大菩薩再臨~潔癖な彼らに贈る言葉

作者:地斬理々亜

●不潔なのは許せない
「な、なんですかその触手は! えっちなのはいけないと思いますよ!」
 背中から触手を生やした桃色のビルシャナを前に、学ランを着たニワトリ頭のビルシャナが大慌てしていた。
「安心しろ、そういうのじゃないから。素直にこいつの力を受け取るといい」
 桃色のビルシャナと共に来た、何かのタンクを背負った白いビルシャナが、彼を落ち着かせるように言う。
「ほ、本当ですね……?」
 学ランのビルシャナはおそるおそる信じることにする。直後、大きな力が彼を包んだ。
「これは……!」
 目を見開くニワトリ頭。その眼前で、桃色のビルシャナの姿が薄れていく。
「ビルシャナ大菩薩の再臨のために、より多くのグラビティ・チェインを捧げなくてはなりません。あとは頼みました」
 そう言い残し、桃色のビルシャナは消滅した。
「今なら、乱れた風紀を粛正することができる気がします」
「そうだろう、この力があればな。俺も、許せない人々を滅ぼすことができる」
 残された2体のビルシャナは、頷き合った。
「確かこの近くに、露出度の高い格好で不純な交遊をする場所がありましたね。行きましょう」
「ビーチか? いいだろう。公衆トイレもあるだろうしな」
「ありがとうございます。貴方のお名前は?」
「俺は、トイレで手を洗わないの許せない明王だ」
「オレは、えっちなのはいけないと思います明王です!」
 意気投合した2体は、嬉しそうに、人々が多くいるはずのビーチに向かった。

●ヘリオライダーは語る
「竜十字島のゲートを破壊したことで、ドラゴン勢力の制圧地域の解放は進んでいたっす。ケルベロスの皆さん、さすがの大活躍っすよ。けど……その地域の一部が、ビルシャナの菩薩の一体、天聖光輪極楽焦土菩薩に破壊されてしまったっす」
  黒瀬・ダンテ(オラトリオのヘリオライダー・en0004)は説明を始めた。
  天聖光輪極楽焦土菩薩は、この破壊行為によって奪ったグラビティ・チェインを利用し、ビルシャナ大菩薩を再臨させようとしているらしい。そのために強力なビルシャナを集めようとしているようだと、ダンテは語った。
「こんな暴挙、見逃すわけにいかないっす」
 ダンテはぐっと拳を握る。
「ドラゴン勢力のグラビティ・チェインで生み出されたビルシャナと、その力でビルシャナ化したか、もしくは、その力で強化されたビルシャナ達。こいつらを見つけて倒すことが必要っす」
 ダンテは続ける。
「向かって欲しい場所は、破壊されたアラハビーチの近隣にある、宜野湾トロピカルビーチっす。現地の警察が人払いを済ませてくれるっすから、周辺に一般人はいないっす。ケルベロスの皆さんは戦闘に集中して欲しいっす」
 つまり、事件を起こすために宜野湾トロピカルビーチへやって来たビルシャナ2体が、一般人が誰もいないので困惑しているところに、ケルベロス達が駆けつけて戦闘を仕掛ける形だ。
「敵は、『えっちなのはいけないと思います明王』と『トイレで手を洗わないの許せない明王』の2体っす。教義は、名前の通りっすね」
 えっちなのはいけないと思います明王はクラッシャーで、追撃の効果を持つ単体攻撃の粛正ビーム、複数対象に恥ずかしさを感じさせる怒号の攻撃、義憤を覚えることによる自身のヒールの3種のグラビティを用いる。
 トイレで手を洗わないの許せない明王はメディックである。バッドステータスを洗い落とす経文によるヒール、敵の手を消毒する単体攻撃、消毒液散布による複数対象への攻撃を行う。
「かなりの強敵2体との戦いとなるっす。でも、ビルシャナに自らの教義への疑問を抱かせたり、あるいは、ケルベロスの皆さんがビルシャナの教義を褒め称えたりすることで、隙を作ることができるかもしれないっす」
 説明を終えたダンテは、キラキラ輝く瞳をケルベロス達に向けた。
「皆さんの大活躍、楽しみにしてるっすよ!」


