陽が沈む海に差す朝日

作者:久澄零太

「皆集まってくれてありがとー!」
 大神・ユキ(鉄拳制裁のヘリオライダー・en0168)はコロリと地図を広げて、とある海岸を示す。
「今回は緊急ってわけじゃないんだけど、皆でこの浜辺に向かって欲しいの」
 戦闘の余波で壊れたかな? と番犬達がヒール案件だと見当をつけた所で。
「ここの名所だった崖が崩落してて、漁師さん達は船が潰れてお仕事にならないし、その上にあった市場も危ないからって閉鎖されちゃってるの」
『一大事じゃねぇか!?』
 番犬の一斉ツッコミにユキはぎゅーっと耳を押さえて防御。
「だからこうやって皆に集まってもらったんだもん……」
「その関係で、皆さんには現地に赴き修復活動に当たって頂きたいのです」
 四夜・凶(泡沫の華・en0169)が引き継ぎ、苦笑しつつ。
「当日は、ボランティアの方々がいらっしゃる事も予想されます。現地の方と交流するのもいいかもしれませんね」
 ドラゴンとドンパチやったり、空の上でおてて争奪戦みたいな事になってたり、割とハードな仕事を重ねてきた番犬にとって、ある種の休暇ともとれる緩い仕事らしい。じゃなきゃ一般人なんかいるわけねぇしな。
「それで、皆にはどうせなら夜来てほしいって言われてるんだけど、いいかな?」
 疑問符を浮かべた番犬にユキが言うには。
「ヒールが終わったら、折角だから名物の朝市を見ていって欲しいんだって。船を優先的にヒールしてくれれば、夜のイカ釣りも見せてくれるらしいよ!」
 つまり、夜から朝にかけて現地民が動く為、番犬達にお礼を振舞いたいらしい。
「そうでなくても、仕事が終わるころには日が昇って、海水浴日和だろうから、普通に海で遊んでから帰って来てもいいかもね!」
 と言うわけで君たちは眠い目擦って仕事に行ってもいいし、そんな事は気にせずスヤァしていてもいい。


■リプレイ


「うぉおおお!?」
 夜の海をバッシャバッシャ……蒼眞は何故か泳いでヒール現場に向かっていた。事の次第は数分前の事……え、いつものオチだろうって?まぁそうなんだけどさ。とにもかくにも、ちょっと前の事。
「ふにゃ……んっ……」
 ユキは夜間の到着に向けて、夜空に太陽機を飛ばしていた。その関係もあって、眠気に大きく欠伸をしたその瞬間。
「馬鹿め眠気に負けて油断したな!?」
「んにゃ!?」
 ユキが両手を上に挙げ、背筋を伸ばしたタイミングで蒼眞が肉薄。背中から飛びつくなり、腹の前で腕を交差させるようにして平坦な胸を鷲掴みに……できなかったから、ぺたぺたふにふに。
「うむ、ナイスツルペタ!!」
「こんの……」
 ガッ!と脚を踏んで蒼眞の体を縫いとめて、抱き抱えられた腕の上から肘を振り下ろし、脇腹を穿つ。
「ゴフッ!?」
「ド変態ぃいいい!!」
 横隔膜に撃ち込まれて拘束が緩み、体を折った蒼眞。下がる頭に頭突きをかまし、吹っ飛ばして反転、蒼眞の体が床に落ちる前に白猫の脚が彼の者の体を踏みつけて。
「日柳さんだけ現地集合ねッ!!」
 ッドン!衝撃波すら起こす脚力による飛び蹴りで太陽機から突き落とし、機影は蒼眞を海に残して去っていく……。

「えーっと?ここからあそこまでは……ていうか、船底についてはどの船も無事みたいっすね」
 セットは無数の浮遊機を飛ばし、方々から超音波を当てて船体の損傷の確認作業に当たっていた。船の下半分については夜の海とあって確認も難しいが、ソナーを当てて形状を確認してしまえば、水の抵抗を抑える為に作られた流線形のボディが維持されているか否かはすぐに分かる。
「やっぱり、全体的に船の操舵室の方が問題っすね」
 近くの崖の崩落の影響で、直撃こそしなかったものの飛散した岩片が降り注いでおり、とてもではないが船を動かせる状態ではなくなっていたのだ。
「さて、後は一気にヒールっすね!」
 バラララ……トランプでも広げるように、盾型の浮遊機が一斉に展開。
「戦闘もなくのびのびと、さらに言うなら最近あまり使わないグラビティが使えて楽しいっすー!」
 お仕事が楽しいと言い出す辺り、どう見ても深夜テンションのセットさんでした。

