紅蓮の狼の探索を阻止せよ

作者:青葉桂都

●忍者とオークたちの探索
 ドラゴンたちが姿を消した竜十字島に、デウスエクスたちの姿があった。
「丁寧に掘り返せよ。なにかそれらしい痕跡があればすぐに俺を呼べ」
 忍者装束に身を包んだ赤い毛並みを持つ狼頭の男が、配下に命じている。
 ケルベロスやデウスエクスなら、配下の生き物たちに見覚えがあったかもしれない。かつてこの島を支配していたドラゴン種族の配下、オーク。
 ただし、それがオークでないこともまた、明白だった。なぜなら、オークたちはすべて植物でできていたからだ。オークの形をした攻性植物なのだろうか。
「なかなか見つからんな……本当にこの島にあるのか? 少しでも手がかりが見つかれば、そこから推測も立てられるのだがな」
 アカツキという名の、赤狼の忍者が言った。
「オークプラントでは頼りにならんな。やはり、ドラゴンのゲートすら破壊したケルベロスが欲しい。奴らを洗脳し、紅蓮衆のために利用することができれば……」
 大きく息を吐く。
「……だが、今はまずあれを探すのが先決か。まったく、どこにあるやら」
 狼の鋭い瞳が周囲を観察している間も、オークプラントたちは黙々と探索を続けていた。

●ヘリオライダーの依頼
 集まったケルベロスたちに、ドラゴン・ウォーの舞台となった竜十字島で動きがあることを石田・芹架(ドラゴニアンのヘリオライダー・en0117)が告げた。
「どうやら、螺旋忍軍が竜十字島でなにかを探しているようです」
 何を探しているかはわからない。
 ただ、かなり重要なものを探しているらしく、多くの螺旋忍軍が送り込まれているようだ。
「オーク型の攻性植物、オークプラントを配下として連れている点から、大阪城にいる攻性植物やドラゴンの残党との関連はあるものと考えられます」
 目的が不明であっても、敵の動きがわかった以上放置するわけにはいかないだろう。
 竜十字島に向かい、螺旋忍軍を撃破して欲しいと芹架は言った。
 芹架が予知した螺旋忍軍は、竜十字島の一角にある荒れ地をオークプラントに掘り返させて探索しているらしい。
 忍軍は掘り返すのには参加せず周囲に目を配っており、奇襲は難しいだろう。
「敵はアカツキという名の忍者です。紅蓮衆という一派の首領のようですが、今回連れているのはオークプラントだけになります」
 赤い毛をした狼の頭とふさふさの尻尾を持ち、獣人のような姿をした螺旋忍軍だ。
 戦闘になれば後衛に下がり、両手に持った大きな手裏剣による単体攻撃や、尻尾の毛から炎を発しての範囲攻撃を行う。
「洗脳術に長けており、どちらも攻撃の軌道や発する音が心を操る術になっています」
 ケルベロスをたやすく操るほどの効果はないものの、敵味方の認識を誤ってしまう可能性がある。
 また、螺旋手裏剣としての技も使えるようだ。
「螺旋忍軍はデウスエクスの中ではそれほど強力ではありませんが、それでも皆さん1人1人よりは高い能力を持っていますのでご注意ください」
 オークプラントたちは愚鈍で戦闘能力は並のケルベロスよりも劣るが、数が10体と多いのでやはり油断はしないほうがいいだろう。
 触手や溶解液、催眠花粉などを用いて攻撃してくるようだ。
「戦闘では前衛と中衛にわかれて行動します。アカツキを守るように動くようです」
 もしも戦況が不利だと判断すれば、アカツキはオークプラントを盾にして逃走する可能性もある。その点でも注意が必要だ。
 とはいえ、敵に探索を諦めさせることができればいちおう作戦は成功ではあるが。
 なお、竜十字島への送り迎えはヘリオンで行うので移動手段の心配は不要だ。十分な距離をとった位置に着陸するので巻き込まれることもない。
「できれば彼らがなにを探しているかの情報も得たいところですが、螺旋忍軍が相手では口を滑らすようなことは期待できないでしょうね」
 もしもそれを予測することができれば、先に入手することもできるかもしれない。
 なんにしても、螺旋忍軍を無事に撃破した事後の話になるだろうが。


