夏に咲く翠

作者:崎田航輝

 夏の涼しい日は、澄んだ空気に緑の香りが感じられる。
 木立に囲まれた自然の道の中では一層それが顕著で、ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は歩みながら周囲を見回していた。
「緑の豊かな道じゃのう」
 研究所へ向かうその途中。
 市街からも遠く離れてはいないそこに、まだ通ったことのない道があったことに驚きを覚えながらも、ウィゼは進んでいく。
 時折舗装も無くなる道は、半ば手付かずの自然も垣間見える。或いは平素から、人通りの少ない場所であるのかも知れなかった。
 そんな環境も、ウィゼの興味を惹く。いつか改めて、ここを詳しく観に来るのも良いかも知れないと思っていた。
 と、その思考の狭間。
 不意に何かの違和感を覚えた気がして、ウィゼは立ち止まる。
「……ふむ」
 付け髭を軽く撫ぜて、視線を巡らせた。
 幾度も戦いを経験してきた勘が、それが何者かの気配であることに気づかせている。
 それが林の間にいることを察知して、歩み寄ると──果たして、目の前に飛び出るように敵影が現れた。
「……攻性植物、のようじゃな」
 ウィゼが素早く観察するそれは、少女の姿をしていた。
 巨大なミサイルポッドと同化したかのような形をしていて──静かな瞳に、殺意にも似た色を湛えている。
(「この道を選ぶべきではなかったかのう」)
 ウィゼは考えてから、すぐに逆だと思い直した。
 自分が通っていなければ、人々がこの敵に遭遇していたかも知れないのだから。
「何にせよ、戦うしかなさそうじゃのう」
 ウィゼが構えると、攻性植物の少女は躊躇いなく。その敵意の弾を正面から発射してきた。

「ウィゼ・ヘキシリエンさんがデウスエクスに襲撃されることが判りました」
 ヘリポートにて、イマジネイター・リコレクション(レプリカントのヘリオライダー・en0255)は皆へ説明を始めていた。
 曰く、現段階ではウィゼは敵と接触はしていないが、時間の猶予はほぼ無いのだという。
 ウィゼは既に現場におり連絡も取れない。故に、一対一で戦闘が始まってしまうところまでは避けられないと言った。
「それでも、これから急行して戦闘に合流することは出来ます」
 時間のラグはある程度生まれてしまう。それでも戦いを五分に持ち込むことは可能だ。
「現場は林の中にある道です」
 木立に挟まれた場所で、周囲に人の姿はない。こちらが一般人の流入に気を使う必要は無いだろう。
「皆さんはヘリオンで到着後、合流し戦闘に入ることに注力して下さい」
 周辺が静寂である分、ウィゼを発見することは難しくないはずだ。
「ウィゼさんを襲った敵は、蓮の攻性植物のようですね」
 何故そこにいたか、ウィゼを狙っていたのか否か。不明な事は多いが、放っておけばウィゼの命が危機であることだけは間違いない。
 だからこそ放置はできまい。
「ウィゼさんを助けるために。さあ、行きましょう」


参加者
シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)
ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)
レイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)
ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)
瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
カーラ・バハル(ガジェッティア・e52477)
 

