肉バルは焼肉店に非ず

作者:柊透胡

 肉バル――ここ数年で人気となった飲食スタイルだ。和製英語、というより、朝はコーヒー、昼は食事と軽いアルコール、夜に郷土料理とお酒を提供するスペインの「Bar【バル】」を由来とするのが有力とか何とか。
 つまりは、「肉料理とお酒が楽しめる場所」。肉を扱う飲食店といえば焼肉屋が一般的だが、もっとお洒落な場所、といったイメージか。
 兵庫県神戸市――三宮の駅前にあるその店も、そんな「肉バル」の1つ。店内は落ち着きあるモダンな内装で、テーブル席の他に、ボックス席や個室もある。
 饗される肉は勿論、神戸牛。厳選された牛を一頭買いしているとかで、希少部位も楽しめるのがセールスポイント。予算に合わせて多彩なコースが用意されている。
 例えば――平日のランチでは、炙り刺身やローストビーフサラダ、焼きしゃぶ、赤身のステーキをリーズナブルに。ディナーは神戸牛の前菜3種から始まり、メインはステーキ・焼きしゃぶ・しゃぶしゃぶ・すき焼きからチョイス。更には、牛肉の炙り寿司も。
 圧巻は神戸牛尽くしのコースで、前菜、汁物、サラダにもふんだんに神戸牛が使われ、メインのステーキはサーロイン、フィレ、シャトーブリアンのみならず希少部位も選べるとか。神戸牛漬け丼も絶品だ。ちなみに、デザートも氷菓から洋菓子まで、メニューも豊富という。
 これに飲み放題を付ければ、地ビールや地酒、神戸ワインは勿論、カクテルも存分に楽しめる。生憎とまだ未成年だったりお酒に弱くても、ソフトドリンクも豊富に揃っているから大丈夫。
 という訳で、日々多くの客で賑わう肉バルであったが……まさか、好からぬ客まで呼び寄せてしまうとは。
「肉を食うならシンプルイズベスト! 焼肉こそ至高! 体裁だけを取り繕う、虚飾に満ち溢れた肉バル許すまじ!」
 大菩薩再臨に血道を上げる一方で……絶許明王の突撃も収まらないのは、ビルシャナのビルシャナたる所以だろう。
 
「肉バルで酒池肉林ですね、了解しました」
「断じて違います」
 何だか眩しい笑顔でサムズアップする京極・夕雨(時雨れ狼・e00440)を即行否定してのけ、都築・創(青謐のヘリオライダー・en0054)は粛々と集まったケルベロス達の方に向き直る。
「……定刻となりました。依頼の説明を始めましょう」
 個人的な主義主張によりビルシャナ化してしまった人間が、個人的に許せない場所を襲撃する事件が起こるという。
「今回のビルシャナの教義は『肉を食べるならシンプルな焼肉こそ至高』。お洒落な雰囲気の肉バルが絶対に許せないようですね」
 残念ながらビルシャナとなった人間はもう元に戻れないが、悟りを開いたばかりで信者がまだいないのは幸いか。
「夕方、ディナータイムが始まったばかりの頃合いに店の前に現れますので、速やかに対処して下さい」
「今流行りの『肉バル』を、ビルシャナが放っておく訳がないと踏んでましたが……タイムリーにお夕飯の時間ですか。了解しました」
「まず、お仕事を済ませて下さいね」
 オルトロスのえだまめと揃って、背中がルンルンしている夕雨にすかさず釘を刺すヘリオライダーだが……まあ、『お仕事の後』に何しようがそこまでは関知しない。
「……尚、未成年者とドワーフの方の飲酒喫煙は看過しませんので」
 そして、生真面目なヘリオライダーは、別方向からも釘を刺すのを忘れなかった。


参加者
クロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)
物部・帳(お騒がせ警官・e02957)
熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843)
セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)
神宮司・早苗(御業抜刀術・e19074)
ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)
朧・遊鬼(火車・e36891)
フレデリ・アルフォンス(青春の非モテ王族オラトリオ・e69627)

