城ヶ島制圧戦~荷電粒子砲の脅威

作者:さわま


「みなさんの行った城ヶ島の強行偵察により、『固定化された魔空回廊』が存在している事が判明したっす」
 ヘリオライダーの黒瀬・ダンテが興奮した面持ちでいう。
「この『固定化された魔空回廊』に侵入して内部を突破する事が出来れば、ドラゴンたちの『ゲート』の位置の特定も夢ではないっすよ」
 ――『ゲート』の位置の特定。
 『ゲート』とは各デウスエクス種族の『地球側の最大拠点』であり、その種族が『ゲート』を失うという事は地球侵略の手段を失う事と同じ意味をもつ。
「ドラゴンたちの『ゲート』のある地域が特定出来れば、その地域の調査を行った上でケルベロス・ウォーによる『ゲート』の破壊を試みる事も可能なはずっす」
 つまり城ヶ島を制圧し『固定化された魔空回廊』を確保する事が出来れば、ドラゴンたちの持つ『ゲート』破壊への道筋が見えてくるのだ。
「強行偵察の結果、ドラゴンたちは『固定化された魔空回廊』の破壊は最後の手段と考えているみたいで、一気に城ヶ島を制圧出来れば『固定化された魔空回廊』の奪取は不可能ではないっす」
「ドラゴンのこれ以上の侵略を阻止するためにも、みなさんのお力を貸して欲しいっす!」
 

「今回みなさんには、他のケルベロスのみなさんが城ヶ島に築いてくれた拠点から、ドラゴンの巣窟になった城ヶ島公園に進軍して、そこにいるドラゴンのうちの1体を撃破して欲しいっす」
 途中の進軍経路などは予知により割り出し済みなので、今回は強敵であるドラゴンとの戦闘に専念して欲しいとダンテは説明する。
「『固定化された魔空回廊』の奪取には城ヶ島のドラゴン勢力の力を大きく削ぐ事が必要不可欠っす! みなさんの活躍無くしては叶わないんでどうかよろしくお願いしますっすよ!」
 
「みなさんに相手をして欲しいドラゴンは粒子加速機を喰らって、強力な荷電粒子を口から放つ個体っす」
 一度射出された荷電粒子は、光速に近い速度で飛んでくるために非常に高い命中精度と威力を誇る。
 全く対策をしていない状態で攻撃がクリティカルすれば無傷の状態からの戦闘不能もあり得るとダンテは注意を促す。
「ただしこの攻撃は粒子を加速する時間が必要なのでそうそう連続して使用してくる事は無いっす」
 粒子の加速には2~3分程度の時間が必要のようだ。
「それ以外には強靭な肉体を生かした複数を巻き込む近接攻撃と、高い自己再生能力を備えているっす」
 荷電粒子も脅威ではあるが攻守のバランスがとれたこちらの能力もバカにできない。荷電粒子による攻撃への対策は当然必要だが、総合的に高い能力を誇る強敵だけにしっかりとした戦術無しでは勝利は難しいだろう。
「ドラゴンは強敵っすけど、みなさんなら絶対に勝つって信じているっす!」


参加者
クロノ・アルザスター(地球人の鎧装騎兵・e00110)
星野・優輝(新米提督の喫茶店マスター・e02256)
ソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)
黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)
巽・清十郎(町長・e06957)
久遠・征夫(静寂好きな喧嘩囃子・e07214)
千歳緑・豊(喜懼高揚・e09097)
輝島・華(夢見花・e11960)

