狐少女が探すモノ

作者:なちゅい


 東京からはるか東の海上に浮かぶ竜十字島。
 先日、ケルベロス達が『ドラゴン・ウォー』によって、残るドラゴン達を討伐した地だ。
 この竜十字島には、まだ何かあるのだろう。攻性植物の能力を持つよう改造されたオーク、『オークプラント』達を率いた獣系螺旋忍軍の姿が多数確認されている。
 ここにも1人、それらしき一隊の姿が……。
「こっちか……?」
 その螺旋忍軍の少女は、狐のウェアライダーを思わせる姿をしていた。
 彼女……『歩き巫女』中忍、狐火の朝顔は島のあちらこちらを見回し、動物的な勘を活かして手あたり次第にオークプラント達へと穴を掘らせていく。
 ある程度掘り進めたところで朝顔は首を振り、作業の手を止めさせる。
「ううん……、本当にあるのか?」
 眉を顰め、朝顔は島のあちこちを探り、何かを探す。
 彼女はしばらく唸りこみつつ、まだ捜索が及んでいないと思われる場所を目指してオークプラントを率いて移動していくのである。


 ヘリポートにて。
 デウスエクスに新たな動きがあったということでケルベロスが集まり、ヘリオライダーへと情報を求める。
「ドラゴン・ウォーの戦場となった竜十字島で、螺旋忍軍が何かを捜索している事が判明したんだ」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)が今回の事件について説明を始める。
 何を探しているかは判らないが、多数の螺旋忍軍が探索を行っているようであり、かなり重要な物であると推測されている。
「この螺旋忍軍達は、オーク型の攻性植物『オークプラント』を配下として連れていることもあって、大阪城の攻性植物、ドラゴンの残党との関連も疑われているね」
 皆には、探索を行っている螺旋忍軍の撃破を頼みたいと、リーゼリットは話す。

 島のあちらこちらを捜索している螺旋忍軍だが、今回は狐の少女の姿をした螺旋忍軍「『歩き巫女』中忍 狐火の朝顔」の討伐を願いたい。
「この朝顔という少女、炎と日本刀、獣の力を併せ持っているよ」
 また、朝顔は10体のオークプラントを率いている。
 オーク型の攻性植物で、両方の種族の特徴を併せ持っているようだ。
 配下のオークプラント達は主の命に忠実に従うようで、オークのような欲塗れの行動は起こさない。ただ、能力も通常のオークにはやや劣るようだ。
「螺旋忍軍も他のデウスエクスに比べれば、能力的には劣るけれど、隙あらばオークプラントに戦いを任せて逃げようとするから気を付けてほしい」
 例え、螺旋忍軍に逃げられても敵の目的を阻止することはできるが、可能であれば、この場で倒してしまいたい相手だ。
 どうやら、螺旋忍軍の朝顔は円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)と何かしら因縁があるようなので、彼女が依頼に参加するようであれば、何かしらの作戦に組み込んでもよいだろう。

 一通り説明を終え、リーゼリットは最後にこんな話を持ち掛ける。
「螺旋忍軍の探しているモノにも、注目が集まっているね」
 これだけの人員を割いてまで探しているモノが果たして何なのか。それが予測できれば、先にケルベロスが獲得できるかもしれない。
「以上だね。それでは行こうか」
 竜十字島までは、2~3時間ほどの移動となる。
 それまでの間、あれこれと作戦や捜索物について話し合うのもいいかもしれないと話し、リーゼリットは説明を締めくくったのだった。


参加者
神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)
エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)
イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)
ルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)
エリザベス・ナイツ(フリーナイト・e45135)
クリスタ・ステラニクス(眠りの園の氷巫女・e79279)