■リプレイ

●ビルシャナはきちんと倒しましょう
 兵庫県神戸市――三宮駅にも比較的近い立地に在るその店は、神戸牛専門料理店。所謂「肉バル」だ。一見してお洒落な佇まいで、きっと多くの客が美味を求めて訪れるのだろう。
 だが、開店して間もなくというこの時間、店の前には数人いるのみ。
 ビルシャナ――肉バル絶許明王を待ち構えるケルベロス達だ。
「いやー、神戸に住んでても、中々神戸牛って戴けないからね~」
 何だか、浮き浮きした表情なのはクロノ・アルザスター(彩雲のサーブルダンサー・e00110)。ブリーフィングの為ヘリポートにこそ出向いたが、実は神戸在住。とは言え、神戸に住んでたってブランド牛には中々お目に掛れないもので、今日は「お仕事の後」をとっても楽しみに参戦した。
「戦闘で体をしっかり動かして、お腹を空かせておかないとね」
 熊谷・まりる(地獄の墓守・e04843)も、ヤル気満々だ。既にあれこれと、今日のお夕飯の献立を決めてきているようだ。
「寧ろ、ディナーがメインと言っても過言ではありませんっ」
 まりるの言葉に、セレネテアル・アノン(綿毛のような柔らか拳士・e12642)は大いに肯く。
「カロリー? 日々の修行で燃焼しているので問題無しですっ」
 すがすがしいまでに断言してのけた。まあ、健康美溢れる光輪拳士的スタイルからして、実際にその通りなのだろう。
「特科の皆さんも一緒ですし、ぱーっと騒ぎたいものでありますな!」
 その時、ガチャリ、と店の扉が開き、物部・帳(お騒がせ警官・e02957)の陽気な声が響き渡った。
「おっにく♪ おっにく♪ おいしいおにくー♪ なのじゃ!」
 同じく特科刑部局のメンバーである神宮司・早苗(御業抜刀術・e19074)も又。
「あはははっ! 最初っからへべれけでも許してね?」
 ベルベット・フロー(紅蓮嬢・e29652)に至っては、顔を覆う地獄の炎がいつもに増してメラメラ燃え上がっている。主に、アルコールランプ的な感じで。
「……あー、悪い。俺としては、ビルシャナを待ち伏せする心算だったんだがな」
 最後に店から出てきた朧・遊鬼(火車・e36891)は、ナノナノのルーナとちょっと困惑の呈で顔を見合わせている。
 どうやら、旅団「特科刑部局」の4名は、他が集合する前から件の肉バルに乗り込んでいた模様――ついでに0次会なんかやっちゃったりして。
「ええ~? ビルシャナ? 肉バルと何か関係ありましたっけ」
 遊鬼の言葉に、帳はキョトンと首を傾げる。
「無料でお肉とお酒を楽しめる、素敵なお祭りの筈では?」
 そんな訳あるか――ツッコミが目力に籠った視線が一斉に集まったが、帳自身は何処吹く風。そう言えば、彼が握るのは酒の空き瓶だ。既に酔っぱらっている模様。
「あ、顔に出ちゃってた? アタシすぐ赤くなっちゃうから~♪」
 軽口を叩くベルベットも最初の言葉通り、酔っぱらっているのだろう。
「わしは! お肉を食べに! 来たのじゃ! ……うん? おお、そうじゃった。お仕事が残ってたのじゃ!」
「お、おい!?」
 どーん! とばかりに、早苗は大いに胸を張る。反っくり返り過ぎて、ひっくり返りそうになったけれど。
「おとと……だいじょぶだいじょぶ。ほら、アレじゃ。わし、実は酔拳の達人なのじゃ」
 後頭部強打寸前で遊鬼に支えられ、早苗は尚もニンマリと。やはり――以下同文。
「そうですよ! 私達のお肉フェスティバルを邪魔する輩は……うっ! ちょ……ちょっと、失礼します……」
(「あー、これ……説教案件かも」)
 酔いが回ったのか、気持ち悪そうに肉バルのお手洗いへ駆け込む帳を見送り、フレデリ・アルフォンス(青春の非モテ王族オラトリオ・e69627)は、ウーンと唸る。
 会場(何の)に前乗りする事自体は別段、問題ないだろう。だが、神戸までケルベロスを運んだヘリオライダーは、最初にこう言っていた筈だ――まず、お仕事を済ませて下さいね、と。

