七夕寓話六塔決戦～ゲート封鎖の破壊を目指して

■リプレイ

●
　東京都港区。
　ドリームイーターの企みを阻止すべく、６班５０名弱のケルベロス達がこの地へと集まる。
　そのうちの１班は、地上からジュエルジグラットの手を見上げて。
「季節の魔法についてはすっかり忘れてたな」
　頭に彼岸花を咲かせたオラトリオ、岡崎・真幸（花想鳥・e30330）は過去の夢喰い達の所業を思い出し、ふと呟く。
「季節の魔法――とても大きな力のようですが、メリーナさんが制御しているなら、心配無用ですね」
　――決して、妨害などさせはしない。
　人形のように表情に乏しい長田・鏡花（アームドメイデン・e56547）だが、力強い言葉で決意を語る。
　現状、ドリームイーターの大物２体『青ひげ』と『ポンペリポッサ』が七夕の魔力の効果を打ち消す為、ジュエルジグラットの手の上昇を抑えようとしている。
　６班はそれらに対して４：２に分かれ、討伐、妨害阻止に当たるべく行動を開始していた。
　こちらの班は、ポンペリポッサの妨害阻止に当たる２班の片割れ。
　すでに、他班はジュエルジグラットの手の内部ダンジョンから、妨害対象のポンペリポッサがいる指先へと移動しているはずだ。
「作戦は成功させて帰らねえと」
　七夕の魔力をも制御するメリーナの為にも、真幸はいい報告を持ち帰りたいと考えている。
　ともあれ、メンバーは地上からジュエルジグラットの手に接近しようと、港区高所のビルを目指す。
「色々動ぃて大変。人もたくさんぃるしある程度ゆっくりでも……ダメ？」
　面倒くさがりな性格のラトゥーニ・ベルフロー（至福の夢・e00214）に完全な同意の声はないものの。ある意味で、面倒なことになったと蒼雷の魔術を得意とするシャドウエルフ、セルリアン・エクレール（スターリヴォア・e01686）は嘆息する。
「こちらは確実におばあさんを妨害しないとな」
　青ひげ担当４班は敵を討伐しようと動いているはず。
　ならばこそ、こちらはこちらで確実にポンペリポッサによる妨害を止めたいところだ。

　さて、地上からの攻撃を考える当班。
　だが、港区のヘリポートがある高層ビルからでもまた上空のジュエルジグラットの手までは距離がありすぎて、攻撃が届かない。
　このまま地上まで降りてくるのを待っては、敵の目的達成を黙って見過ごすことになる。
　だからこそ、別の手を講じねばならない。
「ポンペリポッサはジュエルジグラットの上昇を阻止する為、全力を注いでいる筈」
　頭上を見上げていた蒼い鱗の竜派ドラゴニアン、神崎・晟（熱烈峻厳・e02896）は敵がジュエルジグラットの手に注意が向いていることを見て、こんな提案をメンバーに持ち掛ける。
「ならば、ヘリオンで近づいて外縁部からの降下作戦をとるのはどうだろう」
　ドリームイーターはあの巨大な手を降下させようとしており、それをこの場で待ち続けるわけにはいかない。
「やむを得ないよね」
　ファードラゴンタイプの竜派ドラゴニアン、ネリシア・アンダーソン（黒鉛鬆餅の蒼きファードラゴン・e36221）はそれに賛同する。
「上空からならー、別班と挟撃もできますわねー」
　おっとりした黒髪女性、フラッタリー・フラッタラー（絶対平常フラフラさん・e00172）もそれに同意した。
　別班はダンジョンとなった手の内部から外側へと出てくるはず。
「直接、あの巨大なポンペリポッサに取り付くのか。ならばいけるか」
　長い銀髪をアンダーテールにした神城・瑞樹（廻る辰星・e01250）もまた仲間達に賛同すると、丁度降り立ってきたヘリオンに乗っていたリーゼリットへと彼らは作戦を持ち掛けることにしたのだった。