■リプレイ


 長い移動時間を経て、竜十字島へと降り立ったケルベロス達。
 まだまだ幼さも残すドワーフの少女、ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は大きく胸を張りつつこの島を見回して。
「ふむ、螺旋忍軍の者達が竜十字島で探し物をしておると聞いたが、いったい何を探しておるのじゃろうのう?」
 見れば、島のあちらこちらで緑色のオークらしきモノ達を連れた螺旋忍軍の姿が見受けられる。
「んー、螺旋忍軍が竜十字島にいっぱいだね……。何探してるのかな?」
 無邪気な白髪のヴァルキュリア、イズナ・シュペルリング(黄金の林檎の管理人・e25083)は敵の捜索物に関して推測する。
 オーク達が散開して穴を掘っていることから、小さいモノなのだろうか。
「島にドラゴンの財宝が残ってたりするのかなぁ」
「一体、何を探しているのやら」
 兎のウェアライダーである金髪女性、エステル・ティエスト(紅い太陽のガーネット・e01557)はやや呆れ気味に吐き捨てる。
「……廃材を燃やす焼却炉なら、今ここにあるのに」
 並々ならぬ憎悪の炎を燃やすエステルの炎は、豚とも植物ともとれぬ敵を全て燃やしつくす勢いだ。

 現状、多くのケルベロスのチームが特定の螺旋忍軍の討伐に当たっているが、こちらは『狐火の朝顔』なる名の忍者を討伐依頼を受け、竜十字島までやってきている。
「今回の螺旋忍軍の者は、キアリおねえと何やら因縁があるようじゃのう」
「…………」
 黒猫のウェアライダー、円城・キアリ(傷だらけの仔猫・e09214)はとあるデウスエクスの愛玩物だった過去があるという。
 その時、同じ立場にいたのが狐火の朝顔らしい。
「キアリの知ってる螺旋忍者も来てるの? がんばって! 応援するよ!」
 イズナは純粋な想いから、キアリに声援を送る。
「可能な限り、キアリの気持ちが済むようにしてやりたいな」
 長い銀髪を後ろで纏めた青年、神城・瑞樹(廻る辰星・e01250)は今回、特別に思うことはないものの、キアリを助けるべく立ち回ろうと考えている様子。
「相手にも、目的あってのことでしょう」
 黒い衣装を纏い、胸部に赤い宝石を煌めかすルベウス・アルマンド(紅い宝石の魔術師・e27820)は、いつものように淡々とした口調で語る。
 螺旋忍軍である相手が本来の目的を放棄するかは疑問だが、それでも。
「歩み寄らねば何も変わらないわ、ね」
 自身に過去の記憶がほとんどないルベウスは、大切な思い出のある相手と会話してほしいという気持ちもあるようだ。
(「キアリちゃんに……みんな、辛い思いをして今ここにいるのよね……」)
 金の長髪を靡かせたエリザベス・ナイツ(フリーナイト・e45135)は、思い悩むキアリを見つめて。
「私は少しでもあなたの説得が上手く行くように、遮るものをすべて薙ぎ払うわ!」
 ――愛らしいキアリの笑顔が陰らぬよう、少しでも助けになりたい。
「思いの丈を思いっきりぶつけてきて、キアリちゃん!」
「……わかったわ」
 そんなエリザベスや仲間達の想いに応え、キアリは覚悟を決めたのだった。


