カードデルデル!!

作者:星野ユキヒロ

●カードデルデル!
 トレーディングカードマシン。百円を入れるとトレーディングカードがべろーっと出てくるあれである。なけなしのお小遣いを握りしめて財布が空っぽになるまで回した覚えがある人は多いのではないかと思う。群馬県のとあるショッピングセンターに置いてあったカードマシンが壊れた。これを機会に新しいものに買い換えられ、壊れたマシンは倉庫にしまわれた。
 そんなマシンの眠りを妨げるのは小型ダモクレス。カサカサと蜘蛛めいた動きでカードマシンに近寄ると、内部に入り込み中枢部分に取り付いた!!
『カードデルデル!!』
 取り付かれたマシンは足を生やし、ありもしない作品のカードをべろべろ排出しながら歩き出す!!

●カードデルデルダモクレス討伐作戦!
 群馬県のショッピングセンターにカードマシンダモクレスが発生することをマロン・ビネガー(六花流転・e17169)は懸念していたという。
「マロンさん的中ネ。皆サンにはカードダスマシンダモクレスを討伐してもらうヨ」
 クロード・ウォン(シャドウエルフのヘリオライダー・en0291)が今回の事件の概要を話す。
「現場はショッピングセンターの倉庫スペースネ。もともとスタッフ以外は入らないところヨ。オーナーには店を休業にしてもらうし警察には人払いを頼んでるのコトだけド、このままほうっておいて外に出られでもしたら一般人が殺されてグラビティチェインを奪われてしまうアルヨ。そうなる前に食い止めるヨロシ」

●カードマシンダモクレスのはなし
「このダモクレスはカードマシンに足が2本生えた変なダモクレスヨ。カードを連続で射出することで、ケルベロスの皆サンが使うガトリングガンのような攻撃をしてくるネ。高速で打ち出されれれば紙といえどカードも立派な凶器。油断しないで討伐に行って欲しいネ」
 クロードは手持ちの端末で市街地の航空写真を見せて戦闘区域を説明した。
「ここからここまで、警察に封鎖と避難をお願いしたアル。だから人払いは気にせず、純粋に討伐頑張っチャイナ」

●クロードの所見
「マシンで変えるトレーディングカードは子供にとっては安価で買える好きなもののグッズのひとつヨ。だからこそ思い出に残っている人も多いと思うネ。みんなの思い出をぶち壊しにする前に、皆サン倒してきてほしいヨ」


参加者
比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)
チェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)
東・律(ハリボテの輝き・e21771)
モヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)
エリザベス・ナイツ(フリーナイト・e45135)
九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)
柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)
ナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923)