「お困りということであれば一肌脱がぬわけにはいくまい!」
 背番号七二八八、括選手の登場です。崖の上で片手を挙げて、スターティングポジション。助走をつけて。
「とぉうっ!」
 ジャンプ!回転しながら軌跡には花弁を散らし、舞い散る花びらを撃ち抜く無数の弾丸が岸壁をヒール!これは美しい……しかし、下は岩が乱立する夜の海。果たしてフィニッシュを決められるのか!?
「ぶぎゃぶ!?」
「うぬ?」
 あーっと、括選手まさかの海の中からヒール中だった蒼眞の頭に着地!ポージングは美しかったが足場にされた蒼眞諸共海中に沈んでいくー!!さぁ気になる点数は……四十四点!着地したポーズのまま、数秒の維持をする前に海中に沈んだ事が大きかったようですね……って、ナァニコレ?

「たくさんイカとお魚捕ってもらうためにもお舟も網も直さなきゃだね」
 などと食欲に忠実なエヴァリーナ。今日はちゃんと仕事するだろうなって思った三秒後。
「野菜や果物生えてきちゃったけど、ちゃんと動けば無問題だよね!」
 南瓜の馬車ならぬスイカの漁船になってるー!?どうすんだコレ漁師さん達も呆気にとられてんぞ!?
「何してるんですか……?」
 船に突き刺さっていた岩片を撤去していたミリムが半眼で。
「やるなら可愛くデコりましょうっ」
 ぱーどぅん?しかしこちらが理解する前にミリムが背筋に冷たい物を走らせる風を呼び、スイカの船がスワンカットスイカの船に……どうしてこうなった?
「うぅ……眠いです、でも日頃の戦いに比べ楽な仕事です」
 欠伸して、涙を拭うミリムは一先ず修復が終わった事を確認して踵を返し。
「さてそれじゃあバカンスに行く前にひと眠り……」
「何言ってんだ嬢ちゃん、漁はこれからだ。船の試運転もあるしな」
 しかし漁師に回り込まれてしまった!
「……え、漁に出る?ちょ……引っ張らないでくださいー……!私だけでは行きません、凶さんも道連れですっ!」
「えっ、私はまだ仕事があぁぁ……」
 凶を引きずるミリムを引っ張る漁師が船に乗り込み、動くことを確認した辺りで。
「戦争!争奪戦!運動会!……と、最近は皆忙しそうだね」
 人気のない崖の上。片隅に残された仕事【岩盤の亀裂】を前に、ロコはヒールを撒きつつ、眼下で動き始めた飾り切りめいた果物の船を見送りながら、その視線を横に滑らせて。
「真面目にやっても呆けていても睨んでくるセイディは何なの。見張りなの?監視なの?ちゃんとやってるよ頑張ってるよ」
 じー。猛禽にも似た箱竜は応えない。ただ、ジッとその眼光をロコの横顔に注ぐばかりである。動かぬのなら邪魔ではない。邪魔ではないが。
「そろそろ肩から降りてくれない?重いし地味に鉤爪が痛い」
 しかし箱竜は動かない。
「セイディー!!」
 嘆きながらも修復を終えて、夜空の下を歩きだす。蒼の火の粉を足跡にして、海岸を包むと錯覚する道路の片隅を家路とすれば、ちらと、視界の端に先ほど旅立っていった船の光が見える。
「ここならいいかな」
 触れれば燃ゆる特異な地獄故に、翼を広げるにも一苦労するロコ。場所を選び、飛び立つ彼の傍らで。
「……」
 セイディは、遠ざかる漁船の光をずっと見つめていた。