■リプレイ


「この大陣容でのカチコミ。滾らねェわけありゃしませんでよ!」
 瞳をギラギラと輝かせ黒斑・物九郎(ナインライヴス・e04856)が進軍をする仲間たちの先頭をずいずいと進む。
 ここ城ヶ島に集ったケルベロスは500人以上、作戦の規模を考えれば物九郎の普段以上のテンションも頷けるというものだ。
「しかしドラゴンが相手か。初仕事を思い出すな」
 星野・優輝(新米提督の喫茶店マスター・e02256)が初仕事のドラゴン討伐を思い出し感慨深げに呟く。
 その後ろを落ち着いた雰囲気の2人組、巽・清十郎(町長・e06957)と久遠・征夫(静寂好きな喧嘩囃子・e07214)が続く。
「確かに竜は強い。だが此方の利を活かせば決して敵わぬ相手ではない」
「利……ですか?」
「数の利だ。此方は8人彼方は1体」
 清十郎の答えに「なるほど」と征夫が頷く。
「華ちゃん、いい天気だし風も気持ちいいねー」
「はいですの。クロノ姉様」
 和かにクロノ・アルザスター(地球人の鎧装騎兵・e00110)と輝島・華(夢見花・e11960)が並んで進む。
 観光地としても有名な城ヶ島。進軍中の道はハイキングコースであり周囲には鮮やかな海の景色が広がっている。
「お店のみんなでこんな所に遊びに来れたら楽しそうだと思わない?」
 クロノの言葉にその様子を想像し目を輝かせる華。
「とっても楽しそうですの!」
「それじゃ、その為にも邪魔なドラゴンをバッ~と退治しちゃおう」
「はいっ、お姉様」
 華が元気よく答える。
 最後尾を行くソラネ・ハクアサウロ(暴竜突撃・e03737)と千歳緑・豊(喜懼高揚・e09097)。
「可愛らしい子ですね」
「まあ唯一の身寄りといった所さ」
 豊が飼っているという甲斐犬の写真を見せてもらい顔を綻ばせる犬好きのソラネ。
「お家で待ってるこの子の為にも無事作戦を成功させないとですね」
「……ああ」
 豊が穏やかな笑みを浮かべる。
 それぞれ決意や想いを胸に道を進むケルベロスたち。
 やがてその先に、彼らが倒すべき竜が姿を現した。


「本命黒、対抗赤、大穴藤色で想像していたが……なるほど。白色だったか」
 現れたスラリとした長い体躯の白竜を見て豊がふむと呟く。
 こちらを伺う竜に油断や侮りの色は無い。その瞳に宿る強い殺気が全身に突き刺さる。
 肌をひりつかせるようなその殺気に優輝はゴクリと唾を飲む。
(「……初仕事の時とは違うこのプレッシャー。敵も本気という事か」)
 冷や汗を拭った物九郎がずずいっと一歩前に歩み出る。
「矢でも鉄砲でもレールガンでも荷電粒子砲でも、なんでも持って来てみなさいや! このブチネコ黒斑・物九郎が、ブチのめしてやりまさァ!」
