かつての好敵手は泥を啜り

作者:質種剰

●螺旋忍軍の暗躍
 竜十字島。
 ドラゴンのゲートが失われたこの島に、今は何故か螺旋忍軍の姿が複数見受けられた。
「……全く、どこにあるかもわからないものを探すなんて……徒労と同じだな」
 人の手が殆ど加わってていないような森林の中では、短く整えた黒髪から長く伸びたうさ耳の特徴的な螺旋忍軍が、多くのオークたちに混じってうろついている。
「良いかお前ら、しらみつぶしに探せよ。見落としは許さないからな……」
「ブヒー!」
 黒兎の螺旋忍軍へ凄まれて、震え上がるオークたち。
 よく見ると、彼らは普通のオークと違って植物みたいな緑色の肌と蔦に似た触手を持ち、頭にはラフレシアそっくりな花を咲かせていた。
 オークプラントという種族である。
「ったく。毎日毎日捜索ばっかり。いい加減飽きてくるぜ」
 白い肌に映える赤いつり目を充血させて、ツンケンした螺旋忍軍が呟く。
 赤い首輪を嵌め、黒の燕尾服を身に纏ったこの螺旋忍軍、名を『ザクロ』という。
「あーあ……主にこき使われてしごかれていた頃が懐かしい……」
 オークプラントらが器用に触手で土を掘り返す傍ら、ザクロはその穴へ吸い込ませるかの如く、低い呻きを洩らした。

「ドラゴン・ウォーの戦場となった、竜十字島で、螺旋忍軍が何かを捜索していると判ったであります」
 小檻・かけら(麺ヘリオライダー・en0031)が説明を始める。
「何を探しているかはまだ判りませんが、かなりの数の螺旋忍軍が探索を行っているらしく、相当重要な物であると推測されます」
 螺旋忍軍はオーク型の攻性植物、オークプラントを配下として連れている事から、大阪城の攻性植物やドラゴンの残党との関連も疑われる。
「皆さんには、探索を行っている螺旋忍軍の撃破をお願いいたします」
 ぺこりと頭を下げて、かけらは続けた。
「皆さんに倒していただきたいのは、螺旋忍軍『ザクロ』とその配下のオークプラント10体であります」
 ザクロは二刀を操る黒兔ウェアライダーの螺旋忍軍だ。
「その二振りの刀を使って、二刀斬空閃、月光斬にそっくりなグラビティを使ってくるであります」
 また、鍛えた足腰に物を言わせて、ファナティックレインボウに似た飛び蹴りを放つ事もあるという。
 ポジションはザクロがクラッシャー、オークプラントたちはスナイパーである。
「配下のオークプラントはなんと申しますか動きの鈍い雑兵でありまして、ザクロも螺旋忍軍ゆえに戦闘能力はあまり高くありません」
 ただし、ザクロは隙あらばオークプラントへこちらの足止めをさせて、逃げ出そうとするため、注意が必要だ。
「螺旋忍軍を撃破して探索を邪魔するだけでなく、敵が何を探しているかの情報も得たいところでありますね」
 かけらはそう説明を締め括って、最後に私見を述べた。
「彼らが探している物を正確に予測できれば、それをわたくしたちが先に獲得する事も可能でありましょうし」


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
皇・絶華(影月・e04491)
因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)
端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)
ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)
北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)
ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)
ルフ・ソヘイル(秘匿の赤兎・e37389)