■リプレイ

●花
 翠の彩を抱く木々が風に揺れている。
 空にまで夏の濃い香りを漂わせる木立は、季節の祝福に息づいて美しい。
 けれどその緑に隠れたどこかに、仲間がいると知っているから──カーラ・バハル(ガジェッティア・e52477)は微かにだけ、落ち着かなかった。
「3分。結構心配な時間だな……」
 もう戦闘は始まっているだろう。
 無事であってほしいと思うほど、心は波立ってゆく。
「ダモクレスのような力を持つ植物……デシタカ」
 モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)は伝え聞いた情報を反芻する。
 或いは大坂城で目撃された研究が進んでいるのか。それが如何な存在か、気になることは幾らもあった。
 けれど、今やるべきことは決まっているから。
「兎にも角にも、ウィゼ氏を救出致しマショウ」
「もちろんッス! 心配してばかりじゃいられねエ!」
 カーラも気合一つ。開いたハッチから見下ろして戦場を探る。
 と、シルディ・ガード(平和への祈り・e05020)は紅の瞳をくりっと動かして。その遠方に爆炎にも似た光が瞬くのに気づいた。
「あっちみたい!」
「では、行きましょうか」
 瀬入・右院(夕照の騎士・e34690)は浅い銀色に光量を抑えていた翼を輝かせ、空へと泳ぎ出す。
 シルディもすぐに頷いて、タラップに足をかけた。
「ウイゼさん、どうか着くまで持ちこたえてよねっ、っと! すぐいくから!」
 風の壁が豊かな黒髪を暴れさす。シルディが躊躇わずにその中へ舞い降りると、皆も続いて空へ跳んでいた。
 戦場は近い。右院は翼で風を切り、加速していく。
「ウィゼさん、無事でいてくださいね──」

 爆風の花が咲いて、衝撃の大輪が木々を揺らがせる。
 ウィゼ・ヘキシリエン(髭っ娘ドワーフ・e05426)は敵の初撃を下がって避け、ふむと頷きを零していた。
「攻性植物がミサイル、とはのう」
 余波に揺れる付け髭を少し押さえつつも、その敵を見つめる。
 蓮の少女は、呟くように言った。
『私は、爆射蓮華……リアンファ』
「リアンファとやら、随分と危険な火器と同化しておるようじゃが」
 ウィゼは踏み込んで、鋭利な針からウィルスを注入。生命力を蝕みながら尋ねてみせる。
『……』
 するとリアンファは言葉を返さず反撃。近距離からミサイルを放った。
 爆撃は強烈。敵の力を痛感しつつ、それでもウィゼは戦言葉を呟き自己回復し、平静を崩さない。
「名前以外を語る気はないようじゃな」
 あくまで警戒はしたまま、思考を分析の為に目まぐるしく働かせていた。
(「あの姿、報告にあった大阪城のオーズボーグを思い浮かべるのう」)
 機械の力を取り込んだかのような、敵の体。
 或いは彼女はその関係にあるのかもしれない、と。
「こんなところまで攻めて来ていたとはのう。どこかを襲撃しようとして潜伏しておった、ということころかのう……」
 だとすれば、攻性植物勢力の動きにもより注意を払わねばならないだろう。
 無論、この戦い自体にも一層負けられはしない。
「とはいえ、あたし一人では火力が全然足りぬようじゃが」
 ウィゼは攻撃を続けながらも呟く。
 それは紛れもない事実だった。敵の傷は浅く、こちらの負傷は大きい。このままであれば押し負ける可能性は否定出来なかった。
 リアンファもそれを悟ってだろう。勝負を決めようとばかりに、ウィゼへ全火力を注ごうとしてくる。
 けれど。
「させるかッ」
 勇烈な声音が空気を裂いた。
 疾駆したカーラが、跳躍してリアンファへ肉迫。雄々しい戦斧を掲げて全身全霊、裂帛の斬打を叩き込んでいた。
 深い衝撃に、リアンファは後方へ吹き飛ばされる。
 倒れながらも姿勢を直そうと身じろぐが、次にそこへ眩い光線が閃いた。
「……させない」
 仄かな声と共に。
 それはレイシア・アクエリアス(穿つ雪兎・e10451)が放った牽制の射撃。光の直線で敵の足を払い、再度転倒させてその動きを押し留めている。
 隙が生まれれば、レイシアはすぐにウィゼへと駆け寄っていた。
「……助けに来た」
「おお、ありがたいのじゃ」
 ウィゼは少々驚きつつも、心強さを覚えて応える。その頃にはシルディも駆けつけていた。
「すぐに治すねっ! 集え地の魔力!」
 ──彼の者の穢れを取り払い、彼の者を護る内なる盾となれ!
 瞬間、力強くも心地良い爽風が吹き抜けて、肌を撫でていく。
 それは『癒地召精波』。優しくも清廉に傷を癒やし、穢れを退ける力を与えていた。
「では、俺も手伝いますね」
 と、そこに空からふわりと降り立つのは右院。寂寞を唄う声音を短く紡いで、破魔の力を宿しながら治癒を進めていく。
 モヱは杖を翳して仮想魔法空間のアーカイブへアクセス。読み取った情報から雷壁を構成して、護りを固めながらウィゼの傷も浚い取った。
「後は、お願いシマス」
「……ん、れいしあが、やるね」
 頷くレイシアは月光の如き煌めきを与え、ウィゼを万全とする。体力に問題ないと見れば──改めて、敵へと視線を向けていた。
 無表情の中に微かな敵意を垣間見せ、ライフルを構えながら。
「……ミサイル、積んでる……分かった。ダモクレスだ。れいしあの敵」
「……いや、ダモクレスのようだが、やはり攻性植物だろう。謂れの通りだ」
 と、言って瞳を向けるのは、ファルゼン・ヴァルキュリア(輝盾のビトレイアー・e24308)だった。
 すたりと地を踏んで歩むその表情は、涼しげというよりも沈着で、興味薄のようでもある。
 それでもそこに戦意が無いわけではない。
「……花粉を撒き散らすだけでなく、こんな危険物まで撒き散らすようになるとはな」
 元より、種族間で争っていた攻性植物には好意を抱いてはいなかった。
 まして、今は地球を脅かす存在なれば。
 ファルゼンは躊躇うこともなく弓弦を引き絞り、その鏃に苛烈なまでの焔を湛えた。
「とっとと焼き払って帰らせて貰おう」
 刹那、弦を弾いて射撃。炎熱の直線を描いて矢を飛翔させ、リアンファを穿ってその躰を焔で包み込む。

