力比べは死の間近に

作者:幾夜緋琉

●力比べは死の間近に
 茨城県はかすみがうら市。
 何の変哲もなさそうな町だが……そこに響く怒号。
 二つのグループが、怒号を叫び合っていた。
『あぁん、なんだとてめぇ、もう一度行ってみろやぁ!!』
『ああ、何度でもいってやらぁ! てめぇなんか俺の脚元にも及ばねえんだよ! オラ、これを見てみろッ!!』
 そう言うと、身体の一部を蔓のようなモノにし、シュルシュルと伸ばし、鞭の様にしならせる男。
『ヘッ、その程度かよ! それならこっちの方がすげーんだぜ!!』
 それに対し、もう片方が、蠅取り草の様に身体の一部を変化させ、パカッ、と口を開く。
『何だよそれ、ただ待ってるだけじゃねーの? へへへ!』
『う、うっせええ!! ならいいか、勝負だ!! タイマン勝負で負けた方が勝つった方の軍門に降る、でどうだ!!』
『ああ、面白え。その吠え面が歪むのが楽しみだぜ!! はははは!!』
 ……そして二人は、仲間達の前で、決闘を始めるのであった。
 
「ケルベロスの皆さん、集まって貰って感謝感激ッス! それじゃ早速ッスけど、説明を始めさせて貰うッスね!」
 黒瀬・ダンテは、集まったケルベロスに元気よく挨拶すると、早速今回の依頼の説明を始める。
「今回、皆さんには茨城県はかすみがうら市に向かって欲しいッス! 最近かすみがうら市は、近年急激に発展し、若者達の町となってるんッスけど、最近、若者グループ同士の抗争事件が多発している様なんッス」
「それがただの若者同士の抗争事件だったら、ケルベロスの皆さんが関わる必要は無いんッスけど、その中にデウスエクスである、攻性植物の果実を体内に受け入れて、異形化したモノが居るんッス。そうとなれば、話は別ッスよね!?」
「しかも彼らは、攻性植物化したもの同士をグループの代表として決闘を行い、負けたグループが勝ったグループの傘下に入る、という話で戦いを始めたんッス」
「この状況を放置すれば、いずれかすみがうらの攻性植物は一つの集団に統一され、デウスエクスの強力な組織が出来てしまう可能性があるッス。そこでケルベロスの皆さんに、これを防いできて欲しいッス!!」
 そして、続けてダンテは詳細な情報を説明する。
「今回、ケルベロスの皆さんは、攻性植物同士の決闘の場に乗り込むことになるッス。とはいえ攻性植物二体が、一時休戦してケルベロスの皆さんと戦う事になれば、戦闘で勝利する事は困難ッス。一体だけでも確実に攻性植物を撃破出来るよう、立ち回りの細工が重要かもしれないッス!」
「幸い攻性植物の二人はいがみ合ってるッスけど、これ以外の若者達はただの人間ッスから、脅威になる事は全く無いッス。彼らは攻性植物とケルベロスが戦い始めれば、勝手に逃げていくと思うッス」
「二体の攻性植物は片方は蠅取り草、片方は蔓の攻性植物ッス。どっちも頭に血が上りやすい、性格ッスから、片方の方について挑発すれば、一体ずつと戦うというのも可能だと思うッスよ?」
 そして、最後にダンテは。
「何にしても、攻性植物がこのまま組織化する危険を放置は出来ないッス。ケルベロスの皆さんの力で、どうかやっつけてきて欲しいッス! 宜しく頼むッスよ!!」
 と、ぐっと拳を握りしめて、頷くのであった。


参加者
ノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)
桐山・憩(クロックワークタイラニカル・e00836)
エレ・ニーレンベルギア(漸う夢の如く・e01027)
ミラン・アレイ(蒼竜・e01993)
花筐・ユル(メロウマインド・e03772)
篠宮・マコ(アースドリーム・e06347)
緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)
斑目・黒羽(時代遅れの風来坊・e14481)

