キュ~!

作者:東間

●ふっかつだよ
 ある日ある町ある浜辺で。その生き物は、ころころ転がっていた。
 右へころころ、左へころころ。
 暫くそんな意味のない行動を繰り返していたが、ぺそぺそとしたもので腹を掻くところんと転がって腹を浜辺に付け、うんしょよいしょと這いずり始めた。
 ――ちなみに。
 その生き物が無人の浜辺でころころし始める数分前、コギトエルゴスムを背負った小型ダモクレスが、浜辺に打ち上げられていた玩具の残骸に入り込んで機械的ヒールを施していたりする。

●キュ~!
 小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)は、ラシード・ファルカ(赫月のヘリオライダー・en0118)の構えるタブレット画面を食い入るように見つめていた。
 画面にはパステルブルーの空。白い雲。白い大地。
 そこに転がる俵ハンバーグのような形をした真っ白な生き物が一匹。
 もぞ。もぞ。生き物が動く。カメラの方を向いた。
 真っ白な生き物の顔には大きめの黒豆めいた目が二つ。鼻先はちょっぴり黒く、そこからぴんぴぴんと白い髭が伸びている。前脚に当たる部分はぺそっとしており、後ろ脚はなく、代わりにあるのは同じくぺそっとして二股になったもの。
 そんな生き物が、ちょっぴり黒い鼻先をぴすぴす動かして。
『……キュゥ~』
 鳴いた。
 涼香は胸を押さえた。しかしそこへ突き刺さるクールな視線にハッと肩を震わせる。
「ち、違う、違うのねーさん……!」
 フン。そっぽを向いたウイングキャット・ねーさんを悲しげに見つめる涼香だが、再び聞こえた『キュゥ~』で我に返る。危惧していた存在――もふもふ真っ白な子アザラシ型ダモクレスが、とうとう現れてしまったのだ。
「場所は九州のここ、普段から人気の少ない浜辺だ。みんなが現場に到着した時は無人だから、周りを気にせず頑張れるよ」
 ラシードが『戦えるよ』ではなく『頑張れるよ』と言った理由は至極簡単。
 子アザラシ型ダモクレスの能力が、攻撃力ではなくビジュアル――“可愛い”に極振りしているからだ。
 どれくらいかというと、予知で視たラシード曰く「ゴマフアザラシの赤ん坊を少しデフォルメした感じ」というレベルだ。可愛い生き物に弱いケルベロスや、ゴマフアザラシの赤ん坊が大好きなケルベロスは非常に戦い辛いだろう。
 しかも大きさは大型トラックと同程度。“可愛い”の暴力がケルベロス達を襲う。
「……まあ、戦闘能力が高くないから、逆の発想をして『可愛いゴマフアザラシの赤ん坊と思う存分触れ合える』と思えば……」
 いやでも最終的には倒すから結局は辛い思いをさせる事に――?
 ブツブツと考え始めたラシードの背中を涼香がつつく。鮮やかなピンク色をした目は、確かな決意を浮かべていた。
「大丈夫。私たちはケルベロス。人々に被害が及ぶ前に……きっと、何とか出来るから」
 どんなに魅力的な、ピュアホワイトなもふもふ毛並みであろうとも。
 ケルベロスは、決して、決して負けない――!


参加者
泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)
鮫洲・蓮華(ぽかちゃん先生の助手・e09420)
蓮水・志苑(六出花・e14436)
幸・公明(廃鐵・e20260)
ホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409)
桜庭・萌花(蜜色ドーリー・e22767)
小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)