「夜の海って、光に集まった魚を狙って、大きな魚やイカも集まるそうだけど、なかには光に猛烈に反応するダツとか、獲物を横取りするサメとか危険もいっぱいよね」
 どこでそんな知識を仕入れてきたのか、アーシャは夜の海を進む漁船の上で拳を素振り。
「任せて、危険あらば撃退して見せるわ!」
「ハハッ!こいつは頼もしい」
 キリッと微笑むアーシャに漁師が笑いつつ、スイカの種になった照明を点灯。後は巻き上げ機がイカをひっかけてくれるらしいのだが。
「……おうっぷ、ヘリオンとは違う揺れが、船酔いがオロロロォ……」
 ミリムが力尽きた……船の縁から身を乗り出して、撒餌(ミリムに最大限配慮した表現)していると。
「あ、船の明かりにつられて来るイカが見えますよ凶さん。コレを釣り上げたらその場ですぐ捌いてお刺身というのも良いです?漁師さん」
「おや、もう集まって来てるんですね」
「なんだい嬢ちゃん、どうせなら自分で釣りたいってか」
 釣り竿を借りたミリムが準備していると、エヴァリーナが凶の服をぐいぐい。
「イカ捌いて~カルパッチョとイカ飯食べたーい」
「私はイカ刺しでお願いします」
 しれっとミリムからも注文が入りました。何かを察した漁師さんが凶を肩ポム、からのまな板と包丁を手渡し。
「まるで昼間みたいっすね、正に光を観る!」
 凶が漁船の上で調理器具を並べる横で、セットは片手を額に添えて強烈な光から目を守りつつ周りを見回し、機械で巻き上げられてくるイカがかかったワイヤーを観察。
「しかし、明るいのはいいっすが、コレにイカが寄ってくるのは不思議っす。海の生き物の習性って面白いっすねー」
「でしょう?海の生き物ってすごく面白いのよ」
 イカじゃなくてアーシャが釣れた!?
「でも実はイカが集まってくるのは光じゃなくて、むしろ光を嫌っていてね?」
「え、そうなんすか!?」
 アーシャ先生による夜釣り講義が始まる傍ら、括が腕を構えてシャキーン☆
「ふふぅん。任せよ。わしの!この手が!この手が――!」
 スカッ、スカッ、そもそも船から海面まで手が届いてませんぞ?
「……」
 無言で服を脱ぎ捨てた括はサラシに褌姿で腰に命綱を結ぶとその片端を釣り竿に結んで、イカを透き通るほど薄くスライスしてオリーブオイルとビネガー、ブラックペッパーで味付けしつつトマトと重ねてレタスに包み、大皿に円形に並べて達成感に浸ろうとした瞬間にエヴァリーナに一瞬で食滅されて崩れ落ちた凶に手渡し。
「さぁ、わしを海の上へ運ぶのじゃ!!」
「え、大丈夫ですか?」
 ぷらーん。宙吊りになった括を海面すれすれまで降ろすと。
「……わしのこの手にかかればこんなものじゃ!」
 パァン!括のサーモンパンチがイカを漁船の上に!だが、海面すれすれに吊るされていると……。
「さぁ、どんどん獲ってや……のじゃー!?」
 たまに来る高波の犠牲になるのよね。
「……ん?なんかこっちに……」
 ザパァ、野生の鮫が現れた!
「凶ー!速く!速く引き上げるのじゃ!!」
 と括が助けを求める傍らをアーシャが跳ぶ。
「どりゃぁ!!」
「まさか盾を足場にする日が来るとは思わなかったっす……」
 そして鮫の鼻っ柱を踏みつけて、海中に撃退するとセットが飛ばした盾に立ち。
「……フカヒレを逃がしたって考えると、惜しかったかしら?」
 頬に指を当てて考え込むアーシャなのだった。


「エライ目にあった……」
 海に落ちたり沈んだりしていた蒼眞は疲労困憊で朝市を彷徨い、海鮮丼を注文。炊き立てご飯に今朝あがったばかりの海の幸を味わいつつ、ふと磯の香りが吹き抜ける。
「つぼ焼きか……」
 サザエを殻ごと七輪で焼いており、焦がし醤油とサザエ本来の磯の香が腹の虫を呼ぶ。いざ口にしてみると。
「甘苦い……」
 身はほんのり甘く引き締まった歯ごたえを持ち、ワタはほろ苦く真逆とも言える味わいを放つ。そこに醤油の香ばしい味が加わることで、魚介本来の味が強く際立っていた。
「日本酒……ダメだ、飲んだらオチる……!」
 蒼眞はチラチラと朝から酒盛りしてる人々を横目に、昨夜修復された崖の上へ。
「徹夜明けはさすがにきつい……」
 芝のベッドに横たわり、青空を布団に眠りにつくのだった。