参加者
日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)
水瀬・和奏(フルアーマーキャバルリー・e34101)
エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308)
秦野・清嗣(白金之翼・e41590)
ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)
フレデリ・アルフォンス(青春の非モテ王族オラトリオ・e69627)
エイジ・アルトラングレー(出会いを求める鉄壁戦士・e77269)
藤堂・武光(必殺の赤熱爆裂右拳・e78754)

■リプレイ

●浜辺の彼ら
 ここは、官能湾トロピカルビーチ。
 ……ではなく、宜野湾トロピカルビーチである。
(「沖縄の方に謝らないとな……」)
 このとんでもない誤認をしそうになった張本人、日柳・蒼眞(落ちる男・e00793)は軽く首を横に振る。疲れているのかもしれない、と思いながら。
 ケルベロス達の視線の向こうでは、誰もいないビーチで、ビルシャナ2体が寂しそうに佇んでいる。
(「あいつら、今まで戦ったビルシャナと違うぞ!?」)
 藤堂・武光(必殺の赤熱爆裂右拳・e78754)は、シリアスな面持ちでごくりと息を呑む。
「でも怯まないし退かない!」
 武光は、明王達の前に飛び出した。
「青く輝く命の星に、手前勝手な理想を押しつける鳥人間っ、その名も迷惑・ガンダーラ! 可哀想ではあるけれど、堂々猛る右手に誓い、悪は討つ!」
 正々堂々と、武光は宣言する。
「敵だ! 迎え撃つぞ!」
「はい! ……ぶっ!」
 戦闘に移ろうとする、トイレで手を洗わないの許せない明王。それに続こうとした、えっちなのはいけないと思います明王は、ケルベロスの姿を見て、吹いた。
 下は水着、上はスケスケの亜麻のシャツを着た、秦野・清嗣(白金之翼・e41590)。その傍らには、上下紐ビキニをつけた、エイジ・アルトラングレー(出会いを求める鉄壁戦士・e77269)がいる。
「な、なんですか!? その格好!」
「夏と言えば海。海と言えば半裸」
 エイジは、明王の指摘にも動じずに述べる。
「半裸なんて刺激が強い! ならば男も水着にトップを着用するのは当然だよな?」
「た、確かにそうですが、パーカーとかでいいでしょう!?」
 どうにか落ち着いて反論しようと試みる明王。
「手洗いを奨励とはなかなかに素晴らしい。確かに石けんでの手洗いはトイレの後はした方がいいよねぇ」
 もう1体の明王へは、清嗣が声をかける。
「ふむ、話が分かるな」
 白い明王は頷く。けれど、清嗣の本命もまた、えっちなのはいけないと思います明王である。
「でもエッチなのって、どういうことを言うのかなぁ。ビーチなんて元より、ほとんど裸で集うような場所じゃない? ちょっと弱いなぁ」
「弱い……? オレの主張が、弱い?」
「っていうか本当は羨ましいです!! の裏返し?」
「違います!」
「じゃあ、君の言うエッチってどういう感じなの?」
 明王に問うスケスケシャツの清嗣。四対の白い翼を、浜に吹く風が撫でる。
「風紀を乱す、淫らな行いのことです!」
「それってこういうの?」
 清嗣は、エイジのビキニの紐を解き、鍛え上げられた胸板を露わにする。衝撃で固まるエイジ。
「自然の営みじゃないか。それをそんな言い方するのどうなの、生き物として」
 清嗣は言いながら、エイジの胸に手を当てる。
「……やめろよ」
 言葉少なに拒否するエイジは、満更でもなさそうだ。
 そんなエイジに、清嗣は自らの唇を寄せ――。
「そういうことするのいけません!」
 えっちなのはいけないと思います明王が、清嗣へと粛正ビームを放った。

