大阪市街戦~追憶の花は狂い咲いて

作者:なちゅい


 大阪府大阪市。
 大阪城が攻性植物に侵略されて久しいが、やがてエインヘリアルが現れるようになり、さらに様々な勢力が姿を現し始めていたのは、大阪城に多種族の勢力が集まってきていることに起因している。
 ただ、種族間の関係は決して良好とは言えないようで、互いに睨みを利かせた状態が続いているようだ。

 そんな中、攻性植物が一つ手を打ってきた。
 全長3mほどある紫苑の花を咲かせた攻性植物『攻性紫苑』。
 そいつは寄生する為の獲物を求め、大阪の市街地を闊歩する。
 大阪の民も避難は手慣れたもの。警報が鳴ればすぐにその場から逃げ出し、ケルベロスの到着、そしてデウスエクスの討伐を待ってくれる。
 しかしながら、逃げ遅れた者も少なからずいる。
 攻性紫苑はそんな一般人を目ざとく見つけ、襲い掛かっていく。
「嫌や、近寄らんとって!」
 一人の女性が逃げていくが、攻性紫苑の動きは素早い。
 素早く花の中央から黄色の触手を伸ばし、逃げる女子大生の体を捕えてしまう。
 奇しくも、その女性の名前も『しおん』。
 攻性紫苑は女性へと寄生し、その力を強める。
 そして、そいつはさらに同胞の数を増やそうと、胞子を放出していくのだった。


 ヘリポートにて。
 現状、大阪市近辺では、ケルベロス達が有志で調査を行っている。
「攻性植物のゲートがある大阪城は、多数の種族が集結している状況だね」
 リーゼリット・クローナ(ほんわかヘリオライダー・en0039)はいくつかの種族の名前を挙げる。
 エインヘリアル、ダモクレス、螺旋忍軍、ドリームイーター、ドラゴン。そして、主として、この地に巣食っている攻性植物。
「多彩な戦力を背景として、彼らは大阪城周辺地域の制圧の為に市街地襲撃の手を強めているようだね」
 今回の1件は之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)の調査もあり、発覚した事件だ。
 軍勢では無く、単体のデウスエクスによる襲撃事件ではあるが、被害が出れば、大阪市街の住民達に不安が広がってしまうのは避けられない。
 そうなれば、大阪城周辺地域の住民の多くが避難し、無人となった地域がデウスエクスに制圧されていく事になってしまう。
「だから、それを阻止する為にも、被害を出さずに今回の1件を防ぎきる必要があるんだ」

 大阪の市街地に現れるのは攻性植物。紫苑という植物に寄生した『攻性紫苑』という名のデウスエクスだ。
 ジャマーとして立ち回るこの攻性植物は蔓触手を操ったり、花から破壊光線を発したりする他、紫苑の花びらを刃と化して飛ばしてきたり、太い根を鞭のように叩きつけてきたりもするようだ。
「どうやら、襲った人を取り込もうとして、力を強めようとしているようだね」
 できる限り、この攻性植物に一般人を近づけぬよう配慮したい。
 現状、敵が出現した地域からは一般人の避難が進んでおり、ほとんどの人が退避できているはずだが、残されている人が皆無というわけではない為、取り急ぎこの攻性紫苑を抑え、討伐に当たりたい。

 状況説明を終え、リーゼリットはさらに話を付け加える。
「大阪市民は度重なるデウスエクスによる襲撃を憂慮しているはずだよ」
 だからこそ、こうした事件を一つ一つ解決し、地球に、大阪にケルベロスありと示してほしい。それだけで、現地の人々は希望を抱いてくれるはずだ。
「攻性植物の勢力拡大を防ぐためにも、依頼の解決を。よろしく頼んだよ」
 そうして、リーゼリットは説明を終え、参加を決めたメンバーを自身のヘリオン内へと案内するのである。


参加者
フラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)
カトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)
赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)
蓮水・志苑(六出花・e14436)
四方堂・幽梨(義狂剣鬼・e25168)
之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)
藍牙・紫苑(冬は初の鬼っ娘・e56451)
詩音・マコト(妖の笛吹き猫・e66809)