「ふわぁああ……」
 朝市の簡易テーブルに身を投げ出して、京華は大きく欠伸をするなり。
「ねーむーいーよー!!」
 子どものようにジタジタバタバタ。
「徹夜なんて久しぶり過ぎて超眠い!」
 ……お前、『こちら側』の人種じゃなかったっけ?
「あはははっ……!なんのことかな?私はいつも十二時間は寝るの!」
 現実から目を背けるように突っ伏す京華だが、鼻をくすぐる海鮮の香りに跳ね起きて。
「でもでも、デスマーチで頑張ってヒールしたからにはグルメツアー!しとかないと……!」
 このまま終わっては勿体ない!と歩き始めた京華であったが。
「新鮮な魚介類……ジュルリ……何から食べようかな~」
 何を食べようかとあっちへフラフラこっちへふらふら。ズラリと並ぶ丸物の魚を眺めている内に、ピンと来た。
「あ!市場から魚一匹丸々買ってきて、誰かに料理してもらおうかな。さばき方から覚えたら今度またここでお魚買いにこれるし!」
 くぅ……ここでついに、京華の腹が悲鳴を上げる。
「と、とにかくご飯!」
 頬を染めながらご飯を貰い、さて何を食べようかと思うと。
「番犬の嬢ちゃんこれ食ってきな!」
「あらあら、昨日はどうもねぇ……」
「今となってはこの町ともう一カ所でしか獲れない味だよ、食べてきな!」
「この町自慢のお惣菜です、是非どうぞ」
 鯵のタタキ、スズキの刺身、ウニの塩漬け、果ては爆弾(ゆで卵をさつま揚げで包んだようなモノ。口にすれば出汁の染みたさつま揚げの中から白身のぷりっとした食感とこれまた出汁の染みたほんのり甘い卵が現れて、黄身とさつま揚げから染み出す出汁がまじりあい口いっぱいに旨味が広がる、マイナーな練り物)まで乗っかり、カオスな丼に……。
「これが……朝市……ふぉお……」
 京華はちょっと丼を眺めてから食べ始めるのだった。