■リプレイ

●力比べ
 茨城県はかすみがうら市。
 近年、急激に発展し、若者達の町となったこの町……そんな町では、若者グループの抗争事件が多発しているという。
 そんな抗争事件の起こるかすみがうら市に、いがみ合う男二人。
 顔をつきあわせ、にらみ合う……そして勝利した方が、敗者の傘下に下るという喧嘩のルール。
 それだけなら、ちょっと粋がっている若者同士の抗争事件だと言える。
 だが……どちらも攻性植物になってしまった。相手に勝利する為に……。
「……いがみ合って、ケンカしても、得るものって無いと思うんですけれど……」
 と、冷静にエレ・ニーレンベルギア(漸う夢の如く・e01027)がぽつり呟くと、それに花筐・ユル(メロウマインド・e03772)と、ミラン・アレイ(蒼竜・e01993)も。
「自慢の玩具を見せ合う子供のようね……その力は、遊びでは済まされないというのに」
「縄張り争いとか、なんだか青春の一ページだよね! でも、異形の力を借りずに拳で語り合わなきゃ! きっとそれが正義!!」
 拳を握りしめて言うミラン。
 それに、篠宮・マコ(アースドリーム・e06347)、桐山・憩(クロックワークタイラニカル・e00836)、そしてノワル・ドラール(ハートブレイカー・e00741)らも。
「植物のような平穏な人生を暮らしたい……と思った事はあるけれど、まさか本当に植物になる人がいるなんてね。しかも平穏とはかけ離れた血生臭い生き方……あんまり解り合えなさそう」
「ああ。ガキの喧嘩には過ぎた玩具だ」
「まぁ、粋がる気持ちも解らなくもないけど。まぁ、この私の籠絡術で堕として上げる」
 最後に妖艶に微笑むノワル。
 そして緋色・結衣(運命に背きし虚無の牙・e12652)、エレ、ユルが。
「そうだね。出来れば両方とも討伐したいけれど……最低でもどちらか一体を倒す事を目標に頑張ろうか。無理して犠牲を出したら本末転倒だしね」
「ええ……しかし攻性植物もデウスエクスです。その怖さは知ってる筈なんですが、これが若さなんですかねぇ……」
「……若さで攻性植物化する様なら、本当呆れた人達ね。しかし私達地球側に、その種が薬となるか、毒となるか……このかすみがうら市の事件は、その鍵になるかもしれない。さあ、見極めさせてもらいましょう」
 そして、斑目・黒羽(時代遅れの風来坊・e14481)が。
「そうだな……それじゃ、バカ騒ぎしてる二人の所に行くとしよう」
 とキセルを一服、煙一つ吐き出すと共に……ケルベロス達は、攻性植物二人が暴れる所へ急行するのであった。