参加者
不知火・梓(酔虎・e00528)
瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
雪華・風月(雪月華之女剣士・e09245)
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
五嶋・奈津美(なつみん・e14707)
荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)
巽・清士朗(町長・e22683)

■リプレイ

●竜十字島へ
 ヘリオンは高速で海の上を飛び、やがて竜十字島までケルベロスたちを無事に送り届けた。
「いやはや、大分久しぶりの依頼じゃな……。身体が鈍って皆の足手まといにならなければよいが……」
 不安げな様子で雪華・風月(雪月華之女剣士・e09245)が呟いた。
「大丈夫よ。わたしとバロンが支えるから」
 静かに告げた五嶋・奈津美(なつみん・e14707)が、彼女のサーヴァントでえる黒いウイングキャットを軽く撫でた。
「しかし……洗脳術を使うなら……厄介な相手です……。気を引き締めていきましょう……」
 どこかぼんやりとした口調のまま荊・綺華(エウカリスティカ・e19440)が言う。
 もっとも、気を引き締めて、と言いながらも地面の石にけつまづいているのはご愛敬というところか。
 聖職服のまとった少女の言葉に、中性的な顔立ちの青年が口を開いた。
「うまく技を盗めたらって思うと楽しみだけどね。忍軍なんて、僕にとっては手慣れた相手だし」
 因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)が、ことさらに余裕の笑みを浮かべて見せた。
「……見つけたぞ。あれが洗脳術の使い手か」
 ドラゴニアンのラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)は赤い狼とオークたちを青い瞳で見やる。
「手を止めろ! 誰か近づいてくる!」
 狼の頭部を持つ螺旋忍軍……アカツキの鋭い声が響いた。
 オークたちが掘り返す手を止めて、アカツキの周囲に集まる。
 そんな彼らへと、1人のウェアライダーが近づいていった。
 金狐のウェアライダーは、極上の笑みを見せて、口を開いた。
「素敵な家来ね、元ご主人。狼の毛皮をかぶったオークの貴方にお似合いだわ」
 瀧尾・千紘(唐紅の不忍狐・e03044)表情とは裏腹に辛辣な言葉を投げかける。
 狐耳を生やした女性を狼の瞳が真正面から見据える。
「オーク扱いとはずいぶんなご挨拶だなあ」
 アカツキの口は笑っていたが、目は笑っていない。
「まあ許してやるよ。せっかくケルベロスが俺の手下になりに来てくれたんだからな」
 言葉をかわす間にも、オークプラントたちは素早くアカツキとケルベロスたちの間をふさぐ。
 同じデウスエクスである彼らの心すら操っているのではないか。そう感じるほどの動きだ。
 口許を歪ませるアカツキに対し、サングラスの男が進み出る。
「千紘からヘルプコールが入るたぁなぁ」
 不知火・梓(酔虎・e00528)は金狐と並び、長い手で無造作に持った刀をいつでも抜けるようにした。
「うん、なるほど。厄介そうな敵だなぁ。こりゃぁ一つ気合入れて行くとするか」
 くわえていた長楊子を吐き出して、梓は一気に黝い刀を抜く。
 さらに、横合いから1人の男がアカツキへと鋭い眼光を投げかける。
「知らせを聞いて来てみれば――こちらは狼さんが悪巧みか。いかんな? 童話でも謂われておろう、狼は悪だくみにはむかんぞ」
 巽・清士朗(町長・e22683)はすでに臨戦態勢だった。
 黒の袴の上にまとった白の羽織をひるがえす。モノトーンの剣士は達人の気をまとってアカツキを見やった。
 竜十字島で活動している忍軍はアカツキだけではない。すでに一度この地での戦いを経験した青年は隙のない物腰で敵と対峙する。
 彼はもちろん、この場にいるメンバーには千紘にとって普段からの知り合いも多い。
 厄介な敵ではあるが、負けはしない。
 そう信じて千紘は、ぷにぷにフロートグローブ'18の中で拳をしっかりと握る。
 そして、戦いが始まった。