●結局、秒殺でした
「肉を食うならシンプルイズベスト! 焼肉こそ至高! 体裁だけを取り繕う、虚飾に満ち溢れた肉バル許すまじ!」
 果たして、雄叫び上げて突進してきた鳥の影――肉バル絶許明王が、何かグラビティを繰り出す前に。
「あら、あらあら。あなたもしかしておひとりさん? 信者さん無し? 誰からも同意してもらえないからって、単騎突入とはお寂しい事~」
 のっけから、傷口を抉って広げるスタイルのクロノ。
「私達とテーブルご一緒する??? お肉堪能して大人しく帰るって言うんなら見逃してあげるわよん」
 だが、暴れると言うのなら――落とし前を付けろとばかり、その剣閃は波紋に揺れる歪な三日月の如く。まあ、返事は一切聞いてないんだけどね。
「こちとら牛肉を食べたいんだ、ブロイラーに用は無い!」
 容赦なく、まりるはフォーチュンスターをビルシャナ目掛けて蹴り込む。(主目的、お食事の前の準備運動)
「それに、シンプルな肉の食べ方って、究極的には生肉に齧り付け! だけど? 教義のツメが甘いなー、だから信者が居ないんだよ」
「体裁だけを取り繕っているのはそちらです~! 本当に至高と思っているなら、他を排除しなくても焼肉が語れるはずですっ。それすらできない教義だから信者がいないんですよっ」
 セレネテアルも特技の先閃諷封で敵を足止めしながら、殊更に信者ゼロという泣き所をぶっ刺していく。
「シンプルイズベストだ? シンプルな食べ方だけを贔屓するなど笑止」
 一方、遊鬼は、肉の食べ方自体に物申す。
「肉の可能性を分かっておらぬな? 唐揚げ、しゃぶしゃぶ、すき焼き……別の方向を試して初めて肉を理解できると言うものだ」
「というかー、食べたい時に食べたい料理を食べるだけじゃしー? 焼肉も良いけど、今日はステーキの気分じゃしー? みたいなー?」
 本音をぶっちゃけて乙女の飛び蹴りを敢行した早苗は、ヒックと喉を鳴らす。
「んむ? だいじょぶだいじょぶ、酔ってないのじゃ!」
「……あー、うん。そうだな」
 粛々とブレイズクラッシュでビルシャナをこんがり焼きながら、遊鬼はすっと早苗から視線を逸らす……嗚呼、ナノナノばりあを頑張るルーナが可愛い。本当に可愛い。
「……全く。焼肉も好きだったのに、お前の主張のせいで何だかつまらなく思えてきたぞ。どーしてくれるんだ?」
 その内、拡声器を手に、周辺に避難を呼び掛けていたフレデリが戻って来る。その言いようは、因縁付けているようにしか、見えない事も無い。
「シンプル・イズ・ベストとか、ただの手抜きだろ。最高の牛肉の可能性は無限大だ」
 お前みたいなチキンのジャンク以下に用はない――ついでに逃がすかとばかりに、同居人直伝の風神突が、強烈な勢いでビルシャナを刺し貫く。
「まあ、焼き肉はシンプルで美味しい。その点についてだけは同意しましょう」
 そして、しれっとお手洗いから復帰した帳は、何食わぬ顔で禁縄禁縛呪を編み上げる。
「しかし、果たして多人数でお肉を食べる事、それは正しいと言えるのでしょうか?」
 例えば――焦げた野菜ばかり押し付けられる怒り! じっくり育てたお肉を取られる絶望! それは正に、血で血を洗うお肉の争奪戦! ……まあ、無いとは言えない光景ではあるんだけど。
「おお、なんと恐ろしい……地獄の具現と表現しても過言ではありません」
「……帳さん、そこでアタシ見るのやめてくんない? 後でお皿の上の物黒焦げにするよ?」
 すかさず帳に釘を刺しながら、ベルベットの据わった視線はビルシャナを睨む。
「そもそも、お洒落なお店と大衆焼肉店を同列に並べるのも違うじゃん? 高級イタリアンで『ナポリターン!』って注文したらどっちがオカシイか、分かる程度の分別はあるでしょ」
 分別があるビルシャナって……なんて、そこでツッコム者はいない。
「タンドリーチキンは美味しかった。おかわり」
 ベルベットの酔眼は、目の前の鳥が何に見えているのか……おかわり要求ブレイズクラッシュが、ビルシャナを一刀両断。
 ――――。
 結局、肉バル絶許明王には、最初の台詞しか許さなかったケルベロス達であった。

