため、注意をしておきましょう。しかも、ビルシャナ達は自らの欲望を満たす事で、教義の正しさを証明しようとしています。そういった意味でも、放っておくと女性客にも危険が及んでしまうため、早めに手を打っておきましょう」
セリカがケルベロス達に対して、今回の資料を配っていく。
資料には、温泉宿の見取り図も添付されており、ビルシャナを倒すために必要であれば、スタッフ達も協力してくれるようである。
また、男性のケルベロスは、女性客を不安にさせないようにするため、なるべく目立たないようにしておくか、女装をしておいてほしいという事だった。
「とにかく、ビルシャナを倒せば問題が無いので、皆さんよろしくおねがいします」
そう言ってセリカがケルベロス達に対して、深々と頭を下げるのであった。
参加者 | |
---|---|
四辻・樒(黒の背反・e03880) |
若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506) |
月篠・灯音(緋ノ宵・e04557) |
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440) |
ティーフォリア・ルキアノス(サキュバスの刀剣士・e28781) |
霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788) |
●欲望温泉
「うわっ、犯罪予言してる。間違いなく、やべー奴らだー」
ティーフォリア・ルキアノス(サキュバスの刀剣士・e28781)は仲間達と共に、ビルシャナが襲撃する予定になっている温泉宿にやってきた。
この場所は温泉街の中心地にあり、女性専用という事もあって、かなり評判がいいようである。
しかし、ビルシャナ達が襲撃してくるため、現在は閑古鳥が鳴いており、半ば借り切り状態になっていた。
「だからと言って、欲に溺れるのは……とてもいけないことです……。その間違い……ここで正す必要がありそうですね……」
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)が自らの使命を果たすため、女湯に入っていった。
幸いビルシャナ達はケルベロスがいる事を知らないため、何の武器も持たず女湯に雪崩れ込んでくる可能性が高かった。
そう言った意味で、苦戦する可能性は低いものの、ビルシャナ達が下半身を丸出しにしている事も考えて、対策を練っておく必要があった。
「温泉は月ちゃんが守るのだ」
そんな中、月篠・灯音(緋ノ宵・e04557)が水着姿をクルクル見せるようにして、可愛らしくポーズを決めた。
既に一般人の避難を終えている事もあり、温泉宿は貸し切り状態。
本来であれば、水着で入浴はNGであったりするのだが、状況が状況という事もあり、スタッフも了承済みである。
「水着、良く似合ってるぞ。灯を汚そうとする不逞の輩は早めに処理して、二人で、ゆっくりと温泉を堪能するか」
それに気づいた四辻・樒(黒の背反・e03880)が、素直に思った事を口にした。
「なんだか、ちょっと照れるのだっ」
その言葉を聞いた灯音が心を鷲掴みされた様子で胸をキュンとさせ、嬉しい気持ちでいっぱいになっていた。
「おいおい、俺達を無視して、お楽しみの最中かッ! だったら、俺達も混ぜてくれよ!」
次の瞬間、ビルシャナが俺様モード全開で信者達を引き連れ、ケルベロス達の前に現れた。
ビルシャナ達は欲望の権化と化しており、欲望一直線と言わんばかりの勢いで、下半身を丸出しにしていた。
「お前、らは、異性、に、何、求め、る? 色気、とは、なん、だ? 欲望、とは、なん、だ。お前、らが、求、める、もの、わから、ないが、ここは、安らぎ、休息、の、地。その、場所、土足、で、踏み込み、人に、脅か、そうと、する、その、行為、は、許せ、ない」
それに気づいた霊ヶ峰・ソーニャ(コンセントレイト・e61788)が、臆する事なくビルシャナ達の前に陣取った。
「許せないだと!? いいねぇ、その言葉……そそるぜ!」
ビルシャナが血に飢えたケモノの如く勢いで、舌舐めずりをし始めた。
まわりにいた信者達も、同じように舌舐めずり。
既に頭の中には、ヤル事だけ。
それ故に、隙あらば飛び掛かってきそうな勢いで、みんなヤル気満々だった。
「とりあえず、暴走する欲望を何とかしてからでないと、話を聞いてくれないかもしれませんね。では、そうしましょう」
そう言って若生・めぐみ(めぐみんカワイイ・e04506)が意味深な様子で、涎をじゅるりと拭くのであった。
●荒ぶるビルシャナ
「ククククク……、この状況で随分と余裕だな! まさか、俺達に勝てると思っているのか? だったら、幻想ッ! あまりにも夢を見過ぎだ!」
ビルシャナ達が上から目線で、ケルベロス達を見下した。
そう言っている間も、ビルシャナ達は、下半身を丸出しにしており、『これが俺達の生き様だ!』と言わんばかりに、フリーダムッ!