●翠
 リアンファは火の粉の中を後退し、体勢を立て直していた。
 レイシアは見据えて警戒を欠かさぬながらに、ウィゼに声をかける。
「あの敵の詳細と弱点あったら、教えて……」
「うむ。あの者の能力を見るに、迎撃や大群で攻めるには向いておるが各個撃破には弱いようじゃのう」
 ウィゼは顎に手を当てて答えた。
 戦力の考察くらいは、既に済ませている。
「間断なく攻めれば、向こうもミサイルを取り回しづらいじゃろう」
「……そんな子が、どうして一人ここにいたんだろうね」
 シルディは少し、声音に愁いを含んだ。
 敵と言われる存在と、仲良く出来ずに争いが続いていることが哀しくて。
 本来なら、言葉を聞いて、手を差し伸べたかった。何が彼女を戦いに向かわせたのか。ここで何かあったのかと。
 それでも彼女自身はただ戦意を抱いている。
 だからシルディも地球の人を守るために、退くことは出来なかった。
 カーラとて心は同じ。
「あの敵の事はわからないけど」
 少し前までなら、敵相手に怖気づく心もあったろう。けれど仲間や一般人が傷つく可能性があるのなら。
「ミサイルに爆発なんていう、ふつーの人達に被害が出るようなこと許すわけがない。皆も人々も……絶対に守り切る!」
 刹那、地を踏み込んで猛烈な疾走。高速でリアンファへ接近していた。
 同じく、レイシアも戦いに躊躇うつもりはない。
「足止めして、無力化すればいいのね……やってみる」
 引き金を引いて魔力の奔流を放つ。鮮やかなビームとなって命中したそれは、敵の足元の一端を石化させてしまう。
 そこへカーラが迫り一撃。疾風の如き刺突で砲台を穿っていた。
『……っ』
 ふらついたリアンファは、それでも倒れずミサイルをばら撒いてくる。
 広域の射撃は、空間を満たすほど。
 だがファルゼンは、死の焔花を易々と咲かせない。とん、と、淀まぬ足取りで前へ出ると衝撃を防御。負傷を欠片も厭わず、自身の体を使って仲間を庇っていた。
 直後には、シルディが黄金色の光を輝かせて治癒。
 同時に右院もそっと祈るように淡い煌きを振りまいて。ひとつ、ふたつ。美しい花を光らせていた。
 満ちる色彩、芳醇なる芳香──それは『七色に輝く花』。
 在りし日のアスガルドを溢れんばかりに覆ったと言われる、ヴァナディースの花々の幻影。それが鮮やかに揺れて、美しく揺蕩い。魂を浄化させて傷も不調も拭い去った。
「これで、治癒は済んだかな」
「では反撃といくかのう」
 ウィゼは敵に近づくと、むむ、と何かを発見する。
 それはリアンファが握っている小さな物。
「お主の手に持っておるのは、そのミサイルポッドの発射スイッチかのう?」
『……』
「ふむふむ、あたしにもそのスイッチを押させるのじゃ」
 元よりウィゼは研究者。好奇心が刺激されると試さないではいられない気質だった。
『これは私の……』
「ポチっと、なのじゃ!」
 と、拒否するリアンファに構わず押下。
 するとミサイルが明後日の方に飛び空中で爆散する。
「およ、照準があっておらぬからかのう。変な方向にいったのじゃ」
『私のスイッチ……』
「……今の、うち」
 レイシアはそのやり取りの隙を突いて、白色の光弾を撃ち出していた。
 周囲の空間すら歪ませるそれは、重力エネルギーを用いた一撃。敵に直撃するとグラビティを破壊し、斥力を生んだように敵自身を地に滑らせていく。
 それでもリアンファは、ポッドに残る数発を撃ってきた、が。
「──フレイヤ」
 ファルゼンの声を受けた箱竜が、羽ばたいて防御。しかと受け止め傷を抑えた。
 その時にはもう、ファルゼンが治癒の光を纏った矢を番えている。放ったそれは背中から不浄の傷だけを射抜き、回復させた。
「後は、これで完治するはずデス」
 モヱもまたそこへ手を翳し、時空魔術の魔法円を顕現していた。
 実行するのは『Roll back sync Ver1.0』。
 瞬間、戦闘開始時に保存されていた、万全状態のフレイヤのデータベース情報を反映。文字通りのロールバックをしてみせるよう、負傷状態を巻き戻し傷を消し去った。
「攻撃は任せマス」
 と、視線を遣るのは遊撃に動かしていたミミックの収納ケース。
 既に敵の後背側を取っていた収納ケースは──モヱに応ずるようにエクトプラズムを揺らめかせ、激しい殴打で敵の動きを鈍らせた。
 リアンファはミサイルを補充して継戦を狙う、が、そこへウィゼ。ドリル型に輪転させたガジェットでミサイルを破壊する。
「頼むのじゃ」
「ええ、分かりました」
 次いで、銀糸の髪を棚引かすのは右院。敵の動きをつぶさに見取り、反撃の動線を読み取ってその横合いに迫っていた。
 瞬間、刺突。大気を突き通す苛烈な一撃で、ポッドの一部ごとミサイルを破砕する。

