限りなく滄溟に近いブルー

作者:土師三良

●探索のビジョン
 夜の砂浜に異形の群れがいた。数は十一。植物めいた触手を蠢かすオークが十体。青みを帯びた銀の毛並みを有した狼の獣人が一体。
 オークたちの半数は海に浸かり、触手で水面下を探っていた。残りの半数は陸地で砂をまさぐっている。夜目が利くのか、あるいは視力以外の知覚に頼っているのか、照明を手にしている者は一体もいない。
「もっとキビキビ動けよぉ!」
 腕組みをして作業を監督していた獣人が苛立たしげに怒鳴った。その身を包むのは青い忍び装束。腰には螺旋模様の仮面を下げている。
「このクソども、ホッントに使えねえな。いないよりはマシかと思ったが、頭数にもなりゃしねえ」
 本当に頭数にもならない役立たずなら、なにをさせても無駄なはずだが、獣人は『クソども』に作業の中断を命じなかった。言葉に反して、一定の評価はしているのだろう。ただし、使い捨ての道具としての評価だろうが。
「クソッ! こんなことで見つかるのか? ……いや、見つけてみせる。そう、見つけてみせる。絶対に見つけてみせる」
 自分に言い聞かせるように呟きながら、獣人は視線を上げ、夜空に浮かぶ細い三日月を睨みつけた。
「このフェンリル様がな」

●音々子かく語りき
「最近、螺旋忍軍どもの動きがまた活発になってきているんですよー」
 夜のヘリポート。召集されたケルベロスたちの前で、ヘリオライダーの根占・音々子が語り始めた。
「奴ら、竜十字島でなにかを探しているんです。その『なにか』がなんなのかは判りませんが、重要な物であることは間違いないですねー。かなりの数の螺旋忍軍が動員されているようですから」
 探索をおこなっている螺旋忍軍たちは皆、『オークプラント』というオーク型の攻性植物(あるいは攻性植物の要素を持ったオーク?)を率いているという。もしかしたら、大阪城の攻性植物の勢力やドラゴンの残党と繋がっているのかもしれない。
「動員されている螺旋忍軍の一人の動きを予知しましたので、皆さんに倒していただきたいんです。その螺旋忍軍は『フェンリル』という名前でして、青っぽい狼の獣人型ウェアライダーみたいな姿をしています。『みたいな』じゃなくて、元は本当にウェアライダーだったのかもしれませんが、そこのところはよく判りません」
 フェンリルが連れているオークプラントの数は十体。フェンリルに対して忠実ではあるが、非常に愚鈍であり、戦闘能力は通常のオークよりも劣るらしい。
「フェンリル自身の戦闘能力もそれほど高くはないと思われます。螺旋忍軍ですからね。でも、螺旋忍軍だからこそ、戦闘時の駆け引き等はちゃんと心得ているはず。きっと、勝ち目がないと悟れば、迷わず撤退するでしょう。まあ、逃げられたとしても、こちらとしては探索の邪魔さえできれば、それでOKなんですが……倒せるのなら、倒しておきたいところですよねー」
 フェンリルの撃破を目標とするのであれば、逃がさないように戦う必要があるだろう。
「では、行きましょう! 竜十字島までは三時間ほどのフライトとなりまーす!」
 音々子は愛機に向かって意気揚々と歩き出した。


参加者
大弓・言葉(花冠に棘・e00431)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
小車・ひさぎ(夏色バタフライ・e05366)
玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)
ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
カタリーナ・シュナイダー(血塗られし魔弾・e20661)