■リプレイ

●キュ
 浜辺にあるものといえば、海藻・貝殻・綺麗な石・流木等々。しかし今日この瞬間、ケルベロス達の視線を一心に浴びているのはそのどれでもなく――。
「涼香さんは、また、とてもキュートなルックスの敵を見つけてしまったね……」
「もふもふだ。これはなんとも凶悪だよね。……ん、油断しないように気を付けなきゃ」
 敵を見上げる泉賀・壬蔭(紅蓮の炎を纏いし者・e00386)と、猫のようにくすり笑った桜庭・萌花(蜜色ドーリー・e22767)の顔に影が落ちる。
 もぞ、と動いたふわふわ輪郭のサイズはあまりにも規格外でホリィ・カトレー(シャドウロック・e21409)は瞼を何度もぱちぱちさせた。これは標的ではなく、通りすがりのちょっと栄養を取り過ぎただけのアザラシさんでは?
 ラウル・フェルディナンド(缺星・e01243)も敵から目が離せなくなっていた。翼猫・ルネッタが『?』と覗き込んでも気付かないほどにシロちゃんを見つめている。
(「駄目だと分かっていても、世界中のかわいいを集めたような愛くるしい姿に心奪われてしまうっ……なんて恐ろしい相手なんだ……!」)
 陽光浴びてふわふわ輝く白いボディ。まあるい目。ふきゅ、としたおくち。
 なんて、なんて。
「か、か、かわいい~~~~!!!」
「すごい大きいー! しかもふわふわ! めいっぱいふわふわしようね!」
 堪えるなんて無理と小鳥遊・涼香(サキュバスの鹵獲術士・e31920)は歓声を上げ、鮫洲・蓮華(ぽかちゃん先生の助手・e09420)も大好きなアザラシ、しかも特大サイズの登場に大喜び。こんなキュートでプリティーな子――にしては大きいが。アザラシが本当にいるなんて! と涼香はこくこく頷いた。
「わああ、本当にもふもふ! この手が短くてころころするのが可愛いんだよね……ヒレも可愛いけど尾っぽも可愛いよね……」
 と、見とれていると背中に冷たい視線が突き刺さる気配。ハッと振り返れば翼猫・ねーさん(ジト目)がパタパタ飛んでいた。
「……ち。違うんだよ? ねーさん。これはお仕事なの」
「んっ? ねーさんどうしたの? 焼きもち焼いてるの? 大丈夫だよ……涼香さんも一時だけだから……一番大事なのは、ねーさんだよ」
「いやほんと、ねーさんが一番だよ? あのコを止めないと一般の人にも被害が出ちゃうし」
 慌ててフォローする涼香に、ねーさんはプイッ。そんなねーさんの頭を壬蔭が優しく撫でる。
 しかし――成る程。幸・公明(廃鐵・e20260)は不敵に笑った。その足元ではミミック・ハコがシロちゃんを見上げ左右にウロウロしているが。
「次は愛らしさで征服しようなどと。そうはいきませんよ、ダモクレス。貴方はここで」
 シロちゃんが首を傾げた。
「ここで……」
 大変ウルウルとした黒い目に見つめられる。
「お母さんとははぐれたんですか?」
 “可愛い”の圧倒的勝利を前に蓮水・志苑(六出花・e14436)は悲しげだ。遠目からでもわかったふかふか――このシロちゃんを、今から倒さねばならない。
「愛らしい子に刃を向けなければならないなんて。それを見越しコギトエルゴスムが寄生したのならば、策士ですね」
 だが、志苑がシロちゃんから視線を外す事はない。
 己はケルベロスで、シロちゃんはダモクレス。
「ええ、分かっております。頑張ります……」
『フキュッ』