●
　特例ではあるが、ヘリオンでポンペリポッサの頭上へと近づき、メンバー達は飛び降りることとなる。
　巨大なポンペリポッサの体へと直接取り付いていくメンバー達。
「さて、こいつをとどめて……、いや、可能であれば倒さないとな」
　ジュエルジグラットの手に乗り、その手を地上へと引きずり落とそうとするポンペリポッサに対し、瑞樹は流星の蹴りを浴びせかけた。
　しかし、市街を突き抜ける程の巨体を持つポンペリポッサにとって、その程度では蚊に刺された程度のダメージでしかない。
「手へのお触りは厳禁ですのよー」
　同じく、フラッタリーもポンペリポッサの意識をジュエルジグラットから逸らす為、念動力を集中させて敵の手を起爆する。
「なんだ……？」
　自らの体の異変を感じるポンペリポッサ。
　どうやら、別班も接敵して攻撃を始めたようだ。
　メンバー達はさらに相手の妨害を阻止すべく、攻撃を続ける。
　翼を羽ばたかせて舞い降りてきた晟が『蒼竜之錨鎚【溟】』で足元の敵を叩きつけると、ふらふら動くラトゥーニは催眠魔眼で相手を見つめつつ、サーヴァントのリリを前線へと投げ飛ばす。
　ブレスを吐きかけるこのサーヴァント、リリは先日までミミックだったはずだが、いつの間にかボクスドラゴンになっているのにもラトゥーニは全く気にもかけない。
　敵の行動阻害に重点を置いて立ち回る鏡花。
　彼女は怒りを激しい雷に変えてポンペリポッサへと浴びせかけていき、セルリアンも雷を纏わせたゲシュタルトグレイブを足元へと突き付け、敵の動きを妨害していく。
　その間、まだ敵の本格的な抵抗が始まる前とあって、真幸も足元に守護星座を描き、仲間達の守護に当たっていた。

　ところで、ポンペリポッサといえば、身体に巻き付けたソーセージ。
「今回はポンペリポッサ婆さんの技にちなんで……」
　――オリジナル・グラビティ『鬆餅蒼犬竜式・小型垓竜鎧炉』。
　普段は好物のワッフルを飛ばすことも多いネリシアだが、ソーセージワッフル型の物干し竿を本人のヌイグルミ型小型戦闘ドローン『ファードラッフル』達に持たせ、突撃させていく。
　時間稼ぎすべく、メンバー達はさらなる攻撃を加えようとグラビティを使う。
「生憎だが、ソーセージもお菓子も今はいらんのでな。とりあえず、この場からご退場願うとしよう」
　晟の言葉に、ポンポリポッサも黙ってはおらず。
「鬱陶しい連中だね。ちょっと相手しておいで」
　そこで、彼女は首に巻いていたソーセージを使い、新たな夢喰いを生み出してくる。
　のそり、のそり……。
　四つん這いになって歩寄ってくるそれは、寓話六塔戦争にも現われた全長３０ｍもある巨大ドリームイーター『貪欲なる夢喰い』だ。
　メンバー達もポンペリポッサがソーセージを使ってくるのは織り込み済みだったが、新手の夢喰いを生み出してくるのまでは想定していなかった。
「参りましたね……」
　鏡花は巨躯の相手を見上げ、僅かに怯む。
　敵はソーセージが残っている限り、無数に貪欲なる夢喰いを生み出すことができてしまう。
　これでは、ポンペリポッサの撃破など、どう考えても手が足りるはずもない。
　新手を見据えたフラッタリーは額のサークレットを展開させ、金色瞳を開眼する。
「アハハハハHaはハhA……」
　豹変したフラッタリーは額に隠していた弾痕から地獄を迸らせ、獣のような動きで目の前の巨大な夢喰いへと襲い掛かっていくのだった。