■リプレイ


 竜十字島。
 螺旋忍軍の探索を妨害すべく、ケルベロスら8人が彼の地へ降り立つ。
 ドサァッ!
 相変わらずヘリオンから蹴落とされて地面へ激突するのは、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)。
 機内でおっぱいダイブと称して小檻の胸へ飛び込む傍ら、
「こっちも良い感触だと思うけどな」
 太ももが太いのを気にしている彼女への思いやりか、この日は太もももついでに撫でていた。
 蒼眞はさっさと砂を払って立ち上がるや、ついさっきまで淫蕩に耽っていたとはとても思えないクールな雰囲気で、ザクロらのいる森林へと向かう。
「チッ、余計な邪魔が入ったか……」
 ザクロとオークプラントたちは、幸い一ヶ所に固まっていた為、容易に発見できた。
 恐らく、ザクロ自身も辟易しているあてもない捜索をオークプラントらが真面目にやる筈もなく、奴らがサボらぬよう常に目を光らせている必要があるのだろう。
「ブヒ!」
 ザクロを庇おうと彼の前へわらわらと出てくるオークプラントたち。
「オークプラントって……豚のオークが楢のオークになりました、とでも……?」
 蒼眞はそんな軽口を叩く傍ら、天空より迎えた無数の刀剣を解き放って、オークプラントらの触手をスパスパと斬り落とした。
「以前、皆が見た予兆で出てきた部屋に『第六混沌玄室』ってのがあった」
 因幡・白兎(因幡のゲス兎・e05145)は、仲間にだけ聞こえるように小声で話す。
 彼の脳裡によぎるのは、かつて自らの手で倒した中村・裕美の事だ。
 裕美がブラック企業も裸足で逃げ出す過酷な長時間労働に自ら進んで身を捧げていた場所、それが『第六混沌玄室』である。
「他にもそういう場所があって何か研究とかされてたのかなーと思ったけど、違うのかな?」
 白兎がひそひそ囁くのを聞いて、蒼眞などは裕美を思い出しても気落ちしていない様子に胸を撫でおろしていたが。
「うーん、先回りするにはヒントが少ないかな? こう、ヘリオライダーを刺激したら突然新しい予知が! とかないかな?」
 実際のところ、彼も機内で小檻の胸をゆさゆさするほどに、常日頃のエロ兎ぶりを取り戻していたりする。蒼眞と同じく蹴り落とされたのは言うまでもない。
 ともあれ、白兎は古代語を詠唱すると同時に魔法光線を放ち、ザクロの身体へ石の如き重さを加えた。
「竜の島の捜索……何を探してるのか興味はあるけど、まずは阻む事を優先しなければね」
 ヒメ・シェナンドアー(白刃・e12330)は、バックリボンとうさ耳フードをつけ、赤いリボンで飾った白いケルベロスコート姿で、ザクロへ立ち向かう。
 元よりザクロがオークプラントらを盾——どころか捨て駒にするのも厭わず、自分だけさっさと逃げおおせる事は予知により判っている。
 だから、ヒメはザクロの逃走を許さない為にも全員で奴を囲い込むのが最優先と考えた。
(「正直、オークプラントに攻撃されるのはぞっとしないけど、今は役割に集中」)
 緑麗と緋雨を構えてザクロとの間合いを計りながら、いつ牽制を仕掛けたものかと出方を窺うヒメ。
「その足――封じさせて貰うわ」
 そして、ザクロが白兎の魔法光線を避けんとするより先に、奴の呼吸を読んで絶え間なく二刀の剣戟を繰り出し、まるで檻へ閉じ込めたかのように奴の動きを阻害した。
 一方。
(「かつての同僚と刃を交えるのは、ルフさんにも辛い事のはずだ」)
 螺旋忍軍の探し物も気にならない訳ではないだろうが、やはり何より先に辛い立場の戦友を心配するのは北條・計都(凶兆の鋼鴉・e28570)。
(「だけどやるしかないのなら、俺達はせめてその辛さを共に背負う!」)
 と心に決めた計都は、ワイルドレイヴンに変身せず顔を晒したまま戦闘態勢に入る。