信者達もビルシャナと同様に、下半身を露出したまま、偉そうな事を言っているため、説得力どころか、威厳もゼロだった。
「とこ、ろで、お前、らは、笑い、取ろう、と、してる、のか? 確か、何か、の、本、で、見た、な。女、が、入浴、してる、そこ、へ、男、が、侵入女、に、声、上げ、られる。そんな、笑い、を、狙った、もの、なのか?」
それを目の当たりにしたソーニャが、ビルシャナ達に対して、冷たい視線を送る。
それは、まるでゴミを見るような目であり、汚物を見るような目でもあった。
「まあ、確かに……。お前達を悦ばせるという意味では、間違っていないなッ!」
それでも、ビルシャナはまったく気にしておらず、ゲス顔でニンマリとした笑みを浮かべた。
まわりにいた信者達も、ケルベロスの逃げ道を塞ぐようにして、ジリジリと距離を縮めてきた。
「……いけませんね……欲望のままに生きては……。欲望は人の活力として……大切なものですが……振りかざして許されるものではないのです……」
綺華がバスタオルを巻いた姿で、ビルシャナ達の前に陣取った。
「許されるものではない……だとぉ!? 何か勘違いをしているようだが、それを決めるのは俺達だあああああああああ!」
次の瞬間、ビルシャナが興奮した様子で、綺華のバスタオルを掴み、これみよがしに奪い取った。
だが、綺華は無反応ッ!
まるで何事もなかった様子で、ポカンとした表情を浮かべた。
「きゃあああああああああああああああ!」
その途端、綺華が自分の置かれている状況を理解し、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら、可愛らしい悲鳴を上げた。
それに興奮した信者達が、いまにも飛び掛かりそうな勢いで、鼻息を荒くさせた。
「いやぁ、欲望一直線だねぇ。その流れで、私も襲っちゃうの?」
そんな空気を察したティーフォリアが、思わせぶりな態度で浴衣を肌蹴させた。
「ああ、もちろん!」
それに気づいたビルシャナが、ターゲットをティーフォリアに変更ッ!
まわりにいた信者達も、あわよくば御裾分けをしてもらおうと言わんばかりの勢いで、再び距離を縮めてきた。
「……そこまでだ。そもそも、温泉街は温泉を堪能するところであって、襲う場所じゃない。理性を無くしてしまったら、ますます女っ気などなくなるだけだろうに……。そもそも、変質者は吊し上げて一罰百戒にするものと相場が決まっている」
樒が真剣な表情を浮かべ、ビルシャナの目をえぐる勢いで、一気に間合いを詰めてきた。
「お、おいおい、手荒な真似は止めてくれ。別に無理やりってわけじゃないんだ。ただ、お互い仲良くしたいだけで……」
これにはビルシャナも動揺したのか、急に弱気な態度になって、愛想笑いを浮かべた。
「その割には、目つきが怪しいのだ。温泉宿で女性を痴漢。社会では白い目でみられ、変態のレッテルを張られて、待っているのは膨大な慰謝料と社会制裁。つまり、お兄さんたちは、その覚悟があって、そんな目をしているのだ」
灯音が樒の後ろに隠れながら、ビルシャナ達に生暖かい視線を送る。
「なるほど、灯を汚す気満々という事か。そんな不逞の輩は早めに矯正(去勢)するしかなさそうだな」
樒が殺意のオーラを身に纏い、ビルシャナに対して、容赦なく目潰しを食らわせた。
「うぎゃああああああ! あ、いや、別にそういう意味じゃなくて……。何というか、ほら……お互い同意の上で……」
ビルシャナが両目を押さえて涙目になりながら、脂汗をダラダラと流した。
何とかして、この危機的状況から抜け出そうとしているものの、蛇に睨まれた蛙の如く頭の中が真っ白になっているため、何も言葉が浮かばないようである。
「まあ、溢れかえる欲望で暴走しているみたいですから、まずはそこから」
そんな中、めぐみがラブフェロモンを使い、眼鏡を掛けた男性信者を脱衣所に誘う。
しかし、他の信者達は状況を飲み込むことが出来ず、目をパチクリ。
「よかったら。こちらにどうぞ? 私についてくるなら、楽しいことしてあげるよー」
それに気づいたティーフォリアもラブフェロモンを使い、同じように信者達を脱衣所に誘い込んだ。
「んじゃ、俺も……」
そのドサクサに紛れて、ビルシャナも脱衣所に入っていこうとした。
「そこの鳥、お前はダメだぞ!」
すぐさま、ティーフォリアが、全力でビルシャナを拒絶ッ!
