ケルベロス大運動会~It's Showtime!!

作者:柊透胡

「直近では、『ドラゴン・ウォー』となりますか……」
 もう2か月前となった大戦を思い返したのか、感じ入った表情を浮かべる都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)。だが、すぐにいつもの生真面目な面持ちで、ケルベロス達を見回した。
「『全世界決戦体制(ケルベロス・ウォー)』の度、ケルベロスの皆さんは多大な戦果を挙げています。それ自体は素晴らしい事ではありますが、世界経済の大きな疲弊も免れません」
 この経済状況を打破する為、おもしろイベントで収益を挙げようというのが、『ケルベロス大運動会』だ。
「近年の皆さんの活躍を後押しするべく、第4回の今回は、最大の支援国であるアメリカ合衆国での開催が決定しました」
 例年と同じく、世界中のプロモーター達が、危険過ぎる故にお蔵入りとなった数々の企画を持ち寄り、アトラクションの設営が急ピッチに進んでいるという――さあ、世界の中心とも言えるアメリカ合衆国を舞台に、様々な種目に挑戦しよう!
「それで……運動会開催に合わせて、ラスベガスではケルベロスの皆さんを歓迎するセレブパーティーが催されます」
 アメリカの富裕層がこぞって参加する豪華なパーティーで、世界最高峰のショーを観たり、ケルベロス映画の上映もあるという。
「世界最高峰?」
「はい。世界最高峰のショーといえば……それは、ケルベロスの皆さんが魅せるショーに他なりません」
 小首を傾げるドワーフの少女(外見は)に、ヘリオライダーは粛々と断言してのけた。
「つまり、私からのアナウンスは、ショーへの出演依頼となります」
 ミニライブもよし、寸劇もよし、ダンスやバレエ、マジックや大道芸等々、「ショー」に類するものならば何でもありだ。
「ちなみに、マジソンスクエアガーデンで、様々な競技の世界チャンピオンとケルベロスが戦うドリームマッチが開催されますので、こちらでは『ショー』として独立した演目をお願い致します」
 勿論、ショーのパフォーマーが、パーティーに出席して他の演目を観るのも大丈夫。
「パーティーの余興となりますので、演目1つにつき最大15分程度として下さい。後は、屋内の舞台となりますので、その2点を考慮して頂ければ」
 照明や音響等の設備は、一流のスタッフによる万全の態勢なので、必要機材は問題なく用意される。ケルベロスは、ショーのパフォーマンスに専念して欲しい。
「……まあ、裏方に回るケルベロスの方がいても構いませんが」
 ショーの企画立案から準備・レッスンを経て、当日のパフォーマンスに至るまで、基本はケルベロス達の手に委ねられる事になる。
「現実問題として、ケルベロス・ウォーを強力に支援してくれる富裕層と友好を深める事は、デウスエクスと事を構える上でも、とても重要です。是非とも、パーティを盛り上げるショーを宜しくお願い致します」
「まあまあ、そんなに肩肘張らなくてもいいのではないかしら?」
 お堅い言葉にクスリと笑んだのは、シャドウエルフの初老のご婦人。
「要は、オーディエンスが夢中になる、素敵な世界を作り出せばよいのでしょう? 舞台に立つ事、表現する事、それは、演者にとって至福の時間だもの」
 ならば、その至福を、パーティーの出席者全員にも届けよう――It's Showtime!!