 ――グォオオオォッ!
 物九郎の啖呵に竜が吼え、翼を大きくはためかせケルベロスたちに迫る。
「来るぞ! ミッション・スタート」
「行きましょう――『GUIRTYRA』!」
「竜と相対するも久方よ――地に落ちし降竜、再び天へ帰ること無し」
 『銀龍の翼』を構えた優輝、紅い強化外骨格を装着したソラネ、刀を抜いた清十郎の3人が前に飛び出し迫る竜を迎え撃つ。
 前衛陣の頭上に振り下ろされる巨大な竜の前脚。
 ――ドォンッ!
 その質量とエネルギーが3人を飲み込み地面に大きな衝撃と土煙が上がる。
「皆様っ!」
 巻き上がる土煙に華が短く叫ぶ。
「大丈夫よ。『ティラノバイト』出力全開!」
 土煙の中からのソラネの声。安堵の顔を見せる華。
 サァッと土煙が晴れ、右腕の恐竜の頭部のような武装――『ティラノバイト』の大顎で振り下ろされた竜の前脚を受け止めたソラネが姿を現わす。
「回復支援はお任せください!」
 明るい声で華が前衛陣へのヒールを飛ばす。
「頼もしい。ならば私も自分の役割に徹するとしようか!」
 竜の一撃に怯む事の無い仲間に豊が笑みを浮かべる。
 そして手にした拳銃の銃口を竜に向け、パンパンパンと引き金を引く。
 さらに後方からクロノ、物九郎、征夫が並走し竜に接近。
「さぁ、行くわよトップスピード!! 『Force enhance(フォースエンハンス)』」
 クロノの掛け声に3人の体内のグラビティ・チェインが活性化し全身を高速で駆け巡る。
「コイツは初っ端からノッてきましたぜッ! 全力全開待った無しでさ!」
「こちらも初手から出し惜しみ無しです!」
 物九郎と征夫がそれぞれ左右に分かれ竜を取り囲むように大きく周りこむ。
「前回は結局、本物の竜には遭えずじまいでしたからね」
 征夫が竜に目をやり刀を抜く。
「久遠・弐の太刀『八艘』!」
 袈裟懸けに振るった刀から衝撃波と化した斬撃が飛び、竜に叩きつけられる。
 するとその斬撃が竜の体表で大きく弾け、弧を描きながら反転。再び竜の身体を打ちつけさらに跳ねる。
 ――ダンッ、ダダンッ、ダッ、ダダンッ、ダンッ!
 竜の体表で乱反射する斬撃が竜の巨体を縦横無尽に翔け、その身体に無数の傷を刻んでいく。
「俺めは一羽の鷹ですでよ! 『黒斑(ホークアイ)』!!」
 大きく空中に飛び上がった物九郎が、空を蹴りつけ竜に向かい疾走。
 驚く竜の眼前に姿を現し、その眉間の間に頭から勢いよく突っ込む。
 ――ガンッ!
 物九郎の頭突きで龍の鎌首が大きく仰け反る。
「この猫の額。硬さでしたらドラゴンにも負けやしませんでよ!」
 地面に着地した物九郎がへへッと笑い竜を見る。
「どうよッ『攻撃は最大の防御』ってなァ!」