「……という事で、『その鶏を見限る』なら、皆さんの欲望をめぐみが受け止めてあげましょう」
その間にめぐみがビルシャナと決別した信者達を引き連れ、脱衣所でイイコトをするのであった。
●ビルシャナのあがき
「うがあああああああああああ! 何故だ! どうして、俺はダメなんだ!」
ビルシャナが納得できない様子で、ケモノの如く叫び声を響かせた。
一体、何がダメなのか?
何から何まで腑に落ちない。
そんな気持ちが表情から伝わってくるほど、恨めしそうな表情を浮かべていた。
「そも、そも、そんな、無防備、な、姿を、晒す、事、自体、阿呆、の、やる、こと、だろう。その、羽毛、焼き、焦がす、容易い、こと」
その間にソーニャが一気に間合いを詰め、ビルシャナにスターゲイザーを炸裂させた。
「つまり俺がアホだから、拒絶されたという事か! そ、そんなわけがない! 俺はアホじゃない!」
それに腹を立てたビルシャナが、酷く興奮した様子で鼻息を荒くさせ、その事によって得た癒しの力で、傷ついた身体を癒した。
「改心しない不届き者……天に代わって罰を与えます……」
続いて、綺華が片手で胸元を隠したまま、審判ノ刻ハ来タリ(チェインアクション・バレットダンス)を使い、踊るような動きで間合いを取りつつ、ビルシャナに弾の雨を降らせた。
「こうなったら、お前だけでも……」
ビルシャナが半ばヤケになりつつ、灯音の胸を掴もうとした。
「いや――なのだっ! この鳥さん、煮ても焼いてもダメそうなのだ……」
その途端、灯音が涙目になりながら、樒の背中にササッと隠れ、物凄く冷ややかな視線をビルシャナに向けた」
「お前は有罪だ」
樒が冷たい視線を送りながら、氷結の螺旋を放って、ビルシャナを凍らせた。
そのため、ビルシャナは言い訳すら口にすることが出来ず、身体どころか表情まで凍り付いていた。
「確か……欲望を肯定するんですよね? では、めぐみの欲望。『お前を屠殺処分したい』という欲望も肯定して、抵抗しない手、言ってくださいね」
そんな中、めぐみが脱衣所から姿を現し、イイ笑顔を浮かべたままビルシャナに攻撃を仕掛けていった。
「それじゃ、鳥の亀な頭さんは根元からスッパリと別れてもらおうねー。だって、ほら……変質者には慈悲は無いから」
続いて、ティーフォリアも脱衣所から飛び出し、ビルシャナ自慢のモノを絶空斬で切断した。
「ぎゃあああああああああああああああああ!」
その一撃が致命傷となって、ビルシャナが白目を剥いて絶命した。
ビルシャナにとって、それは望まぬ最後。
ビルシヤナが命を落とした事によって、信者達も我に返ったが、めぐみ達によって快楽エネルギーをタップリと吸われてしまったせいで、悟りを啓いた高僧の如き表情を浮かべていた。
「これで心置きなく温泉を堪能できるな。では行こう、灯」
それを確認した後、樒がホッとした様子で、灯音に手を差し出した。
「樒ーっ。温泉いくのだ」
その気持ちに応えるようにして、灯音が樒に寄り添うようにして、仲良く温泉に浸かる。
「そういえば、ここって女性専用を謳ってるから、みんな別の場所で楽しもうか?」
そう言ってティーフォリアが信者達を引き連れ、そのままホテルに向かうのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 暴走:なし |
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種類:
公開:2019年8月14日
難度:普通
参加:6人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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