●怒号響く中
『なんだとゴラぁ!! てめぇ、もう一度行ってみろや!!』
『なんどでも言ってやらぁ!! てめえのその蔓はひょろひょろでそんなんで人に勝てそうなんぞ言ってんじゃねーよ!!』
『あんだとぉ、おめーのそのハエトリグサだって同じだろうがぁ。その貝みたいな二枚葉、気色悪いぜへへへ!!』
 と、そんな怒号を掛け合っている攻性植物二体……そんな攻性植物集団の後ろでは、ヤジを飛ばし合っている、彼らそれぞれのグループの人達。
 ……怒号だけならば、何処にでもある抗争事件であると言えるのだが、やっぱり蔓だ、ハエトリグサだ、と言っているのを見ると、やっぱり攻性植物同士の話なんだな、と思ってしまう。
 そして……。
『もうキレたぜぇ! よし、んじゃあ勝負だ!! 負けた方が、勝った方の軍門に降るって言うのはどうだ! 勿論うけるよなぁ、勝てるって思ってるんならなぁ!!』
『ったりめえだ! てめぇなんかに負けねえよ。おめえらもいよなぁ!!』
 それに……周りのグループの仲間達は、ちょっと戸惑いつつも、リーダーの言葉には従わってしまう。
 ……と、そこに到着したケルベロス達。
 両者の間に割り込むようにすると、憩と黒羽が
「待ちな。その勝負、私達が預からせて貰う」
「ったく……バカ騒ぎはほっときたいんだが、ここまでとなると仕方がないな」
 そんな挑発の言葉……それに若者達は。
『なんだてめぇら、俺達の邪魔すんじゃねぇよ!!』
『そうだぜ、てめぇら何だよ!!』
 と、ケルベロス達を避難する言葉を投げかける。
 ……でも、それに憩が。
「うっせぇな……戦う事に違いねぇだろこのボンクラ。その蔓はアクセか?」
 と言い放ち、睨みつける。そして黒羽も。
「お前達邪魔だ……ケルベロスだ、のかねーならたたっきるぞ」
 と睨みを利かせ、攻性植物以外の一般人達を追い出していく。
 ……それに、恐怖を覚えた一般人達は、ひぃぃ、と恐れ戦き、その場から次々と逃げ出していく。
 そして残った攻性植物は。
『あ、あいつら……ったく、ヘタレ共め!!』
 と叫び、舌打ち……それに。
「あーはいはい。口だけは達者だよな、お前ら。これで実力はぺーぺーならお笑いだぜ?」
 と憩が言い放つと、それにユル、黒羽、ミラン、ノワルが。
「それにしても、蔓ですか。嫌らしいですよねぇ……それでガチなんて言うのは如何かとー」
「だよな。そこの蔓野郎! くねくねしてだっせぇなぁ! それでも男なのか? 悔しいんならほら、掛かってこいよ!」
「そうだよ。蠅取り君には悪いんだけど、このタイマン、加勢させてもらうんだよ! 一緒に叩きのめさせてね!」
「そうね。貴方の方が好み……アイツを倒してから、後日合わない? 二人っきりで、ね?」
 特にノワルは艶っぽい視線で彼を見上げ、腕に胸を押しつけ、更にラブフェロモンもオマケして……。
 そんなケルベロス達の言葉に、ハエトリグサ攻性植物はニヤリ、対して蔓植物側は。
『てめぇ、仲間を呼んでやがったか、ずりーぞ!!』
 と喚く。でもそれに。
『オレは呼んでねーよ! これもオレの人望だぜへへへ!!』
 ニヤリ笑う彼に、ミラン、マコ、結衣に黒羽が。
「だって、蔓くんの所業には正直腹を据えかねているんだよ! 蠅取り君にこの辺りしきってもらった方がまだマシなんだよ!」
「そうそう。蔓なんてださいわ。なんかうねうねしてて気持ち悪い。その点ハエトリグサってクールよね。ほら、こう、なんていうか……うん、かっこいい」
「そうだ。それに育ちすぎた雑草ほど目障りなものはない。細かい事は気にしなくていい。オレにはそいつを倒すだけの理由がある。それだけだ」
「俺達が手を貸してやるから糧よ! 勝てなかったら男じゃないからな!」
 と、更に言葉を重ねていく。でも、不審そうな表情を浮かべる彼に、結衣は。
「こちらを信用しろとは言わない。共通の敵を倒す為、全ての攻撃を奴だけに集中してくれればそれでいい」
 と言いながら、ハエトリグサ攻性植物の横に立つ。
 それに蔓攻性植物が。
『くっそ、仕方ねえ。それならこっちもヤケだ、ぶっ殺してやらぁ!!』
 と蔓をうねうねさせて、戦闘態勢……そしてハエトリグサ攻性植物も、同じく構える。
 そんな蔓攻性植物の蠢きに。
「……蔓使って相手に近づけないようにしないと、ロクに戦えもしないヘナチョコくんなんでしょー!」
「そうですね。遠距離じゃないと自身が無いんですねぇ……本当に強いんですか?」
 あっかんべーするミランに、エレも笑顔で毒を吐く。
 そんな挑発に、蔓攻性植物は。
『くっそ、まけてたまるかよぉ!! 絶対ぶっつぶしてやらあ!!』
 と声を荒げ、蔓を振り回し、範囲攻撃。
 その攻撃をガシッ、とユルのミミックが。
「助手、仲間への攻撃をブロック」
 とユルの指示を受けて、ディフェンダーのカバーリング効果で仲間をカバーリング。
 そして、蔓攻性植物の攻撃に反撃するように、マコが。
「やっぱりその蔓うねうねしてて気持ち悪い……ぴろー、さっさと倒しちゃおう。目の毒だし」
 マコの指示ににゃー、と鳴いて、清浄の翼で前衛陣にBS耐性を付与する。