「ここからここまで全部買うので、少しまけて頂けないかしら?」
「はい!?」
 獲れたての魚を並べる露店の、端から端まで示されて、店主の視線が商品とアウレリアの顔を行ったり来たり。
「何処のマンモス男子校の寮母か巨大相撲部屋の女将かとか聞かれるのも慣れたものだけど、これでも一食の食費に頭を悩ませるごく一般的なただの主婦よ……」
 ほぅ、と。憂いを込めたため息を溢すアウレリアに、訳ありなんだろうな……と何かを察した店主。一先ず電卓を叩き、全商品の金額を合算して。
「んー……ウチも余裕があるわけじゃないからな……これでどうだ!?」
 店主が見せたのは数万円に上る合計金額の内、下から四桁分を指で隠し、端数を切るという意思表示。アウレリアは小さく頷いて。
「ありがとう、その金額でお願いするわ」
 会計を済ませて、借りてきた台車に食材を積みこみ、いざ近くの宅配業者に頼もうかとしたところで。
「奥さん、こいつも持ってきな」
「あら、いいの?」
 袋に入った赤海老を受け取って、アウレリアが首を傾げるも。
「何か苦労してるみたいだからな……そうでなくても、アンタらが来なかったらそもそも俺たち漁師は海に出られなかったんだ。旬には早いからそれしかないが、俺からの感謝って事で持ってってくれ」
「そう……ありがとう」
 受け取ったエビも一緒に荷物を発送手続きして預け、さてどうしたものかと思った所でエヴァリーナを見かけたが。
「凶くんイカ飯まだー!?」
「その前にさっき天ぷらを揚げたばかりで……もうなくなってる!?」
「私のイカ刺し~イタリアより情熱を込めて~はまだですか?」
「え、さっき頼まれた時はフランスの美学じゃありませんでした!?」
 ミリムと二人がかりで、量と質の二つの方向から凶の腕を殺しにかかっていた。エヴァリーナの埒外たる食欲はいつものことながら、何気にミリムもヤバい。何がヤバいって、釣りたてイカ刺しという、本来なら漁師しか食べられない味に釣られてイカを釣り続けた結果、朝日が昇るまで漁船に居たミリム。一睡もしていない彼女は一周回って眼が冴えて、しかし思考回路がおかしなことになっているらしく、非常識な注文をするものだから凶としては負担が通常の数倍に。
「あ、イカリングも食べたい!!」
「というか、イカ刺しにオプション付けてないでカルパッチョって頼んだ方が分かりやすかったでしょうか?」
「二人ともちょっと待ってくれませんかねぇ!?」
 そんな様子を眺め、アウレリアは踵を返して。
「たまには二人で過ごしましょうか」
 そっとアルベルトと腕を組む。愛する夫は応えてはくれない。けれど、言葉の代わりに彼は視線を向けて、アウレリアに合わせて進みだす。
「アルベルト、あーん?」
 買った串焼きをアウレリアがアルベルトの口元に差し出して食べさせるが、口にした途端に彼はだーっと涙を流し始めた。
「どうしたの?あぁ、やっぱり辛くないと美味しくない?」
 少しだけ眉根を寄せて、七味の瓶を取りに行こうとするアウレリアを、アルベルトが背後から抱きしめた。
「アルベルト……?」
 アウレリアが呼びかけても、アルベルトは応えない、応えられない。たった一言、「君と一緒に食べるものならなんだって美味しいよ。君の手料理だって、こうしてイベントで買った物だって。それはそれとして久々に辛くない物が食べられたから、懐かしくてちょっと感動しちゃってさ……あはは」と伝える事すらできない。けれど……。
「……」
 アウレリアはそっと、静かにアルベルトの手に自分の掌を重ねる。例え交わす言葉がなくても、二人の心は通じ合っているのだから……。
 所で、あの、お二人さん?白昼堂々抱き合ってるとか、めっさ近隣住民に見られてますけど?ねぇ、見世物になっちゃってるの分かってる?ねぇ!?……ダメだ、聞いちゃいねぇ……。


「夏だ!海だ!水着だ!!って訳で見にきたよん、今回の水着も可愛いじゃーん、良い目の保養さ」
「……」
「なんで隠すの!?」
 ユキはパーカーを閉じて水着を隠すようにして警戒。仕方ないよ、だって永代だもん。
「去年、サーフィンしよー教えるよーって言ったから、今回誘いに来ただけだって」
 苦笑する永代だが、日頃の行いから積み上げてきた印象はぬぐえていない模様。
「あ、でもユキちゃんって夜から起きてるんだよね……体力的に本格的は無理か?ならのんびり気味の海水浴にするとして……ユキちゃんって多分泳げる……よね?運動神経良さそうだし」
「泳げるけど……」
 じとー。絶対何か仕掛けてくるって警戒の眼差しをやめないユキに、永代はボードを持ちだして。
「じゃあ今回はボディボードって事で!」
「それサーフィンじゃないの?」
 のんのん、と指を振る永代曰く。
「サーフィンと違って、立たずに寝そべってるだけだからちょっとだけ簡単なのよん」
 で、実際にはフィンもつけるんだけど、ユキは「足が使えなくなるから」と付けずにボードに乗ってぱしゃぱしゃ、かーらーの。
「うにゃぁあああああ!?」
 めっちゃ波に巻き込まれて……いやあれ波に沿って滑ってるのか!?
「速い!思ってたより速い!!」
 ボードを抱えるようにしてプカプカしつつ、予想外の爽快感に目を輝かせるユキだったが。
「……白焔さんがいない」
 ユキが波を滑っている隙に海中に潜り、姿を消した永代。そーっとユキの水着を奪おうと手を伸ばして……。
「やっぱそういう事するんじゃん!!」
「ぎばばばばば!?」
 速攻でばれて手首を捻り上げられる始末。
「海で泳いだ後の海の家でのかき氷とか、最高じゃない?ほ、ほら、俺おごるから、ね?」
「いらないっ!」
 首から下を砂浜に埋められてしまい、必死に取り繕うも、ぷいっとソッポを向かれた永代。彼が救出されるのは、もう少し後の事である。

作者:久澄零太 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月6日
難度:易しい
参加:10人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 1
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