●キュゥ~
 シロちゃんの口がぴすぴす動いた直後、一瞬で浜辺駆け抜けた愛くるしい『キュゥ~~~』。鳴き声は砂浜をほんのちょっぴり踊らせて、それが前衛に辿り着く直前、仲間の前に飛び出したのはハコとホリィの箱竜・サーキュラー。そして。
「声もすっごく可愛いー! メロメロになっちゃう!」
 無邪気に喜ぶ蓮華を見る涼香の目は羨望と憧れで輝き、その後方、翼猫・ぽかちゃん先生はぷくぅと頬を膨らませ、ねーさんは再び「ふうん」視線を突き刺していた。
「あっ、ち、違うから、ねーさん!」
 その証拠にほらちゃんと戦ってるよと輝く盾でサーキュラーを癒す涼香から、ねーさんはぷんっと顔を逸らしながら翼を大きく動かす。心なしか、いつもよりヒールがひんやりしている気がした。その間に壬蔭はシロちゃんの懐に飛び込んでおり、
(「ちっ、攻撃が難しいルックスしやがって……ある意味、質が悪いな……」)
 手加減しながら一撃。もふっと拳が沈んだ瞬間『ンキュゥ』と可愛い声がして、砂浜を蹴り上げたラウルの動きが一瞬止まってしまう。ふわふわの白い産毛、ちょこんとした麻呂眉の下にある真っ黒で円らな瞳だけでなく、鳴き声までも愛らしいなんて!
(「駄目だと分かっていても、世界中のかわいいを集めたような愛くるしい姿に心奪われてしまうっ……なんて恐ろしい相手なんだ…!」)
 崩しかけた体勢を立て直し、砂浜を蹴る。だが、このシロちゃんに飛び蹴りを決めていいのだろうか。スナイパーだからクリティカルになったらもう、とんでもない蹴撃が炸裂してしまう。
 僅か一瞬の間にそこまで考えた心に躊躇いが広がる――が。閃いてしまった。
(「あれ? 攻撃しながらモフれるんじゃあ?」)
 いつもと違う様子に首傾げたルネッタの翼が清風を起こした瞬間、流星となったラウルの蹴撃がシロちゃんに深々と沈み込んでいた。萌花も間を置かずもふもふ特攻、ならぬシロちゃんソウルをもぐっと頂く拳撃をずどん。
『フキュッ、キュンッ』
「す、凄い……!」
「うわ。このもふもふキュートさはマジでヤバいかも」
 薄縹色と鮮やかな青が驚きと感動で煌めいた。膝も肘も余裕でふわもふ白色に吸い込まれ、しかも驚きのしっとり滑らかさで満ちている。
「みんなでふわふわを堪能できるように、出来るだけ時間をかけて長期戦にしようね!」
 笑顔で黒鎖を駆け巡らせた蓮華は後方をちらり。ぽかちゃん先生やっぱりやきもち灼いてる、なんて見抜かれてると知らないぽかちゃん先生は、円らな目で一生懸命シロちゃんを睨みながら羽ばたいていた。
 次々に重ねられる加護に、志苑は感謝を抱きながら脚に流星を纏わせる。
 軽やかに跳び、蹴撃を叩き込んで。すぐ飛び退こうと――した。直前、そっと指先で触れたシロちゃんのお腹は、雪原のようなのに驚くほど滑らかでふわふわだった。そして攻撃を受けた際に聞こえた『キュッ』という悲鳴も大変魅力的。
(「どうして此処に捨て置かれてしまったのでしょう……」)
 外見だけでなく鳴き声も心を抉る精神攻撃。
 嗚呼、ダモクレスの卑劣さここに極まれり。
 そんな卑劣極まりない可愛いアタックにウッと胸を押さえていた公明が、キリリ笑顔で跳躍する。
「キューキュー音をイヤフォンで予習してきた俺に隙はありませんとも!」
 仕事で疲弊した心に染み込む鳴き声へ一瞬だけ想いを馳せ、見舞ったのはシロちゃんの動きを縛る流星の蹴撃。存在感を増した違和感が気になるのか、シロちゃんがフキュフキュ鳴きながらぺそぺそ尾鰭を見て――そこへギラギラキラリとハコが財宝を降らせていく。
 仲間達が繰り出す攻撃を受けてもそこにいる大きなふわもふホワイト。先程の鳴き声攻撃。ああ、やっぱりダモクレスなんだとホリィは肩を落とした。
「――うん、わかった。僕はケルベロス……戦うよー」
 ぐ、と拳を作って即、如意棒でつついた砂浜からざばあと現した青炎纏う巨大な腕。
「大きいけど頑張ってー」
「きゅー!」
 元気よく鳴いて封印箱に飛び込んだサーキュラーも加わり、真っ直ぐ向かった二つがシロちゃんをもふもふっと堪能もとい攻撃すれば、何度目かわからない『キュウッ』が響いた。