 それが彼の、望まぬ戦いを強いられる師団仲間に対する気遣いなのだろう。
「1発なら躱される弾丸でも、6発同時なら!」
 計都が機巧廻転鎚【荒徹】を力一杯振り抜けば、グラビティのこもった竜砲弾が放たれる。
 高威力の弾丸は、オークプラントの腹で隠れた急所や太短い関節を一瞬で6箇所同時に撃ち貫き、1体の機動力を奪った。
 ギャキャギャギャギャ!
 こがらす丸も主の意思に忠実に、激しいスピンを仕掛けてザクロの足を轢き潰しにかかっていた。
「戦争後にこの島に来るのは初めてだね」
 ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)は、2ヶ月前のドラゴン・ウォーで訪れた事を思い出して、戦火の痕生々しい周囲を見渡す。
(「竜の忘れ物があるのか、それとも竜達も知らない何かが眠ってたのか」)
 派手な見た目に違わぬ破天荒さと天真爛漫さが彼女の持ち味で、ウイングキャットの名はずばりビースト。彼女の内面をよく表していた。
「踊るよビースト♪ パーティタイムだ!」
 ビーストと一緒に中華風アレンジが効いたロックのリズムに合わせてステップを踏むベルベット。
 刻んだステップで描かれた魔法陣から無数の紅い蔦が伸びて、前衛陣へ降りかかる災厄を阻む壁を構築した。
 ビーストが散らした清浄なる翼も後衛陣へ雪のように降り注ぎ、彼らの異常耐性を高める。
 他方。
「彼らが必死に探しているものとは、ドラゴンオーブの欠片の可能性はないだろうか」)
 皇・絶華(影月・e04491)は、螺旋忍軍たちが探すものの推理に真剣であった。
(「あの時砕かれた欠片をドラグナー等が確保して、もし此処へ保存していたら……」)
 絶華の発想は斬新で、その正誤に拘らず、仲間たちへ伝えれば新たな刺激になりそうではあるが、
 その反面、斬狼を穿いた脚で放った回し蹴りは当初の作戦から外れていて。
 強烈な暴風をぶつけて守りを突き崩したのは、後衛のオークプラントでなく前にいるザクロの方であった。
(「きっと余人にはわからぬ想いがあるじゃろうな……」)
 端境・括(鎮守の二挺拳銃・e07288)は、ザクロを逃すまいと混戦の中位置取りに苦心している師団仲間を見やって、できることなら頭をぽふぽふ撫でてやりたい衝動に駆られていた。
(「ルフが語らんとせぬなら問うつもりもないのじゃ。けど、わしや此処にいるみんなは、ルフの味方じゃよ」)
 日頃なら饒舌で元気な括が珍しくぐっと口を噤み、師団仲間の心持ちを慮っている。
「ゆえにこそ、オークだか攻性植物だかわからぬ、なんか、その、アレに野暮な横槍は入れさせぬ!」
 友人を思いやる真剣さが、家出した語彙によって多少削がれたものの、括のオークプラントへ対する怒りは奴目掛けて投げつけた火球よりも遥かに烈しく燃え盛っている。
 さて。
「葛藤がないわけじゃない……けど企みは止めるよ」
 ルフ・ソヘイル(秘匿の赤兎・e37389)は、小さく口の中で呟いて、悲壮な決意を新たにしていた。
 ルフにとって、ザクロはかつて共に螺旋忍軍の一族が住まう里から脱走を図るほどの親友であった。
 だが、その企てのせいで2人と親しかった里の女性を見せしめに殺され、ザクロも里へ連れ戻されて調教を受けたという。
「ザクロ、いつか来ると思ってたよ」
 今のザクロは昔の彼とは違う、自分への感情も奴の主人からどう植えつけられているかわからない。
「誰かと思ったら、裏切り者か」
 ルフを一瞥するなりザクロはそう吐き棄てるだけで、ずっと逃げる隙を窺っていて攻撃すらしてこないのだ。
(「……だろうな」)
 光の尾をたなびかせた重い飛び蹴りをザクロの肩へ喰らわせる傍ら、ルフは悲しい思いに囚われていた。