 竜十字島の海岸の1つ。
 『歩き巫女』中忍・狐火の朝顔は、複数のオークプラントに穴を掘らせていた。
「ううん……、本当にあるのか?」
 眉を潜め、さらに何かの捜索を続ける朝顔。
 その一隊を囲むように、ケルベロス達は布陣していく。
 瑞樹、イズナ、クリスタ・ステラニクス(眠りの園の氷巫女・e79279)らが弧を描くように敵を囲んで海側に立ち、敵の退路を断つ。
(「最低限、逃がさないようにしないとな」)
 横やりさえ入れれば、敵の捜索の邪魔はできる。
 メンバー達はこの場から、朝顔を逃がさぬことに重点を置いてこの作戦に臨む。
「会いたかったけど……会いたくなかったわ、朝顔」
「よく私の前に顔を出せたものだな、キアリ」
 朝顔の鋭い視線から目を背けたくなるキアリだったが、目を逸らすことなくその姿を見据える。
 互いに成長はしたが、その面影は強く残し、互いを見間違えることはない。
(「ここはなんとしても逃がさずに、決着をつけてほしいものなのじゃ」)
 ウィゼは念の為、島の方へと布陣する。
 螺旋忍軍の手の者である相手が仲間に協力を仰ぐ可能性も、ウィゼは想定していたのだ。
 不審な動きには、くれぐれも注意する必要がある。
 相手は迎撃の為に、作業させていたオークプラントを差し向けてくる。
 オークの姿をした攻性植物。ベースがすでにどちらなのかがわからぬ相手だが、朝顔に従って邪魔してくる敵なのは間違いない。
 やや前寄りに立つ敵の中には盾となる者もいる為、排除しておきたいところ。
 ルベウス、エステルは盾となるオークプラントを威嚇し、グラビティを繰り出す準備を整える。
「暑いのは苦手なので、早めに終わらせたいですー」
 ここにきて、のんびりマイペースな青髪のクリスタが呟く。
 アイスエルフであるクリスタには、地球の夏はかなり堪えるのかもしれない。
 そんなクリスタを一度微笑ましげに見たイズナは、改めて、朝顔を見据えて考える。
(「何か探ることができればいいな」)
 できれば、相手の探すモノがわかれば申し分ないのだが……。
「ケルベロスを抑えるんだ」
 オークプラントへと指示を出す朝顔。
 彼女はすでに、退路を探そうと視線を周囲へと巡らしている。
 キアリの説得のサポートにオークプラントの排除と、ケルベロス達もやることもが多い。
 朝顔を見つけるキアリに気づいたエリザベスがオークプラントの前にだって告げる。
「キアリちゃん、彼女があなたにとって大切な人なら……しっかりとあなたの言葉を届かせてあげて!」
 その為の道を切り開くべく、エリザベスは仲間とオークプラントへと攻め入るのである。


