螺旋忍軍の竜十字島探索作戦~あれを探すにゃ~

作者:雪見進



「お前ら、探すにゃ〜!」
 一体の螺旋忍軍の一人『にゃー・ぱーみりおん』が、不気味な緑色のオークらしき配下を従え、竜十字島の西側で何かを探索している様子だ。
 連れている配下は、オーププラント。オークの頭部にラフレシアのような花を付け、全身が緑色になっている不気味な存在。オークプラントは『にゃー・ぱーみりおん』の指示に従い、何かを探してる様子だ。
「うーん、もっと手が多いほうがいいのにゃ! 分身の術にゃ!」
 オークプラントの数は十体ほど。それでも足らないと『にゃー・ばーみりおん』は分身の術を使用して『何か』を探している。
「ゔぁぁぁ〜」
 オークプラントが頭部を振ると、そこから黄色い花粉かなにかが振りまかれ、地面を黄色く着色する。そして、その部分を掘り返し、地面を手当たり次第探している様子だ。
「見つからないにゃ〜 次行くにゃ!」
 ともかく、ここでは目的の物は見つからなかった様子。『にゃー・ぱーみりおん』は配下のプラントオークを連れて、別の場所へ移動するのだった……。


「ドラゴン・ウォーの戦場となった、竜十字島で、螺旋忍軍が何かを捜索している事が判明しました」
 そう説明をするのはチヒロ・スプリンフィールド(ヴァルキュリアのヘリオライダー・en0177)。竜十字島の地図をホワイトボードに掲示して説明を行う。
「ただ、何を探しているのか分かってないのです」
 余地が出来るヘリオライダーとて万能では無い。ただ、何を探しているかは判らないが、かなりの数の螺旋忍軍が探索を行っている事は分かっている。
「なので、きっと重要な物だと思います」
 他の場所でも探索を行なっている様子なので、重要である事は間違い無いだろう。
「そして、配下のオークプラントですが……」
 そんな探索に駆り出されているオークプラント。オーク型の攻性植物なので、攻性植物勢力の配下でもあり、ドラゴン勢力の配下でもある。なので、この螺旋忍軍がどの勢力の動きなのかは、様々な関連が考えらえる。
「ともかく、そんな重要な物を螺旋忍軍に渡す訳にはいきません。皆さんは、螺旋忍軍『にゃー・ぱーみりおん』及びオークプラントの撃破をお願いします」
 そう言って、詳しい敵戦力の説明に移るチヒロだった。

「敵の戦力は、螺旋忍軍『にゃー・ぱーみりおん』と十体のオークプラントです」
 改めて敵戦力の説明をするチヒロ。オークプラントは数が多いだけで、それほど強敵では無い。『命令に忠実に従って行動する』それが、このオークプラントの長所なのだろう。今回は戦力というよりは、探索要因として連れてこられたのではないかと思われる。
「さらに、この『にゃー・ぱーみりおん』も、それほど強敵ではありません」
 様々な事情があり、『何かを探す』事は得意のようだが、戦闘は得意ではないらしい。
「ただ、目的が『何かを探す』事なので、戦闘になると『オークプラントに足止めさせ』逃げ出そうとします」
 ただ、今回の作戦も目的は『螺旋忍軍の探索作戦を阻止する』事なので、螺旋忍軍に逃げられても、作戦としては成功となる。ただ、今後の事を考えるなら暗躍が得意な螺旋忍軍の戦力は削っておきたい。
 なお、オークプラントは命令を忠実に遂行しようとする為、逃げ出す事は無い。

「螺旋忍軍の探索を阻止するだけでなく、敵が何を探しているかの知りたいですよね……」
 チヒロも、螺旋忍軍が何を探しているのか気になる様子。
「ともかく、皆さんよろしくお願いします」
 ちょっと考えてから、改めて後を託すチヒロだった。

「ふむ……竜十字島でござるか……」
 小さく呟くと共に、何か大荷物を準備してヘリポートへと向かうウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007)。であった……。


参加者
ノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)
リューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)
風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)
エマ・ブラン(銀髪少女・e40314)
アンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)