●
　のそり、のそり……。
　近づいてくる敵は醜悪な見た目で這いずって近寄ってくる。
　前線メンバーを掴みかかろうとしてくる巨大な敵。その手をフラッタリーが代わりとなり、獄炎の大腕で受け止めてみせて。
「肉叢是焔ヲ越ヱrU事能ワ不」
　敵はその巨大な腕でフラッタリーをつかみ取り、その炎ごと喰らおうとしてくる。
　狂いながらも狂乱と怜悧を共にする彼女は敵の次なる攻撃に備え、紙兵を撒いて仲間達の護りへと当たらせていく。
　そのそばでは、箱竜リリが主ラトゥーニの指示通りにうろうろしつつ、元々自らの擬態していた箱に入って体当たりを繰り出す。
　別班は、ジュエルジグラットの手の上から、ポンペリポッサと戦っている状況。
　だからこそ、この夢喰い老婆を叩きたいところだが、目の前の奇怪な相手が邪魔をする。
「しかたなぃ」
　新手のおかげで、リリも忙しそうだと判断したラトゥーニ。
　とにかく目の前の相手を妨害すべく動きながらも、彼女は貪欲なる夢喰いを抑えるべく無数の黒鎖を伸ばし、敵の巨体を捕えようとしていく。
　その鎖で敵を抑える間に、真幸は前線メンバーの回復に当たる。
　ポンペリポッサからの攻撃がこちらに及ばないのは、別班が注意を引いているからだろう。
　だが、貪欲なる夢喰いの及ぼす効果は服破り、パラライズといったもの。そのダメージは決して小さくはない。
　仲間のサポートへと当たる真幸も箱竜チビと共に仲間達が満足に動くことができるよう、光の盾を張りつつ仲間達を支援していたようだ。
（「……婆さんは髭が撃破されたくらいで退くかねえ」）
　状況的に、すでに討伐は難しいと真幸も悟っている。討伐は困難と考えていた状況に、追い打ちをかけられていた状況ではやむを得ない。
（「ポンペリポッサの足止めすらままならんか……」）
　掴みかかってくる巨大夢喰いに対し、巨躯であることを活かす晟と相棒の箱竜ラグナルが一行の壁となって攻撃を受け止める。
「ともあれ、別班にこいつを向かわせるわけにはいかんな……！」
　ラグナルが属性注入でサポートに当たってくれる中、晟は怪力で巨大な夢喰いの力を跳ね除けようとし、さらに『蒼竜之戟【淌】』を握りしめて。
「砕き刻むは我が雷刃。雷鳴と共にその肉叢を穿たん！」
　蒼雷を纏う超高速の突き。それに、目の前の夢喰いは若干態勢を乱すが、手足を地面……もといポンペリポッサにつけていることもあり、安定性があるのが厄介な相手だ。
　元々は、ポンペリポッサの足止めを考えていたネリシア。
　晟に同調しつつ、ネリシアも靴裏にキャタピラーのついた『グラファイト（ワッフルトプス・キャバリアー）』で、貪欲なる夢喰いへと重力を宿した蹴りを食らわせる。
　全身にオーラを纏う瑞樹がさらに、オーラの弾丸を撃ち込む。
「髭の方はきっと大丈夫だろうけど、そっちもそっちで生かしとく理由もないからな」
　できるなら、ポンペリポッサへと撃ち込みたい一撃だが、存在感を示す目の前の夢喰いはあまりにも邪魔すぎた。
　大物との戦いもあり、瑞樹は本質的な考えを見せつつ、ポンペリポッサへ攻撃するタイミングをはかる。
　相手が巨大であるならば、鏡花は自らの小柄な体を活かして敵を翻弄しようとする。
「ナックルモードに移行」
　その上で、彼女は拳打形態に変形させたガジェットを拳に装着して。
　――ready！
「行きます―― ハイボルテージ・インパクト」
　鏡花は相手の掴みかかってくる手を躱しつつ、拳でその顔を殴りつけ、高圧の攻撃的グラビティを送り込んで敵の体を内部から破壊していく。
　爆発を受けて潰れかけた敵へと、セルリアンが仕掛けて。
「こいつも、油断できない敵には違いない」
　だからこそ、セルリアンは幻の薔薇を舞わせ、『月影』によって月白の斬光を敵へと刻み込む。
　全身からモザイクを散らし、消えていく貪欲なる夢喰い。
　これで、ポンペリポッサへと攻撃を再開させようとするメンバー達。
「失礼ですが……年寄りの冷や水、という言葉を思い出しました」
　鏡花がそこで、ポンペリポッサへと問う。
「この場は諦めて頂けませんか」
「……ああ、もうやられたのかい」
　だが、夢喰い老婆は事もなげに再び、ソーセージから新たな貪欲なる夢喰いを生み出してしまう。
　のそり、のそり……。
　手数の厳しさを感じながらも、メンバー達は新たな巨大夢喰いと対することになるのだった。