■リプレイ


 大阪府大阪市。
 攻性植物によって大阪城を本拠地とされたというもの、市街地への襲撃が続いていた。
「大阪での攻性植物の活動はまだ続いているようですね」
 遠くに見える異形化した大阪城を見て、蓮水・志苑(六出花・e14436)はその事実を再確認する。
「へいへーい、攻性植物はそろそろ大阪から追い出さないとね」
 赤髪のフリーダムな少女、赤星・緋色(中学生ご当地ヒーロー・e03584)が声を上げる。
 その為にも、まずは目の前の攻性植物から撃破をと、緋色は気合を入れていた。
「人々に希望を持ってもらうために、ここで被害を出させるわけには行きませんわ」
 髪や瞳、服まで赤で統一されたカトレア・ベルローズ(紅薔薇の魔術師・e00568)も同調する。
 真っ赤な印象を抱かせる2人。ただ、それ以上に共通点のあるメンバーが今回のチームには揃っていた。
「攻性紫苑がしおんさんに寄生する前に、手を打てたのは幸いでした」
 和服着用の之武良・しおん(太子流降魔拳士・e41147)は、被害が出る前に動けることに喜びを見せる。
「寄生する植物は苦手ですがー、今回は事前に助けられますのでー、張り切って参りましょうー」
 おっとりとしたお姉さんといった印象のフラッタリー・フラッタラー(絶対平常フラフラさん・e00172)だが、戦闘において狂気を解放する彼女にとって、寄生された人を救出する戦いというのは加減が難しいらしい。
「罪のない人を守るため……そして【しおん】という名前を大事にするため、わたしは戦います!」
 やや気弱そうなオウガの少女、藍牙・紫苑(冬は初の鬼っ娘・e56451)だが、指や腕を鳴らして気合と全身の筋肉を漲らせる。
 今回現われる攻性植物となった紫苑の花、『攻性紫苑』。予知で襲われるとされたしおんという女子大生。そして――。
「紫苑の花と同じ『シオン』の名前……。……にゃー、いえいえ私は『ウタノネ』ですよぅ」
 エプロンドレスを纏う猫耳少女、詩音・マコト(妖の笛吹き猫・e66809)は可愛らしく鳴きつつ笑う。
 マコト本人もよく『シオン』と間違われるそうだが、ここでは敢えて詩音と表記したい。
 敵に救出対象、それに味方の半数が『シオン』というのが今回の依頼の状況。
「あっちもこっちもしおんちゃんだらけか。ややこしいな……」
 赤いジャージ姿、緑の髪から片耳だけエルフの耳を突き出す四方堂・幽梨(義狂剣鬼・e25168)はぶっきらぼうな態度で本音を語る。
「ともあれ、あのでかい花は、放っておくわけにもいかないみたいだ」
 すでに、街には攻性紫苑が現れ、人々を襲おうと暴れているのがここからでもわかる。
「何とも親近感を覚える植物なだけに見過ごせませんね」
 ――被害が出る前に止めましょう。
 志苑の言葉に同意したメンバー達は、一斉に攻性植物へと接敵していくのである。


 大阪の市街地はすでにほとんどの人が避難をしていたものの、逃げ遅れた人がちらほらいたらしい。
 攻性植物『攻性紫苑』は街を逃げる女子大生に目をつけ、太い根を蠢かせながら侵攻し、追いかける。
「しおん、今助けますわ!」
 勢いでカトレアがそう告げるのだが、この場には『シオン』がたくさんおり、彼女もやや戸惑ってしまったようである。
 とはいえ、そんな事情など知る由もない女子大生しおんは、救いを求めてケルベロス達へと駆け寄ってくる。
「追われとるんや、相手頼んでええかな!?」
 伸びてくる触手から何とか逃れた自分と同じ名の女子大生を庇い、しおんが薙刀を手に攻性紫苑の前に出た。
「ちょっと怪物退治してるから、みんな下がって」
 幽梨が殺界を展開しつつ、近隣に一般人が立ち入らぬよう呼びかける。
「ご無事でしょうかー? このまま逃げ道にご案内しますのー」
 重武装モードとなり、平安武士の大鎧を纏ったフラッタリーが隣人力を活かして避難誘導へと当たる。
 そして、詩音が女子大生しおんを保護して一緒に移動し、紫苑が近場で逃げ遅れた人を発見して怪力を活かして軽々と運んでいく。
 それを横目で見る志苑はこの場の攻性紫苑の抑えを優先し、その行く手を遮る。
 残っていたのは逃げ遅れた人とあってさほど多くない。すぐに誘導するメンバーも合流できそうだ。
「ふははははー、街の人には手を出させないよ」
 緋色は仲間達と共に、すぐさま攻性紫苑目掛けて攻撃を行うのである。