■リプレイ

●エヴァリーナ・ノーチェ(泡にはならない人魚姫・e20455)
 薄暗闇の中にぼんやりと浮かぶ大きな人影――水先案内人を務めてくれた竜派ドラゴニアンのラギアくんが自分の顔の辺りに手をやった。暗視ゴーグル(それを着けてたから、私たちを案内することができたんだよ)の電源を切ったのね。
「……よし」
 ラギアくんの合図を聞いて、私はランプの覆いを開放した。
 同時に別の光が砂浜を照らし出した。レプリカントのアラタちゃんがハンズフリーのライトを点灯したから。
 二つの光で露わになったのは十一体のデウスエクス。頭に花を咲かせたオークたちと銀狼の獣人。
「……くっ!」
 苛立たしげに呻きながら、獣人が身構えた。目が眩しさに細められていたのはほんの数秒。今はカッと見開かれてる。
 その激しい眼差しに臆する様子も見せず、獣人型ウェアライダーの白兎くんが獣人に語りかけた。頭に生えたウサギの耳をからかうようにぴょこぴょこと揺らしながら。
「やあ、フェンリル。久しぶりだね」
「おおう!?」
 と、白兎の挨拶に反応したのはフェンリルという名のその獣人じゃなくて、アラタちゃんだった。
「おまえが因幡にうっかり出し抜かれたという、あの可哀想なうっかりフェンリルかー!」
 白兎くんが螺旋忍者の力や技を得た切っ掛けにはフェンリルが関わっているみたい。たぶん、フェンリルにとっては、かなり腹立たしい関わりかただったんだろうね。
 白兎くんとアラタちゃんの挑発に対して、フェンリルはなにか言い返すかと思ったけど――、
「かかれ!」
 ――と、オークたちに指示した。無駄口をきかずに即行動。さすが、螺旋忍軍だね。
 でも、本当に優秀な螺旋忍軍なら、戦闘よりも撤退を選ぶはずだよ。
 私たちに勝てるわけないんだから。

●カタリーナ・シュナイダー(血塗られし魔弾・e20661)
 オークどもが繰り出した触手群。
 そのうちの一本は私に向かってきたが、ボクスドラゴンのぶーちゃんが盾となって防いでくれた。小さいながらも頼もしい……と言いたいところだが、目に涙を浮かべて大袈裟に痛がっているので、なにやら罪悪感を覚えてしまう。
 ぶーちゃんに礼を述べつつ(聞こえていないだろうが)、私は轟竜砲を発射した。標的はフェンリル。
 しかし、オークの一体が身を挺してフェンリルを守った。ぶーちゃんと同様に痛がっているが、べつに罪悪感は覚えない。
「ぶーちゃん、落ち着いて! クールになるの!」
 と、涙目のぶーちゃんに声をかけたのはオラトリオの娘。ぶーちゃんの主人である言葉だ。
 彼女はただ活を入れたわけではなく、グラビティを用いたらしい。声を聞いた途端にぶーちゃんの姿が変化し、涙目でもなくなったのだから。
 新たな形態(体色も褐色から白へと変わっている)となったぶーちゃんは冷たい風を起こして飛び回り、オークたちを爪で切り裂いた。
「チビドラゴン、三秒会わざれば刮目して見よ……ってところか。でも、俺は普段のヘタレなぶーちゃんのほうが好きだな」
 黒豹の獣人型ウェアライダーである陣内が軽口を叩いた。彼もまたグラビティを使ったらしく、足下にいくつもの月見草が咲いている。おそらく、その小さな花々は芳香で敵になんらかの状態異常を与えているのだろう。
 月見草に続いて、鈴蘭が戦場に彩りを添えた。アラタの攻性植物だ。
「いやいや。白いぶーちゃんも悪くないと思うぞ。先生たちも負けるなー」
 仲間たちに黄金の果実の光を放射しながら、サーヴァントたちに声援を送るアラタ。
 それに応えて、『先生』という名のウイングキャットが清浄の翼をはためかせた。
 そして、陣内のウイングクキャットも。こちらは名前はないらしい。