●風
 金属の破片が散って、風に流れて消滅していく。
 リアンファは躰の機巧の一部を破壊され、確実に生命の灯を弱めていた。無論、戦意に変わりはなく射撃を敢行しようとしてくるが。
「させマセン」
 モヱが怜悧な瞳でその動きを見逃さない。
 瞬間、光陣を瞬かせるとウィルスを伝搬。ミサイルの制御系を蝕ませ、内部から生命力を削り取っていた。
「このまま攻めていきマショウ」
「了解です」
 モヱと入れ替わりに駆けるのは右院。抜き放った大太刀に淡い陽炎を纏い一閃。朧な光の斬線を描き、袈裟に傷を刻んでいく。
 リアンファはそれでもミサイル攻撃を止めはしない、けれど右院はその直前に動きを見とって、皆に素早く注意を喚起していた。
「気をつけてください。広範囲攻撃が来ます」
 その声によって、盾役が素早く対応して衝撃を受け切ると──合わせるようにシルディは蔓を波打たせ、燦めく果実を生らせていた。
 眩い甘露は生命を癒やす祝福。美しく清らかに傷を濯い去ってゆく。
「あと少しで全快だよっ!」
「では、私がやっておく」
 ファルゼンは光の粒子を宙に舞わせ、風に輝かす。
 流れる煌めきの渦が仲間に溶け込んでゆくと、負傷を消滅させながら皆の意識を澄明に澄みわたらせていった。
 リアンファは最後まで退く気はないのだろう、残るミサイルを全て飛ばしてくる。
「……弾幕……厄介……」
 レイシアは呟きながら、それでも銃口を下げるつもりはない。
「そらすだけ、そらしてみる」
 ミサイルの幾つかがこちらに向かってきたと同時、横方向に飛び跳ねて回避。そのまま敵のポッドへレーザーを放ち、石化させて無力化した。
 カーラはそこへ、武装のグリップから鋼鞭を放っている。
「これで止めるっ!」
 地を這い、高速で敵へと迫りゆくそれは『封縛鞭』。足元から敵の全身に巻き付き、締め上げてその動きを封じ込めた。
「さあ、今ッス!」
「うむ、これで打ち砕いてしまうとするかのう」
 ウィゼは距離を詰めながらガジェットを変形させ高速駆動。旋風を巻き込む程に高速で回転させ、威力を限界まで増したドリルへと成す。
 突き出したその一撃は、リアンファを慈悲無く貫いて。兵装を四散させ、その体を貫いて命を砕ききった。