■リプレイ

●カードデル会場
 ヘリオンから降り立ったケルベロス達は、件の倉庫スペースに向かっていた。従業員用の駐車場を突っ切りながら、今回の討伐対象に思いを馳せる。
「軽く腹ごしらえをしておかないとね」
 ゼリー飲料をあおりながら戦いに備えるのは比良坂・黄泉(静かなる狂気・e03024)。豊満な胸へと続く白い喉がくっくっと脈動する。
「カードゲームって男の子は好きだよね! ボクも付き合いでやったことがあったっけ! 付き合い……付き合う……はっもしかしてアレって交際だったのでは……?」
 カードゲームという単語から独自の恋愛妄想を繰り広げているのはチェリー・ブロッサム(桜花爛漫・e17323)。ロップイヤーをパタパタさせて上がった体温を下げようとしている。
「カードマシンって律ちゃんは初めて見るわ。壊れてるのは見たことあるかもしれないけれど」
 やや澱んだ雰囲気を出しながらも未知のものへの好奇心を表に出しているのは東・律(ハリボテの輝き・e21771)だ。
「カードが出てくる機械というと……ああ、アレかな。デパートやゲームセンターの片隅に置いてあるものだよね。私が利用した事は無いが、確かに好きな者はとことん好きだろうね」
「十円ではなく百円で御座いマスカ……平成半ば頃からの物で御座いマスネ。十円時代のキラカードは本当に貴重で御座いましたが、厚みとシール構造で内部に詰まる諸刃の剣で御座いマシタ」
 九十九屋・幻(紅雷の戦鬼・e50360)とモヱ・スラッシュシップ(機腐人・e36624)は古き良き時代のカードマシンの思い出を律に話している。傍らを進むのはモヱのサーヴァントの収納ケースだ。
「カードゲームって、あんまり詳しい事は知らないけど……たぶん、流行りすたりってあるよね?? 弔いというわけではないけど……カードゲームで遊べば倒した相手も浮かばれるかしら」
「札遊び、カードゲームか。町で見かけたことがあるな。称号と名前が書かれたいろんな奴らが戦う遊びだな。花札とは違うようだが、そんなに面白い物なのかねえ、一回くらいやってみたいもんだな」
 金の髪を揺らしながらエリザベス・ナイツ(フリーナイト・e45135)は鎮魂の方法を考えていた。それを聞いた柴田・鬼太郎(オウガの猪武者・e50471)もカードゲームに興味を持ったようだ。サーヴァントの虎がもふもふとした尻尾を鬼太郎の首にまとわりつかせている。
「地上の娯楽というのは色々あるのだな……だが、玩具で正しく遊べない者は厳しく躾けてやらねばならんな」
 ナターシャ・ツェデルバウム(自称地底皇国軍人・e65923)がキリッとした視線で倉庫を睨むと、中からは『カードデルデル! カードデルデル!』という奇声と共にドカカッと何かが連続で飛び出る激しい音が聞こえていた。敵はもう目の前だ。

●何がデルデル?
『デールデルデルデル……デル』
 そのダモクレスは情報のとおり、古めのカードマシンに足が生えたものだった。倉庫の中を時々カードを吐き出しながら行ったり来たりしている。
「カードゲームにはカードは拾ったとか言う言葉があるみたいだね、つまりダモクレスが出してるカードを拾えばその言葉通りに?」
「それはどうデショウカ……ありもしナイ作品のカードを出すと聞きマシタガ、いかなるレアものか、確かめさせて頂きマショウ」
『デル?』
 黄泉とモヱの会話に、カードマシンが反応する。戦いが始まるようだ。
「みんなから愛されたカードゲームの機械。今まで頑張ってきてくれたのよね……悲しいことにならないように、ここで眠らせてあげなくちゃ」
 エリザベスがまず先陣を切り、サイコフォースで仕掛ける。ドカンという音と共に小爆発が起こった。
「最初はカードゲームに乗じていても、ふたりきりの室内、熱が入れば次第に距離も近くなりやがてふたりは……きゃー! あっ、それどころじゃなかった! カードマシンを倒さないとねっ!」
 先ほどの恋愛妄想がまだ続いていたらしいチェリーが爆発音で我に返り、ルナティックヒールでクラッシャーの黄泉に壊アップを付与する。
『デルデルデルーッ!!』
 月光のような光弾が黄泉に飛んでいくのを見て引き寄せられたのか、黄泉に向かってカードの弾丸を連続で発射するカードマシンダモクレス。
「おっと、やらせはしないぜ!」
 黄泉に着弾する寸前に鬼太郎が立ちはだかり、ダメージの肩代わりをする。
「エレキブーストデス!」
 すかさず、メディックのモヱが電気ショックで鬼太郎の生命力を活性化させた。サーヴァントの収納ケースはガブガブとカードマシンにかぶりついている。
「カードゲームを愛する者たちの夢や思い出を守る為、ここは一仕事させてもらうとしよう」
 美しい呪いの軌跡を見せながら、斬撃を放つ幻。
「カードゲームは初心者だがせっかくだ。俺もお前さんの流儀にのっとって名乗りをあげさせてもらおう。俺は『鬼武者』柴田鬼太郎! 『武者猫』の虎ともども、ブロッカーを務めさせてもらうぜ! お前さんはどうやら基礎値の高いバニラカードってやつだな。その攻撃力で俺らを破壊できるもんならやってみな!」
 咆哮と共にがっぷりと組み付く鬼太郎と清浄の翼で援護するお供の虎。確かにゲームキャラっぽさがある。
「ディフェンダーにがっぷりされてしまってはクラッシャーの名がすたる。応援ももらったしわたしも行かせてもらわないとね!」
 組み付かれ、怒りを鬼太郎に向けているカードマシンに、横合いから流星の煌きと重力を宿した黄泉の蹴りがカードマシンに炸裂し、機動力を奪う。足のみで手のないカードマシンがぐらぐらと揺れた。
『デルデルデル……』
「力押しの脳筋相手ならば、まずは弱らせるとするか」
 ぐらついた敵をナターシャがマインドリングから剣を顕現させ、斬り付けた。
「危ないのでちょっと離れてもらいたいわ」
 律の声にナターシャが身を引くと、エクスカリバールが回転しながら飛んできて、ごいんとカードマシンに当たる。ちょっと端っこが凹んだようだった。
 戦いは始まったばかりだ。