「手伝いを呼ぼうか」
 豊が炎の『尨犬』を呼び出し補助の力を仲間に付与する。
 ――その次の瞬間であった。
 竜の口が大きく開き、閃光がきらめく。
 ――キィンッ!
 竜から放たれた荷電粒子が豊に被弾。
 豊の身体が大きくふき飛び地面にドサリと倒れ伏す。
「豊さんっ!?」
 ソラネが倒れた豊のそばに駆けよると、むくりと起き上がる豊の身体。ソラネから安堵の息がもれる。
 しかし、うつむいたままの豊は口元をおさえ肩を震わせる。
「!? 大丈夫です――」
「……ッ、クハッ、ハハハハハッ、ハハハハ――」
 驚いたソラネが豊に声を掛けようとすると、豊の口から弾んだ笑い声がもれる。
「今の一撃はゾクッときたぞ! 最高だ。やはり戦いはこうでないとなぁっ!」
 豊の顔に浮かぶ狂気にも似た喜びの表情。
「……豊さん?」
 物静かな犬好きの紳士の突然の豹変に困惑するソラネ。
「私なら大丈夫だよ。こんな愉しい時間……まだまだ終わらせたくは無いしねぇッ!」
「は、ハイッ」
 喜び勇み竜に向かっていく豊に、ソラネも気を取り直し後に続く。
「このダメージなら回復は私だけで大丈夫です! 皆様、攻撃はお任せしますの!」
 豊を即座にヒールした華が仲間に攻撃を促す。
 本来ならば一撃での戦闘不能もあり得た竜の攻撃であったが、それに対応した防具を全員が用意。
 最悪の可能性は徹底的に排除されダメージを最小限で抑える事ができたのだ。
「了解だ!」
 優輝が手にした杖を腰に差し、両手の掌に意識を集中する。
 すると右手に極寒の氷の魔力、左手に灼熱の炎の魔力が発生。
「――相反する氷炎の魔力よ。『無』を生じさせろ」
 優輝の身体の正面で2つの魔力が合わさりスパークし、光が溢れる。
 弓を射るような構えを取る優輝。その右手と左手の間に溢れた光が矢のように束ねられる。
 そして光の矢を竜に向け放つ。
「羽ばたけッ――『煉獄と魔弾の不死鳥(エターナル・フェニックス)』!!」
 優輝の声に空中を飛ぶ矢が炎を纏う光の不死鳥に変化。
 翼を羽ばたかせ突撃し、竜の身体を炎で包み込む。
 怒る竜が身体を器用に回転させ尻尾を周囲の前衛陣に振るう。
 その尻尾を前に清十郎がふうと深く息をつく。
 そして眼前に迫る尻尾にふわりと身を預け、尻尾の上をクルクルと転がり乗り越える。
「嵐に舞う木の葉の如く。守りに専心すれば避けられずとも流す事は十分に可能よ」
 他の前衛陣も攻撃は命中したが、そのダメージは清十郎と同じく軽微だ。
 荷電粒子砲の脅威を万全の備えで排除したケルベロスたちだが、この高い命中率を誇る列攻撃を凌げなければ苦戦は免れなかった。
 しかしケルベロスたちは攻撃役を竜の列攻撃の届かない後衛に置き、前衛は盾役のみを配置。
 極力被弾を避ける戦術で竜からのダメージを最小限に抑えていた。
「すぐに治しますの!」
 次の荷電粒子砲に備えて、華が仲間の様子を確認しながら的確なヒールを続ける。
 そんな華の様子をチラリと見て、嬉しそうにクロノが微笑む。
「頼もしいわね。これなら安心して背中を任せられるよ」
「全くクロノのねーさんの仰る通りでさ。華の嬢ちゃんはまだ子供だってぇのに大したもんじゃにゃーですか!」
「物九郎くん、もっと褒めて! おねーさん自慢の子なのよ、可愛いし!!」
 物九郎の言葉にクロノが自分の事のように喜ぶ。
 すると華の声が。
「クロノお姉様……恥ずかしいですから止めてくださ~い!」
 その華の困った様子に思わず顔を見合わせ笑うクロノと物九郎。
「さて、背中は頼もしいお嬢に任せて」
「ここはブチかましちゃう? ブチネコだけに」
「合点承知でさ!」
 2人が弾けるように竜に駆け出し同時にジャンプ。
「「ダブル・スターゲイザー!」」
 2人の飛び蹴りが竜を撃ち抜き、その動きが止まる。
「砲雷撃戦用意! 発射」
「マルチミサイル一斉掃射」
「ほらっ、これでどうだッ!」
「駆け抜けろ『八艘』」
 さらに優輝の電撃、ソラネのミサイル、豊の拳銃、征夫の斬撃が竜を襲う。
 被ダメージが最小限に抑えられれば回復に人数を割く必要が無くなりそれだけ攻撃の機会が増える。
 ケルベロスたちの一撃一撃に派手な威力は無い。しかし、磐石の守りから組み立てられた攻撃は竜を着実に追い込んでいった。
「これぞ『防御は最大の攻撃』ってなァ! ……ありゃッ?」