●手羽先の羽根と女子の服装
「えっちなのはいけないってのは、その通りですけれど、ね!」
 水瀬・和奏(フルアーマーキャバルリー・e34101)が清嗣を庇いに入り、明王のビームをその身で受ける。
 その直後、もう片方の明王が動いた。
「手は、綺麗にしておかねばならんのだ」
 自分の手に消毒用ハンドジェルを取って、ジュスティシア・ファーレル(エルフの砲撃騎士・e63719)に接近すると、彼女の手にジェルを塗り込む。攻撃グラビティであるその行為に耐えたジュスティシアは、口を開いた。
「男性は小の後で手を洗わない人が多いと知った時、私はおぞましさに眩暈がしました。あなたは素晴らしい! 石けんでよく手の甲も手の平も、指と指の間や爪もしっかり洗わなければいけませんよね」
「おお、おお! その通りだとも」
 満足そうに頷く明王。その手を、ジュスティシアは逆に握り返した。
「で、あなたの手羽先はどこまで洗えばいいんです?」
「えっ」
「とても洗いきれません。手の羽根を全部引っこ抜いて清潔にしましょう」
「えっえっ」
 ぶちぶち。ジュスティシアは明王の手の羽根をむしり始める。
「俺も手伝おう!」
 ぶちぶち。フレデリ・アルフォンス(青春の非モテ王族オラトリオ・e69627)もむしるのに加わる。
「やめろ!? 俺は丹念に洗っている!」
 あわてて明王は後方に引っ込んだ。いつの間にかケルベロス達の前衛に展開されていた、ジュスティシアのヒールドローンを横目に。
「だが、この手が洗いにくいのは事実だな……ううむ……」
 ちょっとむしられた手を見ながら、明王は考え込んだ。
 一方、ニワトリ頭の明王へは、エレス・ビルゴドレアム(揺蕩う幻影・e36308)が言葉を向けていた。
「私は普段から、露出度が高い、セクシーさを強調した服を着るようにしていますが、これは必要だから着ているだけであって、別に貴方の考えるような不埒な理由ではないのですよ」
「ほう? 聞きましょうか」
 エレスの豊満な胸から目を逸らしつつ、明王は促す。
「この服装は一般人を狙うデウスエクスの一部に対して気を惹くのに有用なのですよ。具体的に言うならビルシャナ……もっと言うなら貴方のような輩ですね。実際、こうして気を惹けています」
「……なっ!?」
「つまり、貴方の存在自体が風紀を乱している原因なのです。……オークだってそうですよね。あれらが人にえっちなことをする存在でなければ、えっちな状況は発生しないわけですから」
 論を締めくくったエレスは、『寂寞の調べ』を後衛に向けて歌い上げ始める。
 続くのは和奏だ。
(「私の服は敵の気を惹く目的ではないですが……」)
 体のラインがしっかり出る、極薄のフィルムスーツを一瞬見下ろしてから、和奏は口を開く。
「私の服も、デウスエクスと戦うために必要な服です」
 言いながら、アームドフォートから浮遊砲台を展開。無数の砲撃を開始する。
「……私がこんな格好をしているのは、元はと言えば貴方達のせい」
 和奏による『流星の嵐』が、ニワトリ頭の明王を襲う。明王を真っ直ぐ見据えたまま、和奏は言う。
「私も思いますよ。そもそもの原因である貴方がその教義を掲げることがもう間違っている、と!」
「……っ、何を言い出すかと思えば」
 2人の話を聞いたニワトリ頭の明王は、攻撃を受けた痛みに表情を歪ませつつも、ため息をついてみせる。
「さすがにそれは責任転嫁ですよね? オレ達がいなければこんな服は着ない、とでも?」
「その通りですよ、私も一応年頃の女性です。素敵な服や可愛い服を着て歩きたいです」
「大分慣れましたが、フィルムスーツは恥ずかしいですよ」
「……」
 エレスと和奏が、本心から、真顔で即答するとは思っていなかったらしく、明王は固まった。
「オレが風紀を乱している……?」
 彼は、考え込む。