■リプレイ

●幕前序曲
 パーティーの会場は、ラスベガスでも最上級のホテル最上階。そのイベントとして、ケルベロス達が出演した映画3編が上演され、世界最高峰のショーの時間となる。
「演目は、6件」
 各演目の企画申請書を確認する都築・創。どんな構成が良いだろう?
「二部構成は、どうだろうか?」
 どうせなら楽しみ尽くしたいと、ショー全体の企画から協力を申し出たディークス・カフェインの提案だ。
「丁度、演武系とライブ系に分かれるし、いいと思うわ」
 頷いた結城・美緒は、企画申請書を右と左に3部ずつ。照明や音響、大道具・小道具の有無等、演目それぞれで打合せを要するだろう。
「間の休憩時間は、30分程か?」
「妥当と思われます」
 又、生放送出来ないか? せめて録画放送を行えないかと提案するディークス。
「放送局との折衝も、俺がやるぞ」
「全世界に発信するのでしたら、ネットの動画配信の方がやり易いと考えますが?」
 或いは、DVDやBlu-rayの通販等――この辺りは、パーティーでの評判次第だろう。
「ショーが終わる頃には、もう夜ですよね?」
 歌と踊りは得意だけれど、今回は裏からショーを盛り上げる側に回りたい――という訳で、照明&特殊効果担当のミリム・ウィアテストの確認に、貴峯・梓織はスケジュールを確認。
「ええ……ショーは休憩時間も含めて2時間程。外はすっかり暗いわねぇ」
「やった! フィナーレでやりたい事があるんです」
 ミリムの楽しげな提案に――嗚呼、確かにと頷き合うスタッフメンバー。
「判りました……資材の調達からお任せしても?」
「勿論です!」
「宜しくお願いします……それから、因幡さん。水着での給仕は不許可です」
「何で!? 折角新調したのに!」
「ドレスコードは、きちんと従って下さい」
 ショックを受ける因幡・白兎だが――或いは、プールサイドでのパーティーならまだしも、全世界から注目を浴びるケルベロスだからこそTPOは大事。
「執事服とメイド服は問題ありませんので、そちらでお願いします」
「……はぁい」
「では、当日の流れの再確認を」
 パーティー内のイベントとはいえ、通常では考えられない程、準備の期間は短い。当日まで裏方も大忙しだ。

 あっという間に時間は過ぎ――ラスベガスセレブパーティー当日。
 アメリカ中のセレブが集い、ケルベロスも参加自由なパーティーは大いに盛り上がる。
 ケルベロス出演の特別映画――戦争スペクタクルから、シャークアタックのパニックサバイバル、恋愛ありアクションありの群像劇が順に上映され、会場が湧く事もしばしば。
 そうして、ラスベガスに夜の帳が降りる頃。特設のステージに、スポットライトが当たる――It's Showtime!!

●白狐狼戦舞
 第1部「ケルベロス演舞!!」の1番手はディークス・カフェイン。
「重力(グラビティ)用いた戦舞を御覧に入れよう。 It's SHOW-TIME!」
 深い色合いが印象深い軍服に、並ぶ勲章は戦功の誉れ――雄々しき軍人の構えは、オリジナルグラビティ「葬造拳肢」。
 呼気一吐、神速の踏込みから各急所への奪命の連打。重力と獣の力により強化された手脚の鋭い打撃は空を裂き、白き尾がしなやかに閃く。
 喩え一撃を防がれようと次の攻撃への流れ淀みなく。臨機応変を旨とした型は敵を何処までも追う。その鋭利な動き1つ1つに、オーディエンスから溜息が零れる。
 ――――!!
 最後、耳から取り出した白き武術棍が空に投げられるや見る見る大きくなる。片手で掴むと同時、燃え盛る紅蓮の炎。
 一面を焼き尽くさんとする紅蓮大車輪――夏らしく熱いパフォーマンスに、拍手が湧いた。

●ケルベロス組手演舞
 2番手は、天音・迅&此野町・要の組手演舞。
「皆に楽しんで貰えるよう、頑張ろう」
 登場した2人の身長差は約38㎝。男女のペアのダンスならぬ組手の体格差が、ステージの上だからこそ明確に。
 礼、構え――向かい合う2人の空気が一変する。先に仕掛けたのは、迅。体格差は手足の長さに直結する。リーチを活かしての拳撃、蹴撃を掻い潜り、要はインファイト狙いで距離を詰める。
 攻撃は寸止め。だが、ギリギリを極めた隙のない打ち合いに、オーディエンスは息を呑む。
 ――――!!
 気合一閃! 迅の発勁で吹っ飛ばされた小柄に場がどよめく。受け身の音も高らかに、すぐさま体勢を立て直した要の全身のバネがたわむ。跳躍から身を捻り、遠心力をも威に換えた飛び回し蹴りを、真っ向から受ける迅。
 要が間合いを取るや、すぐさま迅の飛び後ろ回し蹴りが迫る。切れのある大技の応酬は寧ろ、格闘技の美しさを際立たせる。
 だが、これは『ケルベロス』の組手ならば――終盤、いよいよ交錯するグラビティ。
 アウトレンジから放たれる、疾く突き抜ける衝撃波の嵐。どう捌くかと挑み掛かるような、迅の隙の無い掌打からの連撃は要の逃げ場を奪う。ガードの上からのラッシュは「訃報の拳牢」と称するに相応しい。
「……っ」
 その全てを凌ぎ切った要の拳に螺旋が渦を巻く。
「発現……纏、練気から、形成……っ! 行くよっ!」
 魂喰ノ壱「捻り焔」――迅の懐深くに入り込み、下から顎を狙う捻り掌底が炸裂する!
 ――――!!
 爆発の轟音がホールに響き渡り、消えた時。
 肩を並べた迅と要はオーディエンスに一礼する。歓声と拍手は惜しみなく、映画の殺陣の如き華々しい演武の余韻に人々は酔い痴れた。