 傷が増え動きが鈍くなった竜がケルベロスとの距離を取るように後退する。
 すると竜の全身が薄い光に包まれ、その傷が癒えていく。
「その行動は想定済みだよ」
 即座に竜との距離を詰めた豊が塞がれた傷口を狙い拳銃の引き金を引く。
 ――パンッ、パンッ、パンッ、パンッ!
 その無慈悲な弾丸で塞がれたはずの竜の全身の傷口が再び開き、竜がのたうつ。
 豊に続き、クロノのナイフが竜を一閃。
 ソラネのバイザーから覗く竜に無数のポインタが表示される。
「あなたの狙いは分かっています。させません! ホーミングレーザー発射」
 砲塔から放たれた無数のレーザーが竜の巨体に雨のように炸裂し無数の爆発を起こす。
 さらに二本の太いレーザーが交差するように竜の身体に吸い込まれる。
「派手にブチかましまさァ!」
「こんなものに頼る日が来るとは……」
 レーザーの放たれた方向にはバスターライフルを構えた物九郎と征夫が。
「随分と苦しそうだな」
 清十郎が背中の九曜紋をはためかせ跳躍。
 振り下ろす刀で竜の体躯を大きく斬り、新たな傷を刻みつける。
 憎悪の眼差しで清十郎を睨んだ竜が大きく身体を起こす。
「来るか……いざッ!」
 その竜の様子に清十郎が刀を鞘におさめ、半身の構えで竜に向き直る。
 ――キィン!
 竜の口が大きく開き、荷電粒子が清十郎に向かい発射。
「切り結ぶ 刃の下こそ 地獄なれ。踏み込みいづれ ゆくは極楽」
 目を閉じ精神を集中した清十郎が足を一歩前に踏み込み流れるように上体を捻転。
 そして掌に纏ったグラビティで荷電粒子をふわりと包み外に向かい押し流す。
 直後、逸れた荷電粒子が空中で爆発し閃光が走る。
「お前はひとりで全てをこなす必要があるが此方は8人。それが強みよ」
 火傷を負った掌の感触を確かめながら清十郎が竜に向かっていう。
 竜の自己回復からの荷電粒子砲。目障りなバッドステータスをキュアしてからの強力な一撃は脅威になり得た。
 しかし竜のその行動を読んでいたケルベロスたち。竜が回復を行うと同時に【武器封じ】を一丸になり付与。さらに重ね続けた【盾アップ】の効果もあり、荷電粒子砲のダメージを極限まで減らし火傷程度の傷で抑える事に成功したのだ。
「どんな強力な兵器でも、万全の状態で使用できなければ意味はありません!」
 ソラネが叫び、『強襲戦特化型AF・TTー9』の全武装を竜に向ける。
「チャージ完了、全門開放! 撃ちます! 『人竜一体・一斉射撃(メガバースト)』!」
 一斉に放たれた無数のミサイル、レーザー、砲弾が容赦なく竜の身体に爆発を起こす。
「いくぜッ! 『八艘』『八艘』ッ!!」
 高まる戦いの熱に目をギラギラと輝かせ口調も荒くなる征夫。
 その口調同様に荒々しく刃を振るい、衝撃波を連続で発生させる。
「舞狂えッ、六十四艘!」
 征夫の叫び声に放たれた『八艘』同士が空中で衝突。
 さらに予測不能に乱反射する斬撃が竜の全身を乱舞する。
「華ちゃん、合わせていこう」
「はい、ですの!」
 竜に向かって飛び出すクロノに華が答える。
 そして大きく杖を掲げると、その周りにキラキラとした花びらのような魔力が渦を巻いて集う。
「『舞い踊る花嵐』!」
 華が杖を振るうと、その花嵐が竜に向かって飛んでいき、竜の周囲で舞い踊る。
「この花嵐の中からは、決して逃れられませんの!」
 周囲を舞い踊る花びらが竜の身体に触れるとその箇所がスッパリと切られる。
 その花嵐の中に両手にナイフを構えたクロノが飛び込む。
「もういいっしょー、細切れになりなさいな!」
 動きの鈍った竜の身体をクロノが踊るようにナイフで切り刻む。
 無数に吹き上がる鮮血が周囲を舞い踊る花びらを赤く染め、大きな血煙が竜を覆う。
「その首、頂戴致しやすぜッ!」
 宙を駆け、竜の首筋目がけて肉薄する物九郎。
 両手を交差させ竜の首にその爪を掻き立てる。
 ――グルゥウウウアッ!
 最期の悲鳴を響かせた竜が力なく地面に倒れ伏す。
「人も降魔も死ねば神――寿ぎ申す。今お前は神と昇った」
 死した竜に向かい清十郎がパンと両手を打ち鳴らした。


「大勝利でさァ!」
 物九郎が竜の屍の上で空に拳を突き上げる。
「イェーイ、華ちゃんっ!」
「やりましたですの、お姉様!」
 ハイタッチをして喜びを分かち合うクロノと華。
 豊の呼び出した『尨犬』が空に向かって一斉に吠えその姿を消す。
 そして満足そうな豊が竜の屍をチラリと見てふむと頷く。
「お疲れ様『GUIRTYRA』」
 武装を解除したソラネがニッコリと笑顔を見せる。
「やりましたね」
 冷静さを取り戻した征夫に清十郎がコクリと静かに頷く。
 終わってみれば完勝に近い戦いだった。しかしこれはケルベロスたちの積み重ねたひとつひとつの作戦があっての結果である。油断すれば倒れていたのはケルベロスたちの方であったろう。
「どうやら戦いも終わりのようだな」
 遠くから聞こえる幾つもの勝鬨の声に優輝がホッと息を撫で下ろす。

 ケルベロスたちはドラゴン勢力から城ヶ島を取り戻す事に成功したのだ。

作者:さわま 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年12月9日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 3/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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