●カード舞い散る散る散る満ちる
「上から失礼します!」
『デルデルッ!』
 高く飛び上がったエリザベスが斧、ナイトブレーカーを振りかぶり叩きつけるが、フットワークを使った動きで避けられてしまう。
「どんまいどんまい応援するよっ! さあさあぶっ飛ばしていこう!」
 そんなエリザベスに魂うつしで狙アップを付与するチェリー。ロップイヤーがぱたぱた動く。
『カード……デルデルーッ!!!!!』
 きゅっとつま先に力をいれこちらに向き直ったカードマシンダモクレスがやや膨らんだかと思うと前列に向かって大量のカードを波状に射出、同時にディフェンダーたちが動く!
 黄泉をチェリーが、幻を鬼太郎が、さらに虎と収納ケースがかばった二人を二重にかばう!! 収納ケースはエクトプラズムを変化させた武器でカードを叩き落とした。
「現チームのディフェンダーは仕事が速いデス。こちらもしっかり治療しまショウ」
 モヱがライトニングロッドを振ると前衛に雷の壁が構築され、耐性が付与されるとともに負傷した虎が回復しする。
「この月光斬は避けきれないよ」
 飛び出した幻が緩やかな、しかし鋭い動きでカードマシンの足を狙った。脚部を的確に切り裂く太刀筋がギャリンと火花を散らし、敵の動きを鈍らせる。
「今度はこっちのターンと行こうか虎!」
 鬼太郎は黄金の角を長く鋭く伸ばし、闘牛のように突進し、動きの鈍ったカードマシンを貫く! 虎は再びキャットリングで主の援護を続けた。
「連携と洒落こもうね」
 黄泉が、鬼太郎の角が貫く反対側からジェット噴射で突撃し、装甲を破壊にかかる!
 穴のあいたカードマシンからバラバラと中のカードが溢れているが、カードマシンはまだまだ動くようだ。
「回転突撃ならドワーフもも得手だぞ!」
「愛国心を見せられるとさすがに故郷が恋しくなるわ」
 ナターシャが高速回転しながら突撃し、さらにカードマシンの装甲を破りにかかる。続けて律が透明な御業を投げつけると、ばらまかれるカードに着火し炎が上がった。
 戦いはまだまだ続く。