 そして、一気にケルベロス達と、ハエトリグサ攻性植物の攻撃シーン。
「忌むべき生命よ、灰燼と散れ」
 と結衣が剣に炎を迸らせ、一気に距離を詰めて暴星<焔龍の狂宴>の一撃を叩き込むと、続けてノワルがトラウマボールを投げつけ、蔓にトラウマを叩き込む。
 更にノワルのビハインドはポルターガイスト、黒羽は蔓の攻撃をいなすようにし、更に憩が。
「ご自慢の細っこい日もで何を見せてくれるんだ? 綾取りか? シシシッ!」
 と挑発するように笑い、嘲笑う案山子で攻撃。
 そしてユルがサークリットチェインを前衛に付与する一方、エレは。
「……爆ぜ、燃え尽きろ!」
 とグラインドファイアの一撃。
 そして、最後にメディックのミラン、マコは、攻撃を受けたミミックをスターサンクチュアリとブレイブマインで回復や壊アップの付与をしていく。
 勿論、ハエトリグサ攻性植物も、ケルベロス達の加勢に加えて、蔓攻性植物を攻撃していく。
 ……デウスエクスとの共闘という、異質な戦い。
 流石に加勢されてしまえば、蔓攻性植物にとってかなり不利な戦況。
 怒りに身を任せた彼は、どうにか互角の戦いを繰り広げる。
 ……だが、そんな蔓攻性植物に。
『ヘヘへ。ほらほら、どうしたんだよぉ!』
 と更に挑発するハエトリグサ攻性植物。それに。
『うるせえよこのばーっか!!』
 流石に余裕のない返答を返す蔓攻性植物。
 その蔓を大きく振り回して、ケルベロス含めて猛攻を仕掛けてくる。
 ケルベロスの体力も、ハエトリグサ攻性植物も、体力が削られていく……が、ミラン、マコが回復するのは、ケルベロスの体力のみ。
 ……そして、蔓攻性植物との戦闘開始し、十数分。
『っ……ぐ!』
 睨みつける攻性植物に、黒羽が。
「さよならだ。その力に頼るのは間違いだったな……」
 と最後宣告を突きつけ、そして暗器術禁術『磔刑・神魔必滅』を放ち……磔刑に処され、大量に切りつけられて、ロケットランチャーで蜂の巣にされる。
 そして身体がボロボロになった所に、ユル、エレが。
「……逃がさない」
「描くは、流星の軌道!」
 と茨姫の子守唄、スターゲイザー。
 そんなケルベロス達のトドメの連続攻撃に、絶命する攻性植物。
『ふぅ……終わった終わった。へへ、これでオレが王者に一歩近づいたって所だな!』
 ニヤリ笑うハエトリグサ攻性植物。
 戦闘の結果、結構身体はボロボロ……それに。
「さーて、まず一つ目の悪は滅びたんだよー。つぎは……はえとり君、駆除されてみよっか!」
 ニコッと微笑み、至近距離から轟雷竜吼。
『っ!?』
 驚愕の表情に代わるハエトリグサ攻性植物。
 それに更に。
「そうね。ごめん、ハエトリグサもやっぱり気持ち悪い」
「……まさか、自分だけは助かるだなんて思っていないよな?」
 マコ、結衣の宣戦布告。
 流石に至近距離、不意を打たれての攻撃は応える。
 とは言え彼もデウスエクス……その不意に素早く対応し、反撃の体勢を取るのだが……。
『って……ぇ!』
 先ほどまでの戦いの被害が、その身を確実に蝕んでおり、動きにキレが無い。
「どうしたのかしら? フフ……もう、終わりなの?」
 くすりと挑発するような微笑みのノワル……。
 でも、そんな挑発に対する反抗する程の体力は無い。
『う、うっせえよ!!』
 と口では反抗するものの、その身体が付いてこない。
 そんな弱った攻性植物へ、大量の攻撃の雨霰を降り注ぐ。
 そして十分程度で……彼も。
「さぁ……これで最後だ」
 結衣の宣言、そしてブレイズクラッシュが、彼を炎に包み込み、彼は炎の中に燃え尽きていくのであった。

●力、両成敗
「……終わったみたいね。ふぅ……皆、お疲れ様」
 仲間達に微笑みを浮かべるノワル。
 そしてケルベロス達の前には、二体の攻性植物の骸……。
 どうにか両方の攻性植物を灼滅し、やっと一息ついた所。
 しかしながら長期戦となり、それぞれの感じる疲労感は、かなり酷い。
 でも……かすみがうらも、これで平和へ、ほんの少しの一歩を歩めたはず、そう思うと、心もすがすがしい。
「さて……それじゃ壊れた所をとりあえず治しておきましょうか」
 と、エレの提案。
 皆も頷き、攻性植物との戦闘で壊れた所をとりあえずヒールグラビティで回復。
 そして、一通りヒールし終わった後で。
「よし、これで終わりだな。疲れた疲れた。さ、さっさと帰ろうぜ」
「そうですえ……今回の事件も、そこまで鍵にはならなさそうだったのが残念ですが」
 と、憩とユルの言葉。
 そして、ケルベロス達は、かすみがうら市を後にするのであった。

作者:幾夜緋琉 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2015年11月28日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
 あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
 シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。