■リプレイ


 ここはかつてドラゴン勢力のゲートがあった竜十字島。そこで、螺旋忍軍が率いる怪しい部隊が何かを探していた……。
「竜十字島で何を探しているのかわからないけど、あの子が眠る場所でもあるのだから、これ以上は荒らさせないよ」
 静かに呟いた影渡・リナ(シャドウフェンサー・e22244)の言葉だったが、皆の想いにも重なるところがあったのだろうか。静かな沈黙が流れる。
「……少し、時間を貰っていいでござるか」
 そこへ口を出したのは、珍しくウィリアム・シュバリエ(ドラゴニアンの刀剣士・en0007)。
「……」
 その言葉に沈黙で答える他の者たち。それを見てから、荷物から花を取り出し献花。それから、短い間だが黙祷を捧げる。
「……」
 他の皆もウィリアムに習い、黙祷を捧げる。
「時間を取らせて済まぬでござるな。しかし、こんな場所で探し物とは酔狂な」
 やるべき事を終えた後は、気持ちを切り替えるように、笑顔を見せるウィリアム。
「でも、宝物探しみたいで、すごくワクワクするよね!」
「意外と螺旋忍軍もそんな気持ちなのかもっす」
 そんな笑顔につられて、シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)とシルフィリアス・セレナーデ(紫の王・e00583)が楽しそうな言葉と共に笑顔を見せる。
 螺旋忍軍が探している『あれ』とは何だろうか? それが宝なのか厄災なのかは、見つけ出さないと分からないが、少なくとも螺旋忍軍に渡さない方がいいのは間違いない。
「そういやウィリアム、その大荷物の中身、なんなのさー?」
 ウィリアムの持ってきた大きな荷物が気になるノーフィア・アステローペ(黒曜牙竜・e00720)。さきほど献花したウィリアムだが、それでも荷物はさほど減っていない。
「まあ、ちょっと余裕があれば……でござる」
 ノーフィアにはイタズラでもするような笑顔を見せるウィリアム。しかし、献花の花を用意していた事もあり、この土地は様々な事があった場所。そんな想いの荷物だろうか?
「私のは半分くらい携行食。一つどう?」
 そんな気持ちが分からないノーフィアではない。ウィリアムの笑顔に答えるように差し出す携行食。
「頂くでござる」
 言葉は少ないが、数多くの戦場で戦ってきたケルベロス同士。それで伝わる事もある。
「では、こちらもお返しでござる」
 ノーフィアへのお返しは、いつも用意している手作りお菓子。今日は塩チョコレート。
「初めて着たけど、どうかな?」
 そんな雰囲気をより柔らかくしようと、笑顔でくるっと舞って、衣装のアピールをするのはエマ・ブラン(銀髪少女・e40314)。そんなアピールする服はセーラー服。学校には通ってないから初めて着るらしい。
「よく似合ってるね♪」
「可愛らしいでござるよ」
 そんなエマのアピールに笑顔で答えるシルディとウィリアム。
「わーい!」
 二人の言葉に、本当に嬉しそうに答えるエマ。
「そんな可愛らしいエマ殿へプレゼントでござる」
 そう言いながら、エマにも塩チョコをプレゼント。
「わーい♪」
 そういう所は、非常にウィリアムらしい。今日は気温も高い。他の者にも塩チョコや塩飴を配る気配りなウィリアムであった。

 そんな者たちとは対照的に、今回相手をするデウスエクスに不快感を漂わせてるのはアンヴァル・ニアークティック(バケツがガジェット・e46173)。
「あの気持ち悪いオークが、今度は緑色になって、花まで咲かせているなんて……」
「……あはは」
 アンヴァルの言葉に微妙な笑みを返す他のケルベロスたち。ただでさえ不気味なオークが、より不気味さを増して、大軍で現れているのだ。苦笑苦言の一つも言いたくなる。
「そのオークを使って何を探しているのかな?」
 螺旋忍軍が、そんな不気味なオークを従えて何かを探している。それが気になるリューイン・アルマトラ(蒼槍の戦乙女・e24858)。
「どうにも納得がいかないんだよね」
 掘り返した跡を調べながら風陽射・錆次郎(戦うロボメディックさん・e34376)が呟く。元衛生兵として、こういった野戦での行動は心得ている。だからこそ、彼らの行動に納得がいかない様子。
「彼方此方掘り返しているみたいだけど、そんな重要な物が、こんな所に埋まっているとも思えないし……」
 他の場所でも別の螺旋忍軍がオークを引き連れ同じような探索行動をしているらしい。
「……これは、デタラメに掘っているのかな?」
 掘られた穴を確認するシルフィリアスだが、非常に雑な掘り方なので、そんな気がしてくる。
「もしかして……竜の死骸というか、骨でも探しているのかな?」
 考察を続ける錆次郎。骨とかならば地中に埋まっている可能性があるだろう。しかし、いずれも推測の域を出ない……。