●劣勢
 アカツキの持つ紅の尻尾が躍る。
 尻尾は舞い踊る炎となって、ケルベロスたちへと襲いかかった。
 前衛皆を襲う炎の中、千紘が梓をかばった。
「千紘……!」
 清士朗は恋人の名を呼びながらアカツキへと反撃をしかけようとする――が、オークプラントたちにかばわれた敵を狙うことはできなかった。
「堅い守りだな……これは、とても攻めきれん……」
 簡単に諦めた清士朗は、全身をセンサーと化して戦場の様子を脳内へと写し取る。
「八門立つ 九龍八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を」
 写し取るだけでなく、さらに数手先を仮想することすらできる。
 そして、得た情報を『詠六十八卦』へと伝えることで仲間たちを支援できるのだ。
「攻めるのは任せた、俺は守りを固めよう」
 どこか情けないセリフを大声で吐きながら、清士朗は支援を続ける。
 無論、アカツキを油断させて、優勢だと思わせるためのものだ。
 仲間たちも1体に集中はせずに、攻撃を散らして敵を全体的に削っていく。数を減らせば、アカツキが劣勢だと判断する可能性があるからだ。
「催眠を使ってきなさいよ。服を溶かされたり、触手でなぶられたりするよりはうんとマシだわ!」
 仲間たちを守りながら千紘が言う。
 真意はその逆だ。
 厄介な催眠を使わせず、消化液や触手を使わせようというのだ。
 オークプラントたちが言葉を理解しているのかどうかはうかがえない――が、彼らから放たれる反撃は、触手や消化液によるものが多いように思えた。
(「やはり、悪だくみに向いているのは狼ではないな」)
 真剣に演技を行う千紘を見て、清士朗は心の中でつぶやいた。
 千紘がすくい上げるような動きを見せると、そこに白い狐火が生まれた。
 両の手をを掲げて狐火を空へ還すと、白い彼岸花がケルベロスたちへと降り注ぐ。花は光のヴェールとなって、皆を守る盾と化した。
 とは言え、催眠による攻撃が全く飛んでこないというわけにはいかない。
 数分のうちに、皆は催眠花粉をそれぞれ幾度かは浴びる羽目になっていた。
「ばすてとさま……みんなを守ってあげて……欲しいです……」
 ウイングキャットに指示しながら、綺華は奈津美へと身にまとったオーラを飛ばした。
 敵を倒しきってしまわぬよう、彼女は回復を重視して動いている。
「助かるわ、綺華。まったく厄介な攻撃ばかりね……けどそれを何とかするのがわたしとバロンの役割よ!」
 回復を受けた奈津美も、彼女のウイングキャットに清浄なる風を吹かせ、そして彼女自身は華麗に舞い踊って癒しの花びらを降らせる。
 2人と2匹をはじめとする回復で、今のところ惑わされてしまうケルベロスはいない。
 そして、敵が劣勢をあえて演出するケルベロスの意図に気づいている様子も見られなかった。
 風月は後衛から狙いを定めて、荒縄をアカツキへと飛ばした。
「うぬ……縄の操作意外と難しいのう……」
 だが、狼を捉えた縄を、あたかも攻撃が外れたかのように彼女は装う。
 中衛のオークプラントを狙っていたふりをしながら、風月はアカツキの動きを縛る。
「やはり歳かのう……? 身体の動きが鈍くていかんな……」
 とぼけた様子で縄を締め上げる風月に、アカツキが大きな舌打ちをするのが聞こえた。
 触手を受けたラギアが、大きく後方へと吹き飛んだ。
「大丈夫かよ、ラギア?」
「なんとか……ね。こう数が多いときついよ」
 身を起こすラギアへと、ことさらに梓が心配げな声をかけてみせる。
 伏雷を横向きに構えてドラゴニアンが敵中へと一気に突撃をしかける。
「まったく、悪酔いしそうだぜ」
 梓は雷纏う刀を弱っている1体を狙っているかのように突き出す。
 だが『手元が狂って』それは隣にいた別の1体を貫いた。
 中衛の4体はまだ1体も倒れてはいないが、まんべんなく体力を減らしていく。
 白兎はそんな彼らの精神へと侵入をしかけた。
「アクセス開始……君達の世界を書き換えてあげるよ」
 放つのは異端の竜語魔法。
 幻影と、それに対する恐怖を刻み付ける魔法。
 すでに幾度か刻んだ恐怖を補強し、オークプラントたちに目に見えぬ傷を刻んでいく。
 そして恐怖は限界を超え、プラントたちのうち2体が樹液を血のように耳と口から吹き出しながら倒れた。