●エロとは? 除菌とは?
「えっちなのはいけないと思うのは勝手だけど、貴方も貴方のご両親のえっちな行為の産物だろう」
 続いて口火を切ったのは蒼眞だ。
「そういうことをした結果として自身が存在しているんだろうに、それを否定してどうする……?」
「!?」
 明王は目を剥く。
「愛や結婚がどうとかと取り繕おうが所詮、愛などエロの文学的表現に過ぎん」
「ならば愛さなければいい。えっちなことと同等の行いだと言うのなら、愛することも不要です!」
「不健全だぞ、それは」
「何を言いますか、オレは健全です!」
 蒼眞へ言い切るニワトリ頭の明王。その体を、白い光が包み込む。清嗣の『懺悔自新』の力である。
「くっ!?」
 後悔の念、複数のトラウマが明王を襲う。
 清嗣のボクスドラゴンである『響銅』はエイジへと属性を注入し、耐性を高める。短く礼を言うエイジ。
「エロいことができるのはリア充と性犯罪者だけだ。ベクトルと凶悪度に差はあるが、どちらも悪なのには変わりはない」
 蒼眞とは違った角度から切り込んだのは、フレデリだ。
「お前は清く正しく美しい。しっと戦士として、オレ達と共に悪のリア充と性犯罪者を殲滅しよう!」
「嫉妬ではないですが、清く正しく美しいと言われて悪い気はしませんね」
 胸を張る明王。その眼前に、フレデリはスマホを突きつける。
「お前ならびくともすまい」
 表示されているのはエロ画像である。
 フレデリは、モテるのは諦めているが、嫌われたくはないので、スケベ心は必死で抑えている。ゆえに、この画像をヘリオン内で探している時は、自分の心臓がうるさかった。そんなことを思い返しながら、フレデリは明王の反応を見る。
「は……は……ハレンチです!!」
「そうか」
 フレデリは明王に、『風神突』を放つ。シンプルだが強烈な刺突である。貫かれた明王はくちばしから血を吐き出す。
「トイレの後に手を洗わないなんてあり得ないっ。ビルシャナさんの気持ちは痛いほどわかるよ!」
「分かるか。素晴らしいぞ」
 武光へと頷くのは白い明王。
「でも、その除菌薬ホントに殺菌できてるの?」
「む……?」
「やっぱり殺菌するなら焼却除菌だよ!」
 白い明王が視線を向ける先、武光は自分の右手を顔の前に持ってきた。
「秘密結社オリュンポスの名の下に! 私の右拳が烈火と滾るっ、バイ菌滅せと火柱爆ぜる! ……ブレイブハート・イグニッション……!」
 赤熱化した鉄の義手の甲に、エンブレムが浮かぶ。
「焼却除菌! エンブレムアタァーック!!」
「ぎゃっ!?」
 手近なニワトリ頭の明王へ、灼熱の裏拳が叩き込まれた。
「ビルシャナさんもレッツ! チバればなんくるないさ~だよ!」
「……確かに、手を焼いた方がいいのか? だが……」
 白い明王は首をひねる。オリュンポスのエンブレムを焼き付けられ苦しむニワトリ頭の明王を見ながら。
 なお、全身防御の構えをとっているエイジは、密かにご満悦であった。
(「色気に美形に可愛らしい顔……良い仲間が揃ったものだな」)
 同性のケルベロスの顔をちらりちらり。