 そのまま、掘った跡を追跡しながら螺旋忍軍を追跡するケルベロス達。まあ、これだけはっきりと跡を残しているのですぐに居場所は分かる。
「お前ら、きりきり探すにゃー!」
 声が聞こえるくらいまで近づくと、アンヴァルは、迷彩ポンチョに隠密気流等で、身を隠しながら、少しでも情報を集めようと、写真を撮り、螺旋忍軍の動きを探ろうとする。
 物陰に隠れ、様子を伺いながら情報を収集するも、それは限界がある。ある程度近くと、そこは流石螺旋忍軍。ケルベロスたちの気配に敏感に反応する。
「そこに隠れているのは誰だにゃ!」
 近くでは、長い時間様子を見る事はできず、発見されてしまう。ハッタリの可能性もあるが、そのまま隠れていては、逃亡されてしまう可能性がある。
 諦め、螺旋忍軍の前に姿を表すケルベロスたち。
「にゃにゃにゃ? お前も『あれ』を探してるのかにゃ!?」
 エマが持っていたシャベルを見て、リアクションをするが、ライバルだと思っている様子こそ見せるものの、それ以上の情報は出さない。
 というか、にゃー自身も『あれ』が何処にあるのかは分かっていないのではないだろうか?
「なるほど、この為の花粉なのですね」
 アンヴァルは地面を見て、ばらまく花粉の意味を理解した。地面にバラまかれた花粉が色を付け、何処を掘ったか、邪魔な土砂を何処に置いたのか、一目でわかるようになっているのだ。
 全く無策で掘っている訳ではないようだが、ともかく今さっきまで作業をしていたという事は目的の『あれ』は見つけてない証拠。
「……まあ、変な粘液かけられるよりは……花粉の方が若干マシかもしれませんが……」
 しかし、花粉は服に付くと洗濯が大変だと聞く。どちらにしてもオークはやはり厄介な存在であるという事だ。
「お前ら、邪魔するなだにゃー!」
 自身を守るようにオークたちに指示を出しながらも、探索が諦めきれない様子で、こちらに襲いかかってくる様子は無い。オークたちはそのまま黙々と穴を掘っている。
「マスタービーストの復活はさせないっす」
 そんな状況なので、シルフィリアスが『かま』をかけ情報を引き出そうとする。
「……ふふふ、そんな言葉に反応なんてしないにゃ! 貴様らケルベロスは危険だと知ってるにゃ!」
 表情を変化させぬまま、きっぱりと言い返してくる。事前の情報ではうっかりな性格っぽいが、そこは流石に螺旋忍軍の一員なのだろう。
「それならやるだけっすね!」
 情報が得られないのなら、戦って排除するしかない。シルフィリアスは、可愛い掛け声と共に杖を振ると、そこから光のリボンが伸び、それがシルフィリアスの姿をつつみこんでいく。
 光のリボンに包まれたシルフィリアスは、輝きの中で全裸姿になり、足、手、肩、腰と、一部分ずつ、光のリボンに包まれ、変身していく。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ参上っす」
 変身終了と共に可愛く決めポーズ。三方向からフラッシュが光り、シルフィリアス……いや、魔法少女ウィスタリア☆シルフィを可愛く演出する。
「ず、ずるいにゃ!」
 何がずるいのか不明だが、とても悔しがるにゃー・ぱーみりおん。
「いくっす!」
 かわいくポーズをつけて杖から魔法を放つシルフィリアス。杖の先端から放たれたのは電撃。それがにゃー・ぱーみりおんを貫く。
「猫は好きだけれど、手加減はしないよ!」
 戦いとなると本気になるリナ。周囲へ魔法の木の葉を纏わせ、自身の力を高める。
「集え地の魔力! 彼の者の穢れを取り払い、彼の者を護る内なる盾となれ!」
 シルフィリアスとリナに続いてシルディが詠唱と共に、仲間へ心地よい風がふき、体内の穢れを退ける力を宿らせる。
「黒曜牙竜のノーフィアより、螺旋忍軍のにゃー・ぱーみりおんへ。剣と月の祝福を」
「みゃ! 名乗るのかにゃ? えっと、螺旋忍軍にゃー・ぱーみりおんの『どれか』にゃ!? いざ、尋常に勝負!」
 何だか名乗りがちょっと引っかかるが、ともかく魔杖鞘『龍の顎門』を構えるノーフィア。魔杖鞘『龍の顎門』は鞘に納めたままの剣。しかし、鞘を使う打撃術も古来より存在する。その鞘を使った超重量の一撃をにゃー・ぱーみりおんへと繰り出す。
「にゃー お前たち、にゃーを守るにゃー」
 『にゃーにゃー』言いながらオークに指示を出すにゃー・ぱーみりおん。
 そこへ連携攻撃を繰り出すのは、ゴットペインターの二人、アンヴァルとエマ。
「花粉なんて上書きしちゃいますよ!」
 アンヴァルが周囲へと塗料をばら撒き、周囲を彼女の塗料で染め上げ、敵の動きを阻害する。
「いっくよー!」
 セーラー服の背中に背負った水タンクから、ペイントブキに塗料を送り、水鉄砲の如く塗料をばら撒き、さらに周囲を塗料で染め上げる。
 アンヴァルとエマのばら撒いた塗料が空中へと道を作り、そこを突っ走るエマとアンヴァル。
 二人が塗料の道を疾走し、にゃーを含む周囲へと塗料をぶちまけ、オークたちには動きにくく、二人には戦いやすい戦場を形成する。
「にゃにゃにゃ!」
 周囲が塗料で覆われ、大慌て。
「……」
 その背後に突如現れ、攻撃を繰り出すビハインド『アミクス』。そこへタイミングを合わせ、空の霊力を込めた斬撃を繰り出すリューイン。