●大弓・言葉(花冠に棘・e00431)
「狼の獣人とはね」
 ひさぎちゃんが指を鉄砲の形にして、フェンリルに突きつけた。ちなみにひさぎちゃんは人型ウェアライダー。猫系の耳と尻尾がかわいー。
「やっぱ、大阪城の螺旋忍軍が獣人ばっかりスカウトしてるって噂は本当だったんだ。どんな破格の条件を出されたのかなー? 探し物を見つけたあかつきには二階級特進とかだったりしてー?」
 指鉄砲からなにか(銃弾と化した御業かな?)が発射されたけど、その攻撃はオークに庇われた。
「探し物? なんのことだ?」
 盾になったオークを労いもせず、フェンリルは肩をすくめてみせた。てゆーか、『獣人ばっかり云々』っていうブラフのほうは否定しないのね。もうバレバレだから、否定しても無駄ってこと?
 とにかく、私も揺さぶっておこうっと。
「すっとぼけてんじゃないわよ! 探し物はなんなの? 見つけたら、なにかいいことがあるわけ? 教えなさーい!」
「……」
 はい、無視。
 まあ、判ってたけどねー。無視されると判っていても詰問するのがお約束ってものよ。泥棒を追いかけるお巡りさんだって、相手が待たないことを承知の上で『待てー!』って怒鳴るでしょ? それと同じ。泥棒を追いかけるお巡りさんなんて、リアルで見たことないけど。
「こうやって野外で探してるってことは保管されてた物じゃないよね。いえ、保管されてたけど、戦争の時に持ち出そうとして、ドサクサで紛失しちゃったとか?」
 と、なにやら鋭い考察を口にしたのはサキュバスのエヴァリーナちゃん。
「だとしたら、私たちのほうが見つけやすいよね。戦争の時、この島にいたんだから」
 喋り続けながら、エヴァリーナちゃんはファイアーボールを発射!
 そして、植物オークどもを焼く炎を見ながら、静かに呟いた。
「……豚肉のお野菜炒め」
 絶対、食べたくない。

●小車・ひさぎ(夏色バタフライ・e05366)
「知ってるぜ。おまえらの探し物は俺と同じなんだろう?」
 先生がフェンリルにカマをかけてる。あ、先生といっても、アラタの猫ちゃんじゃなくて、陣内先生のことだかんね。
「なあ、教えてくれよ。おまえらはアレに――」
 にんまりと笑ってるピエロの口みたいな三日月を先生は指さした。
「――狂わされる苦しみを知っているのか? この星の重力に囚われてさえいなければ、空の天辺でニヤついているアレが美しく見えるのか?」
「さっきから聞いてりゃ……おめえら、なんか勘違いしてるぜ!」
 フェンリルが腕を突き出した。その腕が先生に向かってグゥーンと伸びた……ように見えたのは錯覚。実際は、持っていた鎖を放っただけ。
「俺ァ、べつになにも探しちゃいねえ! ここに来たよのはオークどもの訓練をするためだ!」
「忍者なのに嘘がヘタすぎぃ!」
 叫びながら、言葉が先生の前に立ち、鎖の先端の爪を代わりに受けた。
 その横から白兎がぴょんと飛び出して、アイスエイジをオークどもに見舞う。
 すかさず、ラギアも飛び出して、キャバリアランページ。氷河期の精霊の群れに襲われて凍傷まみれになったオークたちに突進し、ボーリングのピンみたいに弾き飛ばした。
 オークとピンの違いは沢山あるけど、そのうちの一つは自力で立ち上がれるかどうかってことかな。でも、一匹だけ立ち上がることなく息絶えた奴がいたよ。フェンリルなんぞを庇ったもんだから、他のオークよりも先に逝っちゃたんだね。健気な奴。
 一ミリも同情できないけどな!
「訓練が聞いて呆れる。戦術の基礎も知らぬチンピラ風情が」
 一ミリどころか一マイクロも一ナノも同情してないであろうカタリーナさんがフェンリルめがけてドラゴニックハンマーを振り下ろす。
 でも、またもや健気なオークが庇った。そして、傷口を凍りつかせて死んだ(達人の一撃だったのね)。
「哀れだな」
 オークの死体とフェンリルを交互に見るカタリーナさん。
「部下を顎でこき使うしかない貴様も。貴様に盲従するしかない豚どもも」
 訂正。こりゃ、一ピコもないわ。