 紫苑の攻性植物、攻性紫苑は狂ったような動きで獲物を求める。
 そいつを牽制すべく、日本刀『黒鈴蘭』を納刀したまま間合いをはかっていた幽梨が刃を振り抜く。
「近付いて斬るだけじゃないよ」
 その刃に纏う闘気は花びらがとるような軌跡を残し、手裏剣のように飛んでいく。
 触手を傷つけられながらも、それらを鞭のようにして叩きつけてくる敵に対し、カトレアは前に出てその連撃を受けながらも、ゾディアックソードを握りしめて。
「守護星座よ、皆を護る力となって下さい!」
 煌めく幾筋もの光が形を成し、自身を中心とした前衛陣を包み込む。
 交戦開始時、前線はカトレアと緋色のみだったが、続々と仲間達は人々の避難を終えて戦線へと加わってきていた。
 カトレアの援護を受け、彼女達もまた武装して戦闘準備を整える。
「こっちこっち!」
 その間に、緋色が触手を蠢かせる敵へと声をかけつつ気を引き、勢いで飛びかかっていく。
「そりゃー!」
 重力を宿して蹴りを繰り出し、緋色は相手の動きを止めようとしていた。
 続けて志苑もまた飛びかかり、足止めの効力を強める。
「自由にさせるわけにはいきませんからね」
 もう逃げ遅れた人達もかなり離れているはず。次からは攻性植物の対応に専念できそうだと志苑は冷静に判断していた。
 そして、しおんは因縁めいた何かを感じる敵に対し、『十字星剣』を握って躍りかかる。
「オンアニチマリシエイソワカ」
 太陽を背にして、摩利支天の加護を願うしおん。
 普段、ワイルドスペースから出現する残霊と共に攻撃する彼女だが、この場にはペアとなるカトレアがいてくれる。
「合わせますわ、しおん」
 2人で合わせ、目の前の対象へと斬撃を浴びせかけていく。
 渾身の合わせ技で繰り出すグラビティ。
 だが、十分に体力を残す攻性紫苑は身を引き、致命傷を避けて見せる。まだまだ弱らせるには手数が必要だ。
 そこへ、ゆらりと前に出てきたフラッタリー。
 ここに来るタイミングで、サークレットを展開した彼女は金色の瞳を開眼させていた。
 残る僅かな理性で、仲間から守る為にとフラッタリーは両手の縛霊手から紙兵を撒き、獣のような鋭い視線で相手を凝視する。
 そんなフラッタリーの後ろから、チームの回復役となる詩音もまた紙兵を巻いていき、仲間達の耐性を高めていく。
 何せ、相手は蔓触手、花と多様な攻撃を仕掛けてくる。
 それらの及ぼす効果を、できるだけ防ぎたいケルベロス一行。
 詩音は自分が連れた翼猫の朱莵にも翼を羽ばたかせ、巻き起こす風でメンバー達から攻性紫苑のもたらす邪気を振り払わせていく。
 そして、唯一敵の花と同じ表記の名前を持つ紫苑。
 敵の紫苑は飛ばす花びらを刃状にし、連続して飛ばしてくる。
 彼女は隣にいる翼猫のこっとんに守られながらも、さらに突進していく。
 こっとんの存在もあったが、脳筋思考の紫苑はさほど傷つくことは恐れず、小ぶりな『海皇銛』の刀身に稲妻を纏わせて突きつけていった。
 ただ、攻性紫苑に拘束の突きを浴びせるだけでなく、紫苑は持ち前の怪力で相手の体深くまで刀身を抉りこむ。
 ごり押しで攻め来る紫苑に傷つけられながらも、攻性植物は上半身を大きく揺さぶり、大きく咲かせた紫苑の花から眩い破壊光線を発射してきたのだった。