 ケルベロス側が有利に運ぶ戦いに、出来れば情報を得ようと声を出す錆次郎。
「お前は、どこに所属しているんだ!?」
 オウガメタルを放出しながら、それとなく情報を得ようとする。
「そんなの教えるはずにゃい……あ、えっと……ぱーみりおん団にゃ!」
 突如結成されたっぽいぱーみりおん団。まあ、間違いなく口から出まかせなのだろう。やはり、通常のデウスエクス相手に会話で情報を得ようとするのは難しい。
「と、とりあえず分身するにゃ!」
 ともかく、分身の術を使い急場を凌ごうとするにゃー・ぱーみりおん。
 同時に何か術の準備をしている様子。あまり時間をかけては逃げられるかもしれない。
 攻撃の手を強めるケルベロスたちであった!


「オレも手を貸すぜ!」
 螺旋忍軍や大阪城勢力の動きが気になる相馬・泰地(マッスル拳士・e00550)が応援に駆けつけてくれた。
「マッスルキャノン!」
 敵を追尾するオーラの弾丸を両手から放ち、にゃー・ぱーみりおんの逃亡を阻止しようとダメージを蓄積させる。
「痛銃達、僕と踊って! あと、ついでに体についた肉も」
 痛銃を持って、踊りながら特殊な弾丸をにゃー・ぱーみりおんへと放つ錆次郎。
「いい加減にするにゃ!」
 再び分身しながら、逃亡の準備をするにゃー・ぱーみりおん。そこへシャベルの攻撃を繰り出すエマだが、その殴打するのは分身で、煙のように姿を消してしまう。
「また、ハズレー!?」
 しかし、分身にも限界がある。数を減らす意味はあるだろう。
「ウゥバァァ……!」
 不気味な唸り声を上げながら緑色のオークが頭部の花より花粉をばら撒く。
「きみたちのマスターの使ってた、こんなのを探しに来たんじゃないの?」
 その花粉から仲間を守りながらガジェットを展開させるシルディ。
「いい加減、ひっかからにゃいにゃ!」
 様々な方法で情報を引き出そうとするケルベロスに対し、それをかわすにゃー・ぱーみりおんだが、実際にはそれほど情報を知らないのではないだろうか……そう思うほど、何も情報は得られない。それに、これ以上時間の余裕は無さそうだ。そのまま、全身をオウガメタルで覆い鋼の鬼……ならぬ鋼のオオアリクイとなる。しかし、その身体はオークの花粉で思うように動かない。
「今、助けるでござる!」
 そこへウィリアムのオーラがシルディへと飛び、まとわりつく花粉を綺麗に振り払う。
「よし、いっくよー!」
 花粉が無くなり元気復活! そのまま、オオアリクイさん形態でにゃー・ぱーみりおんへと突撃する。
「ぎゃーにゃー!」
 シルディの攻撃で態勢を崩すにゃー・ぱーみりおん。
「最高のアート完成の予感!
「にゃー、かくごー!」
 そこへ飛び込むアンヴァルとエマ。
「さあ! 今日のキャンバスはあなたです!」
 にゃー・ぱーみりおんへと塗料をばら撒き、キャンバスにして芸術的な絵を描くアンヴァル。
「ファイアー!」
 そこへ、芸術の完成とばかりに放たれたのは、エマのロケットランチャーに似たオリジナルグラビティ。アンヴァルとエマのグラビティによりにゃー・ぱーみりおんへ塗布された塗料が爆発模様を描き、一つの芸術作品が完成する。いわゆるアクションペインティングという技法だ!
「風舞う刃があなたを切り裂く」
 リナが放つ無数の風刃がさらににゃー・ぱーみりおんを切り裂くが、致命傷には一歩足らない。しかし、放たれた風の刃がにゃー・ぱーみりおんの周囲を舞い、動きを阻害する。
「にゃにゃにゃ! 動けないにゃ!」
 塗料やら爆破やら風の舞いで、動きの鈍くなったにゃー・ぱーみりおん。しかし、それを守るようにオークたちが立ちふさがる。
「神々より託されし、この一投……あなたには少々、もったいないですが、真の死を授けましょう」