●勿論、神戸牛は絶品でした♪
「ん~~~! 待ってましたお肉!」
 晴れて肉バルに来店、個室に通されたケルベロス達。
(「……フッ、料理以外の事に気を取られるリア充なぞ、どうでもいい」)
 真っ先に1番奥の席を陣取り、フレデリは玉座でグラスを傾ける魔王の如き余裕の表情。早速、飲み放題から神戸ワインの白を注文。
(「オレは全身全霊を賭けて、最高級の神戸牛と向き合うのだから」)
 ……大丈夫だ、フレデリ。ここに在るのは肉愛ずる同志のみ!
「私肉バルって初めてなのよ~。ずっと前から来たかったんだけど、やっと念願叶ったわ~」
 お勧めの神戸牛尽くしのコースを注文するクロノ。他も大体コース料理だが、まりるはアラカルトから気儘に注文する予定。お財布? きっと何とかなる。
「お酒も勿論! 地ビールで乾杯ね!」
「ジンジャーエールお願いしますー」
「あ、私はお水で~!」
 未成年のまりるはさて置き、セレネテアルも冷のグラスだ。
「全力でお肉を楽しむ為です! お酒は飲みませんよ~!」
 ……本気も本気、マジモードだった。
「地ビールにワイン、思いっきり楽しむのじゃ!」
「日本酒で」
 一方、隣の「特科刑部局」4名のテーブルには、既に空のグラスが幾つも……そう言えば、先に0次会とか始めていたね。
「まだるっこしいなぁ。高いお酒から順番に持ってこーい!」
 早苗と遊鬼の声に重なり、ベルベットの大声が響き渡る。ビルシャナに求めた分別とか、テーブルに着いた瞬間に紛失したようだ。多分、地獄化していない。
「いやー、勝利の美酒は最高でありますからなあ! すみませーん、ここからここまでのお酒を」
(「あんまりはしゃいだらイケナイ、よね……? TPOは大切だし」)
 帳の豪快過ぎる注文に思わず苦笑を浮かべるクロノだが……まあ、その為の個室なのだろう。お店の方も心得たものだ。
「それじゃ、頂きまーっす♪」
 賑々しく乾杯して――コースの前菜は神戸牛のタタキ、マリネ、刺身の三種盛り。更に冷しゃぶサラダと、のっけから神戸牛をふんだんに。
「神戸名物のぼっかけ! 1度食べてみたかったんだー」
 アラカルトの一皿目は……濃厚な香りに、目を輝かせるまりる。「ぼっかけ」とは神戸市長田区発祥のソウルフード。牛すじ肉とコンニャクを出汁で甘辛く煮込んだ料理だ。所謂、下町グルメだが、これが神戸牛専門店のメニューになると。
「ヤバい、これだけで満足して終わってしまいかねない!」
 ご飯との相性は言うまでもない。神戸牛の上質な脂のコクが絶妙にしみている。
 上品な味わいのビーフコンソメスープの次は、メインのステーキ。
「ステーキは普段サーロインなんだけど……シャトーブリアンもいいよねぇ」
 シャトーブリアンとは、フィレ肉の中で最も肉質の良い中心部。牛1頭から600gしか取れない超希少部位だ。
「聞いた事のある名前じゃったからこれにしたが……すごいのじゃ!」
「シャトーブリアンって名前だけで強い」
 箸で切れてしまう程の柔らかさに、ビックリ眼の早苗。赤身の濃厚な旨味と香りは正に極上で、クロノの言う通り別格だ。
「嗚呼、天上の花々の如き柔らかさ……」
 フレデリは一口食べる度に、陶然と瞳を潤ませる。癖のない白ワインとの相性も抜群だ。
「オレ、いつ死んでもいい!」
 他にも、肩肉の中でも最も柔らかく濃厚ながら後味すっきりのミスジ、とろけるような食感と上品な味わいが特徴のハネシタ、赤身とサシがバランス良くモモ肉独特の風味とコクが美味なトモサンカク等々――様々な希少部位を、セレネテアルは次々とオーダーする。
「ん~! それぞれ違う食感や美味しさが堪りませんね~♪」
 ライスも大盛りでおかわりして、お肉と一緒に頬張っている。
「焼きしゃぶ追加で!」
 コースの方は、メインから牛漬け丼、デザートで締めのようだが……各自、追加注文が止まらない。
「あ、生ハムだって! これ食べたい!」
 ベルベットが目を付けたのは、ブレザオラ――簡単に言えば「牛肉の生ハム」。イタリアでは身近な食材だが、日本への輸入は禁止されている。メニューにあるのは肉バル自家製で、芳醇な香りと濃厚な牛肉の甘みを楽しめる。
「ふむふむ、そのままでもよし、焙ってもよし……ベルベットの火で直火焼きー、なんちゃってのー!」
「あとねあとね、ローストビーフ!!」
 クロノ曰く、肉バルに来たなら、やっぱりローストビーフ! 細かな霜降りがジューシーなリブロースのローストビーフは、正にお肉の味を堪能出来る逸品。もう今日だけは太ってもいい!!!!
「マリルもどうだ?」
「それも美味しそう……じゃあ、こちらもシェアしましょう!」
 取り分けてくれた遊鬼に礼を言い、まりるは来たばかりのトマホークステーキをドーン! ネイティブアメリカンの斧「トマホーク」の形をしたあばら肉の中心、リブアイ1kgを骨付きのまま焼き上げたワイルドなステーキだ。
(「見た目も厚みもインパクトあるな、やっぱり」)
 早速、美味いものフォルダの充実にスマホで撮影、豪快に切り分けるまりる。ひとりじゃ無理な量も、これだけ人数が居れば!
「折角だから、お呼ばれしちゃおうかの!」
「ルーナもどうだ? 欲しい所があれば取り分けるぞ?」
 よく噛み締め、肉を五感で堪能して……あっという間に完食。
「後は……牛モツのアヒージョに、サーロインのタタキ。厚切り牛タンもかなー」
「むむむ、私も同じ物を追加でお願いしますっ」
 更にデザートまでしっかりと――恐るべし、ケルベロス8人+ナノナノの食欲。