「探し物は、これかの?」
 何よりザクロの逃走は阻止しなければならない、と括はアイテムポケットからキャリーバッグを覗かせる。
 一瞬でもキャリーバッグへ関心を示してくれたらその僅かな間だけは逃走の判断が鈍る事になる——と考えての策だ。
「攻性植物に持ってかれて使われたら困るからの」
 はったりをかますついでにオークプラントをショートパンツを穿いたタンキニ姿で誘惑してから、モモンガのいたずら野鉄砲に魔力を籠めて射出、脂下がった顔面へ直撃させるのも忘れない。
「!?」
 ザクロは、配下のオークプラントがぶっ倒れても気にも留めず戦っていたが、括のキャリーバッグを見た瞬間、ギョッとした表情になる。
 だが、すぐに安堵の顔つきに変わり、オークプラントたちを見捨てて逃げ出そうとしたので、
「一足遅かったね♪ この島はアタシ達ケルベロスが占拠してるんだよ?」
 すかさずベルベットが砲撃状態の金梟槌・ルミエールマッシャーを振り下ろし、竜砲弾をぶっ放した。
「とっくの昔に調査なんて終わらせてるに決まってるじゃない」
 自信満々の表情と、慌てた様子のない明るい口調が、ベルベットの肝の座りようと演技力の高さを物語っている。
「そんなハッタリに騙されると思うな」
 もしかするとさっきのキャリーバッグによってケルベロスたちが探し物を知らないと察したのか、言い返すザクロの声は冷静だった。
「向こうとお目当てのものは違ったみたいだし、変にヒントは与えないほうがいいよ」
 白兎は彼なりにフォローしながら、オークプラントらへ向かって仕掛けておいた無慈悲な多段トラップを発動させる。
 顔を焼かれた個体には火が点いた矢、足を撃ち抜かれた個体へは縄を飛ばして、それぞれの個体が被っている苦痛へ追い討ちをかけていた。
「逃がさん!」
 身体速度を超強化させて狂戦士と化した絶華もザクロ目掛けて襲いかかり、カタールを神速で振るって奴の背中を斬り裂いた。
 一方。
「ブーヒッヒッヒ! 良い眺めだブヒ」
「良い感触だブヒ」
「良い気味だブヒ」
 ヒメはオークプラントたちの触手による噛みつき攻撃の餌食になって、ぎゅっと唇を噛んで耐えていた。
 奴らの攻撃を受けても良いように白いうさ耳ケルベロスコートで厚着をしてきたものの、幾ら服の上からでも埋葬状態になって肥大化した触手へ全身を咥えられたら気持ち悪いのは当然である。
「悪いけどもう容赦できないからね」
 真っ赤な顔をしたままザクロへ向き直り、緋雨を抜き払うヒメ。
 ザクッ!
 空の霊力帯びし魔動機刀を閃かせ、ザクロの肩の傷を正確に斬り広げた。
「この島に捜索に来た螺旋忍軍が殆どウェアライダーなのはどういう事なんだ……?」
 計都は、竜十字島へ集まっている螺旋忍軍の共通点に気づいて、ひとり思案に耽る。
 とはいえ、オークプラントとの間合いを詰めて機巧刀【焔】による素早い斬撃を繰り出す様には迷いがない。
「せめてポジションが逆ならな……!」
 また、こがらす丸のハンドルを握って、早くオークプラントの数を減らそうとガトリング掃射を撃たせた。
「探し物とウェアライダーに何か関係が……?」
 ふっと頭に湧いた疑念をどうしても拭い去れない計都。
 ——ゴッ!!
 蒼眞は、石英の残霊を召喚してそこから蹴落とされる場面を事細かに再現。
 オークプラント1体の腹へ勢いよく激突して、その息の根をも止めてみせた。
「今更だけど、ケルベロスのグラビティが当たればコギトエルゴスムでも砕けるからな」
 起き上がりながら蒼眞が何気なく言うのへ、ザクロの表情が強張る。
「わざわざお前らを殺さずに退こうとしてやってるのを妨害しておいて、随分矛盾した言い草だな」
 一瞬考えてからそんな風に返したザクロ。
「いや、大した意味はないさ……」
 蒼眞は微かに口の端を吊り上げた。
「はっきり言いなよ。ここに来た目的は何? 俺らにビビって言わない程臆病だったっけ?」
 ルフも、自らの感情を押し殺してまで探し物の情報を得ようとしてか、ザクロを挑発する。
「生憎裏切り者へ構ってやれないほど忙しくてな」
 次いで、精巧な幻覚でできた弾を奴へ大量に乱射し、わざと避けるよう誘導してから、予測した動作に合わせて本命かつ本物の一発を撃ち込んだ。
「……何だ今の。人参か?」
 ザクロはみすみす弾を喰らってしまった事より、幻覚弾に混じっていた人参の方が気になるようだ。
「そういうところだけは変わってないんだな……」
 やるせない気持ちで呟くルフ。