●攻勢!
 中衛が倒れる頃には、すでに前衛やアカツキの体力も削れていた。
 もっとも、敵の手数を減らさないようにしていれば、当然ケルベロス側のダメージも大きい。
 千紘は伸びてくるオークプラントの触手に絡みつかれて嫌悪の表情を浮かべた。
「や……もうやめて欲しいですわ」
 迫真の演技だが、実際体力もかなり危ない。
 消化液に濡れた綺華が呆然としりもちをついているのは、果たして演技なのかどうか。
「奈津美ちゃん!」
 禍々しい呪紋を白い肌に浮かべながら、千紘は奈津美へと呼びかけた。
「ええ、任せて。でも、回復が追い付かない……このままじゃジリ貧だわ……!」
 余裕のない表情を浮かべながら奈津美が神聖魔法を詠唱する。
「オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ」
 真言に応えて軍神たる摩利支天の加護が千紘をはじめとする前衛たちに力を与えてくれた。
「祓い給え清め給え」
 清士朗も拍手を打って、皆を守る紙兵をばらまいてくれた。
 綺華も爆破スイッチを押し、皆を鼓舞している。
 半ば演技、半ば本気で危機を演じるうちに、残る2体の中衛がやがて倒れた。
 アカツキが目を細めたのをケルベロスたちは見逃さなかった。
 腐っても螺旋忍軍、勝てるかどうかの計算を冷静に始めたのだろう。
 だが、そうなることは予想のうちだ。
「逃がすものか!」
 ラギアが叫んだ。
 それを合図に、ケルベロスたちは一気にアカツキを狙う。
 だが、ラギアが伸ばした棒の一撃はオークプラントにかばわれる。
 梓は酔っぱらって、よろめくような動きから、刀をアカツキへと向けた。
「我が剣気の全て、その身で味わえ」
 戦いながら剣気はもう十分に練り上げている。
 普段はただの鈍らに過ぎぬ刀だが、それは銘のとおり運命を切り開く力を秘めている。
 一閃……振り下ろした刀から気が飛んで、棒で打ち倒した敵の上を抜けてアカツキへと吸い込まれていく。
「ぐっ……」
 剣気の速度は遅いが、自らを守らせるために固めていたオークプラントたちが邪魔になって敵はかわせなかった。
 アカツキの胸元で剣気が爆せる。
「釣りはいらねぇぜ、ってなぁ」
 振り下ろした姿勢のまま、梓は不敵に笑って見せた。
「こっちからも、追撃だー!」
「うむ、ここは外すまいぞ」
 白兎が竜の幻影に炎を吐かせて、風月が白い柄を持つ刀に氷の気をまとわせて飛ばす。
 千紘も氷結の螺旋を放ったが、それもまたオークプラントにかばわれた。
 しかしそこで、綺華がこれまでの動きとはうってかわって機敏に銃をアカツキへと向けた。
「のろわれた者ども……わたしから離れて……悪魔と……その使いたちのために……用意された永遠の火に……入れ……です……」
 正確に、素早く。
 踊るような動きから放った銃弾が幾度もアカツキを貫いた。
 アカツキはさすがに倒れなかったものの、2体のオークプラントが倒れているのを見て目を見開いた。
「盾どもがこれほどたやすく……?」
「やはり、群れに囲まれていて安心していたようだな」
「なに!」
 ラギアの言葉にアカツキが驚きの声を上げた。
「そら、こいつもここの気脈が乱れている」
 清士朗が玄一文字宗則を薙いでさらに1体のオークプラントを両断した。
「だから言ったろう? 悪だくみにはやはり狐でないと」
 そう言って千紘へと片目をつぶって見せる。
「酒と財宝と女で失敗を繰り返すドラゴンさんに言われたくないわ♪」
 千紘がウインクを返した。
 笑みを浮かべた2人とは対照的な表情で、アカツキが千紘へと顔を向けてきた。
「意地の悪い貴方と手が切れてから毎日が楽しいわ。ありがとう」
 すました顔で千紘が言葉を投げかける。