●キュー
 ふいにシロちゃんがケルベロス達を見つめた。
 円らで艶々とした黒い眼差しにラウルと公明と涼香は『ハッ』と肩を震わせ、サーキュラーは前ヒレで顔を隠して「きゅっ!」。
(「そんな目で此方を見るな……ん?」)
 疑問符浮かべる壬蔭にシロちゃんがフキュフキュとドヤ顔をした、ような直後、よいしょよいしょとシロちゃんが前ヒレ使い大きなボディの角度調整をし始めた。
 一体何を、とケルベロス達は顔を見合わせ――ハッとする。大型トラック並のボディが自分達と並列しているではないか。まさかこれは!
『キュー』
 ケルベロス達の位置を確認してから、砂を散らして迫り来るピュアホワイトの塊。呑まれた瞬間全身を襲うだろう感覚がどのようなものか――想像は容易い。あまりにも容易かった。故に。
(「庇いのついでに思いっきりハグしても、いい……かな!」)
 と、涼香が思ってしまうのも当然だったし、サーキュラーとハコはぴょんと前へ飛び出し、萌花は余裕の表情を浮かべ、蓮華は「おいでおいで!」と両腕を広げていた。
 そして――ごろんごろんと前衛陣に迫ったシロちゃんが、ふわんふわんでもふんもふんなタッチでようしゃなく前衛陣を呑みこんでくる。ならばと彼らもようしゃなく呑まれる事にした。
「……もふもふだー」
 進んで沈み込んだホリィからは嬉しそうな声。サーキュラーは頭をすりすりさせている。しかしその姿はふわふわ真っ白にかなり呑まれていて。
「皆さん大丈夫ですかっ」
「うん、とってももふもふで幸せー」
「羨まし……じゃなかった、大丈夫だけど大丈夫じゃなさそう、かな」
 公明は慌てて光の盾をホリィに寄り添わせ、あれっハコさんはと目を凝らす。
 いた。いたが。
「わー白くて一体化して……」
 もふもふもそそそそ。ふわふわ毛並みの中を器用に移動するハコは、四角と丸以外にも色々違いがあるというのになかなか出てこない。もふふ。もそ。毛並みが揺れて。
「……戻ってきてくださいね!?」
 返事代わりに顔(?)を出したハコに斬撃の軌跡が反射する。
 志苑の一太刀にシロちゃんが『キュッ!』と体を震わせれば、目の前で極上の白色がふんわり揺れた。円らな瞳と目が合い、志苑は心がきゅ、と苦しくなる。が。
「隙有り、ですよ」
 失礼しますと両手でもふもふ。玩具だった頃もこんな触り心地だったのでしょうか、とシロちゃんの過去を想った刹那。空中で可愛いポーズを決め華麗に衣装チェンジした蓮華が大きな体にダイブし、もふもふを堪能しながらキュートな生命力を吸い上げていく。
「やっぱりすごくふわふわもこもこで可愛いし、何より低反発もふもふに埋まる気もちよさは格別……!」
 そう、包み込まれるようなモフモフは癒しに満ち、何より可愛――。
「いったい! ルネッタ!?」
 隙を見て優しくもふっていたラウルは、埋めていた白色から顔を上げて更に驚いた。ルネッタのふわふわ尻尾がいつも以上に膨らんでいる。これは。凄く、怒っている。
「ご、ごめん! 君が最高の抱き心地だよ! でもシロちゃんのモフも惹かれると思わな痛い!」
 ぷんすかにゃごにゃご。低く鳴きながらも仲間に癒しの羽ばたきを贈るルネッタに、萌花はくすっと笑いを零し目の前に両手を伸ばす。途端包まれた感覚は、ウォーターベッドも真っ青な優しいもふもふ感。
「シロちゃんもキュートなもふもふで堪能しがいがあるけど、みんなのサーヴァントもかわいい子ばっかでマジ眼福。もふもふ天国な上にかわいい天国じゃない? なぁんて、ね」
 その天国を手放すのは惜しいけれど、自分達はケルベロスでシロちゃんはダモクレスだから。嗚呼、しょうがない。