●潔癖主義者達の末路
「恥を知りなさい!」
 後衛のケルベロス達へと、明王の怒号が襲いかかる。
 命中率が下がったその攻撃を、エレスは軽々と回避した。武光には運悪く命中し、武光は自分の言動が恥ずかしくなってうずくまる。
「まだ倒れてはならんぞ」
 ニワトリ頭に向けて経文を唱え、ヒールする白い明王。
 だが、前衛に立つニワトリ頭は、自分の教義に疑問を持たされたため、負傷がかなり重なっている。褒められて油断もしているがゆえに、ケルベロス側の被害は少ない。
 それは白い明王も同じことだ。負傷の度合いの差は、後衛にいるからに過ぎない。
「あなたにはお見せしたいものがあります」
 ジュスティシアはニワトリ頭に駆け寄ると、ぴらりと本の中身を突きつけた。
 『信者達の洗脳が効きすぎた結果、ビルシャナに……』という内容の、信者攻・ビルシャナ総受、ウ=ス異本(2017年冬コミ版)である。某旅団の発行物だ。なお、ジュスティシア自身は堅物なので、まともに読めていない。
「こんなもの描く人がいるんですよ。不潔ですね。いけませんよね」
 ジュスティシアは声をかけるが、明王はあまりの衝撃に硬直している。
 その開いたままのくちばしの間から、ジュスティシアは『フルーツお汁粉スパ・マヨネーズ&生クリーム特盛り』を流し込んだ。
「グ……ガッ……」
 食べさせる精神攻撃兵器。その犠牲になった、えっちなのはいけないと思います明王は、魂を殺され、命尽き果てた。
「あとは貴方だけですよ、ビルシャナ」
 エレスは残された明王へ言うと、オーラのような幻影で武光を覆い、癒す。
「ブレイブハート・イグニッション!」
 恥ずかしさから解放された武光は立ち上がる。
「ストップ温暖化、星義のキック!」
 そのまま武光は、白い明王へと、星のオーラを蹴り込んだ。
「まだ、負けたわけでは……!」
 明王は言う。だが、それは強がりに過ぎなかった。
 清嗣による禁縛の呪が明王を襲い、フレデリのバスタードソードが明王の背負ったタンクへと突き立てられ、和奏が高速演算から見抜いた弱点へは痛烈な一撃が撃ち込まれる。
 前衛の仲間を失った明王がボロボロになってゆくのは、あっという間であった。
「制服鳥野郎が最期まで、学生服という檻から解放されなかったのは残念だ。開放的な夏を楽しめば良かったのにな」
 低い体勢から、エイジが白い明王へと組み付く。
「黙れ!!」
 消毒液を散布する明王だが、やはり命中率は下がっていた。当たったのはエイジにのみである。
 ジュスティシアが花びらのオーラを降らせ、エレスがゴーストヒールによって前衛を癒す。エイジの他、ここまでの戦いで負傷した和奏や響銅もヒールの恩恵を受けた。
「トイレに入って手を洗おうとして、石けんが設置されていなかったりすると残念な感じだし、水だけで手を洗ってもなんか気になるんだよな……」
 自らもまた癒されながら、蒼眞が駆け抜けた。斬霊刀を自分の右側に垂直に立てる。八相の構えである。
 そこから蒼眞は、明王目掛けて袈裟懸けに刀を振り下ろした。達人の一撃である。
「……ま、自分の手を血で汚したなら、どれだけ洗おうとも綺麗にはならないだろうけどな……」
「……そうか、俺は……」
 蒼眞の納刀の音と同時に、トイレで手を洗わないの許せない明王は倒れ伏し、石けんの香りだけを残して消滅した。

●残されたもの
「皆、お疲れ様」
 清嗣が、クーラーボックスに入れ持参したアイスを配る。
「生まれ変わったら人間のまま、己が信念を貫けよ。グッドラック……」
「来世ではやり過ぎず人間のまま、衛生面の向上に努めてください」
 それぞれの明王にフレデリとジュスティシアは言葉を手向け、現場の修復に取りかかる。
(「……ああいうキャラって、腐った方面の薄い本だと掛け算の餌食にされていそうだな……精神と肉体、潔癖同士惹かれ合った二人は……とかな……」)
 物思いに耽る蒼眞の真紅のバンダナを、潮風が揺らす。
「どうだ、一緒に海水浴でも」
「……」
 ビキニを装着し直したエイジが誘う。彼を見る和奏は、無言。
(「やっぱりえっちなのはいけないよ!」)
 顔を真っ赤にした武光はダッシュで退場した。
 エレスはそっと胸をなで下ろしていた。性的な目で見られるのは気にしないが、性的なスキンシップはNGなのだ。けれど、敵味方ともに、彼女にそうした接触をする者は今回いなかった。
「ぜひとも僕も楽しんでいきたいね、エイジ君」
 もっとも、それは『エレスに対しては』であり、清嗣はエイジにアプローチしている。
(「大人なこととかも含めてさ」)
 清嗣はエイジに囁く。
「……えっちなのはいけないと思いますよ」
 和奏が呟いた。
 過激で極端な明王達は滅びた。だが、『常識人』は、未だ健在なのであった。

作者:地斬理々亜 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 3
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