 にゃー・ぱーみりおんを守ろうと動くオークを狙い、リューインが魔槍・ゲイ・ジャルグを投げつけると、裁きの雷光としてオークを貫く。
「クングニルバスター!!」
 貫かれた箇所を同時に裁きの雷光が貫き、オークを灰と化す。
「いくっすよー」
 仲間たちがオークたちを削り出来た射線へ、マジカルロッドを構えるシルフィリアス。
 マジカルロッドを背中で一回転。そのまま華麗に宙返りをしながらマジカルロッドへと魔力を収束させる。
「や、やめるにゃ!」
 逃げようと慌てるも、まだ撤退には時間が必要。そんな派手な動きで注意を引くシルフィリアスとは別の射線からノーフィアが動いていた。
「我、流るるものの簒奪者にして不滅なるものの捕食者なり。然れば我は求め訴えたり……」
 もう一つの射線を指で指し示すノーフィア。詠唱と共ににゃー・ぱーみりおんの背後に構築されていく立体的な魔法陣。
「魔法少女ウィスタリア☆シルフィ・フリーレンシュトラール」
 ポーズを決めて放つ魔力の光線。
「奪え、ただその闇が欲する儘に……」
 同時に完了するノーフィアの詠唱。
 シルフィリアスの魔法光線により凍結したにゃー・ぱーみりおんは、凍結したままノーフィアの漆黒の球体へと吸い込まれ……そのままガラスが割れるような乾いた音を響かせ、砕け散った……。
「……ぶぼ……」
 主人のにゃー・ぱーみりおんが消滅しても、オークたちは命令を愚直に聞き、戦闘を継続する。しかし、ただの配下であり、戦闘よりは別の作業を得意とするオークたちに遅れをとるケルベロスたちではない。ほどなく、残りのオークを倒した。
 ケルベロスたちの完全勝利だ!


「螺旋忍軍の捜し物もだけど、ウィリアムさんの荷物は何が入っているのかな?」
 エマとノーフィアは興味津々にウィリアムの大きな荷物を見つめる。
「うむ、そうでござるな」
 少し悩みながらのウィリアム。カバンから取り出したのは『苗』だ。
「この惨状は防げぬかったからな……」
 周囲はオークや螺旋忍軍によって無残に掘り返され荒ている。壊れた地面や建物はヒールでなおる。しかし、植物はそうもいかない。特に今回はオークのばらまいた花粉もある。
「これは花の苗でござる」
 手入れがそれほど必要でない苗。ただ、園芸用で種を残すような種ではない。
「ただ、来年も花が見れるとよいと思ったでござる」
 それは願いなのだろう。数年前から激化したデウスエクスとの戦い。その中でやっと取り戻したこの竜十字島に、ウィリアムは花を植えたいと……。
「そっか。じゃあ、手伝うよ」
 エマもリューインもウィリアムの荷物から花の苗を取り出し、植えていく。うまくいけば、今年の秋にでも花が咲くだろう。その時に見に行く事が出来るだろうか……。
「ここの土を少し持って帰ろう」
「そうだね、少しでも情報が欲しいものね」
 一緒に作業をしながら、竜十字島の土を採取する錆次郎と、それを手伝うリューイン。専門家に見て貰えば何か分かるかもしれないが、問題はどの専門家に見て貰うかが重要。地質学なのか微生物なのか、簡単に分かる事出ない以上、相応の専門分野を選ぶ必要があるだろう。
「この島には、まだまだ隠されている謎がありそうだね」
 リナが呟く。螺旋忍軍の目的も何も分かっていない。しかし、少なくとも今は螺旋忍軍の目的を阻止し戦力を削ぐ事が出来たのだ。
 今は、それを手土産に帰路に着くケルベロスたちであった。

作者:雪見進 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月1日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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