●
　２班１６人で夢喰いとの交戦続けるケルベロス達。
　ポンペリポッサは手の内を晒してなお、さほど苦しむ様子を見せないが、ジュエルジグラットの手の降下はなんとか阻止できていた。
　妨害阻止、可能なら討伐を目標としたメンバー達は持久戦想定で臨んでおり、多少の攻撃では戦線を崩されはしない。
　のしかかってくる敵の攻撃を耐える仲間達には、真幸がメインとなりオウガ粒子を振り撒き癒しに当たる。
　主として前線を支えるフラッタリーが相手の顔面を起爆し、晟が剛鎚で腕を殴りつけて牽制していく。
　ポンペリポッサを狙う為には目の前の夢喰いは障害となる。ラトゥーニも相手を魔眼で牽制し、続けて立体的な攻めを見せる鏡花が如意棒で相手の手を捌きつつ痛打を叩きこむ。
　敵は弱れば、食らった物を咀嚼して自らの力を高めようとする。
　それを見たネリシアが『グラファイト (ワッフルシールドバンカー)』のワッフル型パイルを回転させて突き入れ、同時に瑞樹も音速の拳で敵を殴り倒す。
　そうして、敵をまた１体倒したが、夢喰い老婆はまたも新手を生み出してしまう。
　一行は貪欲なる夢喰いを手堅く１体、また１体を倒し続けながらも、合間にポンペリポッサへの攻撃も行う。
（「なりふり構わず、行動する可能性もあるからな」）
　時に、影の如き斬撃をポンペリポッサへと浴びせかけるセルリアン。
　しかしながら、またも貪欲なる夢喰いに邪魔され、そちらの相手を余儀なくされてしまう状況が続く。

　そうして、戦うこと３０分ほど。
　突然、手の奥側から衝撃音がこちらにまで響き渡る。
「な、何だろう……」
　奥の方に視線をやるネリシアだが、ここからでは何が起きているのかは分からない。
「青ひげめ、なんということをしでかしたのだ」
　だが、ポンペリポッサは何が起きたか把握していたようだ。
「このままここにいれば、このポンペリポッサさえモザイクに飲み込まれてしまう」
　悪態づきながらも、敵はジュエルジグラットの手から離れていく。
「こうなれば、魔女の最後の魔力を使っても、デスバレスに赴き、赤頭巾をサルベージするしかない……」
　――例え、可能性が１％に満たぬとも、諦めはしない。
　そんな敵に、瑞樹はなんとなく同情を覚えて。
（「それだけ、赤ずきんが替えの利かない存在だったんだろうな」）
　そこで、ポンペリポッサはようやくこの場のケルベロス達を見据えて。
「お前達も、逃げるがいいよ。ここは誰も近づく事も出来ない、モザイクの坩堝になるのだから」
　そう言い残し、その夢喰いの老女は巨大な手から飛び降り、東京湾に向かってダイブしていった。
　メンバーはジュエルジグラットの手へと飛び乗って。
「ぅみは追ぃかけ、るのむずぃ……」
「本番はゲート破壊の時だからね。そこまで温存しないと」
　ラトゥーニが後追いを諦めるとセルリアンも同調し、この後を考えて踏みとどまる。
　直後、逃げたポンペリポッサが告げた通り、ジュエルジグラットの手全体がモザイクに包まれ始める。
「いかんな、巻き込まれるぞ」
「私達も退避しましょう」
　危機を感じた晟の言葉を受け、鏡花は仲間と共に街に向かって飛び降りていったのだった。

作者：なちゅい	重傷：なし 死亡：なし 暴走：なし
種類： 公開：2019年7月22日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 2／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 5
あなたが購入した「複数ピンナップ（複数バトルピンナップ）」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。