「パーティの時間よ、貴方の好きな暴力で飾り付けてあげる。楽しんで逝ってね」
「こんな子狐にはめられるとはな……」
 歯噛みしながら、しかめた狼の赤い瞳は、油断なく突破口を探っている。
 だが、浅くない傷は負っていても、倒して突破するのは容易でないはずだ。特に、手数の減った今では。
「これでもメディックの経験はそこそこあるのよ。味方をジリ貧にさせるような真似はしないわ」
 奈津美がレイピアの剣先で星座を描き出して仲間たちを癒した。
 彼女やサーヴァントたちは油断なく回復に努めて、包囲を崩すことを許さなかった。
「オークプラントども、命をかけてでも俺を守れ!」
 そう叫んでアカツキが後方に飛ぶ。
 攻性植物はケルベロスを阻もうとしたが、白兎の生み出した暗黒の太陽が彼らをまとめて焼いた。
 奈津美が氷河期の精霊を呼びだし、風月の刃が冷気の嵐を起こして2体を氷漬けにする。そして綺華の抜き撃ちが最後の1体を貫いた。
 その間にアカツキはケルベロスたちの包囲を無理矢理抜けようとしていた。
 手裏剣が行く手を阻んだ千紘を切り裂く。
 だが、前進する間もなく清士朗の蹴りが敵の脚を鋭く刈った。
 真正面からアカツキを見返し、千紘が放つ螺旋が彼を凍らせた。
「斬り結ぶ 太刀の下こそ 地獄なれ 踏み込みゆかば 後は極楽、ってなぁ」
 梓の刀とアカツキの手裏剣がぶつかり合い、火花を散らした。
 ラギアは切り結ぶ2人へと一気に接近した。
(「耐えてくれて助かったよ。瀧尾さんに殺させるわけにはいかないからね」)
 殺し殺されたものは永遠にほどけない鎖で繋がれてしまう。
 ドラゴニアンの青年はそう考えていた。
「だから、縁も所縁もない俺が殺して鎖を断つ」
 意志をこめてドラゴンフィストを振り上げて、全力をこめて振り下ろす。
(「責めは後で受ける覚悟はしている」)
 千紘ならば、そんなことはどうでもいいと言うかもしれない……そう感じるのは、願望の産物なのかもしれないが。
 いずれにせよ、もはや止める気はない。
 輝きと共に放つ斬撃が、アカツキを左右に断ち切っていた。
 螺旋忍軍が倒れて、そして戦いは終わった。
「無事か、千紘?」
「うん、大丈夫よ、清士朗ちゃん」
 刀を納めて問う青年に、金狐が答える。
「オークどもももう動かんな。それにしても確か初の依頼もオークじゃったのう、こういう縁は勘弁願いたいところじゃが」
 オークプラントたちもすべて滅びたことを確認し、風月が言った。
「無事に片付いたことだし、アカツキがなにを探してたのか調べておきたいところだねぇ」
 タバコがわりにまた長楊子をくわえて、梓が言った。
「そうね。予想だけど、十字島の地下には、デウスエクス・ウェアライダーのゲート跡地と古代都市が埋もれているのかしら。懐には大きすぎるお宝ね」
 清士朗のそばに寄り添ったまま、千紘が周囲をながめる。
「古代ロマンとお宝発見は憧れだけど、マスター・ビースト復活は断固阻止よね。誰かに支配されるなんてまっぴらよ」
 その推測が正しいのかどうか今は確認しようもないが、可能性の1つではある。
「まずは手当てね。それから他の忍軍と鉢合わせする前にできるだけ調査しておきましょう」
 奈津美の言葉に反対するものはもちろんいない。
 はたしてこの地になにが隠されているのか……今は、まだ誰にもわからなかった。

作者:青葉桂都 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月8日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 1
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