「ご馳走様でした!」
 神戸牛を堪能し尽くし、お土産にシュラスコ――串焼きのセットまで購入して。
「……そぉ言えば、生ハムの原木を頼まれていたな」
 鱈腹を擦りながら店を出て、はたと立ち止まる遊鬼。
「原木……局長、どれがそれっぽいだろぉか?」
 チェーンソー剣を担いで街路樹を見上げる……酔っぱらう前に、日本酒は控えたんじゃなかったのか。
「そもそも、生ハムって木に生えるのでしたっけ……椎茸が木に生えるみたいな?」
 小首を傾げる帳だが、すぐさま悪ノリ。
「特に指定されませんでしたし、何の木でもいいのでしょうか」
「いいね、原木。斧ならあるよ?」
 ルーンアックスを突き出したベルベットは、呂律こそ回っているが千鳥足。
「んんー、お腹も一杯じゃし、生ハムの木を探しにレッツゴーなのじゃな!」
 早苗までボケ倒せば、もう特科刑部局は止まらない。
 ちなみに、「生ハムの原木」とは、スライスされる前の熟成された豚の足そのものを指す。
 更にちなみに――特科刑部局の面々は布引山に入る前にヘリオンに捕捉され、生真面目なヘリオライダーに諸々お説教されたという。

作者:柊透胡 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月25日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 6
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