●ケルベロス・ニンジャショー
 第1部の最後、ステージに登場したのは、ウォーレン・ホリィウッド&美津羽・光流。
 ウォーレンが頭巾とマスク、忍装束という如何にも『ニンジャ』な装いに対し、光流はアグレッシブな普段着。素顔も晒している。
 向かい合い、得物を構える2人。アップテンポなロックが流れるや、交錯した太刀から火花が散る。
 目まぐるしい攻防をスポットライトが追い掛け、チャンチャンバラバラの効果音も激しく。エンターテインメント溢れる立ち回りに、オーディエンスも盛り上がる。
 ガキィッ!
 ウォーレン優勢も束の間。光流の繰り出す蹴打が、太刀を弾き飛ばす。咄嗟の呈でウォーレンが落ちた太刀に手を伸ばせば、させじと光流も動く。
 ――――!!
 だが、その動きはフェイク。素早く手裏剣を投擲するウォーレン。体勢整わぬ光流危うし?
 カカカッ!
 文字通り、変わり身の術。ごとりと落ちた丸太を前に、息を呑んだウォーレンの背後を取った光流のとどめの一撃が――。
 ボンッ!!
「……え?」
 思わず、素で橙の双眸を瞬くウォーレン。確か、光流の刀でとどめを刺されたウォーレンが倒れて終幕、の段取りの筈が。
(「花……? こんな流れ聞いてないー?」)
 刀から早変わりした薔薇の花束を手に、光流はめっちゃイイ笑顔。と思う間もなく、頭巾とマスクが剥ぎ取られ、淡緑の髪がスポットライトの光を弾く。
 こうなればもう、笑顔で挨拶するしかない。にこやかにオーディエンスの歓声に応える2人。
「……もしかして、気づいてた?」
「何か訳ありなんは、そらな」
 そうして、拍手の中、ステージ袖まではけたウォーレンの呟きに、光流は小さく肩を竦める。
「顔出すの躊躇っとぅ理由、何なのかまでは知らへんけど。堂々としてればええねん」
 衒いのない真っ直ぐな言葉に、ストンと肩の力が抜けた気がした。
「うん。堂々と……だね。ありがとう、光流さん」

●インターミッション
 第1部は盛況の内に幕を閉じ、第2部の前に30分の休憩を挟む。
「皆さんも是非どうぞ!」
 第2部のライブに備えて、ケミカルライトを配って回るミリム・ウィアテスト。
 興奮冷めやらぬ面持ちで歓談するセレブ達の間を縫い、因幡・白兎は飲み物の給仕に勤しむ。オリジナルグラビティのドレスアップを使い、その姿は時にメイドさん、時に執事と、彼自身が早着替えのパフォーマンスをしている様相だ。
 ついでに、第2部の演目の見所を、ネタバレにならない程度にご紹介。
(「大事なスポンサー様だもの。ケルベロスの覚えを良くしてもらわないとね」)
「第2部も心ゆくまでお楽しみください」

●フラ・アウアナ
「今日はワタシ達のために盛大なパーティを開いてくれてありがとう。皆さんへの感謝を込めてフラを踊ります」
 第2部「ケルベロスライブ!!」冒頭を飾る流暢な英語のご挨拶。ハイビスカスとティアレが描かれた赤系のフラドレスも華やかなマヒナ・マオリだ。レフアのレイが、ステージに映える。
 BGMは、ハワイ語のラブソング。フローレスフラワーズで南国風の花を降らせながら、マヒナは歌詞に合わせて踊り出す。
 フラには古典的で厳かなフラ・カヒコと現代風のフラ・アウアナがある。今回は、親しみ易さ重視でアウアナをチョイスした。
 愛らしい笑顔に、オーディエンスや家族、友人、そしてクムフラへの感謝を込めて。表情豊かなフラ・アウアナに、観客も自然と笑顔になる。
 ラストの投げキッスは、パーティ会場にいる筈の恋人へ向けて――温かな拍手が、ホール一杯に広がった。