 風が吹いて木々が揺れる。
 静けさの中に、いつしか穏やかな空気が戻ってきたようだった。
 ファルゼンは見下ろして、敵が散ったことを確認している。
「終わったか」
「……みたいですね。皆さん、無事ですか?」
 右院が振り返ると、皆が頷いて健常を告げる。モヱ自身も肯定を返しつつ、改めてウィゼに向き直った。
「お怪我は残っていないデスネ」
「心配ないのじゃ。皆のおかげじゃのう、助かったのじゃ」
 ウィゼは答えて礼を言う。誰も重い怪我を負ったものはなく、それが何よりの結果だと思っていた。
「それじゃあ、ヒールだけしておこうか」
 シルディは言って周りの景色を修復し始める。
 ただ、それほど木々や自然が破壊されていたわけではない。
 リアンファに自然を傷つけさせたくなかったからでもあろう、シルディは木立に傷がつかないように、開けたところへ彼女を誘導して戦っていのだ。
 とはいえ被害はゼロではない。
 だからレイシアはヒールをしながら、少し物思う心持ちだった。
(「……植物も植物を大事にするわけじゃ……ない……」)
 それは命あるものが、他の命を大切にしないこともあるのと、同じ。
「……自然って、人みたいに複雑……」
「そう、だね。……でもボクは、大切にしたいっていう思いもあったと思いたいな」
 シルディは小さな蓮の一部を拾った。
 それは散った彼女の、欠片だ。
「だって、あの子も綺麗な花だもん」
 そうして少し歩いて、蓮の池を見つけると──シルディはその欠片を還した。いつか巡って綺麗に咲けばいいと。
 カーラは見届けながら、最後には皆へ明るく言った。
「それじゃあ、帰りましょうか!」
「うむ。そうじゃのう」
 ウィゼは頷いて歩き出す。木々が緩やかにそよいで心地良く。少しだけ風が優しくなったようだった。

作者:崎田航輝 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月16日
難度:普通
参加:7人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。