 大阪の市街地を眩い光が駆け巡る。
 その光を、カトレアが正面から光線をまともに浴び、体を燃え上がらせてしまうが、反撃にとしっかり刃を煌めかせて。
「その傷口、更に広げてあげますわよ!」
 すでに仲間がつけた傷を広げるようにその刃を振るい、敵の触手を切り落としてしまう。
 だが、別の触手が振り下ろされてきたことで、カトレアが真横に飛び退く。
 代わって仕掛けてきたのは、緋色だ。
 幾つかのグラビティを繰り返し使う彼女は、敵の攻撃にもある程度対策を講じてきている。
 飛んでくる刃の花びらを受けつつ、緋色はオーラを纏わせた拳にグラビティ・チェインを込めていく。
 それは、ここから東、古くは小江戸と呼ばれた街の一つ、埼玉県川越市で抽出したグラビティ・チェイン。
「いちげきひっさーつ!」
 高く跳び上がった緋色は敵の頭上目掛けて落下し、直接その拳を叩きつけていった。
 さらに、フラッタリーが飛び込む。
「禍根断ツbEシ!」
 言語すらもまともに喋ることがおぼつかない様子の彼女は、敵の至近にまで攻め入った。
 両手の縛霊手を使うフラッタリーはまるで獣のごとく、敵の体を蹂躙する。
 花びらを散らし、触手を切り裂き、穿ち、攻撃の手は休まることが無い。
 だが、さすがに仲間が仕掛ければ、フラッタリーも引かざるを得ない。
 幽梨は見知った仲の緋色やフラッタリーが奮戦しているのを目にし、自らの役割を淡々と果たすべく接敵した敵へと居合で斬りかかる。
 その刃には瞬時に空の霊力を込めており、幽梨は仲間のつけた傷を寸分違わず斬り広げていく。
 後続として、幽梨とは普段から話す仲であるしおんが仕掛けてくる。
「しおんちゃん」
 幽梨の呼びかけに、しおん本人はもちろんのこと、この場の『シオン』が一斉に反応する。
「与えられるグラビティ・チェインだけで満足なさい」
 しおんがそう呼びかけるが、敵は……攻性紫苑は誰かに寄生しようと必死に蔓触手を蠢かせようとした。
 それでも、動きは鈍ってきていると判断した志苑が先んじて仕掛ける。
「散り行く命の花、刹那の終焉へお連れします。逝く先は安らかであれ」
 攻性紫苑の近くへと舞い落ちる氷雪の花。
 志苑の日本刀『白雪』が振るわれる度、鮮やかな斬撃が舞う花びらを敵の体から失われるグラビティ・チェインによって赤く染まって。
「いきますよぅ!」
 翼猫の朱莵に回復を任せた詩音が間髪入れずに、広げた縛霊手から巨大光弾を発射していく。
 その詩音の光弾で攻性植物が灼かれる隙に、紫苑が攻め入る。
 紫苑は周囲を旋回するように飛ぶ翼猫こっとんの応援を受けながら、力を高めて怒号のような咆哮を上げて。
「でぇぇぇやぁぁあ!!」
 相手が動きを止めているなら、その邪魔な花や触手をその怪力で引きちぎっていく。
 その紫苑の形相は、まるで鬼神を思わせる形相。
 同じ名前の相手に睨みつけられた敵は、残り少ない体力を紫苑に奪われ、体のあちらこちらが枯れ、花びらも徐々に舞い落ちてきていた。
 そこに飛び込むしおんが攻性紫苑へと呼びかける。
「人を殺して奪ってはなりません」
 力を失いかけた攻性植物はただ、うな垂れるだけ。
 生きる術を知らぬ敵はただ、本能のままに暴れることしかできない。
 最後の力を振り絞る敵が紫苑の花の中心に光を集めようとする中、ガネーシャパズルを手にしたしおんは、竜を象った稲妻を解き放つ。
「……それならば、私たちは共存できます」
 黒焦げになり、崩れ去っていく敵の巨体。
「きまったー、えーと、なんやかんやの合体攻撃ー!」
 連続して畳みかけられた攻撃に、緋色も思わず格闘技のアナウンサー風に叫ぶ。
 観客もおらず、枯れ果てていくその体の中から、一部分だけ動く植物がしおんを見上げていた。
 屈んだしおんがそれを拾い上げると、攻性植物は彼女の腕へと巻き付く。
 しおんは無害となった攻性紫苑を優しく撫でてから、仲間の元へと向き直ったのだった。