 螺旋忍軍、狐火の朝顔がけしかけてくるオークプラント達。
 その思考は攻性植物がすでに握っているのか、本能のままに女性を襲うといったオークらしい行動は一切感じさせない。
 ただ、蔓触手の先端から放出してくる溶解液、相手を縛り付けようと動く蔓触手に、オークの要素が見られた。
 前に立つエリザベスがそれらの攻撃から仲間を庇い、とりわけ危険な催眠花粉から仲間を庇いに当たる。
 その上で、エリザベスは現状、皆が万全に戦えると判断すれば、野戦の名を持つ細剣『フェルトシュラハト』を操り、幻の薔薇を舞わせて盾となるオークプラントへと切りかかっていく。
 そばで仲間の壁となるチーム唯一の男性ケルベロス、瑞樹はゾディアックソードで地面に守護星座を描き、仲間達を守護の光で包み込む。
 一度強化に当たった瑞樹は御業の力を借りて、オークプラントを焼き払おうと炎を燃え上がらせていたようだ。
 イズナは同じ狙撃手となるキアリを気にかけつつ、破壊の杖を意味する『ヴァナルガンド』を突きつけ、敵陣へと火球を投げ込む。
 オークプラントのほとんどは前衛に立っている。
 前衛の数が多すぎてなかなか引火はしないが、その体を灼き焦がすだけの力は十分に発揮してくれる。
「ねえ、ここで一体何をしているの?」
「教える義理などない」
 イズナの問いを突っぱねた朝顔は、大声で吠えてみせた。
 こだます魔力の籠った咆哮。守護の力がなければ、それを耳にしただけでも足を竦めてしまったかもしれない。
 だが、前線に立つクリスタは軽やかに跳躍して。
「蹴り飛ばしちゃいますー」
 虹を纏った急降下蹴りで、クリスタは手前のオークプラントの頭を強く踏みつける。
 目の色変えて蔓触手を伸ばす敵に対して、クリスタは全くペースを乱すことなく。
「それなら、涼しくしてあげますねー」
 彼女は自身を狙う相手へと冷たい吐息を浴びせかけ、その身を凍り付かせようとしていた。
 オークプラントの前衛は火力役3体に盾役4体。盾役のみを優先して狙うケルベロス達の狙いも重なることが多い。
 体を凍らせた敵の体を掬いあげたエステルは宙へと跳び上がり、地面へと叩き落としていく。
 そのオークプラントへとエステルは追撃し、なおも首根っこを掴んで投げ飛ばす。
 エステルの手で続けざまに地面へと落とされたオークプラントは泡を吹き、触手の末端から枯れ果てていく。
 オークプラントの力はさほど強くない。個別であれば、ケルベロスよりも弱いかもしれない。
「さあ、現れるのじゃ。あたしの万を超える軍団」
 ウィゼも自らの背後……島の奥から多数の軍勢を呼び起こし、敵陣にプレッシャーを与えようとする。
 だが、朝顔は割とあっさりとそれを見抜いて。
「そんな張りぼてに誰か引っかかるか」
 残念ながら、それは、書き割りのパネルである。
「な、なんと、バレてしまったのじゃ。さすが、螺旋忍軍の者じゃな」
 感心するウィゼだったが、目の前のオークプラント達は思った以上にプレッシャーを受けていたようだった。
 とはいえ、オークプラント共は蔓触手で前線のメンバーの体を締め付け、溶解液を飛ばしてメンバー達を毒に侵してくる。
 ルベウスは攻撃を受ける仲間達へとゾディアックソードの星座を煌めかせ、さらに耐性を強めつつ苛む触手や毒を消し去ってしまう。
 さらにルベウスはオウガメタルによって具現化した黒太陽の光を敵陣へと放射しつつ、対峙するキアリと朝顔を見つめて。
「昔の友達をその手にかけるのは忍びないわ、ね」
 ――過去はいずれ、自分自身に返ってくる。好いものも、辛いものも。
 それでも、捨てていいものではないと言うルベウスはさらにグラビティを行使し、因縁の2人を気にかける。
 キアリは獣となった腕で手前のオークプラントを切り裂いて倒し、直接朝顔へと声をかける。
 護衛のオルトロスのアロンは、地獄の瘴気で敵を牽制してくれており、少しなら話す時間も稼いでくれそうだ。
「『歩き巫女』はどうなったの? 何でこんなことをしているのよ?」
「知らん。知りたくもない」
 肩書こそ残ってはいるが、すでに別組織で働かされているといったところか。
「今の私は、お前を倒すことに躊躇いはないぞ、キアリ」
 忍者としての口調を崩さぬ朝顔は大きく刃を切り上げ、彼女を傷つけてきたのだった。