●因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
 仲間が二人も殺られたっていうのにオークたちは懲りずに触手攻撃を続けてる。
 あ? 皆の盾として奮闘している言葉に命中!
「まあ、オークとはいえ、植物だからセーフかなー……ってなわけないでしょうが! 乙女の柔肌に気安く触るんじゃなーい!」
 言葉は怒り狂い、簒奪者の鎌をブンブン振り回した(白いぶーちゃんがそれを冷たい眼差しで見ている)。ちなみに鎌の刃は燃えてるよ。ブレイズクラッシュだからね。
 焼かれて斬られたオークくん。可愛そうな彼が長く苦しまなくて済むように僕は優しくとどめを刺してあげた。チェーンソー斬りで。
 さて、手下が三人も減ったとなると、フェンリルの心に『撤退』の二文字が横切っちゃうだろうねー。逃がさないように取り囲みながら戦い、ついでに挑発したほうがいいかな。
「前から思ってたけどさ」
 と、親愛なるフェンリルくんに僕は語りかけた。
「きみ、あきらかに名前負けしてない? 野心ありありな感じだけど、やってることはわんこのお使いだしー」
「お使いなんかじゃねえー!」
 フェンリルは犬のように吠えると、赤いマフラーをなびかせて陣内(月見草のグラビティで怒りを植え付けられたのかもしれない)に迫り、掌底を叩きつけながら爪で斬り裂いた。螺旋掌の応用技かな?
 陣内は攻撃に怯むことなく、ガトリングガンを連射。フェンリルには躱されたけど、オークたちには何十発もの弾丸を食らわせた。
「もし、お使いだったとしたら――」
 ひさぎが陣内の頭上を飛び越え、トライバル調のフレイムパターンが描かれたエアシューズでスターゲイザーを放った。
「――探し物の詳細は教えてもらってないのかもね」
「お使いじゃねえって言ってんだろうが!」
 蹴りを回避しつつ、お使いわんこは怒鳴った。ホント、名前負けしてるね。

●ラギア・ファルクス(諸刃の盾・e12691)
「水は上天に昇り、炎は凍り、雛は卵に還り、時計の螺子は逆巻きに。理を逆しまに、癒えない傷を刻もう」
 エヴァリーナさんの詠唱が戦場に流れると、フェンリルとオークの身体についた傷口が次々と広がった。赤い薔薇が開くかのように。
 彼女がこのグラビティを使うのは二度目。これまでの戦いによって、オークの数は半分にまで減り、フェンリルは状態異常が累積して動きが鈍っている。どう見ても劣勢だ。
 にもかかわらず、フェンリルは逃げずに戦い続けている。
 その理由の一つは――、
「これ、どう? フェンリルの鎖を真似てみたんだけど」
 ――因幡先輩が挑発を続けてるからだろうね。さっきは悪意たっぷりにフェンリルの顔真似をしていたし、今は拾ったワカメを鎖に見立てて振り回してる。
「クオリティー、低い? そんなことないっしょー。こんなもんだって。うん、こんなもんだって」
『こんなもん』なワカメ/鎖をフェンリルにぺしぺしと叩きつける先輩。見てるこっちが恥ずかしくなってくるけど、一応はグラビティであるらしく、ダメージをしっかり与えているようだ。ある意味、凄い。
「いいかげんにしろよ、このザ……」
 フェンリルの怒声が途中で途切れた。いや、『声なき咆哮』とでも呼ぶべきグラビティに変わったんだろう。見えない力が俺たちを打ち据えた。同時に生き残りのオークの一匹が触手を乱舞させて追撃した。
 でも、こちらには優秀な癒し手たちがいる。
「ヒールの嵐を見て驚けーい!」
 アラタさんが小袋を取り出し、息を吹きかけた。俺の頭上から綿毛が雪のように降り、傷を癒していく。もちろん、『嵐』というからにはそれだけで終わらない。先生と名無しのウイングキャットが清浄の翼をひらりひらりとはばたかせた。