●MAG=MEL
 5番目の登場は音楽ユニット「MAG=MEL」。
 花の精霊の如き純白のクラシカルドレスが眩いチェレスタ・ロスヴァイセ。リューディガー・ヴァルトラウテはバグパイプ、エリオット・アガートラムはフィドルを手にしている。
(「私たちを支援して下さる、世界に名だたるセレブの皆様に恥ずかしくないステージを」)
 これまで歌手として何度も舞台に立ってきたチェレスタでも、緊張と不安は否応もなく。けれど、今、彼女の傍には最愛の旦那様と心強い仲間がいる。
(「きっと、きっと大丈夫」)
 披露するのはケルト音楽。世界的に有名な幻想文学をモチーフにした楽曲だ。
(「大丈夫だ、チェレスタ。お前なら出来る。俺たちが全力で支えてやる。だから、自分を信じろ」)
 欧州に古くから伝わる伸びやかな音色に、最愛への激励を込めて。リューディガーのバグパイプは、広大な大自然の如く勇壮でありながら牧歌的な郷愁も漂わせる懐かしい響き。
 エリオットのフィドルは、ゆったりしたテンポながら装飾を強調した独特の音色だ。
 エルフやドワーフがまだ神話やおとぎ話の世界の住人だった時代――世界を災厄から救う使命を帯びて集った旅の仲間達が、助け合いながら強大な敵に立ち向かい、様々な苦難や呪いを乗り越えてゆく物語。
 今もデウスエクスの脅威と戦うケルベロスにも、そしてそれを支える一般の人々にも、きっと何かしら心に響く所があるだろう。
 遥かなる大空を、深遠なる森を、緑の草原を、吹き渡る風を――民族音楽独特の旋律は、オーディエンスを壮大な世界観に誘っていく。その中心は、繊細にしてたおやかなチェレスタの歌声。
♪ 遥かな空輝ける いと高き希望の星
  愛し子らが迷わぬよう 護り導きたまえ
  たとえ暗闇が 世を覆いつくすとも
  この胸に抱きし光は消えることなし
  いかなる時も 我が心は 同胞と共にあり

●L'aube Roses
 本番直前――舞台を共にするメンバーを見回し、ロゼ・アウランジェはにっこりと。1人1人と目を合せて頷き合う。
「さあさあ、夢と光の競演だ。思いっきりやってやるぜ」
「ショーの本場、アメリカの舞台に立つってなんかすごいことだよね」
「アメリカ特別ライブ! どんどん盛り上げてくよー!」
「素敵なショーになりそうで、私すっごく楽しみだよ!」
「芸については本職ではないが、剣の扱いならば自負がある。存分に歌舞いて見せよう」
「私は寧ろ本業だからな。気合いを入れなくては……観客を楽しませるためにも、私達がこのライブを楽しもう」
「うぅ、戦闘より緊張するけど。張り切って、楽しまないともったいないもんねっ!」
「よし! 最高の舞台にしようぜ! なんでもBIGなアメリカで、BIGな舞台を披露してやろうじゃないか!」
 皆の気合も十二分! そして、ロゼは、ケルベロスの歌い手から、物語を歌い紡ぐアイドル歌手『A.A』へと進化する。
「夢の舞台のはじまりですよ!」