●キュ……
 シロちゃんの魅力と能力に向き合ったケルベロス達は、時に攻撃し、時にというかかなりの頻度でもふもふとしながら油断なく事を進めていた。それでも、本当に機械か疑わしい機能性(愛らしさ)と肌触りの気配が、公明の中にあった出来の良さを羨む気持ち以上の“もふもふしたい”を抱かせて。
「失礼します!」
 ずぼもふんっと飛び込んでカッと目を見開いた。寝ても覚めても残っている気がしていた仕事疲れがキュアされていく――!
「あ痛ッ」
 可愛いにもアザラシにも弱くなかった筈がない公明を、ハコが頭突いて強制解放した。二人へシロちゃんの目が行かないよう、萌花はすかさず「こっちこっち♪」。笑顔と気咬弾という萌花の特別セットプレゼントにシロちゃんの体が盛大に転がった。
『フキュッ! キュ、キュッ!』
 起きあがれないのか面倒くさいのか。そのままの体勢でこちらを見た円らな目と目の間に皺が寄って――キラリ。来る。分かっていても可憐な瞳から目が逸らせなかったラウルを、別の「きゅー!」が庇った。
 サーキュラーはビームも何のその。封印箱に潜り――おや。
「もふっとダイブしてるだけだよね?」
「きゅ!」
 サーヴァントも虜にするシロちゃん恐るべし。しかし、たとえ真っ白天国があろうとも、心を鬼にした壬蔭の目には只のダモクレスにしか見えていなかった。モフモフ堪能済の今、繰り出す一撃は高い威力を誇る刃の如き蹴り。
『キュウッ』
 悲鳴までも可愛らしい。志苑は刀に添えた指を一瞬跳ねさせ、しっかり握り締めた。
(「嗚呼、ごめんなさいそれでも貴方を……」)
 せめて――痛み、苦しみを少なく。白いふわふわの体が人々の血に濡れる前に、これまで人に愛され大事にされた玩具として弔いをと、志苑が一瞬で奔らせた軌跡は氷雪の三日月。
 その後を、ラウルは翳した指先から生まれ咲いた瓊葩で優しく彩って。
「……おやすみ、シロちゃん。沢山モフらせてくれてありがとう」
 更に重ねられた花の彩。蓮華の紡いだ華麗な花嵐にシロちゃんの目が、とろん。その目に、妖精弓構えた涼香が映った。
「生まれ変わったらまた遊ぼうね」

 シロちゃんが消え各々が帰路に着く中、ホリィは寂しげな声を零していたサーキュラーを抱き上げる。
「メロメロだったもんねー。ほらシロちゃんはお空だよ」
「きゅー……」
 箱竜と一緒になって指された先を見た公明は、俵型の雲に目を細めた。敵とはいえ仕事疲れを癒したあの触り心地は、空の彼方。ならば。
(「やっぱり帰ったらアザラシ枕買おう……」)
 決意ひとつ。そして――ぷぅっと膨らむ頬がひとつ。
「ぽかちゃん先生お疲れ様! おやつだよ♪」
 ビッグでキュートな子アザラシへありがとうと別れを贈った蓮華のフォロー、おやつを見た途端、ぽかちゃん先生は輝く笑顔でばひゅんと飛びついた。しかしご機嫌斜め様はもう一匹。
「えーと、……ねーさん……」
 ぷんっ。
「おやつ買いに行く?」
 ぴくっ。
「みかげさん、付き合ってくれる?」
「それなら涼香さん、折角ここまで来たし、長崎の方にペンギン水族館ってのがあるみたいだし行かないか?」
「ね? みかげさんが水族館連れてってくれるって! 行こう?」
 その後ちょっとイイおやつ買ってあげる!
 大きなペンギン、小さなペンギン。“色々なペンギンが居る水族館”にそっぽ向き続けていたねーさんの耳がぴくり。
 くるり振り返った後、先導するように飛ぶ灰色猫とそれを追う二人。
 浜辺に刻まれる足跡を、ふわふわ白雲がのんびり見下ろしていた。

作者:東間 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年9月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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