●アラタ・ユージーン(一雫の愛・e11331)
「部下たちを上手く使えば、有利にことを進められただろうに……」
 カタリーナのガトリングガンが火を噴いた。一点集中のブレイジングバースト。言うまでもなく、『一点』にいるのはうっかりフェンリルだぞ。
「所詮は威張り散らすしか能のない獣。用兵家の役割は荷が重すぎたか」
「あんなオークどもなんざ、部下のうちに入らねえよ!」
 威勢よく怒鳴るフェンリル。でも、攻撃は避けられず、蜂の巣になってる。
「そもそも、俺には部下なんていらねえ! 一人でなんでもこなせる万能忍者なんだからな!」
「おい、万能忍者さんよ」
 ラギアがフェンリルに突っ込んでいく。額に生えた角で刺し殺さんばかりの勢いだ。
「先輩に技を盗まれたと聞いたが、そんなものよりも俺の技のほうが百万倍もカッコいいぞ。見せてやるから、持って逝け!」
 いくつもの残像を生み出しながら、ラギアはフェンリルの横を走り抜けた。さすがに角を刺したりはしなかったが、攻撃を食らわせたのは間違いない。フェンリルの脇腹が裂け、血が吹き出したから。たぶん、縛霊手に付いてる鋭くて白い爪で斬撃を浴びせたんだろうな。
 フェンリルは体を大きくよろめかせ、片膝をついた。そこに迫るは白兎。カマキリの鎌のようなジグザグナイグを逆手に構え、白いマフラーをなびかせている。カッコいいぞ。
「血と暴力でマフラーを赤く染めなくて済むような世界が僕はいいな。ラブ&ピース、大事でしょ?」
「お、おまえが……それを言うか!?」
 赤いマフラーで傷口を押さえながら、フェンリルは膝を上げようとしたけど――、
「うん。何度でも言うよ。ラブ&ピース!」
 ――白兎に喉笛を断ち切られて、ドタっと倒れた。
 死んだかな? うん、死んだな。
 やれやれ。結局、探し物のことは聞き出せなかったな。たぶん、マスタービーストがらみだと思うんだが……それが正しいとしたら、ウェアライダーの白兎やひさぎや陣内にとって、放っておけないことだろう。
 つまり、アラタにとっても放っておけないということだ。
 皆、大切な仲間だからな。

●玉榮・陣内(双頭の豹・e05753)
 アラタが如意棒で、言葉が燃える鎌で、俺が絶空斬で、オークたちを次々と仕留め、戦いは終わった。白ぶーちゃんも元に戻ったようでなにより。
「海の家も屋台もない浜辺なんてイヤ。はやく帰って、ごはん食べたい」
 エヴァリーナがぼやいた。
 そう、後は帰るだけだ。三時間も音々子のヘリオンに揺られてな。
 そのフライトを恐れて……というわけでもないだろうが、すぐに帰ろうとする者は少なかった。
『はやく帰りたい』とぼやいたエヴァリーナもあちこちを調べて回っている。フェンリルたちの探し物を見つけようとしているんだろう。
 ひさぎも歩き回っているが、探索をしているわけじゃない。荒れた砂浜を整えているんだ。
「この島は静かにしておいてほしいんよ……」
 ひさぎの呟きが聞こえた。そうか。この島には二人のケルベロスが眠ってるんだったな。
 死者たちのことを思いながら、俺はただ立ち尽くしていた。なるべく、海を視界に入れないようにしながら。
 夜の海は嫌いなんだ。空に真っ逆さまに落ちて、溺れそうな気がするから。
 もちろん、空も見ない。
 アレが笑ってやがるだろうから。

作者:土師三良 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。