 無事、攻性植物を撃破したケルベロス達。
 カトレアは周囲の避難勧告を解除し、星辰の剣を操って描いた星座を煌めかせて破壊された街を幻想交じりに修復する。
 被害状況を確認していた志苑。どうやら人的被害は転んでかすり傷程度で済んだらしく、ほぼ皆無で済んだようだ。
 人々が街に戻ってくる中、地元の子供が紫苑の体の筋肉を見て。
「ママ―、あのお姉ちゃん凄い筋肉だよー」
 そんな指摘に、詩音は赤面してしまっていた。

 さて、手早く修復作業も終え、ケルベロス達は人の戻った大阪市内のとあるお好み焼き店へと入る。
「食事の前に……、キレイ、キレイ!」
 緋色がクリーニングスキルで皆の容姿を綺麗にしてから、卓へとついて。
「お好み焼きね。私あんまり詳しくないけど、どんなのがおいしいのかな」
 メニューをにらめっこする緋色だが、トッピングの幅は相当に広い。
「具材を選んで自分で焼くのですね。楽しそうです」
 志苑は悩みながらも、豚玉にお餅を選んで鉄板で焼き始める。
 料理が上手とあって、志苑はうまい具合にひっくり返し、ふんわりとした生地を見事に焼き上げてみせていた。
 しおんは、小柱、牛すじ、青ねぎに玉子をトッピング。なかなかに歯ごたえ重視の組み合わせで、風味も抜群だ。
 詩音はというと、自らが好む魚やシーフードメイン。
 来る途中に買ってきたたこ焼きと合わせ、鰹節をてんこ盛りでかけていた詩音は、嬉しそうにお好み焼きを口にしようとするのだが……。
「にゃー、猫舌なのでアツアツは食べられませんよぅ」
 そんな彼女に幽梨が世話を焼き、店員に皿を頼んでそれに一度移してから食べるよう促す。
 幽梨は自らの頼んだチーズ豚玉を焼きつつ、眼鏡を曇らせてしまうお茶目な部分も見せる。
 同時に、彼女は何枚も食べる紫苑の注文を店員に行ったり、他のお好み焼きも食べたいと主張するしおんの為、仲間の焼いたものを少しずつ小皿に取り分けて差し出したりしていた。
 そんな仲間達と会話する志苑は、しおんが何か気にしているのを見て。
「そういえば昔、家族で……いえ、何でもないです」
 紫苑の花言葉は、『追憶』。
 少しだけほろりと涙ぐむしおん。彼女は東京都八王子市が東京焦土地帯となった折、大切な家族を亡くしてしまっている。
 幽梨がそっとハンカチを差し出し、志苑も優しくしおんの頭を撫でる。保護者となってくれているカトレアも慈愛の眼差しで見つめてくれていた。
「ありがとうございます」
 こうして集まってくれた仲間達に、しおんは元気づけられていた。
 そこで、空気を読まずにさらに1枚完食した紫苑が。
「あれ、みなさん、もう食べないのですか?」
 そんなきょとんとした彼女の表情に、誰からともなく笑い声が店内へとこだましたのだった。

作者:なちゅい 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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