 キアリと朝顔が会話と交戦を行う最中、他のメンバー達は順調にオークプラントの数を減らしていく。
 従順な手駒となるよう改造されたオークプラントは、力の源となる欲望を押さえつけられているせいか、弱体化すらしてしまっている。
 しかしながら、使ってくるグラビティが面倒なのは変わらない。
 瑞樹はそれらの蔓触手や溶解液から仲間を……とりわけ、キアリに害が及ばぬようにと庇っていく。
 攻勢のきっかけを見つければ、瑞樹もゾディアックソードを操って影のごとき斬撃で襲い来るオークプラントの体を切り裂いていく。
 吹き出すのは、血液と樹液が入り混じった液体。
 飛び退いた瑞樹がそれを避けた間にグラビティ・チェインを失った敵は見る見るうちに萎んでいく。
 その間も、キアリは朝顔を抑え続ける。
 後悔と懺悔の念を抱いて戦うキアリを朝顔は強く突き放し、焔を舞わせた螺旋の斬撃を浴びせかけてきていた。
 オルトロス、アロンがオークプラントと交戦する合間に庇ってくれるが、単純な力量はデウスエクスである朝顔が上だ。
 そう長くは持たぬ為、オークプラントの殲滅に当たる仲間達の援護を待ちたいところ。
 ただ、すでにオークプラントはそのほとんどが弱ってきていた。
 それもあって、敵の逃走を懸念するイズナが朝顔の牽制の為にとそっと緋色の蝶を解き放つ。
「――緋の花開く。光の蝶」
 幻想的に舞う蝶は、戦場となる砂浜を自在に駆け回っていた朝顔の動きを制する。
 自身にまで攻撃が及んだことで、朝顔の表情が僅かに歪んで。
「オークプラントは何をやっている……!」
 万全の対策を練っていたケルベロスの前に、その足止めの役目すらも満足に果たすことができず、オークプラント達は砂浜へと沈んでいく。
 飛んでくる花粉によって惑う仲間達には、エリザベスが地面に塗り込められた惨劇の記憶から魔力を抽出し、仲間達を癒やす。
 この地の惨劇と言えば、先日のドラゴン・ウォーだ。
 それだけに十分な魔力を得ることができたようで、エリザベスも充分に仲間を癒やしていたようだ。
 キアリの説得が始まったと感じたルベウスは、前線メンバーの為にとオウガ粒子を飛ばし、感覚を鋭くしていく。
「轍のように芽出生せ……彼者誰の黄金」
 その上でさらにルベウスは胸に埋まった宝石状の魔術回路ズナーニエを淡く光らせ、魔術を行使する。
「誰彼の紅……長じて年輪を嵩塗るもの……転じて光陰を蝕むるもの……櫟の許に刺し貫け」
 黄金色をした巨大な槍を思わせる魔法生物が具現化し、物理法則を無視した速さと軌道で砂浜を飛ぶ。
 腹を穿たれたオークプラントは何が起こったのか理解できぬまま、死に絶えていったのだった。


 気づけば、ケルベロス達は全てのオークプラントを倒し、朝顔への包囲網を強める。
 拳銃形態としたガジェットから、ウィゼは魔導石化弾を発して朝顔の体の一部を少しずつ石へと化していく。
「石化が始まった体で、海に入るとどうなるかのう?」
 朝顔を脅し、海へ逃亡せぬようウィゼは牽制する。
 続き、周囲に視線を巡らす朝顔へとエステルがそっと触れて螺旋の力を叩きこんでいき、さらにイズナが『ヴァナルガンド』をファミリアーとして敵へと飛ばす。
「フェンリル狼のしろだよ。冷気で夏にはちょうどいいんじゃないかな」
 イズナが抱きかかえられる程度の大きさの氷狼が敵を押し倒してしまうと、その氷狼で涼をとるクリスタが攻め入って。
「切り裂いてあげますねー」
 斬霊刀で朝顔の体へと刃を刻み込む。
「こ、こんな……」
 追い込まれた朝顔へと、キアリが言葉を投げかける。
「……あの日、わたしだけ逃げてごめんなさい」
 改めて、後悔の念を彼女へと伝えるキアリ。
 恨まれても仕方ないし、今更遅いかもしれない。それでも、もう一度だけ機会が欲しいとキアリは告げる。
「もう二度と置いていかないから。一緒に行こう? 朝顔」
 しかし、朝顔は首を横に振る。
「遅い、遅いよ。キアリ……」
 地の口調で告げた彼女は一筋の涙を零し、狐火をキアリへと飛ばす。
 それをオルトロスのアロンが防いでくれた直後、キアリは獣となった腕で朝顔の体を薙ぎ払った。
「本当にごめんなさい、朝顔」
「……それで、いいの」
 砂浜へと倒れた友は全てのしがらみから解放されて、安らかな笑みすら浮かべていた。
「……痛いわね。心も身体も」
 ただ、彼女の最後を看取ったキアリは、その身に刻まれた痛みに顔を顰めてしまうのだった。

 事後処理に当たるケルベロス達。
 未だ何かが分らぬ螺旋忍軍が探しているモノを求め、メンバー達はしばし捜索へと当たる。
 果たして、彼らは何かを発見することができるのだろうか。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月30日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 8/キャラが大事にされていた 2
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