 ――イントロは、三味線の音色。
(「ロゼは……A.Aは俺の推しだからな」)
 演奏の前、ロゼと見交わしウインクした。宵華・季由は和の音に想いの丈を込める。
(「やってやろうじゃないか! 俺の音色も君の歌う世界のひとつになれればいい」)
 披露するのは、旅団の名を冠する皆の歌「L'aube Roses」、その和風アレンジ。
 ――――!!
 舞台を彩る美しい七彩の光。戯・久遠と桜庭・萌花がろぜっとらんちゃーを撃ち上げると同時、光の渦にロゼ――A.Aは身を躍らせる。
 絢爛の歌響く中、薔薇吹雪がはらはらと。ボーカルの旋律を和音で彩るのが真島・雫、月岡・ユア、刈安・透希のコーラス隊だ。
(「頑張って歌っちゃうんだから……!」)
 やはりアイドル経験のある雫は、コーラス2人の声にもしっかり合わせて。こんな素敵な場所でライブするのは初めてで、胸のドキドキが止まらない!
 黒三日月柄の着流しも粋なユアは、季由の三味線とギターセッション。A.Aの歌が、皆の舞台が輝けるように、喉を震わせる。
 そして、赤い和服が艶やかな透希がコツリとブーツを鳴らせば、星や花弁、虹が散る。
 さぁ、物語の世界へようこそ――透希の合図に、舞台へ飛び込んできたのはハル・エーヴィヒカイトとシル・ウィンディア。
 間奏を彩るのは壮麗なる剣舞の数々。透希とシルをリードするように、両手の二刀と浮遊する無数の剣を自在に舞わせるハル。
(「さぁ君達はまだやれるはずだ。限界を超えてこの物語を謳い上げるがいい」)
 コーラスを聴かせ、舞を魅せ、それも総てはメインの歌が輝くように――コーラスのみならず、舞でも共演者と息を合わせる透希。
(「ハルさんの剣舞、とっても綺麗だなぁ……透希さん、すごい、歌いながら踊ってる」)
 おっと、見惚れている場合じゃないっ! 負けじとシルも剣舞を披露。着物に小太刀二刀流も凛々しく、格闘の動きも取り入れた少女剣士のパフォーマンスに、歓声が湧く。
(「多刀流は伊達じゃねえ! 5本のろぜっとらんちゃーが輝くぜえ!!」)
 そうして、歌の個人パートや演奏のソロパートでは後ろに陣取り、綺羅びやかな光の乱舞を見舞う久遠。自分は目立たず、周りを目立たせる。難易度は高いが、曲だってしっかり予習してきた。ミッションインポッシブルの訳がない!
 同じく、萌花もパフォーマンスを引き立てるように、鮮やかな光輝を撃ち上げ続ける。
(「皆、本当にすごい。もっと楽しくなっちゃうのです!」)
 ほら、会場に咲く歌声は皆の個性合わさった七彩の薔薇のよう――胸の内から込み上げるパッションに身を任せ、A.Aは熱唱する。
 楽曲もいよいよ、クライマックス!
 ――このまま最後まで歌いきります!
 A.Aのアイコンタクトに、メンバーも更なる熱を込めて。
(「そうさ、とっておきを見せてやろう! ロゼと、皆で奏でる、最高の舞台を世界に」)
 季由はリズムを取るよう三味線を弾く。重なる歌声を彩るように、もっと響かせられるように! 皆の心がひとつになる、ライブ独特の高揚感が心底楽しい!
(「ろぜっとらんちゃー多刀流の舞い! いくぜ!」)
 自らの金色の闘気も使い、幻想的な風景を魅せる久遠。仲間と舞台を輝かせ、最高に盛り上がるべく。
(「皆とライブすると賑やかで輝いて……凄く盛り上がってる!」)
 シャウトするように高音を響かせる雫。満面の笑みで、この空間を楽しむように。皆で一緒に盛り上げるように!
「みんな、一緒に楽しんでー! 僕らの歌姫、A.Aの歌も、僕らのパフォーマンスも!」
「もっともっと! 盛り上がっていくよー!!」
 オーディエンスに向けて、ギターと共に呼び掛けるユア。すかさず、萌花はろぜっとらんちゃー大盤振る舞い。
 ステージで繰り広げられるのは、夢みたいな物語の世界――オーディエンスにとっても大変なことが多いこの世の中で、思い返せばきらりと輝く楽しい思い出になりますように。
「……なぁんて、ね?」
 放たれたろぜっとらんちゃーの光に重ねて癒しの刃を飛ばし、花火のように弾けさせるハル。この世界を彩るのは、双剣の舞が喚ばう薔薇と桜の花弁の幻。
(「……んむ、やはり大人数で歌って踊ったりするのは楽しいな」)
 普段のソロ活動とは違った雰囲気に、仲間と目が合えば透希の笑みも零れる。
(「ハートの熱さは負けないよっ!!」)
 歌のサビ部分を、シルが踊りながら楽しそうに歌えば、その手を引いたA.Aの歌声に、メンバーのハーモニーが重なって。
 いつしか歌声は次々と重なり――ホール全体を揺るがした。

●フィナーレ
「紙吹雪とアナウンス、お願いします!」
 演目の区切りをスタッフに任せ、ミリムは黒子衣装のままホールを飛び出す。
 駆け付けたのは、ホテルに程近い高台。ずらりと並ぶ円筒に、次々と尺玉を射出口から投げ入れて発射薬に点火――ここまで、ケルベロスならではの素早さであった。
 ――――!!
 華やかにして艶やかな打上げ花火が、次々とラスベガスの夜空を彩る。きっと、会場のオーディエンス達の心にも鮮やかに焼き付いた筈。
「ふっふっふ!!」
 あらゆる照明、時にブレイブマインやゴーストヒールも駆使して演出に専念した2時間――見事有終の美を飾り、ミリムは会心の笑みを浮かべて花火を見上げた。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月11日
難度:易しい
参加:20人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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