●ターンエンド
 激しい攻防戦が続いた。装甲を破られカードをまき散らしながらもカードマシンは倒れずに、ケルベロス達にダメージを与えた。土埃や煙で倉庫の中はやや視界が悪い。
「きっといろんな人の心の中にあなたとの良い思い出はたくさん詰まっているはずだから……もうゆっくりと休んで……かぶとわりっ!」
 エリザベスは得物を振りかざすと鎧ごと相手を断ち割る斬撃を繰り出す。
「そうそう、カードバトラー同士の恋の思い出がいっぱいつまってるはず! 衣帯不解!死ぬまで殴るから――――覚悟してよ!」
 チェリーが血液で作り出した赤い満月を凝視すると赤い瞳が凶暴に煌き、カードマシンに襲いかかるなり連続で殴りつけた!
『デルデルデルーッ!!!』
 拳の弾幕を受け続けるカードマシンがチカッチカッと赤く瞬くのを見て、すんでのところでチェリーが飛びすさると、爆炎の魔力を込めたカードが一気に射出された! 至近距離だったためディフェンダーも間に合わずその身に炎を受けるチェリー。彼女自身もディフェンダーだったのが不幸中の幸いか、吹っ飛ぶも致命傷にはいたらない。が、かなり痛かったようだ。
「い、いったああい……」
「データサポートを行いマス」
 吹っ飛んできたチェリーを受け止めたモヱが時空魔術を応用し、チェリーを傷を受ける前に巻き戻した。モヱが治している間に収納ケースが攻撃する安定の方法で安全に回復することができる。
「一撃にて断ち斬る!」
 そんなモヱ達に幻の極地の斬撃が畳み掛けるように続いた。
「炎の攻撃が得意かい。でももうそんなに連続では出せねえだろうな」
 再び組み付きで攻撃する鬼太郎。虎はしっぽの輪を飛ばしカードマシンのカードを射出する邪魔をしている。
「もうそろそろ終わりに近づいてきたんじゃないのかな」
 流星の蹴りにぐわんぐわんと揺れだしたカードマシンを見て、黄泉は仲間に追い込みを促した。
「そうだな、律殿。そろそろ決めようか。道を作ってくれないか?」
「了解ですわ!」
 律の放った熾炎業炎砲がカードマシンに炸裂すると巻き散らかされたカードに引火し、まるで炎の道のように一直線に燃え、土埃と煙の中でもよく見える。
「岩盤、鉄塊、龍の鱗……ドワーフに掘れぬ道理無し!」
 身の丈ほどのシャベルを構えたナターシャが体ごとカードマシンにぶつかり、シャベルを突き刺す。シャベルは穴を掘る道具。瞬く間にカードマシンに穴を開け、削り取っていく!!
『デルデル……ターンエンドだ……』
 そう呟くと、カードマシンは大量のカードと二本の足を残して消滅した。
 戦いは終わった。

●思い出はカードと共に
「さて、周囲を修復しなくてはならないのデスガ……」
「わたしはヒールないから、持ってる人にお任せしたいなあ」
 カードが散乱する倉庫を見渡し、モヱと黄泉が話し合う。
「おい! このカード殴ったら消えるぞ!?」
「そう言えばクロードは『ありもしない作品のカード』って言ってたっけね……」
 癒しの拳で周囲を修復しようとした鬼太郎の声に、幻はヘリオライダーの前情報を思い出した。
「ケルベロスが題材のゲームもあるのだろうか……」
「題材としてはアリかもしれないよねっ!! ケルベロス同士が恋愛バトルを繰り広げるんだよっ!!」
「『魔法のヤンキーマジカル本気(マジ)か?』律ちゃんこんなの聞いたことない」
 落ちているカードを拾い上げ、あーでもないこーでもないと顔を見合わせるナターシャ、チェリー、そして律。
「供養も兼ねて、修復の前に少し遊んであげたいのだけど、どなたか付き合ってくれるかしら……」
「おういいぜナイツ殿。初心者同士でひとバトルと行こうや」
 エリザベスの申し出を鬼太郎が受け、カードゲームを遊んでから修復することになった。
「デッキタイプは和風のカードで組んだミッドレンジだ。序盤はマナを産み出すカードや防御役を主体に、中盤は中コストのカードを召喚し力押しをするぜ」
「えっ、ちょっと。柴田さん結構詳しいんじゃない……。とりあえず強そうなカードで! ガンガン攻める戦法で!!」
 戦いに荒れた倉庫内で、即席カードバトラーたちが白熱したバトルを繰り広げる。楽しんでもらえてきっとカードマシンも本望だろう。
 なんだか妙に清々しい気持ちでケルベロス達は仕事を終えたのだった。

作者:星野ユキヒロ 重傷:なし
死亡:なし
暴走:なし
種類:
公開:2019年7月11日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 4
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