 戦闘開始から十数分。
 螺旋忍軍の探し物について、明確な情報こそ得られていないものの上っすらと輪郭が見えてきたのへ比例して、ケルベロスたちはオークプラントを粗方始末し終えていた。
(「もしザクロが何か吐いたとしても、探し物を正直に説明する理由がない。実際何を言われたところで本当か嘘か確認しようもないしな……」)
 蒼眞は半透明の『御業』をしぶといオークプラントへけしかけつつ、冷めた意識で考えていた。
 それが、螺旋忍軍らの探し物へ興味こそあってもザクロの言葉を話半分に聞いている理由であろう。
 とはいえ、『御業』がオークプラントを全力で鷲掴みにして捻り潰しているだけ、蒼眞自身戦闘を疎かにしていない証拠である。
「……ごめんなさいね」
 雷の霊力宿りし緑麗を構えて、神速の突きを繰り出すのはヒメだ。
「そこだ!」
 計都はレイジングタスクを穿いた足を振り抜いて、卓越した技量からなる達人の一撃をオークプラントの腹へぶち込んだ。
 こがらす丸も何度目かのキャリバースピンを起こし、ザクロの足をガリガリ轢き潰している。
「君にはどんな幻影が見えているのやら」
 カマキリブレイドの刀身を翳して白兎が呟く。
 ザクロにとって忘れたいトラウマが具現化して奴を襲い始めるも、残念ながらそのトラウマが何なのかは当人にしかわからない。
「……」
 だが、血を滴らせながら虚空を見つめるザクロの目は、確かに彼の記憶を捉えているらしい。
「回復はアタシに任せな! ルフは自分のしたいようにするんだよ!」
 ベルベットはルフへ発破をかけつつ、溜めたオーラを放ってヒメの外傷を治療する。
 同時に彼女を苛む触手に噛まれている感覚を綺麗さっぱり消し去った。
「奴らが捜すとするならば……宝石の類だろうか。ドラゴン達にとって大事な物だったかもしれんな」
 霊剣「Durandal Argentum」で絶空斬を仕掛けながら、絶華が低く呻く。
 どうやら彼も、括のバッグへのザクロの反応や、蒼眞のハッタリから何か思うところがあったようだ。
「ふふぅん、神様っぽいわしにかかればこんなもんじゃ」
 括は、喚び出した氷属性の騎士のエネルギー体にオークプラントを仕留めさせて満足げだ。
「ごめんね……でも倒す! あんな主のところに行かせてたまるか!」
 と、苦悩を振り切って螺旋の籠った掌を突き出すのはルフ。
「がはッ」
 体内を暴れる螺旋に内臓を破壊され、ザクロは血を吐いて倒れた。
「……イツ、ヨ、さま……?」
 そのまま、幻でも見ているのか、苦悶と驚愕の入り混じった声が響く。
「申し訳、ございません乙夜様、ただちに……」
 それがザクロの最期の言葉であった。
 ルフは、気持ちの整理がつかない様子で事切れたザクロを見下ろしていたが、
「やっぱ、ザクロと逃げたかったよ」
 ふと、泣き笑いのような表情で呟いたのだった。

作者:質種剰 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年8月2日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。